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15 テスト勉強②
同じ図書室。
時間は少し経って、外の光はオレンジに変わり始めている。
窓ガラスに映る影も、さっきより長くなっていた。
ノートはだいぶ埋まって、ページの端が少しだけめくれている。
「ユウタ、頭いいね」
凛がぽつりと言う。
「普通だろ」
「教え方うまい」
「そうか?」
ペンを持ったまま、少しだけ視線を上げる。
凛は素直な顔で頷いた。
「うん」
その一言が、妙にまっすぐで――
少しだけ、胸に残る。
(……なんだこれ)
悪くない気分。
むしろ、ちょっと嬉しい。
「じゃあご褒美あげる」
「いらん」
反射的に返す。
「遠慮しないで」
「いやだから」
「ジュース奢る」
「それはいる」
即答。
凛は一瞬きょとんとしてから、すぐに笑った。
「正直だね」
図書室の静けさの中に、小さな笑い声が溶ける。
窓の外では、夕日がゆっくり沈んでいく。
一日の終わりが近づいているのに――
この時間は、まだ続いてほしいと思った。
ノートの上に落ちる影が、少しずつ重なっていく。




