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14 テスト勉強①
図書室。
扉を開けた瞬間、空気が変わる。
教室とは違う、静かで少しひんやりした空気。紙とインクの匂いが混ざって、落ち着いた雰囲気を作っている。
大きな窓からは午後のやわらかい光が差し込んで、本棚の影を長く伸ばしていた。
ページをめくる音や、遠くの椅子のきしむ音だけが、小さく響く。
その中で、向かい合って座る。
「ここ分かんない」
凛がノートを少しこちらに寄せる。
「どこ」
身を乗り出して、問題を覗き込む。
その瞬間――
距離が、近い。
「近い」
思わず言う。
「見えないでしょ」
「見える」
「でも近い方が効率いい」
「なにの効率だよ」
凛はさらっと言う。
「集中力」
「嘘だろ」
ページの上で指が少し触れそうになる。
紙の白さと、凛の髪の黒さが妙に対照的に見えた。
「本当だよ」
(顔が近い)
息がかかりそうな距離。
図書室の静けさのせいで、余計に意識がそっちに集中する。
「……離れろ」
小声で言う。
「ドキドキしてる?」
「してねえ」
即答。
でも、声が少し低くなる。
「はい発熱」
「もうその診断やめろ」
凛はくすっと笑う。
その声が、やけに近くで響いた。
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