13 間接
昼休みの教室は、いつもより少し騒がしかった。
週の真ん中、みんなの気が緩んでいるのか、笑い声がやけに大きい。
窓から差し込む光は明るくて、机の上の弁当箱を白く照らしている。
外では風が少し強くて、カーテンがぱたぱたと揺れていた。
その中で。
「それ、俺の箸だぞ」
ふと気づいて言う。
凛は何の迷いもなく、俺の箸でおかずをつまんでいた。
「知ってる」
「……なんで使ってる」
さらっと返されて、言葉が詰まる。
凛はそのまま一口食べて、何事もない顔で咀嚼する。
「気にするタイプ?」
「いや、その」
視線が、どうしても箸に向く。
さっきまで自分が使っていたそれ。
「ドキドキする?」
「しねえ」
即答。
でも、声がほんの少しだけ不自然になる。
「嘘だね」
凛がくすっと笑う。
「やめろって!」
思わず声が少し大きくなる。
その瞬間――
近くの席のやつが、ニヤニヤしながらこっちを見た。
クラスメイト
「お前らもう付き合えよ」
一瞬、教室のざわめきが遠くなる。
「「違う!」」
ほぼ同時に返す。
声がぴったり重なる。
そのあと。
ほんの一瞬だけ、間。
凛と目が合う。
すぐに逸らす。
周りから「おー」「息ぴったりじゃん」みたいな声が飛んでくる。
「うるせえって」
小さくぼやく。
でも、さっきの一瞬が、頭から離れない。
同時に否定したこと。
そのタイミング。
その、わずかな間。
凛は何事もなかったみたいに、また弁当を食べている。
でも、その横顔が少しだけ気になった。
窓の外で、風がまた強く吹く。
カーテンが大きく揺れて、光が一瞬だけ遮られる。
(……なんだ今の)
ただのツッコミ。
ただのノリ。
それだけのはずなのに――
胸の奥に、小さく引っかかるものが残っていた。




