100 核心
帰り道。
夜の街。
街灯が一定の間隔で並んで、
足元に淡い光を落としている。
並んで歩く。
自然に、そうなっていた。
あの頃と同じ並び方。
同じ歩幅。
同じ距離。
でも――
触れない距離。
手を伸ばせば届くのに、
誰も伸ばさない。
靴音が、二つ分。
静かに重なる。
(……)
言葉はない。
でも、不思議と苦しくはない。
ただ、
どこかで分かっている。
同じじゃないことを。
「ねえ」
凛が、前を向いたまま言う。
「なに」
視線は変えずに返す。
「私たちさ」
少し間。
風が、二人の間を抜ける。
言葉が、落ちる場所を探しているみたいに。
そして――
「愛に、なれなかったね」
静かな声。
責めるでもなく、
悲しむでもなく、
ただ、事実を置くみたいに。
足が、ほんの少しだけ遅れる。
(……)
否定できない。
言い返す言葉も、見つからない。
あの時間。
あの距離。
あの気持ち。
全部、確かにあったのに。
それでも、
辿り着かなかった場所。
「……ああ」
短く答える。
それ以上は、何も言えない。
言わなくても、伝わっている気がする。
街灯の下を通り過ぎるたびに、
影が伸びて、重なって、離れていく。
並んで歩いているのに、
同じ場所には、もういない。
あの頃と同じ帰り道。
でも、
もう同じじゃない。
その違いだけが、
はっきりと夜の中に浮かんでいた。




