Lesson.4 『駆動機関』
はい、皆さんこんにちは!講師役を務めさせて頂くアイリスです。
今回は駆動機関……地上用として使われている「フォトンドライブ」と恒星間航行用の「レゾナンスドライブ」の二つについて、まとめて説明しますね。どちらも本編ではさらっと出てきて「私」もトワも普通に使ってますよね。両方ともフォトンエネルギーを使った駆動機関である事には違わないんですけど、用途や特性が違うのでそのあたりを中心に説明します!
まず「フォトンドライブ」から。こちらは皆さんの知っている「電気自動車」のようなバッテリー駆動の技術です。四人乗りの標準型ビークルや一人乗りのフォトンバイク、本編にはまだ登場していませんが大気圏内を飛行するエアロプレーンなど様々な乗り物がフォトンドライブで稼働しています。あ、そういえばHLVもフォトンドライブで動いていますね。
特徴としてはフォトンセルやフォトンバッテリーを使うのでリーズナブルな運用が可能である事、また安定稼働が出来るので民生用の乗り物としては最適である事が主な特徴です。ただフォトンはブラスター用カートリッジのような爆発的なエネルギー放出も可能なので、HLVにはそちらの技術が使われています。いずれもエネルギー補充がバッテリー交換で行えるので手軽かつ継続利用が簡単という特徴を持っています。
乗り物別で見ると、ビークルは車輪を使った地上走行系の乗り物全般を指す言葉です。「自動車」というとわかりやすいでしょうか?四人乗りの乗用モデルが標準ですが、二人乗りのシティコミューターから大型の貨物運搬用モデルまで様々な大きさのビークルが一般的に使われています。
運転制御は基本的に手動なので一定の年齢にならないと乗らせてもらえない星も多いんですが、私達の故郷のような辺境だと他の移動手段が無いこともあってスクールに入る年齢になったら運転方法を学んだら自由に乗り始めることが出来る星もあります。
もちろん免許制度がある星も存在しますが、星によって事情が違うので星外の人にはあまりうるさく言わないみたいですね。特に「私」とトワの場合はギルド章が成人の証でもあるので、大抵はこれを見せれば何も言われません。ギルドの権力乱用……?いやいや、これはギルドでちゃんと運転訓練を受けているという正当な証明ですからね!?
ビークルよりも少し小回りのきくサイズの乗り物としては1人乗りのフォトンバイクがあります。これは皆さんの世界だと「オートバイ」に相当する乗り物ですね。こちらは車輪ではなくフォトン噴出で低空を浮遊移動する乗り物なんです。フォトンの噴出を光圧として一方向に解放することで浮力と推進力を得る仕組みになっていますが、それを一度に制御する必要があるのでビークルよりも操縦が難しいです。
なにせバランスを崩すと転倒したり落下したりしますからね……なので、ビークルでは走りにくい不整地で用いられる事が多いんですが、扱いづらいのでビークルほどは普及していません。
ですがどの星にも熱心なフォトンバイク愛好家がいるようで、いろいろな改造を施して運転を楽しんでいるようです。意外かもしれませんが、ああ見えてトワは運動神経が良いこともあってフォトンバイクの運転がとても上手なんですよ。私ですか?もちろん「私」も乗れますけど、どちらかというとビークルの方が好きかなぁ。
エアロプレーンは「固定翼機」とも呼ばれるタイプの乗り物で、フォトンバイクの出力を強化して上空を飛べるようにしたタイプの乗り物だと思ってもらうと判りやすいかもしれませんね。
一人乗りの小型機から大容量の輸送が可能な輸送機まで様々なモデルがありますが、当然フォトンバイクよりも操縦が難しいので専門のパイロット課程をクリアしてライセンスを取得しないと操縦の許可がおりません。「私」もトワもパイロット課程までは受けていないのでエアロプレーンは操縦できませんが、いつかは操縦してみたいです。
そして最後はHLVですが、これは輸送に使われる重量物輸送ロケットの事です。フォトンエネルギーを使った爆発的な推力で大気圏を離脱するだけでなく、大気圏突入まで可能な乗り物……というより運搬手段ですね、これは。私達の故郷ではこれを使ってC3や人員を軌道ステーションに打ち上げたり、星外からの荷物を地上に送り届けたりしています。
HLVのフォトンドライブはブラスター用カートリッジに似た構造で、エネルギー放出を大規模に制御して莫大な推力を得る仕組みです。一方でフォトンバイクは小型のフォトンドライブを使用して推力を低出力に抑えて操縦性を優先しています。エアロプレーンは両者の中間といったところですね。
以上のように、フォトンドライブを用いた乗り物は私達の世界では広く一般的に使われている親しみのあるものです。フォトンドライブの構造は簡潔でメンテナンスも容易ですし、稼働音も比較的静音で排気ガスのような環境汚染物質の排出もありません。民生用の乗り物としてはこれと言った問題点が見当たらないからこそ、様々な星で多くの人に使われているのでしょうね。
なおフォトンを使っているので燃費の悪化を犠牲にすればC3による駆動機関の改造も可能です。フォトンバイク乗りの人が馬力を上げると言って朱のC3を組み込もうとする話を時々耳にしますが……事故にだけははくれぐれも気をつけて欲しいものです。
続いてレゾナンスドライブについてのお話です。こちらはフォトンドライブとは異なり基本的に航宙船にしか組み込まれていません。理由は二つあるのですが……まずはそのようなものであるかの説明からお話を始めましょうか。
フォトンドライブが「C3を使うことも出来る」のに対してレゾナンスドライブは「C3が必須」になります。理由は簡単、レゾナンス……すなわちC3の共振、共鳴が前提になる推進機関だからです。レゾナンスドライブではC3の共振を利用して船体を一種のエネルギーフィールドで包み込んで亜光速での航行を可能にするという技術です。このフィールドは「レゾナンスフィールド」と呼ばれるもので、C3が引き起こす特性……すなわちエネルギー波の空間的共鳴を利用して、船体周辺の空間構造そのものに干渉を起こすんです。
通常であれば、物体を加速させる際にはその質量に比例したエネルギーを要します。ですがレゾナンスフィールドを形成すると、C3の共振によって船体周囲の空間的慣性を極端に低下させることができるんです。これはどういう意味かと言うと船体が「軽くなった」のと同じ……つまり少ないエネルギーで船を効率的に加速することができると言うことになんです。
フィールドには付随効果として、船体に向かって飛来してくる宇宙塵や微小隕石の運動エネルギーを拡散する…………判りやすく言うと、防御壁のような働きをもたらします。高速で航行する航宙船にとっては、たとえ小さな物質でも衝突すると大ダメージになりかねませんが、これを防ぐことで船体を物理的に守る防御壁として機能している訳ですね。
もちろんこの防御効果は完全無敵なものではありませんから、真正面から巨大隕石にぶつかったりすれば当然航宙船は破壊されますし、小さなデブリが無数に漂う空間に突入するとあっという間に過負荷でドライブがダウンしてしまいます。ですから過信は禁物なんですけど、それでも便利ですよね、レゾナンスフィールド。
しかもこれだけじゃないんですよ?レゾナンスドライブが真価を発揮するのは、光速に近い領域になってからです。通常なら速度が増加するほど推進に要するエネルギー効率は急激に悪化するんですが、C3の共振エネルギーはこの「エネルギー消費の壁壁」を突破する鍵になるんです。
実は詳しい仕組みは解明されていないんですが、共振によって生成された空間エネルギーの一部が推進力に再利用されてるんじゃないかって言う説もあるみたいです。
ここ少し話が戻りますが、レゾナンスドライブが航宙船専用である理由は……主に次の2点にあります。
まず1点目はレゾナンスドライブが発生させるフィールドのエネルギー量が大きくて、空間そのものに影響を与えること。
船体をすっぽり覆う必要があるので自ずと展開範囲も大きくなりますから、地上でフィールドを展開した場合は周囲の構造物や自然環境が共振によって崩壊する危険性があるんです。仮に地上に航宙船の発着場があったとしても発進の度に空港ごと粉砕されてしまったら、とても実用的じゃないですよね。
2点目はもっと判りやすい理由で、地上で亜光速移動する必要がないからです。普通に考えれば一瞬で惑星上を数周するような移動手段、必要ないですよね。しかも環境破壊しながら進むとか……。なので、レゾナンスドライブを地上用に転用する研究は行われていません。
ちなみにフォトンドライブとレゾナンスドライブの違いですが、判りやすく言うとレゾナンスフィールドを発生させるかどうかで区別される、という説明がわかりやすいかもしれませんね。
あ、でも機関士のボースンさんにそう確認したら真顔で「違う。まったく違う」って断言されたので、技術的には違うのかもしれませんけど……技師のこだわりじゃないかな、って私は思っています。
そうそう、レゾナンスフィールドの技術は他でも応用されてるんですよ!例えば軌道ステーション。ステーションでは共鳴効果を応用して「空気を保持するためのフィールド」と「慣性制御による疑似重力の発生」を行っています。
ただしフィールドの性質上、重複して展開できないので、旅客エリアなどの居住ブロックには疑似重力、航宙船の発着場や貨物搬入口エリアなどの真空に面するエリアには空気保持と使い分けられています。
なので、航宙船に乗って旅をする時は搭乗エリアで無重力になると「ああ、宇宙へ来た!」って思う人が多いみたいですね。まぁCM41F3Cの軌道ステーションは旅客なんて来ないので慣性制御はしてませんでしたけどね……。
そうそう忘れてはいけないアイテムがありました。空気保持フィールドを小型化したものがコスモスーツに取り付けられている酸素供給フィールド発生装置です。普通は装着した人の頭部を覆う小さなフィールドを展開しますが、フィールドのサイズはある程度可変なので誰かが真空中に放り出された!みたいな緊急時には他の人をフィールド内に取り込めるぐらいのサイズになるらしいです。いや、そんな状態には遭遇したくないですよね。私が遭遇するとしたら、十中八九放り出されてるのはトワでしょうし。
ちなみにレゾナンスフィールドが持つ防御効果を戦闘に利用する、携帯可能なバリアのようなもの開発する研究も進められているようです。まぁ、まだ研究が始まったところらしいので「私」が生きている間には実現しないと思いますけどね。
さて、では今回のお話はここまでです。また次回お会いしましょう!




