1章 とある少女の話
この世界では女神族と魔神族が争っていた。そして、その争いの中心とも言える村に一人の少女がいた。そう少女の名前はすみれという。「お姉さま、またここにいたのですね。」そう声をかけてきたのはすみれの妹、りりなだ。りりなとすみれは父親が違った。「姉上、今日は寒いのでお体に障ります。」そう言ったのは、すみれの双子の弟、しゅんだ。りりなとしゅんはすみれにとって、とても大切な家族だ。「そうね。今日はこれくらいにしましょうか。また来るわね、クリスタ」クリスタというのはすみれにとっての唯一の友人だったのだが、クリスタは去年の春に起きた大規模戦争で動かないすみれを庇って死んでしまったのだ。すみれは魔力過多のせいで目が見えず、足を動かすことができないのだ。本来なら魔力過多は、多すぎる魔力のせいで全身剣で刺されるような痛みと、吐き気などの症状しかないのだ。だがすみれは、ほかの魔力過多の人に比べ5倍以上の魔力を持っている。そのせいで、本来の症状のほかに目が見えず、足が動かせないという症状がある。すみれはその症状のせいで、村の人々から煙たがられていた。この世界は女神族と魔神族が争っていて、その中心とも言える村なのだから、戦争なんて日常茶飯事だった。そんな村で目も足も使えないすみれが煙たがられるのは当然の話だった。殺されてもおかしくないのだ。そうされなかったのは...「どこへ行っていたの‼︎」「母さん...」そう母のおかげだ。すみれの母メリサは村のリーダーなのだ。リーダーの子供なので、誰も手が出せなかったわけだ。だが、すみれとメリサはそれほど仲が良くはなかった。「前にも私は言ったわよね?外に出るなと。母のいうことが聞けないの?」「すみません、母さん。ですが...」「ですがじゃないの‼︎いい?これからは外へ出ないで。」「...はい、わかりました。」そう言いメリサはどこかへ行ってしまった。「お姉さま...」「大丈夫よ、りりな。先に戻っているわね。」そう言ってすみれは車椅子を動かし、家へ戻った。「お兄様、なぜお母様はお姉さまにきついのでしょうか。」「俺にもわからないさ。姉上はとても優しい方なのに...」




