表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/14

出会いのフラグはアイテム任せ

朝。

鳥の声がうるさい。目覚め最悪。


「おはよう異世界……って、昨日より寒くね?」


草の上に寝ていた俺は、露に濡れた服でガタガタ震えていた。

自然って、思ったより容赦がない。


「昨日は“異世界ってマジか……”とか感動してたけど、もういい。文明くれ。布団くれ。コンビニとこたつとWi-Fiと人妻を返して」


言うだけ言って、溜め息ひとつ。


「とにかく村! 村を探そう!」


俺の理性が叫ぶ。現状、食料ゼロ。武器ゼロ。寝床草むら。

このままじゃ、村に着く前に餓死か野犬コース。


「……ああ、俺……人妻好きな大学生なだけなんだけどな……」

どんな肩書きだ。


___

移動開始から数時間。

森の奥、草を掻き分けながら進む。


「……あれ? なんか……開けてる?」

視界がぱっと明るくなった。木々の合間に、丸い石畳の広場。


「誰もいない……でも、人工物っぽい……ってか、あれ何?」


広場の中心に、腰くらいの高さの台座があった。

上には──怪しさ全開の、黒い小箱。


「……いやいや、どう見ても罠じゃんこれ。絶対、蓋開けたら煙出てきて爆発するやつだろ」


そう言いつつ、足は止まらない。だって、このまま彷徨っても生き延びる術が何もない。


(……まあ……触るだけ、触ってみるか)


台座の前に立つと、まるでセンサーでもついてたかのように箱がカチリと開いた。


中には、小さなペンダント。丸いガラス玉がぶら下がっている。


「え、なにこれ。超地味」


【あなたは“縁結びの願珠がんじゅ”を手に入れました】


「ッ!?」


脳に直接語りかけてくる系の声が響いた。


「なにこれ脳内アナウンス!? ついに俺にもスキルきた!? ってか“がんじゅ”って何!?」


【説明します。この願珠は、持ち主がこの世界で最初に助けた人に、“好意”を持たれるという効果を持ちます】


「……え、マジで?」


なんかすごいアイテム拾っちゃったかも。


【ただし、“好意”の種類は選べません】


「そこ大事だろ!? 友情とか尊敬とか、“バイトリーダーとして尊敬”とかやめてよ!?」


【持ち主が“好意”の内容に口を挟む権利はありません】


「お前誰だよ!? 神か!? ババアの親戚か!?」


【さようなら】


「無責任すぎるだろ!」



そんなこんなで、ペンダントをポケットに突っ込んだ俺。

少しだけ元気が出た。


(よし……このアイテム、うまく使えばワンチャンある。最初に助けた女の子が美人で、しかも人妻なら最強じゃね?)


フラグの建て方がろくでもない。


…だが現実は、そんなに甘くなかった。


その後、2時間彷徨っても村は見えず。水も食料もナシ。

そして、ついに事件は起きた。


「うおっ!? う、腕がっ!? 服になんか引っか……蜘蛛の巣かよッッッ!!?」


ぬるっと粘る何かに腕を取られ、足元が滑って転倒。


「ぐへっ!! 痛ってぇぇぇ!?」


顔から転び、全身が泥まみれ。草と砂とプライドがぐちゃぐちゃに。


「誰だよ……異世界=憧れの生活とか言い出したやつ……! もう帰りたい! 日本に! 風呂に入って! 給料日にコンビニで贅沢してえぇぇぇ!!」


──そのとき。


木陰の向こうに、小さな影がぬっと現れた。


「……」


「……」


(……あれ? なんか……人? いや、影? 子ども?)


何かが、勢いよく俺を襲いかかる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ