第一章 予習
「神戸」の観光ガイドの一部には、取って付けた感丸出しで「明石」の項目がある。
そこには「明石の観光名所」などという項目は一切無く、その代わりに「明石でのタブー」や何やらの注意書きが色々しつこく書いてある。それを色々書くと面倒なので、要点だけをピックアップする。
・1:玉子焼(別名:明石焼)を間違っても「明石風タコ焼き」などと言ってはいけない。
・2:神戸の植民地(もしくはオマケ)
・3:「明石海峡大橋」に行きたいなら、正確にその名称を伝えなければいけない。
・4:日本標準時子午線を殊更アピールするだけの存在である「明石市立天文科学館」の位置が実はほんの少しズレている。
・5:明石公園にある「時打ち太鼓」を見ても笑ってはいけない。
・6:「全国高等学校軟式野球選手権大会」の決勝戦会場(明石トーカロ球場)のショボさを笑ってはいけない。
特に1つ目は「最大級のタブー」であることを強調するが如く大文字で書かれている。なにせこのタブーを犯せば(内容は書くだけでもおぞましいので中略)「レポート」という名の「反省文」を延々と書かされる羽目になり、後日本当の「タコ焼き」を口するのはおろか、「明石」という二文字に震え上がり、タコの映像を見るだけで気絶したという話を聞いているので、絶対に間違えてはいけない。
あとはそれほど気にしなくてもいい。ただしどこに「大明石主義者」が潜んでいるかわからないので、あまり大きな声で言わない方が身のためであることには変わりないが……。
最初に「取って付けた感丸出し」と言った理由だが、地図を広げて明石市の市域をご覧いただきたい。
南側は明石海峡・瀬戸内海という一面の海。そして東、北側はほとんど神戸市に隣接するという、誰がどう見ても「神戸の一部」と思われても仕方がない地形になっている。(地図をご覧いただいたついでに申し上げると、現在の神戸市垂水区、西区は元々「明石郡」各町村だった←ココは本当)
さて、「明石市」の話に戻そう。
現在の明石市域も一部を除いて旧明石郡各町村の合併の結果成立した市であることは間違いないが、「ある町」だけは絶対に怒らせてはいけない。
その名は「大久保町」。
かつてこの大久保町を題材にした小説があったが、それを抜きにしてもこの町だけは怒らせてはいけない。
仮になにかのはずみでここが分離独立しようものなら、明石市はかつてのベルリンのようになってしまうので、明石市当局も大久保町のご機嫌を伺いながら行政運営を行っているかは……作者ですらわからない。
さて、明石に関する「予習」はこのあたりにして(ここだけで「秋定与太話」一本分書いてるよ)、ボチボチ本題に移ろう。……でないと後ろで満面の邪悪な笑みでこっちを見ている「優しいお兄さん」の持っている金属バットがいつ私に振り下ろされるか分かったものじゃないので……。