第9話: 「冒険者ギルドからの依頼!今度は探索スキル持ちを探せ?」
「ロイの複合魔法もバッチリ使えたし、俺の派遣会社も順調に成長してきたな。」
涼は王都の街を歩きながら、自分の会社が少しずつ形になってきていることに満足していた。人材も充実してきたし、派遣先での実績も上がっている。しかし、どこか満足しきれない部分があるのも事実だ。
「とはいえ、今のままじゃまだ足りない気がするんだよな…派遣会社ってもっといろんな分野に手を広げないとダメだろうし。」
涼は自分自身に問いかけながら、次なる目標を考え始めた。戦闘系、建築、魔法…様々な分野での人材は揃ってきたが、それでもまだ何か足りない。それが何かはまだ掴めていない。
「うーん、何だろう?この足りない感覚…」
そう考えていた矢先、涼の耳に聞き覚えのある声が飛び込んできた。
「おーい!篠原さん!」
振り返ると、そこには冒険者ギルドの受付嬢、リサが手を振って立っていた。彼女はにっこり笑って涼に近づいてきた。
「リサさん、どうしたんですか?」
「実は冒険者ギルドから急ぎの依頼があるんです。篠原さんの派遣会社に協力してほしいって話があって…ちょっと相談に乗ってもらえませんか?」
「急ぎの依頼?何だろう…面白そうだな、話を聞かせてくれ!」
涼は興味津々でリサに促され、ギルドの中へと向かった。
◇◇◇
ギルドに入ると、リサは涼を奥の部屋に案内した。そこにはギルド長らしき男性が座っており、涼を見るなりすぐに頭を下げてきた。
「おお、君が例の人材派遣会社の社長か!助かるよ、実は今、我々は大きな問題を抱えていてね…」
「大きな問題?」
涼は話の内容に興味を引かれたが、ギルド長の深刻そうな表情を見て、ただごとではないことを悟った。
「実は、王国の北東にある古代遺跡が突然発見されてね。そこには貴重な魔法のアイテムが眠っているらしいんだが、問題はその遺跡の中が迷宮のようになっていて、探索が進まないんだ。」
「なるほど、遺跡探索か…」
「うん、それでギルドから冒険者たちを派遣しているんだが、道に迷ったり、罠にかかったりして、なかなか進まないんだ。そこで、君の派遣会社の力を借りたいんだよ。」
「でも、俺のところにはまだ遺跡探索が得意な人材はいないんだよなぁ…」
涼は少し困った顔をしたが、ギルド長はさらに説明を続けた。
「今回の依頼は特殊だ。探索のスキルが必要なんだが、それだけじゃなく、罠を解除する技術や地形を読み解く力も必要だ。君の派遣会社で、そういった人材を探してくれないか?」
「探索スキルか…」
涼は腕を組んで考え込んだ。今までの人材とは違うタイプのスキル持ちが必要だ。探索、罠解除、地形の理解など、冒険者らしいスキルが求められている。
「よし、わかりました。俺が探索スキル持ちを探してきますよ!」
涼はすぐに引き受け、ギルド長と握手を交わした。
「ありがとう!助かるよ、君ならきっと見つけられると信じている!」
◇◇◇
涼はギルドを出て、さっそく探索スキルを持った人材を探し始めた。しかし、探索スキルとなると、どこで探せばいいのか見当がつかない。通常の冒険者ギルドに登録しているような人材とは少し違うだろう。
「やっぱりこういう人材って、あんまり目立たないのかな?隠密系というか…」
涼は街中を歩きながら考え込んでいたが、その時、ふと路地裏から聞き覚えのない声が聞こえてきた。
「おい、そこの兄ちゃん、何か探し物かい?」
振り向くと、そこにはフードを深くかぶった人物が立っていた。黒いマントを纏い、目元だけがちらりと見える。怪しさ満点だが、どこか只者ではない雰囲気を醸し出している。
「え?誰だ君は…?」
「俺か?俺の名はカイル。フリーの冒険者さ。どうやら君、人材を探してるんだろ?俺に何か用があるんじゃないか?」
涼は驚きつつも、興味を持った。
「おお、実はそうなんだ。探索スキルを持った人材を探しててさ、遺跡探索の依頼があるんだよ。君はその手のスキルを持ってたりするのか?」
カイルはにやりと笑って、涼に近づいた。
「探索スキルなら俺の得意分野だ。古代遺跡の探索、罠解除、地形の理解…どれも俺がこなしてきた仕事さ。遺跡なんて何度も潜ってきたからな。」
「本当に!?それなら、君にぴったりの依頼があるんだ。どうだ、俺の派遣会社に入って、そのスキルを活かしてみないか?」
カイルは少し考え込んだ後、頷いた。
「面白そうだな。派遣会社ってのは初めて聞いたが、やってみる価値はありそうだ。俺が役に立てるなら、協力しよう。」
「やった!ありがとう、カイル!」
こうして、涼は探索スキルを持つ冒険者カイルを仲間に加えることに成功した。カイルのスキルなら、ギルドの依頼に応えることができるはずだ。
◇◇◇
数日後、カイルを連れて再び冒険者ギルドに戻った涼は、ギルド長に報告した。
「ギルド長、探索スキル持ちを見つけてきましたよ!彼の名はカイル。遺跡探索の経験も豊富です。」
カイルは静かにギルド長に一礼した。ギルド長は驚いた様子で彼を見つめていた。
「君がカイルか…噂は聞いている。確かに君ならこの依頼に適任だろう。」
カイルはにやりと笑いながら答えた。
「まあ、俺に任せておけ。遺跡の迷宮なんて、俺にとっては庭みたいなもんだ。」
「頼もしい言葉だ。さあ、これで我々の探索も成功間違いなしだな!」
涼はカイルの自信に満ちた言葉を聞いて、ほっと安心した。これでギルドの依頼も無事に進められるだろう。探索スキルを持つカイルが加わったことで、涼の派遣会社はさらに力を増していく。
「さて、次はどんな依頼が舞い込んでくるかな…」
涼は次なる挑戦に胸を膨らませながら、新たな冒険の準備を始めるのだった。