第6話: 「騎士団の試練!派遣されたスキル持ちとモンスター討伐作戦」
「よし、次は騎士団の強化だ。ミラの『モンスター感知』スキルでどれだけ役に立てるか…」
涼は自分の派遣会社に新たに加わったミラと共に、騎士団のレオン隊長が待つ訓練場に向かっていた。ミラのスキル「モンスター感知」は、モンスターの気配を察知し、接近を事前に知らせる能力だ。これが騎士団のモンスター討伐や警備業務にどれだけ役立つかを見極めるために、彼女を派遣することにしたのだ。
「でもさ、モンスター討伐って…実際どんな感じなんだろうな。俺、戦闘系のスキルゼロだし、派遣するのはいいけど、俺自身が役に立つ気が全然しないんだよな。」
涼は心の中でため息をつきながらも、前を歩くミラを見て少し安心した。彼女は静かで控えめな性格だが、そのスキルは異世界でも非常に価値のあるものだ。
「まあ、ミラがいるし、何とかなるだろう…とにかく実績を作って、俺の派遣会社の評判を上げなきゃな。」
◇◇◇
訓練場に到着すると、レオン隊長が厳しい表情で彼らを迎えた。周囲には騎士団のメンバーが集まり、これから始まる討伐作戦の準備が進められている。
「お前が言っていたスキル持ちの冒険者というのは彼女か?」
レオンは涼とミラを交互に見て、やや不安そうな顔をしている。
「そうだよ、彼女がミラ。彼女のスキル『モンスター感知』は、モンスターの接近を事前に察知できるんだ。これなら、討伐作戦ももっと効率的に進められるはずさ。」
レオンはしばらく黙ってミラを見つめていたが、やがて真剣な顔でうなずいた。
「なるほど、確かにそのスキルは我々にとって重要だ。だが、実際にどれほど役に立つかを見せてもらわないとな。」
「もちろん!ミラ、準備はいいか?」
涼がミラに声をかけると、彼女は静かに頷いた。
「はい、大丈夫です。いつでも感知できます。」
ミラは両手を前にかざし、集中し始めた。彼女の周りに小さな光の粒が浮かび上がり、まるで風が吹き抜けるように空気が揺れ動いた。
「おお…これが『モンスター感知』か。」
涼は思わず感嘆の声を漏らした。ミラの感知能力が発動すると、周囲に広がる魔力の気配を感じ、まるでレーダーのようにモンスターの位置を把握できるようになるらしい。
「ミラ、何か感じるか?」
ミラは目を閉じ、集中を深めた。
「東の森の方角に…います。3体のモンスターがゆっくりこちらに向かってきています。距離は…おそらく500メートルほど先です。」
「すげえ、もうそんなに詳細にわかるのか!」
レオンも目を丸くした。
「…本当に感知できるのか。今まで我々はモンスターに不意打ちを食らうことが多かったが、これなら事前に対策ができそうだな。」
涼はほっと一息ついた。「さすがミラだ。これなら騎士団も安心して討伐作戦を進められるぞ。」
レオンはすぐに騎士団のメンバーに指示を飛ばした。
「全員、準備しろ!ミラが感知したモンスターの討伐作戦を開始する。彼女の指示に従って進行方向を確認し、作戦を展開する!」
騎士団のメンバーたちはすぐに動き出し、作戦の準備が整った。涼とミラも騎士団と共に森の方へ向かうことになったが、涼は少し緊張していた。
「ちょ、俺って戦闘のサポートとかどうすればいいんだ?実は何もできないんだけど…」
ミラが涼に目を向け、穏やかに微笑んだ。
「心配しないでください。涼さんの役割は、騎士団が混乱しないように指示をまとめることです。私がモンスターの位置を感知し続けるので、それを伝える役割です。」
「なるほど…そういうことか。じゃあ、俺もそれなりに役に立てそうだな。」
**◇◇◇**
しばらく森の中を進むと、ミラが再び感知を開始した。彼女は鋭い目つきで遠くを見つめ、手を前にかざした。
「さらに接近しています。あと100メートル…もうすぐ見えるはずです。」
「よし、全員、準備だ!モンスターが現れたら、一斉に攻撃を仕掛ける!」
レオンの指示で、騎士団のメンバーが武器を構えた。その瞬間、木々の間から巨大なモンスターが姿を現した。
「出た!ゴブリンだ!」
涼はゴブリンの姿を見て、思わず後ずさりした。彼らは2メートル以上の体格を持つ緑色の怪物で、鋭い牙をむき出しにしながらこちらに向かってきた。
「ひ、ひぇえ…!」
「涼さん、落ち着いてください!」
ミラが涼に声をかけ、冷静にモンスターの動きを見続けていた。
「ゴブリンは3体…それぞれ別の方向に分かれて攻撃を仕掛けてきます!」
「全員、ミラの指示に従え!攻撃開始!」
騎士団のメンバーが一斉に剣を抜き、ゴブリンたちに突撃した。レオンを筆頭に、騎士団は見事な連携を見せ、ゴブリンたちを次々と倒していく。
「すげぇ…本当にあっという間に討伐したぞ!」
涼は感動しながらも、自分の役割を再確認した。ミラの感知スキルがあったからこそ、騎士団は余裕を持って戦えたのだ。
◇◇◇
討伐が終わると、レオンは涼とミラに近づいてきた。
「お前たちのおかげで、今回の討伐は非常にスムーズに進んだ。特にミラのスキルには驚かされた。まさか、ここまで正確にモンスターの動きを感知できるとはな。」
ミラは少し照れたように頬を赤くしながら答えた。
「ありがとうございます。私のスキルが役に立ててよかったです。」
「いや、本当に助かった。今後もぜひ我々の作戦に協力してほしい。」
「もちろんです!ミラは俺の派遣会社の一員ですから、いつでもサポートしますよ!」
涼は満面の笑みを浮かべながら答えた。これで騎士団との信頼関係も築け、派遣会社の評判も上がるだろう。
◇◇◇
こうして、涼の「異世界人材派遣会社」はまた一歩、成長することができた。ミラのスキルは騎士団にとって欠かせない戦力となり、彼女の感知能力を活かした討伐作戦は今後も続くことになるだろう。
「さて、
これで騎士団の仕事は順調だし、次はどこに派遣すればいいかな…」
涼は心の中で次の計画を考えながら、ミラと共に王都へと戻っていった。
「でも、やっぱりこれって冒険というより、ビジネスだよな…まさに内政改革コンサルタントか…」
涼はまた一人で突っ込みを入れつつ、新たなスキル持ちを探す旅に出ることを決意したのだった。