第5話: 「スキル持ち求む!王都の騎士団で戦力強化計画?」
「さて、これで何とか資金も確保できたし、次はどうやって人材を増やしていくかだな…」
涼は、ゴードンと協力して商人ギルドの大会で勝利し、資金問題を解決した後、また新たな課題に取り組むことにした。人材派遣会社を異世界で成功させるには、スキルを持った優秀な人材をもっと集める必要がある。しかし、問題は「どうやって?」という部分だ。
「うーん、ギルドで探すのもいいけど、もっと大規模に募集をかけたいよなぁ。求人広告とか出せればいいんだけど、この世界にそんなものはないし…どうしたもんか。」
涼は頭を抱えながら、王都の街を歩いていた。異世界の景色にはだいぶ慣れてきたものの、現実世界のビジネス手法がそのまま使えるわけでもない。スキルを持つ人材は希少で、なかなか見つからないのが現状だ。
「よし、まずは人材を集めるためにもう少し周りをリサーチしてみるか。」
◇◇◇
しばらく王都の大通りを歩いていると、突然、後ろから賑やかな足音が聞こえてきた。振り返ると、そこには騎士団の一団が行進している。彼らは立派な鎧をまとい、鋭い目つきで周囲を見渡しながら進んでいる。
「おお、これは騎士団か。やっぱり異世界にはこういう勇者っぽい奴らがいるよな。カッコいいけど…あ、待てよ。」
涼の頭に、ある考えが浮かんだ。
「そうだ、騎士団ってどうなんだろう?彼らの中にスキル持ちの人材がいたりしないかな?それに、もしかして彼らの組織も問題を抱えてるかもしれない…」
涼は思い切って、騎士団の隊長らしき人物に声をかけてみることにした。近くにいたのは、厳めしい顔をした中年の男性。名前は【レオン】というらしい。レオンは涼の声に気づき、立ち止まった。
「貴様、何の用だ?」
「いや、俺は人材派遣会社を立ち上げた篠原涼って言うんだ。騎士団にスキルを持った人材がいないかと思って声をかけたんだけど…」
「人材派遣会社?何だそれは?」
レオンは眉をひそめた。涼は一瞬どう説明しようか悩んだが、すぐに言葉を選び直した。
「要するに、スキルを持った人材を探して、必要としている場所に派遣する仕事だよ。君たちのような騎士団にも、特別なスキルを持った人間がいれば役立つだろうと思ってさ。」
レオンは腕を組み、しばらく涼を観察していたが、やがてゆっくりと口を開いた。
「ふむ…面白い話ではあるが、騎士団に外部の人間を加えるのは簡単なことではない。我々は厳しい規律と訓練を重んじる組織だ。だが…」
「だが?」
「実は、我々にも悩みがある。王国の領土は広く、今や騎士団の数も戦力も足りない状況だ。特に最近はモンスターの出現が頻繁で、通常の警備業務では追いつかない。」
「なるほど、戦力が不足してるってわけか。じゃあ、もし君たちの仕事をサポートできるスキル持ちがいれば、手伝うことは可能かな?」
レオンは考え込むようにうなずいた。
「…そうだな。もし、お前が言う通り、我々に必要なスキルを持った人材がいれば、歓迎するだろう。だが、その人材が見つかるかどうかは別の話だ。」
涼はニヤリと笑った。
「任せてくれよ。俺の仕事はそういう人材を見つけ出すことだからな!」
◇◇◇
騎士団が抱える問題を聞いた涼は、さっそくスキル持ちの人材を探し始めた。モンスター対策や警備業務をサポートできるようなスキルを持つ冒険者が必要だが、それがすぐに見つかるかどうかは不明だった。
「まずは、騎士団の業務をサポートできるスキルって何だろう?戦闘系のスキル持ちはもちろんだが、あとは…何かもっと実用的なスキルがあればいいんだけど。」
涼は考えながら、冒険者ギルドに向かった。再びギルドでの求人活動を始めるつもりだった。
◇◇◇
ギルドに入ると、いつものように賑やかな雰囲気が漂っていた。涼はまず受付嬢に声をかけ、相談することにした。
「また来たよ。今回はモンスター対策とか警備業務をサポートできるスキル持ちを探してるんだけど、何か心当たりある?」
受付嬢は少し考え込んだ。
「そうですね…実は最近、少し変わったスキルを持つ冒険者が登録したんです。彼女は『モンスター感知』というスキルを持っていて、モンスターの接近をいち早く察知できるんです。」
「モンスター感知!?それって、まさに今の騎士団が必要としてるスキルじゃないか!」
涼は興奮して、その冒険者に会うことに決めた。
◇◇◇
涼がギルドの奥に案内されると、そこには落ち着いた雰囲気を持つ女性がいた。彼女は少し控えめな表情をしており、長い黒髪が印象的だった。名前は【ミラ】。
「こんにちは、俺は篠原涼。異世界で人材派遣会社を立ち上げてて、君のスキルがすごいって聞いてさ。」
ミラは少し驚いたように涼を見つめた。
「人材派遣…?私が…?」
「そう、君のスキル『モンスター感知』は、今の騎士団にとって非常に重要な役割を果たせると思うんだ。モンスターの動きを事前に察知できれば、彼らの対策ももっと効率的に行える。どうだろう、一緒にやってみないか?」
ミラはしばらく黙っていたが、やがて涼をじっと見つめた。
「…確かに、私のスキルは特別です。でも、今まで誰も私を必要としてくれなかった。それに、私は戦う力がないから、ただ感知するだけでは役に立てるかわからない。」
涼は真剣な顔で答えた。
「君のスキルは十分価値があるさ。戦うのは騎士団の仕事だ。君は彼らをサポートするだけでいい。俺が責任を持って派遣先でもサポートするから、心配はいらない!」
ミラは少し考えた後、涼の言葉に信頼を寄せたようにうなずいた。
「…わかった。あなたを信じてみるわ。」
「よし!これで決まりだ!」
涼は喜びの声を上げ、ミラを派遣会社の一員として迎えることになった。
◇◇◇
こうして、涼はまた一人、有能なスキル持ちを手に入れた。彼女を騎士団に派遣し、モンスター対策の最
前線で活躍させることができるだろう。少しずつではあるが、涼の「異世界人材派遣会社」は確実に成長している。
「さて、これで騎士団も強化できるし、俺の派遣会社も順調に拡大中…!」
涼は心の中でガッツポーズを決めながら、次なる挑戦に向けて歩き出すのだった。
「しかし、やっぱりこれって…勇者の冒険じゃなくて、ただの内政改革コンサルだよな…」
涼は一人で突っ込みを入れつつ、また新たな人材を求めて旅を続けるのだった。