第3話: 「次なるスキル持ちを求めて!派遣会社の戦力を増やせ!」
「よし、なんとか派遣会社の第一歩を踏み出したな!」
涼は自分に言い聞かせるように一人でつぶやいた。彼が立ち上げた「異世界人材派遣会社」は、ようやく初めての人材――『建築設計』と『耐久性向上の魔法』を持つ謎のぼんやり系冒険者、リックを採用した。彼を王国の修繕プロジェクトに派遣することに成功し、涼はひとまずホッとしていた。
しかし、涼はすぐに次の課題を意識することになった。
「リック一人じゃ、とてもじゃないけどこの国全体を立て直すには人手が足りないよな…。もっとスキル持ちを集めなきゃ。となると、次はどんな人材が必要かな?」
現在のエルトール王国は、国全体で深刻な問題を抱えている。建物の修繕が進まないだけでなく、農業や経済も停滞している状況。涼はそれを改善するために、次の人材を集める計画を立て始めた。
「うーん、次は農業スキル持ちとかかな?国が食糧危機に陥ってたら、内政なんて回らないし。」
こうして、涼は次なる人材を探すため、王都の街中を歩き回ることにした。だが、さすがにスキル持ちの冒険者を簡単に見つけられるわけではない。
「うーん、さすがに街を適当に歩いててスキル持ちに出会うなんて奇跡はないか…やっぱり、またギルドに行ってみるべきかな?」
涼は悩みつつも、再び冒険者ギルドに向かうことにした。ギルドは冒険者たちが集まり、クエストをこなして生計を立てる場だ。涼にとっては、スキル持ちを探すのに最適な場所のように思えた。
◇◇◇
ギルドの建物に到着すると、今日も多くの冒険者たちがクエストボードの前で真剣に相談していた。涼は軽く周囲を見渡して、スキルを持つ人材を探すため、まずは受付の女性に声をかけることにした。
「こんにちは、また来ちゃいました。今日は新しいスキル持ちを探してるんですけど…誰か心当たりありますか?」
受付嬢は涼の顔を見てにっこりと笑った。「お帰りなさい!またスキル持ちの冒険者を探しているんですね。実はちょうど…ちょっと変わった人ですが、興味があれば紹介しますよ?」
「お、また変わった人?前回のリックもなかなか個性的だったけど、今回はどんな人だろうな。」
涼は内心ワクワクしつつ、受付嬢の案内を待った。
「彼女はですね…『植物操作の魔法』を使える冒険者なんです。植物を自由に操って農作物を育てたり、木を使った防御壁を作ったりできるんですよ。ただ…ちょっと気難しいところがあって、他の冒険者とうまくいかないことが多くて…」
「お、農業系スキル持ち!?それは俺の求めてた人材かもしれない!でも、気難しいって…まあ、やってみるしかないか。」
涼は興味をそそられ、さっそくその冒険者に会ってみることにした。
◇◇◇
ギルドの裏庭に案内されると、そこには一人の女性が黙々と作業をしていた。彼女は長い緑色の髪を持ち、背中には小さな花の装飾がついたローブを羽織っている。彼女の周りには、なんと植物がまるで生き物のように動いていた。涼は目を見張った。
「おいおい…マジで植物操ってるぞ!すごいな…。」
彼女は涼に気づくと、やや冷たい目つきでこちらを見た。
「何の用?私は忙しいの。」
「え、あ…俺は篠原涼。実は異世界で人材派遣会社を立ち上げたばかりで、スキル持ちの人材を探してるんだ。君の植物操作のスキルがすごいって聞いてさ、もしよかったら、俺の派遣会社で一緒に働いてくれないか?」
彼女は少し警戒した様子で涼を見つめた。
「派遣会社?スキルを持った人材を派遣するってこと?」
「そう!この国は今、人材不足で困ってるんだ。それを解決するために、君のスキルを必要としてる場所がたくさんあるはずだよ!」
彼女は腕を組み、しばらく考え込んだ後、ようやく口を開いた。
「…私は名前をアリアと言う。確かに、この国は農作物の生産が遅れていて、食糧不足が深刻。でも…正直、今まで誰も私の能力を活かそうとはしなかったわ。みんな私のやり方が気に入らないって、いつも文句ばかり言うのよ。」
涼は彼女の話に真剣に耳を傾けた。
「それなら、俺が君のスキルを活かせるようにサポートするよ。派遣先でも、俺がちゃんとサポートするから安心してくれ。アリアのスキルを最大限に発揮できる環境を用意するからさ!」
アリアは少し驚いたような顔をし、しばらく涼を見つめていたが、やがてふっと微笑んだ。
「…わかったわ。あなたがそこまで言うなら、一度信じてみる。あなたの派遣会社で働いてみるわ。」
「よっしゃ!ありがとう、アリア!」
涼は拳を握りしめ、喜びを噛みしめた。これで、次の有望な人材を確保できた。アリアの植物操作のスキルは、王国の農業や防御体制の強化に大いに役立つはずだ。
「さて、これで人材が増えたな。リックとアリアを使って、次は農業の改革に取り組むか…よし、派遣会社も順調に軌道に乗り始めたぞ!」
◇◇◇
こうして、涼は二人目のスキル持ち、アリアを採用し、さらに派遣会社を拡大させることに成功した。次は彼女をどの現場に派遣し、どんな課題を解決するのか…涼の冒険は、まだ始まったばかりだ。
「しかし、こうして異世界でビジネス展開するなんて…やっぱりこれ、勇者じゃなくてコンサルタントだよな…」
涼はまた一人で突っ込みを入れながら、次なる挑戦に向けて動き出すのだった。