第26話: 「大規模案件の波!これが派遣業界の最前線だ!」
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「涼さん!これはただの依頼じゃない…まさに大規模案件だぞ!」
支部の会議室に集まった社員たちの前で、カイルが興奮気味に大声を張り上げた。いつもなら大げさに話すカイルだが、今回ばかりは本当に事態が大きい。
「王国全土に関わるプロジェクトだなんて、冗談じゃないわね…」
アリアもその依頼書を眺めながら、驚きと緊張が入り混じった表情を浮かべていた。
依頼内容は、王国全土を巻き込んだ大型インフラ整備プロジェクトの支援。あらゆる地域に派遣人材を送り、現地での運営をサポートするというものだった。これまでに経験したことのないスケールの依頼であり、派遣される人材の数も多い。涼は依頼書をじっと見つめ、少しずつプレッシャーが押し寄せてくるのを感じていた。
「…確かに規模がでかいな。王国全土を巻き込むプロジェクトって、俺たちにとっては最大の挑戦だ。でも、これは大きなチャンスでもあるんだ。」
涼は深呼吸をし、心を落ち着けるように自分に言い聞かせた。確かに大規模な案件だが、ここで成功すれば、会社の信頼と実績は格段に上がる。涼の中に、挑戦を楽しむ気持ちが芽生え始めていた。
「俺たちはこれまで、どんな依頼にも応えてきた。今回も変わらない。全社員をフル活用して、このプロジェクトを成功させよう。」
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◇◇◇
会議室の雰囲気は一変し、真剣な空気が漂い始めた。涼は即座にプロジェクトの概要をチームに共有し、対応するための戦略を練り始めた。
「まずは各支部との連携が鍵だ。本社と支部が一丸となって、全国に派遣する人材をスムーズに送り出すための仕組みを整えよう。アリア、各支部に連絡を取って、すぐに会議を設定してくれ。」
アリアは涼の指示を受け、手早く通信クリスタルを使って各支部に連絡を取り始めた。涼は続けて他のメンバーに指示を出した。
「カイル、グラム。君たちには、実際に派遣される人材のトレーニングを担当してもらう。今回は短期間で大勢の人を育てなければならないから、いつものようにじっくりやる時間はないけど、要点を押さえたトレーニングを頼むぞ。」
「任せとけ!大規模案件でも俺たちのやり方は変わらない。全員、バリバリ鍛えてやるぜ!」
カイルがニヤリと笑い、腕を叩く音が響く。グラムも静かに頷き、拳を握り締めていた。
「わかった。短期間でも、成果を出す。」
二人の信頼できるパートナーに任せたことで、涼は少し安心したが、まだまだやることは山積みだ。今回のプロジェクトでは、派遣される人材のスキルや特性に合わせて、適切な配置を行わなければならない。涼はそれぞれの人材の得意分野やスキルを確認し、どの地域に派遣するのが最も効果的かを考え始めた。
「レオンには、警備が手薄な地域での治安維持を任せよう。彼の『暗殺術』は、抑止力としても役立つはずだ。依頼主に安心感を与えることができる。」
涼がレオンの役割を考えていると、レオンはいつもの無表情で淡々と応じた。
「了解した。俺は誰にも気付かれないように任務を遂行する。」
「いや、そこまで目立たない必要はないからな…。もっと穏やかにやってくれよ。」
レオンの不気味なスキルに、涼は少し引き気味だったが、彼の有能さには疑いの余地はない。適材適所で役割を割り振りながら、涼はチーム全体がどう動くかをじっくりと見据えていた。
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◇◇◇
プロジェクト開始の数日後、涼たちは全社員を動員し、王国各地へと人材を派遣していった。涼は本社で全体を統括しつつ、各支部との連携を密に取り、進行状況を逐一確認していた。
「こっちは順調に進んでいる。派遣された社員たちはそれぞれの役割をしっかり果たしているようだな。」
涼は報告書に目を通しながら、ほっとした表情を浮かべた。特に、カイルとグラムが担当したトレーニングのおかげで、派遣された社員たちのスキルは磨かれ、依頼主からの評価も上々だった。
「王国全土のプロジェクトなんて、最初はどうなるかと思ったけど、なんだかんだで順調に進んでるな。」
アリアも涼の隣で報告書を見つめながら、軽い口調で話しかけてきた。
「涼、やっぱりあなたのチームワークと計画性があったからこそ、ここまでスムーズに進んでいるのよ。緊張感はあったけど、みんなそれぞれの役割をしっかり果たしているわ。」
涼はアリアの言葉に照れながらも、心の中では少しだけ自信を持つことができた。
「まあ、まだ油断はできないけどな。最後まで気を抜かずに進めよう。」
涼は気を引き締め直し、引き続きプロジェクトの全体管理に取り掛かった。
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プロジェクトの最終段階に差し掛かる頃、派遣された社員たちはそれぞれの地域での仕事を無事に終え、次々と報告が本社に届き始めた。
「涼さん!こっちの地域でも無事にインフラ整備が完了しました!依頼主も大満足です!」
「他の地域でもトラブルなく完了したみたいだ!」
社員たちからの朗報が次々と届く中、涼はようやく胸を撫で下ろした。大規模なプロジェクトにもかかわらず、チーム全員が一丸となって取り組んだ結果、見事に成功を収めたのだ。
「よし、これで王国全土のプロジェクトも無事に完了だな。みんな、本当によくやってくれた!」
涼は社員たちを労いながら、大きな達成感に包まれていた。
「これで派遣業界でも俺たちの存在感がさらに増したはずだ。次にどんな大きな依頼が来ても、対応できる自信がついた。」
涼が笑顔で語ると、カイルが豪快に笑いながら肩を叩いてきた。
「おいおい、涼。これぐらいの仕事なら、俺たちなら朝飯前だぜ!次もでっかい仕事を頼んでくれよな!」
グラムも静かに笑いながら、涼に一言かけた。
「お前なら、どんな依頼でも成功させられる。」
涼は仲間たちの言葉に励まされ、ますます会社としての成長に期待を寄せた。大規模案件を乗り越えたことで、涼たちの絆はさらに深まり、派遣会社としての信頼も盤石なもの
となった。
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