第23話: 「派遣業界の競争激化!ライバル会社登場!?」
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「うーん、どうも最近依頼の数が減ってきてる気がするな…」
涼は、リュエール支部に寄せられる依頼数が少しずつ減少していることに気付き、書類を見ながら首をかしげていた。支部の開設当初は、順調に依頼が舞い込んでいたが、ここ数日、妙に静かだったのだ。
「もしかして、何かあったのかな…?それとも、依頼主のニーズが変わったのか…?」
涼が悩んでいると、アリアが彼の肩越しに書類を覗き込み、軽い調子で話しかけてきた。
「涼、悩んでも仕方ないわよ。現場に出て実際に状況を確認しないと、本当の理由なんて分からないわ。」
「そうだな…でも、なんだか嫌な予感がするんだよな…」
涼がため息をついていると、突然ドアが勢いよく開き、カイルが駆け込んできた。
「おい、涼!大変なことになってるぞ!」
「えっ、また何かトラブルか…?」
涼は慌てて立ち上がり、カイルの顔を見た。カイルは少し息を切らせながら、言葉を続けた。
「どうやら、新しい派遣会社がこの辺りに進出してきたらしいんだ。しかも、かなり aggressive(積極的)なやり方で、俺たちの依頼主を奪っていってるみたいだぞ!」
「なに!?ライバル会社!?それで依頼が減ってきたってことか…」
涼はカイルの報告に驚きながらも、すぐに冷静さを取り戻した。
「なるほど…。それで依頼が減っていたわけか。ちょっと厄介な状況だな。どんな会社か調べないと。」
涼は机に置かれた資料をパタパタと閉じ、すぐにアリアとカイルに指示を出した。
「アリア、ライバル会社について情報を集めてくれ。どういう会社で、どんなサービスを提供しているのか知る必要がある。それによって、こっちも対策を考えるんだ。」
アリアは涼の指示に頷きながら、資料をまとめ始めた。
「分かったわ。すぐに調べてみる。」
カイルは涼に向き直り、意気揚々と声を上げた。
「俺も何か手伝おうか?スパイ活動とか?まぁ、やりすぎない範囲で、だけどな!」
涼は苦笑いを浮かべながら、カイルの提案を軽くいなした。
「いや、スパイは必要ないけど、警戒はしておいてくれ。彼らの動きをチェックするくらいなら大丈夫だろう。」
「任せとけ!」
カイルはニヤリと笑いながら出て行き、涼は再びアリアの方を向いた。
「さて、どうやら本格的に競争が始まったみたいだな…」
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アリアが持ち帰ってきた情報によると、ライバル会社は「ラウンドテーブル社」と呼ばれていた。設立されたばかりだが、異世界の各地に進出しており、優れたスキルを持つ人材を次々にスカウトしていた。
「どうやら、彼らは『実績重視』のスタイルで、人材の質に重点を置いているみたいね。経験豊富なスキル持ちを集めて、短期間で目覚ましい成果を上げてるって話よ。」
アリアは報告を終え、涼に考える時間を与えた。
「ふむ、実績重視か…そりゃあ強力だな。でも、だからこそ問題もあるはずだ。経験豊富な人材を多く抱えるってことは、その分、報酬も高くなるだろうし、長期的な雇用の安定性が問題になるかもしれない。」
涼は冷静に分析しながら、ラウンドテーブル社のやり方に疑問を抱いていた。短期間で成果を上げることは魅力的だが、彼自身はそれだけで派遣業界を支えるのは難しいと感じていた。
「俺たちは、もっと地道に信頼を築くスタイルでやってきた。現場の声を大切にして、依頼主と長く付き合っていけるような人材を提供してきたんだ。それが俺たちの強みだと思ってる。だけど…それだけじゃライバルに太刀打ちできないのかもしれないな。」
涼が悩んでいると、アリアがふと笑顔で声をかけた。
「涼、あなたは何を大事にしたいの?ライバル会社が何をしているかも大切だけど、あなた自身の信念があるでしょう?」
「俺の信念…か。」
涼は一瞬考え込んだ後、はっと気付いたように顔を上げた。
「そうだ、俺は『人と人とのつながり』を大事にしたいんだ。経験だけじゃなくて、誠実さや、地道に頑張る力を持っている人材を育てて、依頼主との長期的な信頼関係を築いていく。それが俺たちの強みなんだ。」
アリアは満足そうに微笑みながら頷いた。
「それが涼の良さよ。経験やスキルだけじゃなく、人間味のある経営が涼の会社を支えている。だからこそ、もっとその強みを活かした戦略を考えればいいんじゃない?」
涼はアリアの言葉に勇気をもらい、再び前を向いた。
「そうだな!俺たちは人材の『質』だけじゃなく、『信頼』も売りにしていこう。それに、依頼主とのつながりを強化するためのサービスも考えてみるか。」
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◇◇◇
その後、涼は早速新しい戦略を練り始めた。
「まず、依頼主と人材のマッチングをもっと丁寧に行おう。スキルや経験だけでなく、依頼主のニーズに合わせた人材をじっくり選定して、長期的な関係を築けるようにする。加えて、派遣する人材には、定期的なスキルアップの機会を提供して、成長し続けてもらう。」
アリアが軽く笑いながら続けた。
「それに、派遣された人材が依頼主と仲良くなるためのちょっとした『コミュニケーション講座』なんかも開いてみる?依頼主との距離を縮めるには、そういった柔らかいスキルも重要よ。」
涼はそのアイデアに乗り、さらに具体的なプランを練り上げた。
「いいアイデアだ!技術だけじゃなく、人間関係を円滑にするスキルも強化することで、依頼主にとって本当に頼りになる人材を提供できるようになる。それに、成長したいという意欲のある人材が集まってくれれば、長期的な成功も見込める。」
涼は自分たちの強みを再確認し、ライバル会社に対抗するための方向性をしっかりと見定めた。ラウンドテーブル社のように、即戦力の人材を短期間で派遣するのではなく、長期的な関係を築ける人材育成と、信頼を基盤としたサービスを展開することに決めたのだ。
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◇◇◇
数日後、涼たちの新しいサービスがリュエール支部でスタートした。依頼主からの反応も上々で、特にスキルアップの機会やコミュニケーション講座は派遣される人材たちにとって大
好評だった。
「おい、涼!依頼主たちが喜んでるぞ!スキルアップもできるし、依頼主と仲良くなるためのコツも学べるってんで、評判は上々だ!」
カイルが嬉しそうに報告すると、涼はホッとした表情を浮かべた。
「よかった…。俺たちのやり方が間違ってなかったってことだな。」
アリアも笑顔で涼に賛同した。
「そうね。ライバルに振り回されるんじゃなく、涼自身の信念を貫いた結果が出たわね。」
涼は深く頷き、改めて自分たちの方針に自信を持った。
「俺たちは俺たちのやり方で、派遣業界に立ち向かっていく。そして、信頼を大切にしながら成長していく。それが一番大事なことだ。」
こうして、涼たちはライバル会社との競争に直面しながらも、自社の強みを再確認し、さらなる成長を遂げていく。派遣業界は激しい競争の時代に突入したが、涼たちの絆はますます強固なものとなり、新たな挑戦に向けて歩みを進めるのだった。
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