第22話: 「支部VS本社!?意見対立から学ぶ経営の難しさ」
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リュエール支部の初仕事が成功を収め、涼たちはひとまず安心していた。派遣されたスタッフの活躍もあり、依頼主からの信頼を得ることができた。しかし、次の課題はすぐにやってきた。支部の運営が順調に進む中で、予期せぬ問題が顔を出し始めたのだ。
「支部の運営はうまくいってるんだけど…どうも本社と意見が合わないんだよな…」
涼は事務所でため息をつきながら、手元の書類を見つめていた。本社から送られてきた指示書には、支部の運営に関する細かい規則やルールがびっしりと書かれているが、現場の実情とはどうも合わない部分が多い。
「うーん、リュエールの現場のことをちゃんと理解してくれてない感じがするな…。俺たちはこの地域に特化した支援をしたいのに、本社はもっと標準化を進めろって言ってくるし…。」
涼が悩んでいると、アリアが隣でコーヒーを淹れてくれながら口を開いた。
「涼、本社は会社全体の統一感を保ちたいんだと思うわ。でも、現場のことを知らないで一方的に指示を出されるのは難しいわね。」
アリアは静かに涼に寄り添いながら、優しく語りかけた。彼女は常に涼を支えてくれる存在だが、今回ばかりは彼も決断に迷っていた。
「支部の現場を見ているのは俺たちだ。だからこそ、現場の声を無視するわけにはいかない。でも、本社からの指示を完全に無視することもできない…」
涼は自分の中で葛藤していた。本社の意向を尊重しつつ、支部の現場のニーズにも応えるためには、どのようにバランスを取るべきか。彼は考え込んでいると、カイルとグラムが部屋に入ってきた。
「おい、涼!また本社から指示書が届いたぞ。今回は何だ?また無茶なことを言ってきてるのか?」
カイルが封筒を振りながら笑いかけるが、涼は真剣な表情を崩さずに答えた。
「そうなんだよ。本社はもっと支部の業務を標準化しろって言ってるけど、リュエールみたいな地方じゃ、それが現実的に難しいんだ。俺たちはこの地域の特性に合った運営をしていきたいんだけど、どうもその辺りがうまく伝わってないみたいで…。」
グラムが静かに頷きながら口を開いた。
「現場の声を無視して、ただルールを押し付けるだけでは、うまくいくはずがない。俺たちはこの土地の人々と信頼関係を築いてきた。その信頼を壊すわけにはいかない。」
涼はグラムの言葉に賛同しながらも、内心はますます混乱していた。
「確かに、現場の声は大事だ。でも、本社の指示を無視するわけにもいかないし…。」
アリアはそんな涼を見て、静かに微笑んだ。
「涼、私はあなたがいつも現場のことを大切にしてきたことを知ってるわ。だからこそ、今はその現場の声を優先してもいいんじゃない?本社には、私たちの現実をきちんと伝えて、柔軟に対応してもらえるように話を進めればいいのよ。」
涼はアリアの言葉に少しほっとしたが、問題はまだ解決していない。彼は決断を迫られていた。どちらを優先するべきか、どのように調整すべきか。
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次の日、涼は本社の幹部との会議をリュエール支部で開くことを決めた。彼は現場の状況を直接見てもらい、支部の方針について話し合うことにしたのだ。アリア、カイル、グラム、そして支部のスタッフ全員が集まり、会議が始まった。
「本社としては、各支部の運営方針を統一したいと考えています。統一したルールがあれば、全体の効率も上がり、結果的に業務もスムーズに進むはずです。」
本社の幹部がそう言うと、涼は冷静に答えた。
「確かに、統一したルールがあると効率的に見えるかもしれません。でも、リュエール支部ではこの地域特有の事情があります。例えば、自然豊かな環境に合わせたスキル持ちの人材が必要だったり、住民たちと信頼関係を築くための柔軟な対応が求められています。標準化だけでは解決できない現場のニーズがあるんです。」
涼の言葉に、支部のスタッフたちも次々と同意の声を上げた。
「そうです!例えば、最近の護衛依頼も、地元の協力があって初めて成功したんです。本社のルールに従ってただのマニュアル通りにやっていたら、絶対にうまくいかなかった。」
「ここでは地元の人々の信頼が重要なんです。だからこそ、現場に応じた柔軟な対応が必要なんです。」
本社の幹部は一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐに真剣な顔で答えた。
「確かに、現場の声を無視するのは良くないですね。しかし、我々としても会社全体の方針を統一する必要があります。このバランスをどう取るべきか、我々も考えなければなりません。」
涼はその言葉を聞いて、一つの提案を思いついた。
「では、こうしましょう。各支部には、その地域特有の事情に応じて、柔軟な運営を許可する。とはいえ、最低限の標準ルールは守るという形で、両方のメリットを活かせるようにするんです。例えば、基本的な報告体制や管理システムは標準化しつつ、地域ごとの事情に応じたカスタマイズを許可する。」
幹部たちはその提案に耳を傾け、しばらく考えた後、納得したように頷いた。
「確かに、その形ならお互いの意見を尊重できますね。支部が地域に根ざした運営をしながらも、会社全体としての統一感を保てる。良い提案です。」
こうして、涼の提案が採用されることになり、支部と本社の意見対立は解消された。
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◇◇◇
会議が終わった後、涼は支部の外に出て、深呼吸をした。心の中に溜まっていたモヤモヤが少し晴れた気がした。
「ふぅ、これで少しは楽になったかな…。でも、これからもこういう対立は出てくるだろうし、経営って本当に難しいな…。」
アリアが横に来て、笑顔で涼に声をかけた。
「涼、あなたはちゃんと現場の声を大切にしながら、本社とのバランスも取った。今日は本当に頑張ったわね。」
カイルもニヤリとしながら肩を叩いた。
「おいおい、涼さん。これが経営ってやつだろう?でも、うまくまとめたじゃないか!」
グラムも無言で頷きながら、涼に手を差し出した。
「これからも同じような問題は出てくるだろう
が、お前なら何とかできるさ。」
涼は仲間たちの言葉に励まされ、再び決意を固めた。
「そうだな。俺たちはチームだ。これからも支部を、そして会社全体を成長させていこう!」
涼たちは支部の運営を軌道に乗せつつ、次なる挑戦に向けて歩みを進めていく。支部と本社の協力体制がより強固になり、経営者としての涼の成長がさらに加速していくのだった。
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