第21話: 「支部運営スタート!初仕事は危険な護衛依頼!?」
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「やっと…やっとだ…!」
涼は支部の看板を眺めながら、感慨深げに呟いた。リュエールでの支部設立計画が、ついに実現したのだ。住民たちの信頼を勝ち取り、セドリックやエリナという地元の強力な協力者も得たことで、支部の開設は順調に進んだ。だが、これからが本番だ。支部が運営を始めた以上、依頼への迅速な対応や人材管理が問われる。涼は責任の重さを感じつつも、少し高揚感を抑えられなかった。
「支部がちゃんと機能すれば、本社の負担も軽くなるし、リュエール周辺の依頼にも柔軟に対応できる。やるぞ!」
涼が拳を握りしめて意気込んでいると、カイルが後ろからニヤリと笑いながら近づいてきた。
「おいおい、涼さん。そんなに気合いを入れるなよ。まあ、初仕事が大成功してもらわないと困るけどな!」
グラムも横で腕を組みながら、いつもの無骨な声で続ける。
「護衛依頼だと聞いている。だが、何か嫌な予感がするな…。」
「嫌な予感って、お前…やめろよ、そういうのは。」
涼はグラムの言葉に一瞬背筋が寒くなるも、気を取り直して本社に戻ろうとした。
「ともかく、俺たちは本社から支部の動きをサポートする。支部運営の成功は、ここからが正念場だ。」
アリアも頷きながら、涼に微笑みかけた。
「支部のメンバーたちも頑張ってるし、私たちもできる限りサポートしましょう。」
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リュエール支部の運営がスタートして数日、涼たちのもとに早速最初の依頼が届いた。それは護衛依頼――といっても、ただの物資輸送の護衛ではなく、重要な魔法のアイテムを含んだ貴重な荷物の護衛だった。
「おいおい、初仕事がこんなにヘビーな依頼って…普通はもっと軽めのやつじゃないのか?」
涼は依頼書を読みながら苦笑いを浮かべた。護衛依頼と聞いていたものの、依頼内容がかなり危険なものであることが判明した。依頼主はリュエール近郊の貴族であり、彼が所有する魔法のアイテムを盗賊から守ることが目的だ。
「支部にとっての初仕事だから、しっかり成功させたいけど…盗賊って聞くとちょっと厄介だな。」
涼は少し不安を感じながら、セドリックとエリナに護衛の詳細を伝えた。セドリックは頼れるスキル「地形変化」を駆使して護衛計画を立て、エリナは動物たちを使って情報収集に協力してくれることになった。
「盗賊団の動きは、動物たちを通じて確認しておきます。彼らがどのルートを狙っているのか、事前に掴めるかもしれません。」
エリナは慎重な様子で涼にそう告げた。涼は彼女の提案に感謝しながら、作戦を立て始めた。
「よし、エリナの情報収集と、セドリックの地形変化を組み合わせれば、盗賊の奇襲にも対応できるはずだ。俺たちも支援に回るから、まずはこの護衛を無事に終わらせよう。」
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護衛当日、セドリックはリュエールの外れにある険しい山道を見つめながら、指を軽く動かした。彼のスキル「地形変化」によって、道の形状がわずかに変わり、馬車が安全に通行できるように整えられていく。
「これで通りやすくはなるが、盗賊どもがどこから来るか…。」
セドリックは冷静に状況を見守りながら、エリナが送り出した小動物たちの戻りを待っていた。すると、エリナがふわりと彼の隣に立ち、報告を持ってきた。
「山の東側にある森の中に、怪しい集団が動いているみたい。盗賊かどうかは分からないけど、注意が必要ね。」
涼はその情報を聞くと、すぐに行動を起こした。
「カイル、グラム、東の森だ!あっちを重点的に警戒してくれ。俺たちは護衛隊と一緒に進行を続ける。」
「おっしゃ、任せておけ!どんな盗賊が来ようと、俺たちで片付けてやるさ!」
カイルは風を操りながら、素早く馬車の周囲を警戒する。グラムも重い鎧を着込み、前方の守りを固めるために歩き始めた。
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護衛が順調に進んでいるかと思われたその時、森の中から突然、十数人の盗賊が飛び出してきた。彼らは一瞬で馬車を取り囲み、貴重な魔法のアイテムを狙って攻撃を仕掛けてきた。
「出たか…!やっぱり来たな!」
涼は盗賊たちの素早い動きに一瞬怯むが、カイルとグラムが即座に応戦。カイルの風の剣が盗賊たちを翻弄し、グラムの大剣がその勢いをさらに押し戻す。
「風斬りの舞だ!派手に決めてやるぜ!」
カイルが華麗に風を操り、盗賊たちの動きを封じ込める。次々と倒されていく盗賊たちに涼は安堵するが、まだ全員を制圧するには時間がかかりそうだ。
「くっ…全員を一度に抑えるのは難しいか…?」
その時、セドリックが静かに動き始めた。彼は周囲の地面に手をかざし、「地形変化」のスキルを発動させた。すると、地面がゆっくりと隆起し、盗賊たちの進行ルートが一気に遮断された。
「これで足止めはできた。あとは、各個撃破だ。」
セドリックの冷静な判断が功を奏し、盗賊たちは完全に混乱状態に陥った。涼はその隙をついて、護衛隊と共に荷物を安全な場所まで運び出す。
「よし、このまま進むぞ!」
エリナは負傷した護衛隊員や盗賊たちを手当てしながら、状況を的確に見極めていた。彼女の迅速な治療によって、護衛隊のメンバーは再び立ち上がり、戦いを続けることができた。
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戦闘が終わると、涼たちは無事に護衛を完了させ、魔法のアイテムを依頼主に届けることができた。依頼主は大いに感謝し、涼たちの働きに驚嘆していた。
「これほどの腕前なら、リュエール支部もすぐに名を上げるだろう。素晴らしい仕事ぶりだった。」
涼は依頼主に頭を下げながら、心の中でホッと胸を撫で下ろした。
「無事に終わって本当に良かった…。初仕事がこれだけ
大変だとは思わなかったけど、何とか乗り越えられたな。」
カイルとグラムも満足そうに笑いながら、涼に近づいてきた。
「おいおい、涼。これが初仕事なら、これからも派手な依頼が続きそうだな!」
「次はもっと大きな仕事が待っているだろう。」
涼は二人に軽く笑って答えた。
「そうだな。でも、どんな依頼が来ても、俺たちならやれるさ。さあ、次に備えよう!」
こうして、リュエール支部の初仕事は無事に成功を収め、涼たちはさらに成長していく。これからも数々の試練が待ち受けているが、彼らのチームワークはさらに強固なものとなっていた。
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次回、涼たちは新たな地域でさらに大きな挑戦を迎える。果たして次なる依頼は何か…?




