第2話: 「会社設立!? まずは人材集めからスタートだ!」
「まさか、異世界で人材派遣会社を立ち上げることになるなんて…人生、何が起こるかわからないもんだな。」
涼は異世界の空を見上げながら、自分の人生の大きな転換を改めて実感していた。現代日本のブラック企業で働く日々から一転、今は異世界【エルトール王国】で新たなビジネスを始めることに。しかもそれが「人材派遣会社」だ。
「いや、俺も別に魔王を倒したり、勇者になりたいわけじゃないけどさ…」
そう、涼はこの異世界で与えられたスキルを駆使して、国を立て直すという壮大なプロジェクトに取り掛かることになった。ただし、彼が得意とするのは剣や魔法ではなく、プロジェクトマネジメントとタイムマネジメント。それを活かして、効率的に人材を派遣し、異世界の社会問題を解決していくのだ。
「でもさ、人材派遣会社って言っても、まずは人材がいないと始まらないよな…」
異世界に飛ばされたばかりで、もちろん何も準備が整っていない涼。人材を集める方法も分からないし、どこから手を付けていいのかすら見当がつかない。
「さて、どうやってこの世界でスキルを持つ人材を探せばいいんだ?求人誌とかハローワークとかあるわけでもないし…って、そんなもんあるわけないか!」
涼は苦笑いしながら、街の様子を見回した。王都の大通りは賑やかで、人々が忙しそうに行き交っている。露天商や、騎士団員、そして見たことのない格好をした冒険者たちもちらほら見える。
「やっぱり、まずはこういう冒険者ギルドとかに行ってみるのがいいのか?異世界の人材派遣の基本はやっぱりそこからだよな。」
意を決した涼は、さっそく冒険者ギルドに向かうことにした。
◇◇◇
ギルドの建物に入ると、そこには活気のある雰囲気が広がっていた。冒険者たちがクエストボードに群がり、受付で報酬を受け取っている様子が目に入る。
「おー、まさに異世界のギルドって感じだなぁ。実際に見ると結構迫力があるな。」
涼は少し圧倒されつつも、ギルドの受付カウンターに向かう。そこには、小柄で可愛らしい笑顔を浮かべた女性が立っていた。
「こんにちは!初めてお見かけしますが、冒険者登録ですか?」
「いや、そうじゃなくて…実は人材派遣会社を立ち上げようとしてて、それでスキルを持つ人材を探してるんですけど…」
涼が説明すると、受付嬢は驚いた表情を浮かべた。
「人材派遣会社ですか?それは珍しいですね!この世界にはまだそんなシステムはないですが、興味深いですね。」
「まあ、俺も現代の日本で働いてたんで、こっちじゃ馴染みがないかも。でも、人手不足ってどの世界でも一緒でしょ?」
受付嬢はにっこりと笑って頷いた。「ええ、その通りです。特に最近は、スキルを持った人材が不足していて、ギルドでも依頼が滞りがちなんですよ。もし、本当に人材を派遣できるなら、かなり需要があると思います。」
「そうそう、そういうのを解決していきたいんだよ!さっそくなんだけど、スキル持ちの冒険者とか、ギルドで紹介してもらえたりする?」
受付嬢は少し考え込んだあと、涼に近づいて小声で言った。
「実は、今ちょうど一人、スキルはあるけど仕事が見つからなくて困っている冒険者がいるんです。ちょっと変わった人ですけど、試しに会ってみますか?」
「変わった人?面白そうだな、ぜひ会ってみたい!」
涼は期待に胸を膨らませ、紹介された冒険者に会うことにした。
◇◇◇
ギルドの裏手に案内されると、そこには…妙にのんびりした雰囲気の男が座っていた。長い茶髪を無造作に結び、どこかぼんやりとした表情。年齢は30代くらいだろうか。
「おい、あんたがスキル持ちで仕事探してる冒険者ってやつか?」
涼が声をかけると、男はぼーっとした目でこちらを見た。
「あー、俺?そうだね、冒険者って言えば冒険者だし、スキルもあるっちゃあるよ。でも、最近はあんまり仕事なくてさ…まあ、別に焦ってないんだけどね。」
「おいおい、何そのやる気のなさ!?」
涼は思わず突っ込みたくなる。この男、本当に使えるのか?
「で、どんなスキル持ってるんだ?」
男はふわりと立ち上がり、少し考え込んだ後、呟くように言った。
「俺のスキルは…『建築設計』と『耐久性向上の魔法』かな。基本的に家とか城を建てたりするのが得意なんだ。最近は建物の耐久力を上げる魔法も研究しててね。」
「建築設計!? それはすごいじゃないか!むしろめちゃくちゃ需要あるぞ!」
涼は目を輝かせた。確かにこの男、外見はのんびりしているが、スキルは間違いなく一流だ。特に今、エルトール王国ではインフラが崩壊しつつあり、国全体が建物の修復や改修に困っている。これほど適材適所な人材がいるとは思っていなかった。
「よし、君を最初の人材として採用しよう!俺の派遣会社の初仕事として、王国の修繕プロジェクトを手伝ってくれないか?」
「え、俺?うーん、まあ別にいいけど…」
あっさりとした返事だったが、涼は彼を最初の成功例にするべく気合いを入れた。
「これで初仕事が決まったな…」
涼は、派遣会社の第一歩を踏み出したことを実感しながら、王国の未来を思い描いた。この異世界で、ビジネススキルを活かしてどこまでやれるか──それは、まだ始まったばかりだった。
◇◇◇
「ところで、これって…本当に異世界の冒険じゃなくて、ただの内政改革だよな?」
涼は一人で突っ込みを入れつつ、また新たな人材を探すため、次の行動に移るのだった。