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シアの国  作者: 薄荷堂
魔女
97/106

97.休息

(こんなものかな)


『沐浴どうぞー。残り湯は私も使うからねー』


『うぃー』


私が出てくると、フィーネを抱えているヒューガは、籠を持って脱衣場へと向かう。


疲れたのだと、ジーナはおじさんそのものとなって椅子でだれんとなっていて、ルイーゼは、そろそろと部屋の中を見て回っている。


『すごいわね。何部屋あるの?』


『さっきの応接間な部分の向こう側にも居間があって、寝室とバスルームが二区画ある。キッチンな部分はこっち側だけだね。ジーナ、フィーネの沐浴が終わったら、腕や足だけ浴槽の外で洗う?』


ジーナは目を開けたのだが、首を横に振ったので、まだ動けそうにないのだろう。


私がキッチンへと移動すると、ルイーゼもお茶の準備を手伝ってくれるようだ。


『宿?って思える』


『部屋をこういったお高いものとするからには、売店なものではなくきちんとした店を入れたいな、となり、きちんとした店を色々入れてあると、買い物だけしに来てくれるお客さまも?ということで飲食店も入れて、とお店な部分が多くなっていったらしい。ルイーゼも腕とか洗う?三人とも、血液検査が終われば、もうこっちでゆっくりしてて大丈夫。フィーネの分は、おしめにぐいっとやって調べたいね』


『おしめ?』


ルイーゼは急いでキッチンを出ていったので、ヒューガが洗濯を始めてしまう前に確保してくれるだろう。


(何人だ?)


多めにお湯を沸かしているのだが、カップをどれだけ用意すればいいのか。


(検査を終えても、あっちにいると‥‥‥)


考えるのが面倒なので、すでにいる三人の分と私の分だけを、とりあえず運んでおくとしよう。


(すごい頼んだな)


応接間に入ると、テーブルにずらりと並べられた食事が見えてくる。


「シア!すごい!」


「まだしばらくかかるから、食べてて?」


三人はすでに狙いを定めていたらしく、それぞれ急いで皿を自分の前へと引き寄せる。


(夕食まだだったのかな)


キッチンへと戻ると、ルイーゼと交代したらしいヒューガが応接間を気にしている。


『ジーナもごはん食べてる?』


居間の方へと声をかけると、ジーナはのっそりと立ち上がったので、食欲があるようだ。


(もう全員分でいいか)


追加するカップを運んでいくと、ヒューガとジーナにも食事を勧め、二人が食べ始めると、皆の様子を窺いながら、皿を二つ手に取ってみる。


(もらっていっても、よさそうだね)


キッチンを通り抜けて、居間のテーブルに皿を置くと、キッチンへと戻って紅茶を淹れる。


優雅にお宿を自由使用するのでは、私こそが恩知らずなのだと、遠いいつかであるかのように、宿舎での深夜のお茶会を思い出す。


あの日、私が何をしたのかと、それは今現在となっている。


虚しいのだと、心の中では、魔女は崖に佇み泣いている。


私が今、何をしているのか、それはずっと、魔女を泣かせ続けることになるのだろう。








◇◆◇◆◇◆◇








自分の採血をしていなかったと気付き、自分で自分の採血をしていると、ムージェスは顔を背けがちとなっている。


「検出されません」


「はいよー」


ムージェスは書き留め終わると、手帳をぱらぱらと見返していく。


「ロロイ、何なんだ?」


「見えてるとしか思えないんだよね‥‥‥すっ‥‥‥」


「ぶす‥‥‥本当だー!って言ってるのが‥‥‥って思うんだが、見てると、本当だー!だった」


「本人が言うには、んなもん見りゃわかるだろ、って」


「わかる?」


「刺せば、ここだな、ってなるよね?」


「どういうこと?」


「刺す地点を示してもらえると、刺してからは血管を探るでしょ?」


「ロロイがやってるのは、刺すという行為を実行させる、ということなのか?」


「ロロイは見えてる!って思わせることができているから成せる技、って言い方すると手品か何かみたいに聞こえるけれど、ロロイは刺すのに適している場所を示してやっているんだ、ってことだよね?」


「そうだな。ここに刺す、探せばある、ということだもんな。そうやって、シアも見えるようになったのか?」


「私は、ちょっと押させてもらってた」


「わかりそうな気がする」


「そういうのが何も無いロロイのは本人の言う通り、特殊能力、と言えるのかもしれないね」


ムージェスは小さく頷き、肩をすくめないように気を付けながら言う。


「シアは、刺すとこ決めるの早すぎて怖い‥‥‥腕見た、刺すよー、ぶす、うわ!あ、出てる、って毎回思う」


「そういうね。ポポアが、ふぁ!って毎回なってて、そんなに危なっかしいのか、って思ってた」


「それでか‥‥‥笑ってるから、また怖いんだよ‥‥‥血抜いて笑ってる!」


「皆怯えてるな、儀式とかに使わないよ?って思ってた。シュイージがいつも残念そうだったのは、その体験ができなかったからかな?」


「あいつはな‥‥‥そういうのを楽しめるんだよな」


採血と検査の道具を片付けていると、ルイーゼとジーナが空いたカップを下げてくれる。


「シュミルも、一旦休んでる?」


「そうするー‥‥‥」


シュミルは自分の分もカップを盆に乗せておくと、応接間を出ていった。


「二人も、一旦休んでて?」


「わかったわ。失礼します」


ルイーゼとジーナがキッチンへ行ってしまうと、ムージェスは、くたっとソファーに体を預ける。


「美人すぎて緊張した‥‥‥」


「ど美人だよねー」


私もソファーにくったりしてみると、お子さまな大きさな私なら、十分にベッドとできそうだ。


「俺達、宮廷から遠ざけられて、宮廷どうなってるんだろー‥‥‥」


(遠ざけられて、ね)


「ナナセとパミザ連れて、右の国行ってー?」


「‥‥‥当主と合流しろってことか?」


「スオウのじいさまが間の国の第一王子殿下のだそうな馬を連れていくことにしたいので、ヒューガ達に同行して、間の国の東部支所を訪ねるのと同じ船で、ムージェスがパミザとナナセを連れて右の国へ移動。室長の秘書とノノワも行くと思うし、リッカさん達も行くかもだし、ルイーゼの馬が一頭いる。準備ができたら、お宿の馬車で荷造りに行きたい」


体を起こし、ムージェスの分も紅茶を注いでおくと、ムージェスは、お茶菓子の皿をテーブルの中央辺りから移動させてくる。


「中型船がよさそうだな」


手帳に書き留め終わったようなので、追加しよう。


「間の国の東部にある私の所有物件の本を全部と、ヒューガ達が見てみて使わない家具とかも、右の国のユンルーに渡しておいて?」


「ユンルーって、王家の‥‥‥そこも変わってるな」


「そうだろうね。第二王子殿下の従者、ナオジー。私の所有物件は、エンラッドが案内してくれるから、東部にあるお宿で、じいさまから連絡してもらって?」


「ナオジーさんと、エンラッドさんね」


「ゼンマイどばか娘は間の国の第二王子殿下と文通のようなことをしている、と思い込んでいるのか何なのかなどんちきババアが、何もせずにいただろうか?」


「思えないなー‥‥‥乗り込んでいった?」


「ヤマフジのおじさんに間の国の西部にあるそうなお高い店に連れていってもらったどんちきババアのやってるゼンマイどばか娘は、さっきのどこぞの親子を間の国の王さまと王女さまだとして紹介されたのではないだろうか」


「胸糞沼地生物達の世界‥‥‥」


「ヤマフジのおじさんがどこぞの親子に、この子はケイオスさまと文通したいなんて言うんだよ」


「え‥‥‥書いて出せば届くよ?」


「そう言われて、間の国の第一王子殿下に送っただろうか?」


「どこぞの親子に持ち帰らせただろうな。ヤマフジのおじさんが受け取っておいてあげたよ、でヤマフジのおじさんと手渡し文通?」


「私もそう予想する。モクレン家三男の大騒ぎ、あれは、ヤマフジのおじさんがべたべたさんの出産に備えて、どんちきババアとの手渡し文通を終えようとしたせいなのではないだろうか?」


「終えるなんて不可能だと思える‥‥‥」


私も小さく笑ってしまう。


「思える。ケイオスさま、が、ゼンマイどばか娘との文通をやめたがっているようだね‥‥‥」


ムージェスは整理しようと、手帳に書き留めたものを指で追って考えていく。


「そっか‥‥‥ゼンマイどばか娘としてケイオスさまとの文通」


「ゼルガルさまがやきもちを焼いてしまうんだろうね、とでも言ってやれば、どんちきババアはおじさんに煩くするより、ゼンマイどばか娘という送り先を寄こせ!」


「おじさんは三女からも煩くされるようになって、ゼンマイどばか娘をヤマフジのカフェに移そうと、ってのに三女が納得しないので、どんちきババアがゼンマイどばか娘としてカフェの二階で、というのに三女も協力、か」


「大好きビュードノーアお兄ちゃんの隣に座らされていたどべぐちゃ糞坊によると、モクレンのおじさんからの手紙を持参しているどばかアンドッチが訪ねてきたそうで、どばかアンドッチはモクレン家三男の大騒ぎという出来事が起きたことを知らせに来たそうで、間の国からは王太子が出てきているので左の国からも王太子が出てくるように言っているそうで、揉め事にしてはいけないと判断したそうなどべぐちゃ糞坊が、ディードも近衛部隊も置いてモクレンへ向かったそうなとやり、戻ってくると間の国の王城まで行ってきたそうなのに、忍者を連れていた?」


「もう、どっべどべにどべっちゃー‥‥‥!」


「どばかアンドッチはサカキの御曹司さまを自称していた、とどべぐちゃ糞坊は言ったのでは?」


「どべどべと繋げやがって‥‥‥ケイオスさまが西部にいるものだとできました、と‥‥‥」


「皆さまが集められた形となった室内には、どこの誰だとも自称しない誰かがすでにいて、どばかアンドッチが持ってきたそうな手紙、見せて?」


「そうなった!」


(どうよ?)


心の中では眷属達も、ムージェス同様、きらきらした目を向けてくれている。


「ギドロイさまは近衛部隊に囲ませる?皆で外に行くよと行動させる?ように移動を開始し、おーいおい!糞坊!と消滅希望お荷物さまが、どべぐちゃ糞坊が左の国に対して行ったそうなお報告内容や、消滅希望お荷物さまが聞いている、そうな現地での状況だそうなものを語りまくっていたのが、急に切羽詰まったお態度となって、無いのか?糞坊‥‥‥と追いかけるのをやめた?」


「そう!」


「消滅希望お荷物さまは左の国の第一王子としてではなく、王都の領主という立場で応対することにとどめているんだ、と発言し、ギドロイさまを壮絶に苛つかせた?」


「そうだった!」


「はい、もうこの場から引っ込めまーす!となった消滅希望お荷物さまは、あれよあれよと広大な胸糞沼地を供述しまくり、どうするもこうするもないよな?糞坊?間の国では左の国でこういったことが起きていたと認定されているんだからな?と笑顔なんだが、ギドロイさまは、え?どこ?どこが変わったんだ?となっていて、ディードが、あーらら、みーんなにも知られちゃったな?糞坊?という状況にご満足となっているのではないだろうか?と言ってみると、あー!」


「なってた!」


「どうせ、消滅希望お荷物さまはさっきの部屋にいたのが誰だと聞いているのか、という消滅希望お荷物さまの発言により、みーなさまの滞在したさっきの部屋とはどんな部屋だということにできちゃいまーした!そこも聞いてくれるだろう?糞坊?さっきの部屋にいたのが誰なのかみーなさまが知ったな?糞坊?せっかく隠してきたのにな?これでは大好きビュードノーアお兄ちゃんがどうにかしてやるしかないな?こんな風に時間を使ってしまっては、さっきの部屋にいた誰かに左の国というものを勘繰られてしまっているのは間違いない、こんなものだって!糞坊の外交だ、な?糞坊?をやりたがっているんだ、と解説し、若干ではなくぷるぷるしているダドが前に出た?」


「そうなんだ‥‥‥」


ムージェスは、笑ってなんている、をやっていて、ダドアーロの嘆きを予想すれば面白い。


「ダドは知ってるな、って思うことをしてきただけだ、とギドロイさまが発言すると、一生懸命一人で抱えてクリームパンを買い与えてきたダドは、二度とバンラームと呼ぶな!と発言し、バンラームに向けて、ギドロイさまはクリームパンを買い与えるダドだってバンラウムだがバンラームだって言った!とお報告‥‥‥シュイージが優しく、軍部局でも管理しているだろ?と言ってやると、あんなの!糞坊がいかな糞坊なんだって、と失速し、自分はギドロイさまを糞坊だとしている、と呟くと、これは離職するな、という勢いでとぼとぼ歩きだし、ジーディンが、あんこを炊けないダドに居場所なんてない、と言ってやると、うぅうぅ状態となって、シュイージの隣で何もかも噛み砕こうと歯を食いしばっていた?」


「そうだったんだ‥‥‥!」


懸命に寄り添ってきたダドアーロは、まさしく忠臣という存在だと、私には見えていた。


「よーし、放置だ、解散!となると、留置所暮らしに飽き飽きしたそうな消滅希望お荷物さまが、どべぐちゃ糞坊のご活躍を語りだした。どばかアンドッチが持ってきたそうな手紙を見せることをせずに、どばかアンドッチがどのようにとわーぎゃー語りまくったどべぐちゃ糞坊は、友好が大事、友好が大事、とにかく友好が大事だと思っているんだな、と思うことしかさせてくれない時間を作り上げると、王女と表現できる高さにいるお存在さまであるゼンマイどばか娘を、ど糞餓鬼が間の国の第二王子殿下に押し付けたがっているんだと語り、大好きビュードノーアお兄ちゃんをちらり‥‥‥大好きビュードノーアお兄ちゃんは何も言ってくれないので、共犯、という立場に立たせることができたと判断したどべぐちゃ糞坊は、そんなど糞餓鬼がヒイラギへの侵攻を始めたので間の国を処分先にしていい?お礼ということではないんだが、王女さまを留学生として受け入れるよ?と言って間の国の第二王子殿下を立ち上がらせた?」


「どべぐちゃ糞坊が失神して、当主がばっしばし叩くんだが起きなかったそうだ‥‥‥」


「どべぐちゃ糞坊はど糞餓鬼が留学という形に落とし込みたいんだろう、とバンラームが解説してやると、どべぐちゃ糞坊は寝かせておくことになり、そこからは消滅希望お荷物さまが、ど糞餓鬼を留学させようと頑張ったんだが、間の国の第二王子殿下はそんな話を受け入れず、どばかアンドッチが持ってきたそうな手紙が存在しないと認めさせると帰っていった?」


ここで私を見て溜め息をつかれては、眷属達は私に背を向けようと崖の際まで寄っていく。


我こそはど糞餓鬼なのだと、正規雇用官吏のブローチを取り出すと、ムージェスは無警戒に手に取り眺めている。


「これが正規雇用官吏の?」


「そう。胸糞沼地生物達の世界では、私から預かっていたそうな死ぬべき王子には、診療所の医師が持っていたものが本物だとわかるそうで、ミカシュの手に余るのでと死ぬべき王子からダドに押し付けてやろうとしていたんだが、押し付けてやることができなかったので、と消滅希望お荷物さまに押し付けているだろう」


「これは?」


「塊のチーズってあるだろう?」


「あるな」


「ちょっと炙って表面の溶けた分だけをお皿へ、というのと同じことをやってくれたので、こう、ちょっと湾曲している」


ムージェスは留め具のついている側を眺め、言う。


「元は、こう、なってないってことだよな?」


「そうだね。バームクーヘンを切りましたよ、な断面だと思ってくださいね、なものだった。本体がギドロイさまである誰でもに、現物支給を望むお子さまにすぐに支給できなかった為政者の存在による、変わらずクリームパンを買い与えてくれるダドアーロの生涯総資産の平均値なる謎の数値に生じる影響を受け入れるんだろうか、って言ってみて?」


表情に渋さをどばっと足したムージェスは、すっと背筋を伸ばして扉を気にしているので、早くダーファスに戻ってきてほしくなったようだ。


(察しがいいんだよな)


「せっかく胸糞沼地生物達の世界で私は宮廷内にあるもの全部に受かっているとしてくれていたので、ギドロイさまにも、宮廷内に存在するすべての試験的なものを並べてやると、ディードにっこり」


「それに全部受かると王太子、だからギドロイさまはシア認定王太子もどき、というのは知ってる」


「ヒノキのおじさんは?」


「そっちも?何も聞いてない」


「ヒイラギの皆さまは?」


「当主は、ばー、合格していって、四人はまだ全部は、ではあるが、王子ゾーンには入ってる!」


「よし!ルツが王さま!ダーファスが第一王子で、ユイリーマが第一王女で、ムージェスが第二王子で、ヒオネアが第二王女だから、ムージェスは第二王子殿下として、ナオジーに、いつまでも若々しいケイオスさまとポノレイさまの結婚式にうちの王さまも招待してやって?って言ってきて?」


神妙と呼びたくなる表情となっているムージェスは、じっと扉の方を見ている。








◇◆◇◆◇◆◇








「空位説ね‥‥‥」


手帳に書き留めた内容を指で追って確認していたムージェスが顔を上げたので、山羊対策についても伝えておこう。


「おじさんは出てこないかもしれないが、山羊は出てくるのでは、どうにかまとめておかないとな‥‥‥」


「出てくるとすると、摂取させられ終えていそう。山羊を解剖できるそうな誰かが目立ってる?」


「手下にしている獣医がいそうだが、そういう報告は来ていないな」


「死ぬべき王子がやったってことにする予定だったのかも?馬にも詳しいことになっていそう」


「馬なー‥‥‥」


「どべぐちゃ糞坊の本命ってナナセ?」


苦笑いとなったムージェスは、菓子を一つ手に取る。


そうは思えないということだろう。


「炊き出し班は解体はできそうだけど、調べるとなるとディード?」


「え?あ、食べ放題付き見張り?」


「提案はしておいたけど、来てくれるとなるとおホワイトさまも来ていそう。バンラームは、おホワイトさまだとして別行動」


「バンラームもなー‥‥‥」


「警察と軍の間なんて、どこ?な場所にいる役職者にされてない?」


「‥‥‥それって、まさか、両部署の長以外はバンラームの部下状態?」


「そういうの。そしてその上にどべぐちゃ糞坊」


「あの二人なー‥‥‥」


「ちゃーんと、どこ?な場所にいる部下達もいて、その部下達が使用している宿舎もあって、宿舎の管理所なんて場所の管理もバンラームがしてるんだよ」


「わー‥‥‥もしかして、どこ?な場所の人員として動く時は、ガーロイド・スオウ?」


「どべぐちゃ糞坊と同じってことにして命乞い、なんてご気分になれるのがどべぐちゃおじさんだね」


ムージェスは止まってしまいそうになりながらも、手帳に書き留めることを続けていく。


「‥‥‥あ、ボノバートも?」


「連れて来ていそうだね。ギドロイさまがいたら、まな板とかに塩を広げてうろうろしてろ、って言ってたって言っておいて?」


「そうして広場に誘導だな」


ヒューガの教えてくれたお話について話してみると、ムージェスは首を傾げて言う。


「結婚したら、真名で呼ぶよ‥‥‥ドンチギー」


(そこね)


「当時、私は知らなかった!けど、どんちきババアは知っていただろうし、ギドロイさまはすでに聞かされていそう」


「そうだろうな」


「どうせ、ファーゼリンシアとかいう名でカルテとか作ってそうだし、カフェに飾ってそう」


「ファーゼリンシアへ、って書いてあるのだろ?」


「そういうの。あと、あっちの店に見せたらおまけしてくれるよ、な券に店員名を書くとこ作っておいて、そこに書くとかしてそう」


「どの店でくれた券なのかはすぐわかるでしょ?だから!どんちきババアの名をね!」


「そういう理論。下っ端お官吏留学生をやった代金を受け取ろう。ツツジ、ネム、ネズ、シュロ、モッコク、オオデマリ、スオウ、ヤマボウシ、ヤマフジ、レンギョウ、カイドウ、そしてシキミ。以上の土地は私がもらう」


やはり扉を見てしまうムージェスは、とりあえず手帳に書き留めてくれるようだ。


「旧モクレンと旧センリョウも、私がもらった!」


「おー?‥‥‥えー?っと‥‥‥ツツジ、ハタンキョウで、リンドウで、シュロ、モッコク、オオデマリ、スオウ、ルリマツリ、レンギョウ、カイドウ、旧モクレン、旧センリョウ、シキミ?」


「センリョウはマツリカにして、ヒイラギの先代が当主で領主で、ダドを養子に迎えよう」


ムージェスは、そわっとしたのだが、座りなおすことで気を取り直す。


「‥‥‥出す?」


「カフェで焼き殺さずに済ませることできる?」


じわっと笑ったムージェスは、まだ開かない扉の方へと笑いかける。


「ルツはどなたかのお子さまがとするような気もするので、それまで、となるかもしれない」


「そこは、そうだな‥‥‥そういう使い方とする家だから?」


「マツリカの息子の椅子を空けておくことをしない。そして、スオウとはそういう家だとしたい。力を保有せず、通過点となることをする家であり、そうだが?顔で、ルツでも誰でも、向かいの席に座ることをする」


「俺は‥‥‥高望み、という言葉で評したくなる」


「では、ムージェスは、カフェで焼き」


「あー!それは待って!」


私が取り出そうとした手帳を仕舞ったままとしておくと、ムージェスは、ふうと息をつく。


「そのような息子に、先代ご夫妻が、育ててくれると、スオウ家当主は、ダド」


「わー!お子さまの眺望ってすごーい!」


「じゃあ、テオなんてもんはぽいして、ダドにするようにルツに言って?ってマナに言って?」


「‥‥‥そっちの方が、いい、かな」


「では、マツリカの息子が、連れていく、連れていくための縁組みもよろしくね!」


「わー!それは、当主にでね‥‥‥」


(書いてくれる!)


「レンギョウをウツギにして、ジゼットが当主で領主」


「そこもな」


「モクレンはモクレンのまま、領主はヒオネア」


「え?ヒイラギのままで?」


「婿を取らせたい。組み合わせはルツが決めている通りだが、手順を挟む。間の国の王女殿下の前に並ぶとなると、ムージェスになるんだろうか?」


「当然持ったままでいる手駒だとしておきたいだろう、とな。マナさん‥‥‥」


「自分が死ぬことを見つめてきたからには、となっていそうだね‥‥‥マナに、デュカジをジモッチをしてやるように言って?」


「どういうこと?」


「デュカジ・ふんふん」


「面白くなってきたな‥‥‥」


書き留めることはせずとも、きっとマナジオードに伝えてくれるだろう。


「そろそろ手を入れなければならない城は撤去。城の内部にあったものは、平らに広げて置く」


「そういうのが必要だよな。手を入れるよりは、となるだろう」


「奉仕活動に参加したがる犯罪者が、たーくさんいるだろう?」


「そうだな」


ムージェスは、背筋を伸ばしたので、立ち上がるのかと思いきや。


「‥‥‥当主は?」


「何も知らず、私によって足を置かされる。ここで私を殺すのが、あなたの役目なのかもしれないね」


ムージェスを俯かせ、それでも私は顔を上げている。


燎原は燃えていて、私は崖から見下ろす魔女なのだと、崖はいつでも夜闇に包まれている。








◇◆◇◆◇◆◇








ムージェスは手帳を見返し、とんと指を置く。


「ナナセは馬で、パミザは銀髪三姉妹?」


「胸糞多重世界では、次男さまツアーで、次男さまが全員と性行為したんだけど、パミザにだけは強引だったんだって」


「なんてものに‥‥‥」


「行儀作法なんていつかね、となっているそうだ」


「間の国のを教え込みたいってことか?」


「死ぬべき王子が作成したノートでは、離宮の一つをそういう場にしようと私が提案して、それにナナセが知っているものを組み込むし、ナナセからパミザに教えてもらう、ってなってた」


「デューイも?」


「死ぬべき王子が作成したノートでは、どべぐちゃ人面魚によって軍部局に配属された死ぬべき王子は、消滅希望お荷物さまにデューイをつけてもらって桃葉桔梗で働いていたそうで、ナナセとパミザと一緒に間の国へ、となっていたね」


「ナナセに、すごかった‥‥‥」


「次男さまツアーで、勝者となって手にしたケーキを一口分掬ったスプーンをナナセに見せられ、食べる?と聞かれた次男さまは、ぱくつき、驚いたナナセがそこからスプーンを動かしてくれないので、次男さまも動けず、二人は見つめ合うことに‥‥‥」


「そんな?そんななの?」


「さっきはその‥‥‥ごめんね?と部屋を訪ねると、ナナセは中に入れてくれて、二人でお茶を飲んでいたはずが!」


「うわー‥‥‥そんな次男さまではなく長男さまを選んでくれ!な長男さまを実演するとああなるってことにしてるのか?」


「死ぬべき王子は、自作したノートを読みながら、あれ?第二王子が第一王子の馬を?あ、それで、さっき一時第一王子やったのか?え?第一王子いつ来た?死ぬべき王子、誰?って私に教えてもらおうとする、というページがあった」


ムージェスは混乱しているらしく、じわじわと笑っていく。


「わかってませんよ、の演技‥‥‥?」


「死ぬべき王子の眼球なんてものが存在しているから、私は死ぬべき王子に視認されてしまう、って従者に言ったら、ちょうど気道を塞ぐといいのにね、って」


「そういう用途か‥‥‥」


「俺、第二王子なんだがー?」


「はあ?!」


目が点とはこの表情だと、思わせてくれたムージェスは、どうにも受け止めきれないらしい。


「私と従者が、死ぬべき王子が第一王子をやっていた頃のように扱うことに対する文句だね」


「‥‥‥え?俺は、浅瀬でぱちゃぱちゃもしていないの?」


「死ぬべき王子によると、私と従者が、勝手に、死ぬべき王子が第一王子をやっていることにしていたが、あんなのは、死ぬべき王子は、第一王子、ぶっていた」


「無理‥‥‥」


ようこそこちら側へ!と、心の中では眷属達が賑やかだ。


「死ぬべき王子によると、第二王子やってて私と別行動となったからには、第二王子のままだ、としていたそうだ」


「していた‥‥‥第二王子やってた死ぬべき王子と別行動となって、ポガロやってる死ぬべき王子と合流したからには、シアはポガロやってるのは第二王子だと判断するとしているので、死ぬべき王子としては、第二王子としてポガロをやっているんですよ?」


「それなのに、死ぬべき王子が作成したノートではこの後第一王子として行動することになっていることに気付きました、の場面をやっていた、というページだね。死ぬべき王子としては、女の子なんてそーんな!ということにしているのにすぐさま性行為する次男さまとして、次男さまより長男さまを選ぶの?性行為する?なーんだって!というのを実演していたご気分でいるのではないだろうか」


「そっちだったな」


「パミザは爆発させに行きたがるだろうから、ムージェスもしばらく残って、クッキーのお皿もあることを教えてあげて?」


「クッキーのお皿?」


「アローラの散歩道には、シュークリームに自分で充填できる店がある」


「爆発ね」


「お宿の馬車を使って荷造りしに行くのに、シュミルのところも回って?ジーナの方は、私がダーファスと歩いていく。ムージェス達も、お店で準備する?」


「店‥‥‥はー‥‥‥ちょっと見たい。まずは身支度だな」


ムージェスが応接間を出ていくと、応接間には私だけとなり、なんとなくソファーに横になってみる。


(これはもうベッドだな‥‥‥)


私も荷物の整理をしておきたいのだが、どうにも起き上がれない。


ダーファスが戻ってくるまで、そう決めておいて、しばしまどろんでいるとしよう。

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