86.散歩
(お!)
ちょうどいいところにダドアーロがやってきたので、やってもらおう。
「ここ、蹴って?」
「ここ‥‥‥?」
ダドアーロは、馬に指示を出し、馬は、え?となりはしたのだが。
「おー!」
馬が蹴ってくれた壁は、きれいに四角に屋内へとぱたんと倒れ、屋内はどたどたと騒がしい。
「やりたい人ー!」
ダドアーロが叫ぶと、軍の人員達が期待に満ちた顔をして集まってきたので、こういった仕掛けに隠れている領民も見つけていってくれるだろう。
馬や人員の隙間を縫って人だかりから出ると、裏道へと入り歩いていく。
待っていてくれたジーオ達と歩いていると、この辺りの家屋にも静寂というものが満ちていて、聞こえてくるのは、屋外での物音や私達の足音だけだ。
お子さまとしてはまだ夜が始まったばかりなのだが、この辺りは制圧作業によって、隠れている領民以外は残っていないのかもしれない。
(ん?)
きれいに座っていた猫は、私が気付くと歩き出し、曲がり角を右へと行くようだ。
猫に続いて歩いてしまうとは。
自然に足が、とはこれなのかと面白いが、猫としては不愉快極まりない行いをされているのかもしれない。
猫はまた右へと曲がるようなので、私は左へと曲がる。
(え?)
猫が、にゃー、と鳴くのは知っているが、何を言いたいのかわからない。
「困ってるの?」
私が立ち止まると、猫は先ほど猫が行こうとしていた方へと歩いていく。
後に続いていいようだ。
いつもあそこで誰か待っていて、人違いをしているのだろうか。
「君は猫と‥‥‥何だ?」
「あっちの方へ行くと国境です」
「いや、行くよ‥‥‥」
ジーオ達も来てくれるようなので、皆でぞろぞろと猫に続いて歩いていく。
(違うのか?)
迂回するように、先ほど私達が歩いていた方向へと向かうのでは、何かに遭遇することを防いでくれたのかと思えてしまう。
猫が遭遇したくない何かとなると、大きな犬だとか、以前落ちたことのある穴だとかだろうか。
(お?)
立ち止まった猫は、道路脇を見下ろしているようだ。
(下りたいの?)
道路と結構な高低差のある道路脇を見下ろしてみると、子猫が一匹いるのが確認できる。
周囲を見回してみると、道路脇に下りてしまっては、子猫を連れて猫が道路へと戻る経路がなさそうだ。
「何が?」
「そこに、子猫がいますね」
私が示すと、ジーオは暗闇を見て言う。
「え?どこ?」
「生きてるかな」
私が道路脇へと飛び下りると、道路は私の顔と同じくらいの高さとなる。
(お、生きてるね)
子猫を道路へと上げてやると、猫は子猫の無事を確認したようだが、道路脇を気にしているようだ。
(もっといたのかな)
周囲の草をかき分け探してみても、子猫はいない。
(籠‥‥‥これ?)
見つけた籠は、中にタオルがあり、子猫を中にいれて猫が取っ手を咥えて、なんて場面を想像してしまうのだが。
(無理がある‥‥‥重すぎるよね)
そうなると、と草をかき分けていると、やはり小さな台車があったので、これで全部だろうか。
ジーオが籠と台車を受け取ってくれたので、私も道路へとよじ登る。
籠の底にタオルを敷きなおしてやると、猫は子猫を籠へと入れてやった。
台車に紐はついているのだが、やはり猫が引くには無理がある。
「誰かお子さまと一緒に移動してて、落ちてしまって、助けを呼びに行ったお子さまが戻ってこれずにいるんでしょうか?」
「台車ね‥‥‥」
私が籠を手に持つと、猫はまた歩き出し、どうやら先ほど猫がいた場所へと向かうようだ。
猫と出会った場所へと戻ると、猫は建物の扉をかりかりやるのだが、屋内は真っ暗であり、家人は留守だとなると、家人が戻ってくることができるのかと考えてしまう。
「一緒に行こう」
子猫の入っている籠を地面近くまで下げてみると、猫は躊躇っているようだ。
(狭いか)
「台車に乗るか?」
ジーオが台車を盆のように持って差し出すと、猫は訝しんでいたのだが。
「お!おお、バランスがね」
ジーオが立ち上がって台車を安定させると、台車の上で猫は、どっこいせ、と横になる。
「慣れていそうにも見えますね」
「そうだね。台車はこっちの猫用なのかもしれないね」
籠がしっかりとしたものなので、持っていられなくなって台車に乗せていると、ということなのかもしれない。
私が、猫と出会うまで歩いていた道へと戻ると、ジーオの呆れ声が聞こえてきた。
「君は、猫に続いたのか?」
「つい」
「つい、ね‥‥‥」
猫は落ち着いたままであり、子猫も落ち着いているので、このまま行くとしよう。
◇◆◇◆◇◆◇
「シア!てーめぇ!俺の愛情というものを疑わ‥‥‥猫?」
「可愛いだろう?」
「可愛い!」
猫好きはちょろいぜ、と籠を持たせてやると、バンラームは子猫を見つけて目尻を下げる。
「可愛いー!」
ジーオが台車を差し出すと、バンラームは受け取り、腰のベルトに添えることで、台車のバランスを保てるようになったようだ。
「おそらく道路脇に投げ出される形となってしまい、こっちの猫が高さのある道路まで子猫を連れて戻れなくて困っていた」
私が猫と出会った場所と、子猫を見つけた場所を説明すると、バンラームは覚えたらしく、小さく頷いてから言う。
「俺は一味じゃない!」
「医師と日記、もちろんジーオに渡すんだろうな?」
「え?!」
「おいおいおい、何をどう判断していやがるんだ?ムージェスとダーファスによって、シュミルは私の自室に移しておくようにな?旧モクレンに移したものと三番を宮廷にぽいしてから、おまえの宿舎に、戻れ」
「三番来るのか‥‥‥?」
「皆もう帰った、と言っておけ」
「えー‥‥‥?」
嫌そうに言われては、苛っとする。
「ほら!邪魔!失せろ!」
「早い!」
「私、死んだ」
「嫌だ!」
「おまえのような殺害趣味野郎は、一生、子育てなんてするなよ」
「そーん‥‥‥俺は‥‥‥」
「ほら、もう、行けよ!猫のご主人を見つけてやれ。玉ねぎとか食べさせないようにな!」
文句を言いたそうにしながらも、バンラームは立ち去る選択をするようだ。
「行け」
ジーオが指示を出すと、護衛が二人、バンラームに続いたので、医師と日記を回収しておいてくれるだろう。
やれやれと歩き出すと、同じく喪失感というものを持て余しているらしく、ジーオは微かに不貞腐れているような声を出す。
「殺害趣味?」
「中がまだ焼けてないな、という鶏肉を食した私は、寝込む、という行いをしていましたが、バンラームは、いつものように私を持ち出し、執務室のソファーに転がしておきました。気付いた人員が医局に連れていこうとしてくれましたが、バンラームは、お触り禁止だの、持ち出し禁止だのと言って妨害‥‥‥女性人員がバンラームの注意を引き付けていてくれたことにより、私は医局へ連れていってもらうことができました‥‥‥バンラームは、私は診療所に行かないという判断をしていたんだ、と言いやがり、診療所に行く元気があったら診療所へ行っている、と言ってやると、やっと、気付いていなかった、と発言しました」
「趣味ね‥‥‥」
月明かりに照らされて、私や皆の影が伸びている。
身長というのは兄弟で順に大きくなるものではないらしく、私には青年にしか見えなかったのだが、年齢としては十二だったと仮定すると、ドンチッキの行動は、幼さというものが影響しているようにも思えてくる。
(青年‥‥‥背の高さで分類しているのかな?)
心の中では、灰猫も首を傾げている。
妄想というのは厄介で、誰もが否定しないという行いをしているだけなのかもしれないと考え出せば、私とドンチッキの何が違うのかとも思えてくる。
今頃宮廷では、私の言動を笑ってくれているのかもしれないが。
バンラームが何をしてきてくれたのか、それを知っている。
十分なのだと、どうやっても伝わらないと思える程に、愛情深いのがバンラームなのだと、お子さまは、いともたやすく悲しむこととなるのでは。
(さようなら)
どれだけ唱えても、零す砂がないのでは。
(また嫌か‥‥‥)
起きているお子さまは、やりたいようにやるのだと、何もない手の平でも見つめておくしかないだろう。
私は、崖から見下ろす魔女なのだから。
◇◆◇◆◇◆◇
まだ新築と呼べそうなお邸の玄関前に座っているのは、ヤマフジ家当主の奥さまのようだ。
玄関前にベンチを置いているのでは、いつも待っているのだろうと思えてしまう。
ヤマフジ家当主の奥さまの隣には衣類の入っていそうな籠があり、盆にのせた食事らしきものもあるのでは、やはりアヤレイスが見つからないのだろう。
(あ、気付いたね)
ヤマフジ家当主の奥さまは立ち上がり、こちらへと小走りで来てくれた。
「何か‥‥‥」
どのような言葉を使えばいいのかと、途方に暮れるのは当然だろう。
「荷造りして、離縁の手続きをして、ネズに戻りましょう」
ヤマフジ家当主の奥さまは俯き、押し込めておこうと耐えている。
「ヤマフジ家当主の投げ出した仕事を代行してきたあなたもまた、この地を治めてきた方だ。だが、領主ではない。あなたにとって、こんな地を治めることよりも、アヤレイスをリンドウの咲く土地で育てることが、より、大切なことであることを、私は願っている。滑り台ありましたか?」
「滑り台‥‥‥ですか?」
ヤマフジ家当主の奥さまは、どうにか顔をあげ、こちらへと手で示して歩いていく。
この方も、苦労に苦労を重ねてきた方なのだと、細い後ろ姿を眺めて思う。
建物の周りを歩いていくと、ヤマフジ家当主の奥さまは、私の胸元辺りまでの高さしかない扉を開けてくれた。
(私は入れそうだね)
リュックからブランケットを取り出し、外套を脱ぐと、ジーオが預かっていてくれるようだ。
「ありがと」
両腕に掛けるようにして、ブランケットを体の前面に広げると、中へと入り、滑り台を上っていく。
(暗いな‥‥‥)
大人が通ることは難しそうな大きさの通路なので、見つけたとしても、下りてみたり、上ってみたりすることはできていなかったのだろう。
(私でちょうど‥‥‥滑り下りるとなると、体を起こすから、後ろに倒れるようにしないとかな)
三歳程度の子が挟まるようには思えない幅の滑り台なので、挟まっているとすると犬だろう。
徐々に目が慣れてくると、前方に何か詰まっているようにも見えてくる。
(いー‥‥‥ぬ、だね。子供もいた。大きくなったね。アヤレイスでいいんだよね?)
犬は困ってはいるのだろうが警戒しているようでもあるので、どうしたものか。
眠ってしまったアヤレイスをずっと起こさずにいたのだと思えば、吠えるようなことはしないだろうが。
私が犬を越えて手を伸ばそうとすると、犬は若干歯を剥いている。
(噛む‥‥‥?すまんね、ご主人を預からせてくれ)
重しとなっているアヤレイスを私が押し上げておくことで、犬が挟まっている体勢から動けるといいのだが。
アヤレイスと犬の間にブランケットを押し込み、壁を作る。
(よおっと)
私がブランケットごとアヤレイスを上へと向けて押すと、犬は気付いてくれたらしく、すぐにくるんと体勢を変えたのだが。
(うぉううぉううぉう‥‥‥)
犬は私の隙間からアヤレイスの側へと移動してくれたので、脚を痛めてはいないのかもしれない。
(このまま行くか)
じりじりと体の向きを変えていき、広げた腕と背中でアヤレイスの重みを受け止めることができたので、このままじりじり下りていくとしよう。
(お犬さま、来てる?)
首だけで振り返ってみると、きちんと犬も下りてきてくれている。
(移動可能だね)
こちらからは、出口からこちらを見上げているヤマフジ家当主の奥さまが見えているのだが、ヤマフジ家当主の奥さまからは見えているのだろうか。
じりじりと下りていくと、目を凝らすような仕草をしているので、見えてきた、ということだろう。
(どいてくれたね)
ヤマフジ家当主の奥さまは出口の脇で待っていてくれるようだ。
このまま行けば、アヤレイスを受け止めてもらえるだろう。
(あ、どうも)
ヤマフジ家当主の奥さまは、まずは私のスカートの裾を押さえていてくれて有り難い。
考えてみれば、私はなんて格好をして出てくるのだろうかと笑ってしまう。
(すまんな)
目隠しとしようと私の外套を広げて持ってくれているジーオも、どのような恰好となっているのか予想できているらしく、こちらを視界から外そうとしながら笑っている。
(どうぞ)
ヤマフジ家当主の奥さまが、ブランケットごとアヤレイスを受け止めてくれると、犬も出てきて尻尾を振っている。
(どこも痛めてなさそうかな)
「ママ?!ママー!」
(びっくりした)
アヤレイスはどうやら、抱えていた特製ポガロをどかされたことで目が覚めたようだ。
ヤマフジ家当主の奥さまに抱えられていることに気付いて抱き着いたらしく、挿絵にでもしたいような光景となっている。
赤子というのは可愛いものだ。
いつか感じたその思いを、三歳程度となっても感じさせてくれるのでは、私にとっての赤子というのは、誰かに抱えられることがなくなる大きさとなるまでなのかもしれない。
リュックを背負うと、外套の前を閉じていく。
「特製ポガロを持っていたから、いつもより重量があって、スピードが出て、前を滑っていたお犬さまに追いついてしまったんでしょうね」
「追いついて‥‥‥何ともない‥‥‥?」
犬はヤマフジ家当主の奥さまとアヤレイスを見上げて、尻尾の勢いが増している。
犬の側にしゃがむと、犬は、何か?とやるだけだ。
「月明かりの中で見る分には、外傷はないようですね。ガヤディー、もう行っちゃったよー」
「アヤレイス!アヤレイスー!」
アヤレイスが自分も会いたかったのだと泣きだすと、ヤマフジ家当主の奥さまは、てめぇ‥‥‥!とこちらを睨んでいたのだが、じわりと笑ってしまうと、アヤレイスを宥めながら、玄関へと向かう。
移動する気になってくれただろうか。
奥さまはアヤレイスを抱えたまま、盆を籠にのせると、籠を手にして、馬車の方へと歩いていく。
もう荷造りは終えていたのかもしれないが、荷物などほぼ持たずにこの邸に移ってきたのかもしれない。
「フリューゼンもすぐに呼んでくるので、待っていて?」
ヤマフジ家当主の奥さまは、泣きたくないのだと、口を歪ませこちらを見ている。
余計な行いかもしれないが、連れて行ってもらいたいのだと微笑むと、ヤマフジ家当主の奥さまも、どうにか微笑んでくれたので、待っていてくれるだろう。
◇◆◇◆◇◆◇
「あれ、ポガロ?」
「読書処でソファーに座らせてた特製ポガロ。商品には、腕とか交換パーツがついてる。あれは、ソファーにきれいに座っていられるように重心が調整してあるから、商品より重くなってる。ヨツバからアヤレイスへのお土産だね」
「あの子が挟まっているのも、魔女?」
「ううん。バンラームがあの辺りで探していたということは、アヤレイスが見つからないとかだろうな、と考えて、どうせ、ヤマフジのご当主さまが奥さまには教えていない仕掛けをアヤレイスは知っていて、そこを使用して、外に出たとなると見つかっているだろうから、挟まってるんだろうな、挟まるとなると、と考えて、特製ポガロを持ってて、先にすべっていた犬に追いついて、犬は脚がよくわからない状態に挟まってしまって動けない、とかだろうな、って」
「あのくらいの子が使用できる仕掛け、で滑り台?」
「ヤマフジのご当主さまは愛人と一緒に別の場所で暮らしていることになっていて、アヤレイスを奥さまには黙って置いていったり、連れていったりしていたんだろうな、と思えば、屋内から屋外へと出ることのできる滑り台」
「そういうのか‥‥‥犬笛?」
「それって、どんなの?」
「犬には聞こえるんだけど、人には聞こえない音を出せる笛」
「それでお犬さまに先導させていたのなら、奥さまは、お犬さまがいない、送っていったのかな、と思えて便利なようでいて不愉快だね」
「だろうね‥‥‥」
アヤレイスを盾とするつもりでいたのだろうか、そう考えてしまっては、胸糞劇を予想して気が滅入る。
「犬笛か‥‥‥山羊も滑り台すべれるかな?」
「牧羊犬的にね。階段なら、とは思える」
「階段。滑れはしない傾斜、踊り場的水平部分、滑れはしない傾斜、ならアヤレイスは危ないからおじさんとこっちから行こうね、とお犬さまと別行動とさせて帰宅‥‥‥」
「愛人は犬が苦手?」
「ヤマフジのおじさんは、そういった手法で分離させておく?制御する?のが大得意なんですね」
「おじさんがそうさせたいから、が理由ではないとする?」
「そうやって、アヤレイスに奥さまのご自宅に戻りたがらせるんです。奥さまがいいと言って泣くんだよ、と嬉しそうにおじさんはアヤレイスを奥さまへと、手渡す‥‥‥」
「犬‥‥‥?」
「もちろん、愛人が妊娠すると、奥さまに子犬から育てさせました」
「大得意、だね‥‥‥」
「ジーオ、私が間の国に入ってもいい、って言ったよね?」
「‥‥‥何をするの?」
「あれ、国境」
ここからではまだ遠いのだが、建物と建物の間から、山の手前にある建築物が見えている。
「丈夫な囲い、ね。国境、かー‥‥‥」
「ああいった謎の物置っぽいものを経由すると、馬で跳んで乗れそうでしょ?」
ジーオは、建物からせり出すようにして存在している部分を見てから、国境へと目を移す。
「可能だろうね」
「煉瓦の道は国境を越えてすぐの地面と、山の傾斜を少し上った辺りにもあると予想している。ドンチッキが間の国側から来て、馬で国境に飛び移ろうとすると、国境の強度が心配だ」
「やりかねないな‥‥‥あいつにも情報を?」
「ガーロイド・スオウ中に、山からばーっと出てこられてしまっては、どうしようね?と言ってみると、目視してくれたようではあったね」
「隠れていた領民がいたな‥‥‥」
「どうせ、この辺りで実際に暮らしているのは、さっきの奥さまのご自宅と、愛人の自宅だけなんだよ」
「隠れ放題‥‥‥本来の国境との境も、そのようにしているんだろうな。ほぼ無人な住宅の間を、山羊を連れて歩いていたので、領民達も知っていたんだ、とやる?」
「そういう胸糞悪さをばらまくのが、ヤマフジの領主さま、と表現しようかな。土地としてはほしいよね?」
「もちろんだね。山を越えずとも、東部から回れるようになる」
「じりじりと山の近くへと国境を移していった、というのは左の国でも同じなんだけど、左の国では、間の国が、山を越えての統治を放棄した、みたいにまとめられている」
「間の国では?」
「左の国の王は、おまえんとこが作ったの壊れた、もっと丈夫なのをおまえの領地に作っていいぞ、と左の国の軍に見張らせ、間の国は、自国内に新しく作る、ということを繰り返した」
「そうして、せんまい領地を山を越えた部分に持っていても、となって、まあ、放棄、となったらしいね」
「左の国では、間の国が新しいのを作る、古いものとなったものを左の国が壊す、という作業分担、なんて言い方をされている」
「胸糞悪い‥‥‥根回し的なものを感じさせてくれやがる‥‥‥」
「ほしいのは山だよね?」
「え?山をぐるっと、というのが、今回?」
「だと思える。そのために、山を越えなければならない場所に国境の門を配置して、山の上の領地というものを、人家?常に一般人がいっぱい?山の下からも一般人が行き来する場所?」
「胸糞悪いばかりだよ‥‥‥軍や国が使用する場所、ではないものだとしておいてやったんだ、とする」
「それ。こんなにも東部側から山や山裾に手を入れてますねー、な現状としておいて、おまえんとこ、山を管理できてないから、左の国が管理してやるよ、通り道はヤマフジの謎の建築物のあった場所とするからな」
「間の国の落ち度、だとしやがり、それを隠しておくのに協力してやるよ‥‥‥」
「これまでの歴史で、何を隠し続けてきたのか。どうせ麻薬の製造地だそうなものを、間の国へと押し込めただろう」
「それだけで?と思えるが、山ね、とも思える」
「隠し場所としてこんなにも魅力的だ。何でも隠しておいてから?」
「‥‥‥間の国に返してやるよ?」
「今度は、軍や国だけが使用するものだとできるだろう?」
「山についてごたごたとしておいて、通り道、というものは残す、とね‥‥‥」
「間の国側にいるのが、とっくに隠し終えている。これからも隠し場所として使用するのか?と左の国は‥‥‥左の国には、間の国というのは、北部にもある山と西部南部にかけて存在している山が繋がっていたのを、削って削って今現在の国土の形とした、なんて歴史を子供向けにした話のようなものが間の国に存在しているものとして、存在している」
「それでは、削らせようと?なんてのが思い浮かぶが、間の国が山に加工を施したとする?」
「そういった使用法も思い浮かぶね‥‥‥間の国が間の国として確認している歴史では、一つの国となるまでに激しい対立、というものが存在しているよね?」
「それを山を削ると表現?」
「するお話としたようにも、私には思えたが、ここでも私だ」
「君が来たので、間の国が隠しておきたい歴史については無かったものだとしたとでも?」
「そこは逆だね」
「え‥‥‥?あ、激しい対立を山を削ると表現しているだけだろう、という解説?を君がしてくれて、なーんだ、で収める?」
「お子さまというのは便利なものだ。どんなこじつけだろうと、ちょっと思っただけなんだが、として言葉にする相手とすることができる」
「君が収めた‥‥‥とするのか。山も通り道も‥‥‥僕?」
「あなたはとんでもなく便利な存在だ。長男を凌ぐ存在感を示す次男であり、右の国とも確かな繋がりというものを確立している」
「右の国と左の国で、間の国を見張ろうね?」
「そこですね。長男達が手を繋いでしまっては、しかし、次男達が手を繋ぐのなら?」
「君か‥‥‥!」
「そうです。左の国と右の国の次男で手を繋ぐ、そこにあなたも加えてやって、はい仲良し!しかし、次男さまが今回のごたごたで、間の国の先頭に立っているのでは‥‥‥私は長男さまを帰らせてしまう、待て待て、君は次男だろう?と、私と共にいるのはどんちきババアとどんちき騒ぎをしていた長男さまだと左の国が認定。あなたは長男さまとしてごたごたを収めると、次男さまとして手を繋いだことにされるんです」
「次男って二番王子?」
「なんて孝行息子なんでしょう!とでも言いたくなるほどに王の息子として生きていますが、王は、ほとほと困り果てている‥‥‥のお演技に、ずっと、興じてきました。とんでもなく好都合に動きまくってくれているんですから、好きにやれ!そうしておくに決まっています。かちり、かちりと組み合わさった、そんな主張をしようものなら、あなたにはもうお相手がいるのだと教えてやるといい」
ジーオは首を傾げたまま止まってしまっていたのだが、ゆっくりと頭を元の角度へ戻していく。
「どうして?」
「第二王子お殿下さま中ドンチッキは、間の国の第二王子は、来ちゃった!をきっかけとして、右の国とのやり取り担当となっているのでは?と私に聞かれ、肯定していた」
「‥‥‥来ちゃった?」
「まずは、右の国の姫と間の国の姫、交換しよ!なのがきて、王妃さまなのかダイジババアなのかと曖昧な点を明らかにしていませんが、なめやがって!と思わされたので、間の国の姫は左の国への留学を考えているんですよー!と退けた、という出来事があった、と肯定してくれました」
「三番の世界?」
「でそのような出来事が起きているだろうな、と私が予想して話しました。次に、右の国の姫が、来ちゃった!とあなたを訪ねようとしていたので、国境を越えさせずに帰ってもらったそうです。ドンチッキは、第二なので右の国からお妃さまを迎えることになるだろう、と言っていました。ドンチッキは、あなたと右の国の姫の縁組みが、すでに存在していると思わされていて、それは右の国が主導で組み上げたものだと思わされているのかも?」
「そういった力関係だと思い込んでいる?!」
「ドンチッキの認識の中で、あなたのお相手を後宮に入れる、という手順を挟んでいるのだとすると、間の国へ移動しようとしていたのを、まだ準備できてないから!と戻ってもらったのかな?となっていそう」
「右の国の姫‥‥‥」
「どこにでも招待されていっては全員と踊る長男さまは、顔を立てるようなものだとして自国から、右の国でこそこそ抱きまくってる次男さまは右の国から、そうなると、どばかアンドッチとしてゼンマイどばか娘に恋しちゃってる三男さまは左の国から?いや、左の国からもらえるとすると長男さまだろう?だが、次男さまはもう右の国と‥‥‥なんて悩まされていそうにも思えます」
「あいつ‥‥‥」
呆れて笑ってやるのであれば、ドンチッキの中での認識というものを整理してやってくれるだろう。
「三人分の空欄を用意してやって、ドンチッキに書き込ませると面白そう」
「三番の世界とどんちきババアのお手紙世界の融合したものが、一気にわかりそうな気もするが‥‥‥」
「すべてを融合世界での出来事だと判断するのは危険です」
「そこがね‥‥‥」
「船を選んでいたのは、休暇中だとできそうなものを選んでいたんだろうな、って思ってるよ?堤防、知ってるもんね?って言っておいてください」
「あいつな‥‥‥」
「あなたの子猫ちゃんは右の国の姫だということを、ドンチッキは知らないの?別に子猫ちゃんがいるのに縁組みが出来上がりそうだから、次男用解散!とするための嘘だったってことにしてるの?ドンチッキが第二王子お殿下さまをってことは、次男さまはその縁組みが嫌で、子猫ちゃんとご成婚となるために第一王子お殿下さまやりたいの?と思っていたのが、どんちきババア?どんちきババアが子猫ちゃん?左の国からだから第一王子お殿下さまを‥‥‥?と思っていたのが、ポギャロ?ポギャロがどんちきババアの第一王子なの?次男さまは右の国との縁組みがあるんだからだめだよってこと?と思っていたのが、第一王子お殿下さますごくない?ど庶民と結婚しようと思うとそんなに‥‥‥?いつまでも若々しいのが結婚したよで、第二王子がどんちきババアとってことにするの?左の国としても隠れ暮らしていいよ、ってことでこんな状況?隠れ暮らすの誰?第二王子は右の国と縁組み?次男さまは残るつもりでいるの?となると次男さまがどんちきババアの第一王子?と思っていたのが、三番の世界?どんちきババアのお手紙世界?次男さまはどんちきババアを知っている‥‥‥?次男さまがどんちきババアの第一王子?いやポギャロがここにいないってことはポギャロがどんちきババアの第一王子?ドンチッキは誰をやればいいの?帰りたいな‥‥‥と思っていると、広場から出してもらえたので、とりあえずムオリットを第三王子として東部の軍動かそ!と思って移動してくれてるといいな」
「そうだね‥‥‥子猫ちゃん?」
「どんちきババアは、私を次男さまのところへと移動させたい。三番は王女さまのところへと移動させたい。そこにやってきたゼンマイどばか娘が、次男さまのところへと移動させたがれば、三番は、次男さま、三男さま、王女さま、でいくか‥‥‥となり、長男さまは次男さまのために私を査定していたんだ、とし、次男さまは三男さまのために査定していたんだ、とし、三男さまは王女さまのために査定していたんだ、とすることにしたので、三番の世界で生きる長男さまの中では、次男さまの子猫ちゃんはフユーだということになっているんですね。なーんだ、違ったのか、を出す予定でいますので、フユーは間の国の言葉を話せるようになったので帰宅した、と言ってやると?」
「どんちきババアにフユーになられることを阻止できる?」
「どの子をフユーにしたいんだ?を出してくれますので、初代フユーの素行が最悪だったせいで間の国は留学生なんて制度を禁止する、と教えてやってください。途端に弱腰となってくれますので、失礼する、とだけ言って退席しましょう」
「ドンチッキには教えてやれってこと?」
「間の国の王家の縁組みというのは、他国にどうこうされるものではない、とドンチッキの目の前で三番に言ってやってほしいですね」
「それでは僕は、三番によって君を押し付けられそうになって迷惑してるみたいだよね?」
「どうせ、フユーが何か失礼を?といったことを聞いてくれますので、そこで、フユーは帰宅した、です。三番は大喜びでどんちきババアに、私のせい!私のせいで!間の国は留学生なんてものは受け入れないそうだ!三番が送り込んでしまったからなー!心証最悪だろうなー!と言ってやります。どんちきババアは、そこを修復するためにだとして、三番を次男さまに寄っていかせようとしてから、どんちきババアなら私のようにはならないと断言してやって、三番によって送り込ませようとします。どうせ三番は、どんな形でなら受け入れるのか、みたいなやり取りをやってから、三番が直々に送ってきてやったんだから置いてやるよな?をやるために通るのが、ヤマフジの通り道です。しかし三番は通らないでしょうね」
「王の意向がぼんやりわかってはいるが従いたくはない?」
「あなたに会うのが怖いからです」
ジーオは、ふすっとなってしまってから笑い出す。
「三番に送り込まれたんだと言って訪ねてくるのか?」
「いいえ。私がどのような行いをしたのか、あなたに聞き取りをさせろ、と言うんです。あなたが何をどう言おうと、正直に話してください、とあなたのベッドに押しかけてきます。そーんなつもりなんてもうまったくだったのに、次男さまったら‥‥‥とどんちき騒ぎを始めるのはそれ以後ですね。三番によって送り込まれ、次男さまに依頼されて、私の素行を調べているんだ、と聞きまわり、やだもう次男さまったら!どんちきババアではないからって、そーんな小さなことが腹立たしいなんて!でももうどんちきババアにむしゃぶりつけるようになりましたので、次男さまはそーんな小さなことで腹を立てたりしません、と次男さまにむしゃぶりつかれている毎日をこれでもかと語って歩き、三番にはどんちきババアにむしゃぶりつけない毎日に苛立っていたんだと報告しておきますね?なーんて言って、むしゃぶりつかれてしまっていて、これでは報告できないわ‥‥‥と語りまくってから、留学生という制度を禁止なんてしないわよね?と言って、むしゃぶりつかれ、次男さまはどんちきババアを留学生とすることで納得してくれたから、と三番に報告するんです」
「きゃんきゃん子犬ね」
さっと両手を前足風に配置してみたのだが、ジーオは見たくないものを目にしたと顔を背ける。
ジョルムは、こっちだからな?と猫の手をやって見せてくれていて、心の中では灰兎が、ジーオはあっち側なのだと慰めてくれている。
「間の国が支所を置いてくれていますので、左の国の支所にするね!とやっておいて、いつでも攻めてやるぜ!そのために、まずはケイオスさまの私邸を合同部隊の本部とするつもりでいるでしょう」
「お手紙攻撃には、間の国側が、とあった‥‥‥」
「三番は王の息子だが、弱っているのだとどんちきババアに見せてやるようなことはしない。どんちきババアは、どんちきババアに会いたい次男さまが、今行くよ!な場所に陣取った、というようなものだとして書いていただろう。ケイオス、というご先祖さまは、戦神のように扱われていますよね?」
「ゼルガルも軍の先頭に立てよってこと?」
「ゼルガルという名だって、とご先祖さまだそうな誰かの活躍だの、ゼルガルという名の人物が出てくる逸話だの昔話だのと、たーっぷり作り上げていますね‥‥‥」
「それ‥‥‥どうするの?」
「確かにゼルガルさまの名には、軍神、という意味もあるんです‥‥‥しかし、どんちきババアにむしゃぶりつける毎日となれば、軍を率いて左の国に乗り込んでくるなんてことは‥‥‥まったく会えていないということではないんですよ?と前回のむしゃぶりつきがどのようなものだったのかを語っていくのが、どんちきババアの、供述、というものです」
「‥‥‥それが、供述」
「どんちきババアって、間の国の王子であるゼルガルさまのこと、こーんなに知ってるー!どうして知ってるのかって?」
「‥‥‥学者的な人物だとしたいの?」
「ピロートーク!ゼルガルさまったら、どんちきババアにむしゃぶりついては自分語り!どんちきババアが、ゼルガルさまに詳しくなるのは当然よね?」
「‥‥‥おまえ、言ってみて?」
取り調べの気配を察しては、お子さまは述べてみるしかないだろう。
「‥‥‥どんちきババアは、ルガさまに対抗しようというものではなく、ゼルガルさまが直々にどんちきババアにお妃さま教育を施しているんだ、としたいんでしょうね。しかしながら、ゼルガルさまご本人についてのみ、というのは、どんちきババアがまだ間の国にいない、左の国と間の国に別々に滞在しているという、国際的な、国家的な肉体関係というものだからであって、ピロートークだからじゃあない!どべどべにどべぐちゃりまくっているから詳しくなるほどに語ってもらっているんだけれども、ゼルガルさま、が!どんちきババアにゼルガルさまのことを知ってもらいたい、何よりもまずゼルガルさまご自身のことを知りたいよな?ということで、ゼルガルさまについてのみと表現したくなる範囲でのお妃さま教育を施しているんですね。ルガさまは影響していないかとなると、していないと断言はできそうにないような気もしますが、まったくの別物!ルガさまとどんちきババアのゼルガルさまは、もうまったくもって別人ですので、どんちきババアのゼルガルさまの育成に、私は、ほぼ関与していない、とするのが正当な判断だと考えます」
きりっと微笑んでみても、ジーオの表情は少しも緩まない。
「どうしてルガなの?」
「‥‥‥モルガ、知ってる?」
「‥‥‥もしかして、ゼルガル、から取ってない?」
「そう!ゼルガルさまも、ルガ、という部分がある!そういうこと!」
「‥‥‥どんちきババアが、勝手に、ゼルガルから取りやがったと考えていた、だけ?」
「どんちきババアの認定をもらえるようなルガさまにしなさいよと煩い、と煩いので、ゼルガルさまご本人にどんちきババアがゼルガルさまの子猫ちゃんなんだと明言してもらえたら、その時にはルガさまなんてごみだよね?とゼンマイどばか娘に聞くと、泣かれました‥‥‥三番はこの機会を逃すかと私を呼び出し、おまえはどういうつもりでルガさまを与えてやっているのか、と説教‥‥‥私は間の国の王城に移動し、司法部門のおじさん達に、第二王子殿下の子猫ちゃんとはどんちきババアではないのだと立証させようとしました‥‥‥しかしおじさん達は、第二王子殿下は子猫ちゃんをベッドで愛でまくっているのでと‥‥‥」
「え?まさか、やりかねないね、と言われたんだと思っているの?」
「私は右の国に移動しました‥‥‥王さま、が!身体的なお育ち具合で目覚めているかどうかは判定できない、と教えてくれました‥‥‥ガーロイドさんは、間の国からしてみれば、第二王子殿下の子猫ちゃんは第二王子殿下の手元にいるのだと知れ渡っているのに、どこぞのお子さまが騒いでばっかみたい、と教えてくれました‥‥‥文書にしてくれよ!右の国としても、第二王子殿下の子猫ちゃんがどんちきババアではないと認識しているんだ、という文書!と言ってみると、別人だと確認したのか?と言われました‥‥‥こそこそ子猫ちゃん抱きまくり帝王のせいだ‥‥‥」
「おまえ‥‥‥何してくれやがったんだ?」
「草取り‥‥‥庭師が色々教えてくれたので、あの離宮で栽培されているものが何なのかも気付けました」
「草取り‥‥‥?」
「文書をくれないと帰らない!と言うと、ゆっくり王宮中の草取ってろ、と‥‥‥ポギャロが証言してくれることになって連れて行くと、どんちきババアを目視確認して、別人だ、と言ってくれましたね!」
「そして居着いた?」
「私がきゃんきゃんやると、残ってくれました。三番の世界とどんちきババアの世界がまだ融合していなかった頃から、ずっと聞いてくれていたので、それぞれの世界の傾向のようなものを知ってくれていますし、それぞれの世界のゼンマイどばか娘の行いと実物ゼンマイどばか娘の行いを分類することもできるでしょうね。会長ご夫妻や、オオデマリのような家のご当主さまと先代辺りな皆さまは、ポギャロがどなたなのか知っていますが、基本的には、スオウの砂浜に流れ着いていたポギャロを私が拾ったことになっています」
「‥‥‥流れ着いていたのを拾った?」
「ので、左の国の言葉だとか、習慣のようなものを学んでいくところなんだー」
「あー‥‥‥君は右の国の言葉もできるの?」
「私としては、間の国の言葉と同じだと思ってます。公的な場で話していると、右の国だなー、な言葉使い?単語?は出てきませんよね?」
「僕は、こっちがまだ子供だから、こっちに合わせてくれてるのかと思ってた。そういった、一部なものなの?」
「右の国だなー、なものだけを集めても、かなりな量となるので、一つの言語とすることも可能でしょうが、私の勝手な分類としては、右の国だけのものとしておきたがっている部分ですね。右の国に来たなー!って思ってもらえますよね?」
「あー!思うね」
「右の国としては、右の国だなー、な言葉を使用するのがお持て成し、という感覚も有しているように、私は思ってますが、右の国だなー、な言葉がさっぱりわからない誰かだと、食事の席に移動するんだと思ったのに、内輪だけの席についてきやがって、ってこと‥‥‥?と落ち込むこともあるようですね。大人として内庭に通してもらえるでしょうから、そういうものだと楽しめるように、宴席で使いそうな言葉は知っておくと良さそうですね」
「‥‥‥内庭って、後宮のお姫さま方な場だよね?」
「ベッドに連れていくとか、そういうのはできません。お酒を飲みながらのお食事、だけ、な場ですので、出会いの場、となる可能性はあっても、嫁ぎ先の候補として会わされた、だとか、お見合いしに来た、といった場とすることはできません。客人を内庭へと案内するのは王家の皆さまですので、どこかの店での宴席に出席する、といった行いのような危険性は、無、です。右の国としては、もちろん、あなたが選んでくれるとありがとう!なお姫さましか出してきませんが、ご成婚への第一歩、というものとすることはできません。出会いがあるかも!な期待をされてはいる、と思っておかないとな、というものですね」
「危険性は、無?」
「そこは、ルツ、マナ、テオのような方々で行けば、会食にお酒もちょっぴり、なものとなるでしょうが、あなたが一人で行って、嫁ぎ先として気に入られると、奥庭に通してもらえるかもしれないですね」
「泊まっていける?」
「そうです。しかし、お部屋付き、という役職?仕事中な人物?として出てきてくれるのは、あなたが気に入った方ではなく、あなたを気に入った方、というものです。お仕事中ですので、二人きりでお酌をしてもらって会話、という程度な時間を持ってみてね、な場、ということになっている、と私は考えていますが、そこは抱かないと!なのかもしれませんし、お姫さまによるのかもしれません。なかったものとして扱われる、というものではないんですが、奥庭に泊まったんだよ!なんてことを言葉にするものではない、というものであり、さっきいたお姫さま方の誰でもいいよ!ってことですよね?」
「泊まることにするとね」
「誰でもいいので娶ります!と泊まっていったからには、あの姫をと申し込みに来るんだろうね?と、右の国に待たれることになります」
「ねえ‥‥‥僕、泊まったのに来ない、って‥‥‥」
「来ちゃった!なんてのは、右の国のやり方ではありません。が、というものとなっているのは、右の国の王家付近な皆さまだとか、内庭や奥庭というものを知っているような皆さまだけですので、そういった皆さまが耳にすると?」
「え‥‥‥っと‥‥‥どこか別の場所で、責任取って、な行いをしたんだろうな?」
「上層に含まれていない女の子さんに手を出したから、責任取って、なんてことやられてるのかなー」
「‥‥‥ジョルムは?」
「お姫さまと誤認してくださいね!とやってみると抱いてもらえたので、よし!責任取って!」
どんよりしたジーオを見ていると、ドンチッキが誤解しているのではないのかもしれないと思えてくる。
(でも、来ちゃった、という部分はね)
「ドンチッキが真に受けてしまっているのでは、間の国の王家が認定しているようなものです」
「それだ!君!右の国で何してたの?」
「草取り」
「‥‥‥君って、愛情を疑わないの?」
「私は親の愛だそうなものを知らないので、誰がどんな愛情を向けてくれようとも、ぜーんぶ、お子さまってお子さまー!なものだとしか分類できないそうです」
「‥‥‥バンラームさんは、何を言っているの?」
「愛情というものを疑わないにも程がある、と言っています」
「‥‥‥どういう意味?」
「腹立つ、丁重に扱え、生存を知覚させるな」
ジーオは、小さく頷きながら前を向く。
お子さまというのは生きにくい。
いなくなる、それをするには、お子さまであることが邪魔になる。
だが、お子さまの面倒なんてものを見ている場合ではないのだと、この人もまた、私のいない場での生存を望むのだと知っている。
(背があれば大人、ね)
道を一人で歩いていても、誰も気に留めない大きさと、そろそろなっているだろうか。




