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シアの国  作者: 薄荷堂
魔女
85/106

85.移動

「次男さまが思わせぶりなことを言ったんだ、とされてしまえ‥‥‥」


ジーオからは、鬱陶しいのだと見下ろしてくれている気配がするのだが、どうにも顔を上げる気になれない。


私というのは、こうも簡単にやる気をなくすお子さまなのだと、心の中の崖では、眷属達が忙しい。


「どんちきババアと入れ替わられてご成婚、やったー!どうでもいいな‥‥‥私はチアではない」


やる気、それの重要性を知ったのだと、お子さまは眷属達に囲まれていたいのだが、それは魔女に頼んでおいて、私は行くとしよう。


(うぉっ!)


肩紐を掴まれてしまっては、立ち上がるのによろけてしまう。


肩紐を掴んだままでいるジーオは、腹の立つ笑みを浮かべている。


「頼みというのを話してみたらどうだ?」


「どんちきババアに、おまえとどべぐちゃることだけ、させておいて?」


「‥‥‥僕は、三人分じゃない」


「私のミッタさまを乗っ取って、ゼンマイどばか娘を色惚けさせていたのはおまえという、無意識偽装記憶操作性行為帝王だろ?三番がすぐ気付いて、ミッタさまを魔界に引きずり込んでどべぐちゃ野郎としてくれやがり、三番から守る気概のないおまえに、私の生み出す王子をやりたくない、と言ってやると、ゼンマイどばか娘は、ミッタさまをやってるのは三番の大好きなバンラームさんだから!をやりやがり、三番は、ゼンマイどばか娘がお妾さん帝国の帝王と言い出すまで、バンラームをどべぐちゃ野郎にしてくれました。おまえはどうせ、おまえが並ばせてやっていないとしている女の子と何をしようが、そんなものは無意識!何万人分なんだ?」


ジーオは、表情というものを変動させようとしてはいるような気がするのだが。


「どうせ、そこら中の女の子全員と無意識偽装記憶操作性行為を実行しているのに、未経験だってことにしてるんだろ?未経験帝王」


ジーオは、口元をひくひくさせているので、怒り、というものを蓄積していっているのかもしれない。


「何が子猫ちゃんだ。女の子を遠ざけておく気はないんだと丸わかり帝王。隣には、立たせない、それがおまえという、こそこそ抱きまくるのがお上手帝王」


立ち上がり、こちらを見下ろすジーオは、時間経過というものを思わせてくれて、お子さまは足が竦む。


あの日離宮にやってきた少年はもういないのに、私は今現在も、変わらずお子さまをやっている。


うんざりする。


それなのに崖では魔女が泣いている。


(行かないと‥‥‥)


後ずさるように足の位置を変えると、ジーオはリュックの肩紐を離してくれた。


ジーオによって、くるりと向きを変えられると、バンラームが心配そうにしているのが目に入る。


お子さまはいなくなるのだと、俯かずにいるのだと、心の中では灰猫が魔女の肩へと移動する。


私が丸の出口へと向かって歩き出すと、隣の丸ではポギャロの部隊が移動を始めた。


ポギャロの部隊の皆は、ゼルガルの御印のバッジへと替えていて、先に広場を出ていくので、馬の準備をするのだろう。


「バンラーム!この広場には、炊き出し班だけを残せ!」


「移動だ!」


バンラームが指示を出すと、中には皿を持ったまま立ち上がった人員もいるのだが、ミカシュの部隊の姿がないようだ。


「移動する人員は、できている食事を残らず持参しろ!」


私が追加で指示を出すと、一緒になって立ち上がったマーシャに対して、デューイとパミザは、じゃあね、とやれたようだ。


中央にあるテーブルには人員が集まり、その横を、私に続き、ジーオの部隊も通り過ぎていく。


ポギャロが先に出てしまっているのでは、マーシャはジーオに続く判断をするようだ。


「近付かないように」


(喋った‥‥‥)


『でも、その、フユー!一緒に連れていって!学問所!入りたいの!』


マーシャの前に立ち塞がる護衛はその場を動かず、マーシャは護衛の横からこちらを見ようと背を伸ばす。


私はもう、部外者だというのに。








◇◆◇◆◇◆◇








「会ったことあるの?」


「一緒に集めさせてね、と寄ってきました。真っ赤なさくらんぼな、色石なんだかガラスなんだかなバッジを留めてある、桃色なハンカチを胸元のポケットに入れていて、お揃いで持とうと言って、胸元にあるハンカチと色違いな、青系のハンカチを受け取らせようとしてきました。護衛の皆さんが追い払おうとすると、次男さまから聞いていませんか?一緒に集めることになってるんです、仕事をさせてもらえないと‥‥‥と言ってから、フユー!一緒に集めさせて!仕事がしたいの!お母さまもしっかりねと言っているし、お父さまもこれでは次男さまに顔向けできないわ!弟達の見本になりたいのよ!学校だってこのために休んできてるのよ!」


「学校?」


ジーオが笑ってしまうのは当然だろう。


「イヌマキの末のお嬢さまの周囲でも、何あれ?本当にタイサンボク?というのをまず思ってもらえていたようです」


「領主の娘だろう?」


「ご本人が上や前にという方ではありませんので、周囲の皆さんも、持ち上げたり背中を押すようなことはせずにいたようですが、気質というもので前に出てしまいがちな人物には、自分より前に行ってよ!とやられてしまうこともあったようですね。険悪な関係というものではなく、勝気?強気?だそうで、焼き立てパンを前にして、わー!と寄っていってしまってから、あ‥‥‥となってイヌマキのお嬢さまの後ろへ回り、真っ先に行ってよ!と小声で言うような関係だそうです」


「便利に使われてない?」


「そう思えて億劫に感じることもあるそうですが、嫌になるような強引さというものではないそうですし、そうか、自分が一番先に受け取りに行くべきか、と気付くこともあったりして、子分として動かれるようなことを避けたいのなら、自分が先頭だと動くのが自分の快適さを保てる、んだよね?と学んでいる途中、というお方です」


「悩ましいよね‥‥‥」


「どうせ、どお嬢さまな所属先として目を付けた場にやはり所属させてもらえず、席を空けろと、所属しているイヌマキの末のお嬢さまへの攻撃を始めたんですよ‥‥‥」


「そうか‥‥‥そうだな。祭りの頃だと、まだ支所の情報は出ていないのか」


「メグノアードくん、というのはおじさん達としては、そーんな!弟のふりなんて!というものですよね?」


ジーオは少し考えてみてから、重そうに口を開く。


「お殿下さまを知っていると、苛っとする、というものかもね‥‥‥」


「第二王子お殿下さまやってたのか?と思うのは、今となってはというもので、その時は、どなたかの側近であるドンチッキを対三番ケイオスさまとしてるのかな?と思いました」


「別人?」


「髪型変わってて、背が伸びてて、顔つきとか声も変わってて、軍服着てて、話し方も変化しているとなると、初対面です。二分するとなると、モゲノスはシャクヤクで、ドンチッキはサカキ」


「そう聞くと‥‥‥昔はもっと、と思う。入れ替わるって、どんちきババアがタイサンボクの長女に?」


「借金持ちなマーシャを手元に置いておくのではなく、三番の女の子です!と左の国の学問所に所属させてもらおう、という考えです」


「利用し合うってことだよね?」


「そうです‥‥‥そこでも、かちりと組み合わせることのできるものを、それぞれが持っている、という状況ですね。どんちきババアは、入れ替わらせてやる、なんてつもりではなく、シアという派遣医局員だとして間の国に連れていってもらえれば、それでよし。連れていってもらえなかった場合には、マーシャの父親を使用して、お相手であるアローラとして次男さまの手元に置いてもらおうとするでしょう。それでも次男さまに辿り着くことができずにいると、フユー・マツリカという留学生だとして、次男さまに寄ってこさせようとするんです」


「それがどんちきババアだと知らないどなたかが耳にすると、僕が君を足蹴にしたように聞こえる‥‥‥」


「こう言ってはなんですが、あなたと同じ階層にいる皆さまならば、あなたと共にいないあなたのお相手なんてものは、はあ?と思うのでは?」


「僕は、君から見て帝王ではない、と?」


(あ‥‥‥)


実例、というものが私なのだと示しておいて、何を、と自分でも思う。


「‥‥‥帝王は、帝王の女の子を自称しているようなのを、間の国に入国させてやるの?」


「そうか。そういう手段があるね。どうせおじさんも出てくるんだろうな‥‥‥三番のところへと移動?するより、僕が後宮に入るように言っている?」


「私もそう予想します。匿ってくれ、逃げ込ませてくれ、私の指示であり、次男さまの意向だ。しかし、私は、ムオリットと忍者と三番と図書庫の長官に愚痴っておきました。とんでもごちそうおじさんに見境のない次男さまが自由に並ばせてやっているせいで鬱陶しい、と‥‥‥」


「三番?」


「なんとゼンマイどばか娘は、ゼンマイどばか娘文字を生み出しました」


「文字‥‥‥?」


「象形文字ってありますよね?」


「あー!すごい!」


「図書庫の長官も、独自な文字だと認定してくれました!三番は当然、読み書きできます!三番はゼンマイどばか娘文字を目にすると、ゼンマイどばか娘に答え合わせをしてもらわずにいられませんので、ゼンマイどばか娘のところへと向かい、ポギャロとあなたに捕獲され、三番の存在を知覚することも、ゼンマイどばか娘があなたに知覚されているのだと認識することもせずにいたゼンマイどばか娘を目撃したことにより、ご機嫌が崩壊‥‥‥まず叫ばれたでしょう?」


「そうだったね‥‥‥爆発させに行ったの?」


「忍者は完璧に充填してくれました!ムオリットが食べるのに爆発させていて、私は別料金でクッキーのお皿があることを教えてやりましたよ」


苛っとしたらしいジーオは、すっと私を視界から外すと、目にしたものに溜め息をつく。


(お、早いな)


『殿下!こちらでしたか!』


「近付かないように」


『急がないとならないんです!殿下、私が先導します!』


護衛に前を塞がれているマーシャの父は、その場を動かず、先導すると言ったのに、と思わせてくれている。


『お父さま!』


『おお!アローラ!どうしたんだ?待っていたんだぞ?』


『その、フユーに‥‥‥』


ちらりとこちらを見るマーシャの頭に手を置いたマーシャの父は、怒りを顕わに私を睨む。


『君が殿下を誘導している留学生か』


『おまえの娘は、左の国の軍の食事を盗み食いしていた』


マーシャの父は、ぐっと胸を引いてマーシャを見下ろし、マーシャは、言い訳を探して慌てているようだ。


「いやー、保護者が見つかってよかった!」


デューイが出てきてくれたのだが。


「デューイ、あなたには仕事がある。パミザ、お得意さまを単騎で帰宅させて、パミザもお泊まりだ」


「わかりました!」


パミザが馬へと向かうと、デューイも支度を手伝ってやるようだ。


どうするんだ?と見てやれば、バンラームは、ふいと目を逸らし、部隊を率いて移動していく。


ぞろぞろと皿を手にした人員が続いていく中で、マーシャの父は、マーシャを馬に乗せに向かう。


「一緒にお泊まりする気になっているのでは?」


「パミザの馬には追いつけません」


「そんなに?」


マーシャ親子は馬ごと取り囲まれていくのだが。


(吐き気がする‥‥‥)


「バンラーム!何をしている!そこの部隊から馬を取り上げろ!」


バンラームは、え?と振り返り、マーシャ親子を取り囲んでいる部隊に指示を出す。


「歩きだ!歩きで連れていけ!」


マーシャ親子を取り囲んでいた部隊の皆は、そそくさと馬を繋ぎに向かうようだ。


何もかもが嫌になるのだと、心の中では灰狼がだれんとなっている。


「ナラヤ!おまえが部隊長だ!そこの部隊を拘束!宮廷へと押し込んでから、ジングイにおじさん達も連れてくるようにと伝達を!」


「仰せのままに!」


ナラヤの部隊が動き出すと、バンラームは、落とし穴を踏み抜いたのだと、こちらを睨んでから、前を向いて歩いていく。


「あれで部隊長?」


「長ではありませんが、局長でもありますね‥‥‥」


「どこのとは書いていないそうな局長‥‥‥」


『何をするの?!フユー!助けて!』


見ていないとならないのだと、拘束されていくマーシャが泣いているのを眺めていると、涙なんてもので何が知れるというのだろうか、そんなことを考えてしまうのだが。


恩知らず、そう言われるのを聞くことは、もうないのだろう。








◇◆◇◆◇◆◇








「君って相当恨みを買っていそうだね」


「私を殺したい、人、という生き物がいるのが、この世という場所です」


ジーオは微かに綻び、溜め息でもつきたそうだ。


「‥‥‥違いない‥‥‥この領地は広場が多いね」


私達が移動してきたのは、四角が一つの広場であり、先ほどの丸が四つの広場とはさほど離れていない場所にある。


「以前は牧歌的と表現したくなる土地だったそうですが、今代領主となって様変わり、となったようです」


ポギャロの部隊も広場に入り、この広場には、ジーオの部隊とポギャロの部隊だけがいる。


ポギャロは伊達眼鏡を外していて、なんだか懐かしい眺めだ。


「すすすっと寄ってきて、まず言ったのが、三番から聞いていますか?だよ‥‥‥」


「三番をどのように扱うのか、なんてものを盾にされてしまっては‥‥‥」


ポギャロもジーオも溜め息となって、腰を下ろす。


うんざりするのだと、夜空なんてものを見上げている場合ではないのだが。


(夜か‥‥‥)


「護衛さん達は、武力、というものを行使できる人員でしょうか?」


「可能だ」


「今すぐだ。国境という建築物を守れ」


「散れ」


ジーオが指示を出すと、ドンチッキについていた護衛達が、すぐに広場を出ていった。


「図面でも何でも持参して、お偉いおじさまをずらりと引き連れ、王を出せ、国境を移設する、そう切り出す。間の国の記録、というものに手を加えたのがどいつなのか、そんなものはすぐにわかる。決して壊させてはならない。私の要求は、旧モクレン、カイドウ、レンギョウ、ヤマボウシ、ヤマフジ、オオデマリ、スオウ、モッコクを間の国へと加え、国境の門というのはレンギョウ領に。左の国の軍も警察も追い出せ。間の国がもらう、そのために、軍を使ってもらいたい。他国から攻めてくるようなことがあれば、私が皆殺しにしておこう。どこまで守るのか、それは、間の国が国境を敷く場所までだ」


ジョルムはすぐに地図を取り出し、ジーオの前に広げて置く。


ポギャロは顔を強張らせ、すぐに思考を巡らせる。


「国境を‥‥‥?」


「国境という建築物の所有者は間の国だろう?だが、ヤマフジ領内へとたわませるように移設してあり、その向こうには煉瓦の道でも敷いてあるだろうね。そのうち左の国の軍は、ヤマフジ領主を見つけることができないのでは、だとして国境という建築物を調べ始める。決して許すな。ポギャッドについては素通りで、ジーオについては、私の所有物だと認めなかった」


「何をやらせるのかとなると‥‥‥」


「王子だとして扱い、謝罪してきたのに、この地に来ている軍部局の部長は出てこなかっただろう?」


「バンラームさんの裁量だとするのか‥‥‥」


「バンラームは、ジーオを第一王子殿下だと認定しやがっているだろうね」


「入れ替わらせるために、ジーオをポガロとしておいて、ドンチッキはガーロイド・スオウ‥‥‥」


「ジーオを先頭にして国境を壊し、少数合同部隊だとでもしておいて、左の国の軍が間の国へ、それが左の国の王の、予定、だった。ヤマフジ領は間の国によって汚染された、そう主張するつもりで用意しまくっているに決まっている。黙らせろ。国境だの煉瓦の道だの、そんなものについて発言させるな。国境を移設する、そう話しに来ているんだ、現地の調査など必要ない。新しく国境を建造するのは、間の国なのだから」


「現物がどうなっている、なんてことを出さず、国境を移設する、そう話す」


「山麓部、とでも呼んで、雪中行軍を行うのは間の国の軍としたい。あなたには、館主という最有力と言って間違いないお方がついている。スオウもオオデマリもと、誰も彼もあなたが大好きだ。ティファカさまは馬に乗れるようになっている?」


「なっている」


「王太子殿下の初仕事だ。もちろんラージウが首席従者!就任の挨拶、そう言って左の国の王を引きずり出そう。国境の上を走っていくと早いだろうが、強度が心配だ。ヤマフジとカイドウの境を、馬に乗って移動できるのかとなるとわからない。私としては、亡命だとして東部のあの離宮に潜んでいたリーシャ・シロツメクサが、国境と煉瓦道について供述した、とするのがおすすめだ。フユーについては、帰国した、本人にそう確認した、と言ってもらいたい。カイドウのじーさまは、個人的にティファカさまをとても心配している。きっと一緒に行ってくれるだろう」


「シア‥‥‥」


その先などいらないのだと、微笑んでみると、ポギャロはそっと私の手を取り、目を瞑る。


私の手に祈りを籠めているように見えるこの作法は、間の国では感謝を、敬意を、親愛を伝えてくれる。


どうか、そう祈る私は無力なのだと、こうも虚しい。


ポギャロは私の手を離し、待たせていた馬へと向かっていく。


護衛達もこちらに小さく微笑み、馬に乗ると、ポギャロに続いて広場を出ていく。


見送る皆は、これからもポギャロと共にいるだろう。


悲しい。


いくらでも悲しい。


もうないのだと。


またも失う毎日というものを、私は手にすることができていた。


それもまた、愛おしい日々だったのだと、思う私がいるのだから。








◇◆◇◆◇◆◇








「国境を半分程度崩して、ヤマフジ領内へとたわませるように、今見えている国境を作り、残りの半分で、国境の向こう側に、煉瓦の道でも敷いている、と私は予想している」


「半分程度の高さになっている、ということだよね?」


「そうです。国境だとは思わずに、丈夫な囲いだなー、と思って素通りします?」


「無理だよ‥‥‥」


「いかにもな変化があり、領主が見つからないのでは?」


「そこから間の国へ逃げたものとして、合同部隊だとして間の国へ、か」


「すべて準備万端で待っていたんだ。犯罪を実行している現場というものに踏み込みはしても、それだけ。ヤマフジの領主は見つければ王のところへ連れていき、おっきれーな臣下として扱うことも決定済み。そのうちバンラームが何かしら叫び、それを合図としている領主は、山羊と一緒にのこのこ出てくる」


「ここも君?」


「ずっとあっても平和だったんだから、と合法だとして、麻薬を使用できる売春特区を旧モクレン。そうしておいて、私によって、ヤマフジの売春は、淘汰、という結末を迎えたことにさせる。刑務所をぼんぼこ建てるのは、旧センリョウ。旧モクレンにある国境を使うのは、左の国の軍、のみ、だとして間の国に乗り込み、間の国が、ヤマフジを汚染したものだとして攻撃する」


「西部にはドンチッキだ‥‥‥」


「作り上げられてしまっているが、そんなものを出してくれば?」


「え‥‥‥っと、文通していたとできる何かが何も残っていないなんてことは、とかになるのかな?」


「三番やどんちきババアが使用していた便箋に封筒にインクにと残らず、どのようにして手に入れたのか供述させてやり、どうやって届けていたのかも供述させてやり、というようにいくらでも突く箇所はあるが、どのようにして文通を始めるに至ったのか?というような部分を突くといいね」


「どんちきババアと繋がっているものとして調べてやるのも?」


「それも面白そうだね。鬱陶しいので除けておいて、出会いから語らせてやっておくのも一つの手だ」


「語らせる内容は限定しておかないと、と思うと面倒だな」


「通訳としてゼンマイどばか娘を隣に置くといい」


「効果がありそうだけど‥‥‥」


「ゼンマイどばか娘文字での筆談を強要してもらおう!」


「そういう通訳か」


「私は散歩に行く。国境に散らす人員を追加する?」


「僕も見ておく。皆で行こう」


皆で広場を出ると、監視していました、とデューイが寄ってくる。


「お宿で待っててやれ?」


「‥‥‥何を?」


「三番」


「え?!何?!が起こる?」


「ティファカさまの前に並んでいない、なんて思い違いをしている三番は、今夜はどんちきババアにゼルガルさまを与えてやらない」


「すごく嫌な何かが起きているね‥‥‥?」


「使用者を間の国に定めた超絶危険生物だとして私を殺したいんだよ」


そういうのね、と落ち着いてくれては、追加してもいいだろう。


「私は誤解しているんだー、間の国は私に利用されているんだー、の胸糞劇を上演されても、そうなんだー、としか言ってやらないようにね」


「下等生物返しね。さっきの親子だそうな二人、何?」


「おまえは?」


デューイは、ふっと微笑んでから言う。


「‥‥‥潜入捜査なんだって」


待っているので聞いてやるしかないだろう。


「制服を着用する選択をしたのは?」


デューイは得意気に膝を曲げると、膝にあるアップリケを、びしっと指さす。


「‥‥‥規定にある、改造、にあたるものだと判断する」


「ほー‥‥‥?」


「これこの衣服については、制服、だとは‥‥‥?」


「制服じゃないやー、着よ、で、軍の人員と一緒にいたのではなく、誰だかわかんないようなのと一緒にいて、何を捜査していたの?私は死んだ、と報告してくれるんだよね?」


「‥‥‥どうして、僕は、ここにいるんだろうか?」


「誰を緊縛したの?」


「‥‥‥ドンチッキ」


「ドンチッキを緊縛したあなたは?」


デューイは、きゅっと眉根を寄せてしまう。


「手下かな‥‥‥?」


「ほー‥‥‥では、シュイージ達も合流すると、左の国の御曹司さま人員を、残らずカイドウへ連れて行って?」


「残らず、ですか‥‥‥?」


「デューイもだよ?ジングイも来るから、ダドは合流してからカイドウヘ。大規模演習は犯罪者である私の死亡により終了。旧モクレンに移したものは残らず、残らずだ、宮廷へと移せ。そうお情け雇用から三番に伝えさせてやれ。お情け雇用と三番の率いる軍の人員を、休息に入らせることなく宮廷まで戻らせろ。ミカシュには、丸が一つの広場で待機しているようにと」


「仰せのままに」


デューイが向かう先は、丸が一つの広場だろうか。


ジーオは、溜め息ながらに言う。


「何なんだ、この国‥‥‥」


「私が陥れた」


「‥‥‥豆腐?」


「私を夏に生かしておくには必須な食物、それが豆腐‥‥‥もちろん私の満足のいく味‥‥‥きれいな水を確保できる涼しい地で、豆腐を生産しよう!間の国の先の王さまも乗り気になってくれて、豆腐の生産は安定!お年を召した皆さまに大人気!」


「そうして追放?」


「見つけさせたいものを見つけないのでは、ごみ、という判断をされることになる。お宿を確保しておかなくていいの?」


「ジョルム」


「了解」


ジョルムは護衛と、部屋数を話し合う。


「国境を?」


「国境上部、という空間を経由して、建物の屋上へと行けるようにしてある」


「‥‥‥は?と思う」


「この地はそういった、仕掛け、と呼びたくなるものだらけなんだね。私は、カイドウの領域になると、間の国が建造したままの国境が残っていると考えているが、窓のようなものを抜けるように細工しておいて、いかにもここで受け渡しという作業をしています、といったものや、国境内部を空洞としておいて、いかにも何か貯蔵していたのをどこかへやりました、といったものを出そうと考えているような気もするし、なーんだ、な物を勝手に貯蔵されてしまっているような気もします」


「窓に、空洞‥‥‥建造後に加工するのは可能だと思える」


「西部から東部まで、国境に沿って道があると、とんでもなく便利ですよね?」


「最高だね」


「西部支所は高台な場所にありますので、見えない場所に厩舎を埋め込み、そこから東部まで移動、なんてことをしたくなります」


「煉瓦道ね‥‥‥」


「しかし国境の向こう側でも、カイドウの向こう側な領域には煉瓦道は無い、と考えています」


「いかにも東部へだね」


「しかし、偽装する必要があるでしょうか?」


「使う場所にだけ、敷いた?」


「西部は高台であり山なので、どこから下りるとなると、西部支所、となってしまいます」


「東部‥‥‥右の国‥‥‥」


「東部から煉瓦道を通って、ヤマフジへと出せば、それからカイドウへも、とできますが?」


「山?」


「もちろんあります。しかし、使用してはいないように思います」


「そこも、いかにも何か貯蔵だの製造だのしていたのを隠した、と、するために、合同部隊だとして調べてやりたかったのか」


「しかし?」


「国境の整備だのといったものを行うために、間の国が敷いたんだ?」


「それを間の国が出してくれては、左の国はどんどこ出してくるでしょうね。ヤマフジで生産したの?なものはどこから来たのか、間の国だ、どうして?麻薬入り!」


「簡単だな‥‥‥」


「間の国の潔白を掲げることを、してやることはありません」


「そうだな。そんな部分、と言ってしまってはだが、そこを争っていては、遊んでやっているようなものだ」


「胸糞悪い奴らと遊んでやることはありません。どうせ、あっちから、でもね、だの、ここについてはどうなの、だのと出してきます。左の国は私の所有物をどのように扱っていたのか、それで黙ってくれます」


「君、無敗なんでしょ?」


「全勝!しかし、左の国は、何も、変わらなかったようだ」


「君がいなくなってやれば変わるとでも?」


「私がいなくなれば、私にいなくなってほしい皆さまは、過ごしやすくなったでしょうね」


「権力だの法だのと、何でも揺らいでいくよ‥‥‥」


虚しい、いくらでも虚しい。


守るとは何なのか、私にはわからない。

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