77.観劇
「フーシェン?」
「私は勝手に、ママさんとパパさんの実家はあんまりなので、右の国出身なパパさんのことは大切に思ってるけど、パパさんの実家とは別世界です、誘拐とか絶対しないでね?ということでもあるんだろうな、って」
「そういう風にも、使えるって言うとあれだが、贈っておく?願いを籠めておく?というものともできるな」
「ロシーノは、ばーちゃんに会いたいって言ってたんだと思うんだよ」
「え?」
「ロシーノは、ばーちゃんに会いたい、ばーちゃんに会いたいって言ってて、それを聞いてたジダード達は、こいつ、バーなんとかなのか?ってどっかで思ってたから、バがつく名にしたんだろうなって言ってた」
「へー、あ、ドがつかないから?」
(ん?)
「‥‥‥おいくつなんですか?」
「おまえいくつ?」
(いくつ‥‥‥私‥‥‥)
自分の年齢だというのに出てこないでいると、バンラームの目が不審者を見る目になっているように思えてならない。
「‥‥‥ゼンマイさんいくつ?」
「知らん」
「ランは?」
「ランは五つになったから、七つになるのか。俺は十五になる」
(そういうね)
ビュードノーアをおじさんだと思っていたのだが、これではどうしたことかと思ってしまう。
(考えないでおこう)
「間の国の王女さまであるティファカさまは、これぞお姫さま!というふわふわ金髪なんだよ。左の国って髪の色でってのがあるでしょ?」
「あー‥‥‥え?何だっけ?同じ色だと自分の子?」
「そういう部分もあったんだろうね。親の優秀さを色濃く受け継いでいるという根拠なんてもんにすることができたから、親の髪色と近い髪色の子を跡継ぎに、というものだったみたいだけど、いいお家を潰してやろうってものだよね?」
「金髪じゃないとだろうが!」
「そういうの。そうやって、この子隠し子だろだの、そっちの子にしろだの、この子を奥さんにだの、文句というものを外から言い放題だ。アンドッチが言うには、三男であるギドリンコが王太子ということは、長男であるドジオは、いつでもギドリンコを先頭として、ドジオは最後尾であるように、順番というものに気を付けているのは間違いないそうだ」
「‥‥‥え?って思うのは、実情を知ってるからか?」
「アンドッチが言うには、三男が王太子、というのを成り立たせるためには、そういうものでないと実現不可能だそうだ」
「不可能‥‥‥?アンドッチが、自分が先頭だー!ってやってきた‥‥‥ってことを言ってる‥‥‥」
「ように聞こえた‥‥‥アンドッチによると、ぜひとも、金髪!な子が出てくるようにしてやろうと動いているそうなドジオが、ギドリンコにティファカさまをお相手とするように働きかけているので、ギドリンコはティファカさまを狙っているだけであり、ティファカさまご自身を狙っているのではないのではないだろうか、だそうだ‥‥‥」
「‥‥‥そうなんだー」
「としか言えなかった‥‥‥そしてそれは、バンラームさんに性奴隷として教育されたゼンマイさんも同じだと思えるそうだ‥‥‥」
「‥‥‥え?」
「アンドッチが言うには、バンラームさんは性奴隷としての教育の、成果、というものに酔いしれているだけであって、素体であるゼンマイさんのことをそこまでは、なのではないかということで、ゼンマイさんには左の国の第二王子殿下を選んでもらいたいという心意気をお伝えしちゃうために、左の国の王太后さまにお目通りして、左の国の第二王子殿下として顔を売りたいそうだ‥‥‥」
「‥‥‥え?」
「となるしかなかったんだけど、アンドッチによると、ゼンマイさんは、バンラームさんが、左の国の第二王子殿下なのだということを隠して、ゼンマイさんを性奴隷としていると思っているそうだ」
「ゼンマイさんは、俺を、左の国の第二王子殿下だと思い込んでいる、アンドッチによると?」
「その時点ではそう思うしかなかった‥‥‥なので、王太后さまの前に連れていってやれば、それはもう、バンラームさんは左の国の第二王子殿下として振る舞うはずであり、もしそうなれば、きちんと見合いでもしてやってくれるようにしてやってはどうだ?」
「‥‥‥どいつが左の国の第二王子殿下なんだ?なのか、どいつがゼンマイさんを性奴隷にしてるんだ?」
「だと思った‥‥‥間の国の第二王子お殿下さまをやっている自分は、左の国の第二王子殿下によって、第二王子殿下をやるように言われているんだが、それは左の国の二番王子お殿下さまだったんだろうか?」
「はあー?」
やはりもぐもぐし続けているポガロは、私の蛮行を告げ口するべく、私から隠れるようにバンラームを壁とする。
「指示書とやらのことか?」
「そうだね。自分は間違えて指示を実行しているのかもしれないから、自分をヨツバで、左の国一番の才女だそうな、誰だったかな‥‥‥研修?どこ‥‥‥」
「うぜぇ!小芝居がうぜぇ!」
「そうなんだよ‥‥‥私に言わせようとしているので、てめぇが私のヨツバになれる訳ないだろ、と言ってやると、ヨツバはゼンマイさんのだろうが!」
「何なんだよ、そいつ‥‥‥どうせ、全部指示書に書いてあったから知ってるんだ、とするんだろ?」
「そう予想して、指示書には何て書いてあったんだ?と聞いてやると、おまえ、記憶制御装置だそうなものを働かせるんだろ?‥‥‥」
「これは、ブローチだな?」
胸糞劇に付き合ってやったのかと、私を気遣うバンラームは苦笑いとなっている。
「そう‥‥‥私達が東部支所最寄りの離宮に移って、そこにやってきた間の国の第二王子殿下というのは、ギドリンコだったそうだ‥‥‥」
「気付いてたんだよな?と?」
「そう‥‥‥そのギドリンコを回収しにドジオがやってきて、追加の指示書をアンドッチに手渡し、アンドッチが第二王子殿下をやるようにと書いてあったんだが、アンドッチはそんな指示に従いたくなかったから、モーリスの伊達眼鏡を横取りして、ライリに向けてきらきらを放出して楽しみながら西部支所に、ガーロイド・スオウとして居座るギドリンコに、どうにか帰ってもらいたいな、とやっていたそうだ‥‥‥」
「これは、左の国の第二王子殿下出てくるな‥‥‥」
笑ってしまっているバンラームは、手帳に書き留め始めたので、ホーミッヒへのお土産話としてくれるのだろう。
「ギドリンコがそうしているのは、左の国の第二王子殿下に向けて、アンドッチは指示に従っていないと知らせるための行いだったそうで、左の国の第二王子殿下は、どうなっているんだ?とやってきて、間の国の第二王子お殿下さまをやるアンドッチの護衛に紛れるようになったそうだ‥‥‥」
「いる、と?」
「どいつかわかるか?」
「腹立つ!」
「皆同じ格好してたら見分けなんてつかないよな?」
「何を言い出すんだ、と思わせてくれやがる‥‥‥」
「忍者は違うんだよな?」
「え‥‥‥自分は左の、あ、紛れられてしまってから知ったんだ、忍者とは初対面です、と?」
「そういうことなんだろうと予想したんだけど、こんがらがるばかりで面倒だから、ゼンマイさんに性奴隷なんて言っちゃったけど、本当は奥さんとして手厚く溺愛しているバンラームさんなんじゃないか。性奴隷じゃないって言えないことを悩んでて、こんな自分は寡黙な忍者にでもなればいいんだ!ってことで忍者として私に会いに来て、すっかり寡黙な忍者が板についているから、何も言えないに違いない。間の国の第三王子殿下だとおまえが言ったお方が忍者だと言っていたよな?今はまだ、心の準備ができていないだろう。ゼルガルという愛称も持っている左の国の宮廷職員と一緒に、忍者を連れて、バンラームさんの上司に無事を伝えてくるから、おまえはこのまま船に乗っていろ、と言っておいて部屋を出た」
「塞いだなー!」
「そこからはアンドッチに遭遇しないように過ごしておいて、宮廷の門のところで、ゼルガルという愛称も持っている宮廷職員を呼び出したところ、ギドリンコも来たから、おまえもな!ということで、医局の前で待っていやがったギドリンコに、きらきらを放出させてやると、あいつ、間の国で王子やる気になってやがったよね?」
「採用から始める気になっていたな」
「呪いだそうな、ゼンマイさんの黒歴史のご披露を終えると、書き留め損ねたことに大変不愉快なご様子となっていて、呼んで来いって言ったよね?」
「言った。来た。アンドッチケイオスさま。でも、おまえがアンドッチゼルガルさまにして、ポガロをケイオスさまにしてやった。ポガロケイオスさま帰るんだー、って思ってたのに、おホワイトさまとして戻ってきやがった」
「左の国の第二王子殿下は間の国に乗り込んでいって、間の国の第一王子殿下とだけ会話をすると帰国したので、左の国の第二王子殿下が何をしにきたのかは、間の国の第一王子殿下しか知らないそうだが、ボノバートは無反応だった‥‥‥肯定?」
ここで、バンラームの後ろから出てきて、デューイの前に座り壁となってやるのでは、否定するのだと受け取っておくとしよう。
(もぐもぐやめろよ‥‥‥)
ポガロは殺処分を決定していそうな勢いで、私を睨んでくる。
「私に殺害を予告されたおホワイトさまと、おホワイトさまを連行したボノバートは、ギドリンコに連れられて戻ってきた‥‥‥ギドリンコによると、ポガロこそが間の国の第二王子殿下だそうで、やってやれ‥‥‥こいつら全員殺そう、って思った」
「間の国は指示書に怯えていたのだと、王太子が認定してやったんだ。開戦のきっかけというものを与えてやったのは、ギドリンコだ。さらに、ガーロイド・スオウだそうなアンドッチに、おまえの部下として自国の軍の人員と馬を与え、権限というものまで与えてやった。何を見せられているのかと、笑うしかない‥‥‥」
吐き気がする。
王子という職に就いている者が、何を繰り広げているのかと。
どこへ行こうと邪魔なのだ、そう知っている私が滞在しては、そこは戦地となるのだと、教えてくれていたのだろう。




