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シアの国  作者: 薄荷堂
魔女
74/106

74.ミーアキャットおじさん

ヤマフジ領で制圧を進めていると、ガーロイドが追いついてきた。


「リーシャさん!」


「どうした?」


「あーれ‥‥‥」


「手羽先の骨?」


「あ、そう言ってもらえると‥‥‥」


「ババアは、意地悪もだーい好きー!」


「そういうのなんだろうが‥‥‥」


「ガーロ、トリュフだよ爆弾」


「聞いた‥‥‥最高商品」


「でしょ?もうすごいよ丸薬、私は作る!」


「おまえ‥‥‥生きてるな」


ガーロイドは、ふすっとはなるのだが、遠くを眺めるように私を眺めているので、まだ衝撃から戻ってくることができずにいるのだろう。


(事前に言っておくだけでは、足りなかったね‥‥‥)


「焔な赤の小瓶なのに、蓋は桃色」


「売れる‥‥‥第二丸薬」


「第二‥‥‥?もっと凄そうなのいない?」


「おまえ‥‥‥何を‥‥‥」


ガーロイドが、言っているんだ、を言わずにいるのは、おっさんな笑みとなっているからだろうか。


「頑張っちゃうよ?な商品になっちゃう‥‥‥」


「おまえ‥‥‥商品名、第二丸薬にしてくれ」


「第二丸薬‥‥‥じゃあ、第三丸薬は、桃色小瓶に蓋が葉っぱな緑で、これもすごいよ丸薬」


「おまえ‥‥‥第二で‥‥‥第一は?」


「第一は、緑小瓶に赤い蓋で、夢遊病丸薬」


ガーロイドは、ついに前屈みとなって笑い出す。


徐々に笑いが落ち着いてきたらしく、体を起こしていくのだが、にまりが止まらないようなので、余韻を楽しんでいるのだろう。


「夢遊病丸薬、もうすごいよ丸薬、これもすごいよ丸薬‥‥‥なんて三兄弟な商品」


並べて聞くと、なんとも売れなさそうな商品だ。


「‥‥‥もうすごいよ‥‥‥女の子達が順番待ってて、はい、次の方、壁際に立ってください、はい、第二さん。第二さんはきらきらを放出し始め、もうすごいよ?試してみる?」


「おまえはもう、第二を使いこなしているように思えるんだよ‥‥‥!」


(こういうのがね)


「どうすごいのか、試してみる?」


「第三だな」


「もうすごいよ丸薬、試してみないか?」


「第一は、おじさん!」


ガーロイドの思う三兄弟を、掌握できたような気がしてくるのだが。


(混じってない?)


世間的に認識されている三兄弟というのは、このような姿だということだろうか。


(王子さま業中の三兄弟?)


手にした情報をどう活用しようかと、そう考えるのだから、私はまだ魔女なのだと、綻んでおくとしよう。


「並ぶ子いるかな。一回、三百」


「それなら、野郎共も並びそう」


「買ってくれたお客さまには、第二がそうやってお渡しするんだね」


「それなら、俺も並ぶ」


「お、いいね。きらきらおじさん大活躍」


「選ぶんだろうな‥‥‥気に入った女の子にしか、きらきらしてやらないんだよ‥‥‥」


「出力調整自由自在な、キラベチャさまだからね‥‥‥」


「残ってないのに、第二!なんで伝わるんだろうなー」


「ぷきゃきゃきゃ感がとんでもないから、モッコクもだよね?」


ガーロイドは、ふすっとなって顔を緩めていくので、伝わったと思ってよさそうだ。


「どうして伝わるんだろうな‥‥‥ぷきゃきゃきゃ感‥‥‥もう、見えてくる‥‥‥あれだな、宝石ずばーん!な部屋の壁、布張り?っていうのか?ビロードぉ?みたいなやつだ」


「大正解!ぷきゃきゃきゃきゃ!」


「おーきな半円的な形の試着室がある‥‥‥」


「ぷきゃきゃきゃー!」


「ちゃーんと、レジカウンターなんてあるんだよ」


「ぷっきゃきゃきゃー!」


「それでモッコク領追加か。そこの理由を知りたがるって、うっざいよな?」


「もう、ぽいだよ。黙ったままいなくならないのなら、消滅してくれ」


そのような理由だとしてやって来たのだろうビュードノーアは、すっかり消沈さまとなっているのだが、演技にしか見えないのでは、さっそく吐き気が生じてくる。


(ん?)


きちんと私の視界に入る位置までやってきたジゼットが、おねえちゃんでしょ?とお母さんをやっているので、応じておくとしておこう。


(私がおねえちゃんか‥‥‥)


たしか今年十九となるはずだと思っていたのだが、と眺めてみても、心の中でぎゅっと縮こまって膝を抱えているんです状態に見えるビュードノーアは、やはりおっさんという分類になるようだ。


(渋い‥‥‥老けて‥‥‥おっさん顔で、おっさん佇まいで、おっさん態度ってことにしておこう)


「おじさんが死を願わせてくれる‥‥‥カビだらけにされて捨てられるだけなのに、糞坊の分なんてものを用意しないと、私が意地悪してるってことにされる‥‥‥私がカビらせようと仕向けてるんだから、カビらせてもらいたがれ、って‥‥‥おじさんは糞坊の味方だってことにしてる‥‥‥みーんな、私がカビだらけにされて捨てられるための菓子を作っては出すことをしてりゃいいんだ、って思ってるってことにしてるんだよ‥‥‥私が自発的に、そうすることが当然だと思うことをして、ほいほい出せばいいのに、あーあ‥‥‥って思ってるんだよ‥‥‥糞坊が食べたくなるような菓子を作って、糞坊が食べたくなるような出し方してやりゃいいんだよって笑いたいんだって‥‥‥今すぐ消滅してくれって思ってるって、みーんな気付いてるのに、それでもおじさんに、糞坊は‥‥‥カビらせてたのか?でもな、糞坊は‥‥‥なーんて、今になって知ろうとしてまーす、もちろん糞坊の味方でーす、ってやらせてやるのが、私が死ねって言ってるのと同じなんだってわかっててやってくれてるんだから、おじさんの希望通り、私は死ぬよ。よかったね」


ジゼットは、項垂れすぎてジゼットを視界に入れていないのだろうビュードノーアに向けて、無音で、お母さーん!とやっている。


(これは、他所の子でいいのかな?)


「え?魔女さまのおスイーツ?このおっさん、何言ってるんだろう‥‥‥僕はどんな用事で来たのかって‥‥‥その部屋に王太后さまが‥‥‥?会わせてやるって、このおっさん誰‥‥‥?こっちのは王太子殿下のはず‥‥‥入らない、とだね‥‥‥側近達全員を連れて入る、そう判断したことを、このおっさんは笑っていて、王太子殿下は‥‥‥警戒?こちらを‥‥‥そうなのかな‥‥‥僕がこのおっさんの言う通り、外交なんてものを知らない臆病者で、そこはそうだよ‥‥‥おっさんを敵だと認識してるから、扉を閉めるなんてことをさせないんだよ‥‥‥他国で左の国だってわかってるからこそだろうが‥‥‥すごい見てる、すごい考えてる、すごい警戒してる‥‥‥王太子殿下なんだよね?‥‥‥このおっさん、誰なんだ?居直りおっさん?拘束するべき?でもこういうおっさんはな‥‥‥え?あれ?王太子殿下を下に見てるって、え?これ?これがあれ?いやでも、王太子殿下がこれで、あれがとは‥‥‥え?何?座んないよ‥‥‥何言ってんの?‥‥‥何か言ってよ、王太子殿下!が座る、んじゃなくて、壁?壁なの?これは僕から距離を取ったってだけだね‥‥‥促してる?あれがこの国の促しなの?うわ‥‥‥王太子殿下促してるー‥‥‥促してみると?座んない、警戒を強めたね‥‥‥もう立ち去っていいかな‥‥‥?座んないって‥‥‥立ったままをご所望ってどんだけおっさん‥‥‥来たよ‥‥‥どうせそれがおっさんのおスイーツさまなんだろ‥‥‥きっしょ‥‥‥愛人自慢して、はい、おまえにやるよ、とね、きっしょ‥‥‥いらねぇから会話どころか視界に入れたくないってやってるんだって、わかんないんだろうな‥‥‥あ、そういう認識?魔女さまに傅いちゃってるってことでいいなら、えー‥‥‥そうだよね‥‥‥そういうもっていき方するよね‥‥‥そういうおっさんだ‥‥‥どうせ魔女さまと仲良しこよしってことにしてるー、きっしょ‥‥‥あまりのど美しさに気後れをね‥‥‥目隠しって、きっしょ‥‥‥どこまでも気色悪い‥‥‥おまえは魔女さまの手塩にかけたおスイーツさまを食べるつもりで、ってことにされちゃうの?王太子殿下?するの?する気なの?こっち見ない‥‥‥従者は?すーん、なんだ‥‥‥座んない‥‥‥何を始めるつもりなんだ‥‥‥まずは信用して扉をって‥‥‥うんざりする‥‥‥あれ?おホワイトさま、どうした?あ、愛人‥‥‥そういう愛人か‥‥‥あ、おホワイトさまも魔女さまに傅いてる側、なんだってやりたくてかな?これもう、どうすりゃいいんだよ‥‥‥座んない!あ、おホワイトさま座って?そんなに、嫌だよね‥‥‥ごめん‥‥‥そうだね、僕がおホワイトさまを虐めたね‥‥‥あ、おホワイトさまも見守ってくれちゃうの?手で目隠しって‥‥‥おホワイト‥‥‥うわ!こっち来んな!‥‥‥ごめん‥‥‥ごめんって‥‥‥おホワイトさまを盾にしてごめん‥‥‥どっちがいいんだって、そりゃ僕を選ぶに決まってるだろうが‥‥‥はいはい、選んであげたんだから、って‥‥‥そっちのお下がりって、あ、その愛人は王太子殿下ので、お嬢はおホワイトー、いいぞ、おホワイトー、違うんだー?やるのは僕なんだねー‥‥‥おホワイトさまが来たってことは、僕がこういう状況ってことをみーんな知ってるんだよね‥‥‥魔女さまによると男性機能を判定できるからおまえもしてもらえ?おいおい体験談語っちゃうなよな‥‥‥王太子殿下、あ、こっち見んななんだね‥‥‥あ、王太子殿下がしてもらえば、僕、はしてもらわないよー‥‥‥怒ってるー‥‥‥僕の‥‥‥僕のせい?‥‥‥だとは思ってないけども、なんだねー‥‥‥え?奥?にも愛人いるの?あ、だからこの愛人はやるよ、なのか‥‥‥この愛人よりもど素晴らしいど愛人さまが、ってこの愛人は思ってないねー‥‥‥え?奥にいるのが僕が本当に食べたいおスイーツさまなの?正直に言えよって‥‥‥愛人、何人、やるよするつもりなんだ?‥‥‥連れていけ、って‥‥‥こちらにどうぞ、って‥‥‥僕は皆に見ててもらいたいようだ、って‥‥‥座らないと国を差し出すことに?‥‥‥これは、開戦を告げられたと?すんごい首振ってる‥‥‥従者あったか!これ何?茶番ってやつ?王太后さまへって来てんだから、こんなおっさんの言うこと聞いてやるなって思ってる?わかんないな‥‥‥僕ってそういうことして、どうなる強さ?ん、あのおっさんの強さは、無っぽいな‥‥‥鬱陶しいならそこの窓から捨てるとか、あ、従者はやりたいんだ‥‥‥おホワイトさまは、やってをやらないで!何しに来た、って魔女さまに傅きたいんだ!ってことだよね‥‥‥魔女さまどんだけ強いの?おホワイトさまは傅きたがってて、あのおっさんは威光をばっさばさ振り回してるんだから、とは思うけど、僕の強さがな‥‥‥ん?おホワイトさまは強い、けど‥‥‥どうすりゃ王太后さまに会えるんだ‥‥‥いや、観念したってことにして抱くつもりになってない‥‥‥こっち来るな!おホワイト、がそこにいる、から使いつつ退避ー‥‥‥笑ってるー、きっしょ‥‥‥はいはい、見上げた忠誠心ですね‥‥‥は?判定できるまで戻ってくるな、で、僕には、連れていって国賓として持て成してやってくれ?‥‥‥喜んでる、ってことはそういう目的、では、王太子‥‥‥は、連れてけよ、なんだ‥‥‥ジゼット、葛藤なんてものはなかった。苦渋の選択なんてものではない。あれは、それを楽しませてやることにしたのがついでというものだ。おじさんは、おじさんの求める勝利というものを手にすることができたのです。よかったですね」


(さようなら)


私というのが、扱いにくい人物なのだと、自分自身でそう評価してはいる、そう自分自身に言い訳してみたところで、ビュードノーアは敵だ、そう認識することしかできない。


このような胸糞劇を、いつまで観劇させられ続けるのだろうかと、砂を零したくなっていると、ガーロイドが泣いている。


「シア‥‥‥俺は、何をどうすればいいのか、というのは俺の心の問題なんだが‥‥‥そいつは受け入れるどころか、享受しようとしている、そう感じる」


「そうだね。私は、こいつらを導くことなどしない」


「そんなものを、シアが担う道理などない!殺すことを選ぶのはこいつらだ!」


「ありがとう、ガーロイド。おまえが死んでるのを笑いに来た、そう言うために、わざわざこちらまで知らせてくれて、どうも、と思う私は、それを楽しませてやる気にならないんだ。それが生きていないことを望む私は、こちら側をそれに認識されず、こちら側に一切関わらないようにそれに過ごしてもらいたい、そう思っているんだ。私は、それに消えてもらいたい。ジゼット、それ、物質として間の国にぽいしてきて?」


「仰せのままに!餌やりも何もかも不要物質をぽい!」


ジゼットもまた、私に会いに来てくれたのだ、そう認識しない私は、馬に合図を出し、走らせ始める。


(さらさらさらさら‥‥‥)


砂を零す時間は安らかだ。


手から零れていく砂は美しい。


どうか、そう願わずとも、私はまた砂浜で砂を零す時間を持てるだろう。


(マナは、私が来たと知って、来てくれた‥‥‥でも、ジゼットは、いつも通りの行いをしているだけ‥‥‥)


考えても、考えても、泣きたくなるばかりなのだから、守らないと決めた存在について考えることなど放棄したい。


(さらさらさらさら‥‥‥)


自分がどうしたかったのか、知っている。


それを実行できなくなったのは、ナナセの決断のせいなのだとわかっている。


それでも、どこかを違えていたのなら、そう思うのだから、お子さまというのは手に負えない。


(いやなガキだ‥‥‥)


そんな部分を塗り潰しても、きっとナナセは泣いている。


(もう、泣いてるんだよ‥‥‥)


すべては妄想の中、としていられたのなら、そんなことを思うのだから、自分を笑ってやりたくなるのだが。


(さらさらさらさら‥‥‥)


こんなに泣きたいのだから、私というのは崩れていくのだと、綻んでおくことしかできやしない。


(さようなら)


走らせていた馬を歩かせ始めると、隣にきたガーロイドは、ふへへと片頬だけで笑っている。


「塗り物な部屋には、お立ち台があったんじゃないか?」


「ぷきゃきゃ!ぷきゃきゃきゃきゃ!」


「壁画なんてものを描いちゃってますな壁面があって、そこには、閉める気ないんだろうなって、どでかいカーテン」


「ぷきゃっ!ぷっきゃきゃー!」


「隅っこのいかにもな高さに、子供のらくがきな、うさぎさんと人参」


「ぷっきゃ!ぷきゃー!」


「贅沢に、ぷきゃってるなー」


「ジングイが、塗り物な部屋に入って、すぐに処刑待ちな態勢になってたよ」


「悟っちゃうどころではない量のぷきゃきゃきゃだからな‥‥‥」


「しかし、ジングイはどうにか立ち上がり‥‥‥自分が隊長、はよくないから、ロロイ、はこの部隊、なので、シュイージ先輩、では、いかがでしょうか、といきたいけれども、ラン!」


「そこで‥‥‥うん‥‥‥そこに‥‥‥だが、そのくらいいないんだ、と‥‥‥」


「私があちこちに行かせておいて、国とは、何なんだろうか、と思ったよ。パミザに阻まれてたポポアが、練習台いーっぱいだよー!って、学術所員達を連れていってくれることになったことを知って、あのおじさんは出ないと大盛り上がりで、ロロイから引き継いでやるんだと遊びにきたんだから、あのおじさんが黒幕として死ぬことになったよ!ってことだよね?」


「俺もそう思ってる!」


(おお!これは、魔女として語っておかねば、ってほど語ることないな‥‥‥)


「王都まで戻ってくることを終えたポポアが、別部隊として動く準備と学術所員達を連れていく準備をしている中で、ヤマボウシなのかヤマフジなのかにいるだろうロロイを向かわせるために、おじさんがこちらに出向く判断をしたんだ。胸糞でナナセを引きずり出したいんだとしか思えない。おじさんが私に使われてやる訳にはいかない、と大騒ぎしたんだろう?」


「そうなんだ‥‥‥付きまとって盗み聞きして、おじさんはー!だ‥‥‥」


「ナナセが出ては、お嬢を使うことになる、なーんてことを言ってナナセに殺意を示させておいて、俺はおまえとー!とご高説‥‥‥それを、怒らせてしまったー、どんな形でもナナセに会いたかっただけなんでーす‥‥‥」


「それに応じてやる方も、それをやらせてやる方も、と‥‥‥この機会に、なんて考えはするだろう、だが、おまえに丸投げにすることにして、ここまで自由な行いをさせやがる‥‥‥ナナセという人材にそこまでの価値を俺は認めていない。おまえを便利に使ってやろうという魂胆だ、と思えてならない‥‥‥」


「ジゼットなら?」


すぐに経路を辿っていくことを始めたガーロイドは、次第に俯き、吐き気を覚えているようだ。


「大演劇だな‥‥‥」


「胸糞お化けは大満足‥‥‥」


これだけでガーロイドは、脅威というものを認識しようとしてくれるのだから、人材としての価値を示してくれているように思えてくる。


(勝手なガキだ‥‥‥)


「‥‥‥足蹴にする、なんてことをしようものなら?」


「そうだね‥‥‥生かしておくのなら、何もかも遮断して閉じ込めておいてもらいたいよ‥‥‥もう殺していいってことだよね?」


「そのつもりだろうな」


「黒幕おじさん、ドジオ・ヒジキ」


「おまえはな、あれの良さというものが、俺もわからん側なんだが‥‥‥」


笑いながらも手帳に書き留めてくれるのだから、採用ということでいいのだろう。


「糞坊は、ギドリンコ・オカラ」


「おまえは、オカラもな‥‥‥」


ガーロイドが嬉しそうに手帳に書き込んでいくということは、伝達してくれるのだろう。


(愉快だね)


「タンポポはどこでも、一輪じゃないとでしょ?」


「タンポポさまだけ見ていられたなら‥‥‥ってことだよな?」


「そういうのだよ‥‥‥しゃがんでずっと見てるから、んあ?って振り向いて話聞いて、ディードが持っててくれてる書類見て、ちょちょっと仕事した気分にさせてもらって、やっぱりずっとタンポポさまを見てるんだよ」


「それを監督責任って、とは思うが、そうだから娶れよ!」


「一生監督していくつもりで生かし続けてきたのに、ドジオの愛人にされ、間の国の王子さまに敗北‥‥‥おっかわいそー!」


「それで、タンポポさまと仲良くしてるおまえが管理できてるんだから、監督責任をおまえに移す!移すから連れていってやれ!」


「殺処分の許可が下りたー!と喜ぶと、ナナセさまを選ぶのなら、おまえはタンポポさまを間の国の王妃にしてやるのか?ですってよ!」


「勘違い野郎が!」


「私がおまえに仕えているなんて思い違いをするな、と言おうものなら、必死だな、ですって!いかに私でも、どタンポポさまが相手では敗走するしかないんですって!大事なもんなら仕舞っておけ、ですって!失恋王太子お殿下さまは、こーんなに年下のおガキさまに八つ当たり!見っともないなんてもんじゃないど八つ当たり!おっかわいそー!ディードも大感涙もの!おー!きっしょー!愛人お揃え王子さま!愛人その一、どナナセさま!愛人その二、おリンランさま!愛人その三、ファーゼロッテさま!おめでとうございます!ギドロイ王太子殿下は、ナナセさまを正妃にお迎えすることをご決断!いやー!めでたいなー!ディードの笑いも止まらない!祝いの品が周辺大陸からも届くことになる!いえーい!」


「おまえの!馬鹿にしてる感がすんごいよかった!あれ、どういうお題だったんだ?」


「愛人三人お揃え記念!ど失恋王太子殿下ギドロイさまが、桜の咲かない俺には、野菜の茄子の皮があるじゃないか‥‥‥と涙しながら、愛人共有おじさんに音読してもらっちゃう本」


「いいなー!すり抜けてるんだよ!」


(まあね)


「皆さん、祝いの品として贈る言葉をお手紙にしてくれたから、ちゃーんとジゼットに渡しておいた!」


「愛人その三著作の原稿‥‥‥音読してもらっちゃってたな‥‥‥涙しないんだから、書き直しだろ?」


「当然だよ!おじさんが手紙なんてものを送るように言ってきた、ってジゼットから手紙が来たから、こーんなにまでしてお嬢に会いに来たんだ!舞台監督なりきりおじさんの性奴隷だと表に出ろ!そんなことはさせない!お嬢は小道具担当でしかなかったんだけどな王子さまの性奴隷になるんだ!何言ってんだ?もう俺の性奴隷になるつもりになってるだろ?リン、一緒に茄子の皮を剥こう」


「いかにも、好きっそー!だけど、ちっとも!だろうお題!三つ子なの?!いいえ、お嬢と結ばれるために必死です!カワッチ王子の性奴隷育成日誌‥‥‥もう題名だけで、皆が、わ!っと散っていった!」


「すごいのができたね‥‥‥恋の病専門白兎(ど達人)のシロウサギ・ゼンマイ」


「お嬢かな?」


「地下牢暮らしお嬢だから、白衣じゃなくて、もこもこ半纏着せてあげて?」


「専門白兎だもんな」


「ギドリンコに、どナナセさまに贈るブレスレット作らせたい。国境って、間の国側に地下牢くらいあるよね?」


「あるだろうな」


「そこの地下牢に一味を全員閉じ込めておいてくれてなかったら、もう滅ぼしていいよね?」


「国の頂にいる者の判断がそれではな‥‥‥」


「地下牢の隙間?って言う?から手だけ出させてやって、作業させる」


「いい‥‥‥!」


「もちろん偽物の宝石使うからって、同じく地下牢にいるババアの持ってるお宝飾品ばらして部材にしたい。ゼンマイさんにカルテを書いてもらえば、毎日つけるようにしろよ、ってやってくれるし?」


「三人分作らせてやるんだろうな」


「色の病(男性器)専門黒蠍のドゲレ・ツクシ」


「診てくれるんだろうな‥‥‥」


「ど下劣ファーゼさまは、専門黒蠍として、亜空間で暮らすドジオのお世継ぎ製造機能を評価してくれて、ババアとの相性なんてものも評価してくれちゃう」


「ギドリンコへ隙間報告させて、ギドリンコに隙間作成文書を提出させたいな」


「どナナセさまへの手紙も預かってあげて?」


「隙間文通!」


ガーロイドが書き上げたものを渡すと、伝達の人員はすぐに移動を開始した。


「いやー、いい采配だ!」


「でしょー?」


私とガーロイドが脇道へと入ってやると、後方でジゼットが叫びだす。


「ミーアキャットおじさん!行きますよ!」


「‥‥‥嫌だー!」


「だーいじょぶです!間の国には、ど下劣ファーゼさまがいますから!心はディードが診てもらいますので、ミーアキャットおじさんはご身体です!」


「嫌だー!」


「あんなに!この国一番の才女だと言っていたではありませんか!何もかもを癒してもらえるんですよね?!この国を拒絶することになるとまで言っていました!そのつもりで寄越したのだから、そのような歓待を!それを聞いているように指示したミーアキャットおじさんは、どうしてど下劣ファーゼさまがいかに男性器の扱いに長けているのか知っていたのかとなると、そういうことなんでしょうね!一生もののドジを踏めましたね!ミーアキャットおじさんの従者も同然ディードは、心の回復に専念しますので!ミーアキャットおじさんも、間の国のババアのみを!従者として使役!使役してくださいね!ミーアキャットおじさんの大事な大事な!可愛い可愛い!ぼっきぼきに折れそうなくらいほっそい!三日月さまなら、きっと共用してくれちゃいます!私はとっくに!離職済みです!今の私の仕事は、ミーアキャットおじさんをぽいしてくることです!お仕事しないと給料泥棒になってしまいますー!」


「いーやーだぁー!」


「嫌ですねー!嫌なんですねー!仕事なんてのは嫌なもんだそうなミーアキャットおじさんは、ドジを踏むのも仕事のうちだそうですからね!いやー!仕事してるなー!さっすがミーアキャットおじさん!生まれながらのドジ踏みおじさん!もうドジだけ地下牢で踏んでてください!」


「ドジ踏みたくないー!」


「もう踏んだ!もう踏み終えてるんですよー!どんどこ踏んで、今日!あなたはようやく、ぽいしてもらえるんです!おめでとうございます!ドジ踏みドジ踏み生きてきましたからね!自称、今老けてるってことはずっと若々しいままってことだおじさん!ど下劣ファーゼさまに、ど頂点ど糞物質であるミーアキャットおじさんが、この大陸一の男性機能なんだと保証してもらってくださいよー!」


ここで静かになっては、ビュードノーアは笑っているのだろうと思っておくことができる。


(さすが、ウツギ家一番従者)


どれだけの胸糞悪さをばら撒いていたのかと、予想できてしまっては吐き気がする。


声が聞こえてきた方を振り向くことなどしないまま、移動を続けていると、ガーロイドが、ふすふすしている。


「‥‥‥ミーアキャット」


「お日さまあったかいなー」


「なんて、そこに置いてもらえているんだろうな」


「よちよちですってよ?」


「あんなに王さまぶりっこ体質だから‥‥‥」


「しばらく可哀想ぶるのに忙しいから、ツクシさんが現状だそうなものをババアにお報告してやるんだよ‥‥‥」


「どうなる?」


「あら!恋なんてのは、すぐに癒してくれるものよ!」


「おぅ‥‥‥ババアが直々にご活躍してくれそうだ‥‥‥」


「間の国の最高位お嬢さまとのお見合いなんてものを、おセッティングしようとしてくれちゃいますのよ!もちろん、辿れば王家に繋がるそうなどツクシさまと、ゼンマイさんが‥‥‥それぞれ魔界で生きてるからな‥‥‥それぞれの魔界での出来事を主張しあうなんて‥‥‥怖いな‥‥‥きっと、あーら!ババアとドジオの祝宴でしたわ!となるんだね」


「どツクシさまだー‥‥‥魔界での祝宴か‥‥‥」


「ミーアキャットおじさんは、よちよち寄っていくんだよ‥‥‥きっしょ」


「きっしょ‥‥‥吐きそうな光景だった‥‥‥」


(すまん‥‥‥)


妄想を広げることをしては、事実と分離させておく手順が必要になる。


そこを疎かにしてきた私は、痛い目というものを認識しているのだろう。


私は今まで、どれだけの皆を殺してきたのだろうか、と今になって見えてきたところで、死ぬべきなのだということしかわからない。


(吐き気がするガキだ‥‥‥)


区分するためにと、自分を納得させようとしてみたところで、悲しむことしかできないのだから、早く死んでくれと願うことをしておこう。

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