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シアの国  作者: 薄荷堂
魔女
73/106

73.調査

(間に合った!)


スオウ領から出ようとしていた馬車を見つけて、馬を寄せる。


「じいさま!」


「おーう!やーってやるぜーい!」


「粒あんから入らせるんだよ?」


「え?!そんな?!いいの?!」


「洗って、水に漬けるところから!」


「えー?そーんなー!小豆取ってこないとなー!」


私が手を差し出すと、スオウ家当主は、ん‥‥‥?と、事態を察知してくれたのかもしれない。


「私は、リーシャ・シロツメクサ」


「リーシャー!?ってーことはーだよー?」


(違うな‥‥‥)


どうやら事態を飲み込むことはしていないようだ。


(ってことは、倉庫は後でよさそうかな)


「スオウ家、焼き払うね?」


「待っ!?‥‥‥」


口を開けたまま考え込んだということは、ちらついてはいるのかもしれない。


「‥‥‥建ーて替えー?」


(あかんな‥‥‥)


私が首を傾げていると、同行するのだろうダドアーロが馬を寄せてきた。


「おまえは崖から!俗物は地面だ!」


ダドアーロは、わかりません!という顔をしながらも、何だろうか!とやっている。


(本当に‥‥‥?)


私が首をひねってしまうと、馬車の中からジーディンが急かす。


「おい!おまえが崖にいない!平和‥‥‥?なんてことは決してない!すぐに動け!」


(そうか‥‥‥)


釈然としないのだが、言っておくとしよう。


「今代ご当主さまとなったガーロイドが率いる部隊が、スオウ領、制圧しまーす」


三人は、揃いの笑顔となって顔を見合わせようと忙しい。


「糞坊が邪魔だから、三人でこしあんに漬けて?」


「「「そういうのかー!」」」


(これでいいのか)


「糞坊が、何を言おうが、三人の目的は?」


「「「糞坊をこしあんに漬けること!」」」


「よし!決して!決して!何をどうされようとも、三人で!私を見失わずにいてくれ!」


三人は、事態の何かを察知してくれたらしく、周囲に対して身構えてくれたようだ。


「必ずだ!絶対に!手袋を外すな!」


「‥‥‥帰宅して風呂?」


「そうだ!目的は、糞坊をこしあんに漬けることなのだから!」


三人は、背筋を伸ばすようにしつつも、不安そうに考えまくっているようだ。


「‥‥‥拒否?」


「従者達を除いた二番、お嬢、ファーゼ、これらの監督責任を有している糞坊、以上の生物を一味として、間の国に捨ててくれ!丸太で!そう王太后さまにお願いして!」


「「「‥‥‥わかった!」」」


「よし!行け!おまえらは、私の、生きていてほしい方だ!」


「「「行ってくる!」」」


(よし!)


馬車は進もうとしていた方向へと向かい、ダドアーロは引き返す方向へと向かっていく。


それだけで、私は崖にいるのだと、泣きたくなるのだから嫌になる。


(で、こっちか‥‥‥)


「おい、テオ‥‥‥てめぇ、何してたんだ?」


テオは、しきりに瞬きを繰り返しながら、ゆっくりと目を泳がせていくのだが、決してその背を丸めるようなことはしない。


「おまえも、きちんとナツメ小僧だな‥‥‥」


テオは、しっかりと腰を反らせ、決して背を丸めないままに、ぐっと口を閉じようとなどしていないのだと、目を遠くへと泳がせていく。


「おまえも地下牢かな‥‥‥」


テオはきちんと、えぇっ!?という顔を一瞬出してしまってから、ゆっくりと目をこちらへと呼び戻していく。


「どうか、ナツメを使ってください、と右の国のハオジャオにお願いしてくるには?」


「小僧は全員連れていきます!残りは全員、何か?です!」


「足りないな‥‥‥」


テオは、え‥‥‥?!となって考えている。


「おまえらは、ボロ‥‥‥」


「最新を持参して献上します!」


テオの笑顔は、まさしくナツメの精神を体現している。


「そうだ!行ってこい!手袋を絶対に着用し、必ず、その身を守り抜くだけはない!」


「誠心誠意!お守りいたします!」


「どうか、よろしく頼みます」


テオは、すっと背筋を伸ばし、緊張を隠さない。


(言っておかないとな)


「絶対だ。間の国の末端であろうとも、足蹴にしろ。マナ野郎は、ヒイラギ卿の部下となった!」


いえー!と笑顔となってから、背筋を伸ばし直したテオは、普段通りというものの戻りを体感しているようだ。


「行ってくる!」


「聞いていたな?一味だ。耳を貸さないどころではない」


「ハオジャオさまのご決断とあっては‥‥‥」


きちんと、おまえの責任だよ?感を滲ませることができるのだから、ナツメの男だと思うことになる。


「そうだ!ナツメを守るのが、第一優先だ!おまえはこの国の官吏なのだとして行動!」


「ナツメ家が派遣されちゃったな」


「そうだ。おまえは給料をもらえる仕事をしろ」


テオは、心持ち緊張した様子となって、腰を丸めないままに肩の力を抜いていく。


「どんなものだろうと、壁だろうと、素肌が触れないように徹底してその身を守れ」


テオは、事態の何かを探るように緊張を強めていく。


「そうだな。おまえは守りに行くんだ。ボロニア室長を帰宅させるまで、ハオジャオに別行動を許すな」


(ん?足りないね)


「だって、一緒にいないと危ないんですよ?」


私がナツメ小僧精神を意識して言ってみると、テオは躊躇いつつも言っていく。


「‥‥‥宿泊先の提供ではなく、ご自宅に滞在させていただきたい」


「それ!左の国のお官吏さまですから、掃除も炊事も?」


「まずは、私達が口にして、安全が確認できたもののみを口にするようにしていただきたい。一番風呂も私達のものです」


「そうだね。そのくらい徹底していれば、ん?というのが?」


「外部への伝達は、私達を通してもらいますので、こちらにどうぞ?」


「それでこそだ!いかにもなお櫃だとか?」


「ごみ捨てなんて、私達に‥‥‥これは!」


小芝居もきちんと習得しているのでは、笑って送り出すことができそうだ。


「どうしても、こっそり食べたくて‥‥‥」


「あっちで食べてみてもらいますよ」


きちんと、見つけちゃったー感を出してくれるのだから、テオはナツメの男なのだと認定するしかないだろう。


「処分というようなものは、右の国の裁量に任せてしまえばいいだろうが、情報は、どんなものだろうと持ち帰るように。へー、この国だと、そうなの?え、この人達、そういう習慣?というようなものもすべてだ。ボロニア室長との情報共有を念入りに行ってもらいたくて、可能であれば、そこにハオジャオを先頭として右の国として参加してもらえると、私としては有り難い、が?」


「話し合いのような場に加わるのは、ハオジャオさまのみだな」


「必要であれば、シノブと呼んで、ナツメとして預かっている私の手下だとでも思っておけばいい」


「そういう扱いの方が、動きやすそうではあるが、というところだな」


「右の国の王さまに、近いうちに会いに行く、と伝えてもらえないだろうか?」


「そういうのだ!」


ここでやっとテオが手帳を取り出したのは、頭の中でしっかりと情報を整理できているからなのだと、そう思っておくとしよう。






◇◆◇◆◇◆◇






「‥‥‥焼き払わないよな?」


(この顔‥‥‥)


「マヤリーから聞いたんだよね?」


「‥‥‥何もかも出入りさせず、侵食されている箇所を明らかにすると同時に、身の潔白というものを掲げてみせろ」


「そうだね。やって?スオウ卿」


(笑ってるな‥‥‥わかりやすい顔で笑ってるな)


ガーロイドのこの顔を見ては、血の繋がりというものを実感させてもらえているのだと、そう認識するしかない。


「‥‥‥できれば一味に?」


「経路というものを明確に、できればしたい行いだが、そこはスオウ領においてはスオウの外までで十分だろう。あの一味の言っていることは?」


「すべて無視する勢いで?」


「そうだね。あいつらを調べようとなんてことをするのは、そいつも一味として間の国に捨てておいてもらいたい」


「行動を見る」


「そうしないと、魔界に引きずり込まれることになるかもしれないが?」


「おまえがこの国に入って、から‥‥‥だな。そこから先の行動は置いておく」


「そうしよう。あいつらの味方だなんて言い出すのや、行動するのも、間の国にぽいだ。私は決して、ごみを拾うことも、回収するつもりも予定も、無、だ」


「おまえを見失うようでは、邪魔な?」


「私は、残らず間の国にぽいでいいと思っている。ごみ箱に穴を開けるのは?」


「ごみをどうこうに影響しない。ごみ箱に穴をあける必要があった。そこからごみを出さないようにするのが、軍か?」


「そう動いてもらえたら、というのが私の希望であり、間の国の港も国境も、この国が管理することにしてしまいたいね」


「そうしないと、見えてこない。糞坊!」


「でしょ?事態の確認、なーんてお仕事を、一任してやればいいんだよ」


「そうだよな。それがいい、そうするのがいい。糞坊を頂点にして、間の国だけ包ませる」


「この国と右の国であり、そこに糞坊一味のごみ箱な間の国は、決して関わらせないだけではない。断絶であり、別世界であり、異次元だ」


「そうだ。それが必要だ。邪魔なんだ」


「糞坊の従者は、間の国のババアだ。ディードは、ファーゼに、ずたぼろとなっている心を回復させてもらってほしい」


「おまえー!」


ガーロイドは、嬉しそうに手帳にすらすらと書いていく。


「地下牢にどれかは残していく、なんてことを決してさせるな。一味、だ」


「そうだ!」


「見つければ即時、間の国にぽい」


「俺はされない!」


「どうして?」


ガーロイドは、決意を滲ませ、破いたページを伝達の人員に渡してから言う。


「お嬢が、もう宮廷内にいたんだ。俺が食堂へ行こうと屋外を歩いていると、お嬢が一人で寄ってきて、これ出しておいて、で地面に封筒を置いていかれて、俺は箒と塵取り持ってきて、それらを使って封筒を三番の執務室のテーブルに移動させておいた」


(うんざりするね‥‥‥)


「ヒイラギ卿をテオの部隊の頭に据える。最新のものはヒイラギ卿の所有物として、この国のために使用するように。決して、一味と行動を共にさせるな。レンギョウ商会の、対間の国な部隊を配置するのは、右の国の国境間際をおすすめしたい」


ガーロイドは書き留めるとそのページを破り、伝達の人員に渡してから聞いてきた。


「あんなのが魔界暮らしなのか?」


「マナは、屈辱に耐えることなどせずに、真面目にお仕事していたに決まっている」


「魔界?」


「お嬢と恋しちゃってくれるんだから、お嬢の操り人形ってことだよね?」


「恋‥‥‥?下僕‥‥‥言いなり‥‥‥操り人形‥‥‥か」


「いい気分、というものを知ったおファーゼさまなら?」


「おファーゼさま‥‥‥いい気分‥‥‥第一?」


「するとお嬢は、第二だが、おファーゼさまは右の国に行きたがるだろう。どうなろうとごみなのだ、という認識のままでいるように」


「俺は、自分では、何言ってんだ?の世界にいると思っている」


「レンギョウ商会に、間の国の部隊とやり取りさせてやる?」


「え?ばーか、ばーかをやりながら、右の国の流通に根を張るんじゃないのか?」


「そうあってもらいたいね」


「どーせ、パパさんが乱立させたものをきれいにしましたんで!ってやっておいてー、じゃないのかと思えるが?」


「何もしていないだろうね」


「え‥‥‥そんなの‥‥‥どうして自分に‥‥‥そんな気ないのに‥‥‥家に伝えることもしていない?」


「そこはしていないだろうが、ネットワークというものを構築して、それぞれ、せーの!で動き出せるようにしてくれていそうに思うよ。ぷちっとやってみて、あらー?ちょっとー、やめなさいよー、だーって、足元にー、ティファカさまー、私のせいで靴に汚れがー、とかは、もうやってそう」


「王女さまは、来なさいよ!となっているだろうか?」


「何か来る!けど、何がどう来るの?状態で、包む心積もりをしてくれていそうだね」


「全体というものを把握して、きちんと距離をとって、靴に汚れがと認識している?」


「今、こいつは何をして、こいつの側に立っているのは誰で、と、個々で誰が何をしているのかも把握していそうだね」


「せーの!で繋がりというものが見える、ということか」


「‥‥‥私は、舞い上がらせるだけだ」


ガーロイドは、小さく溜め息をつく。


「包むしかないな‥‥‥」


「右の国にいるレンギョウ商会の部隊に向けて、誰か、見えたものをあほあほ語ってくれるといいんだけどね」


「それが俺?‥‥‥俺、自分では一味じゃないと思ってる」


「では、今しばらく、働いてもらおうか。スオウ家当主、メロンでもスイカでもなく、俺は、自分ではモモだと思ってるんだけど、直接的すぎるから、スモモでもな‥‥‥プラム‥‥‥プルーン卿」


ガーロイドは、そう?と微笑んでみせたのだが、すぐに溜め息ながらにしぼんでいく。


「俺‥‥‥あんなに‥‥‥あの二人の目‥‥‥そんなにだめ?」


「‥‥‥シロップ」


「え‥‥‥シロップ‥‥‥?あ、シロップ‥‥‥シロッ、プ‥‥‥シロップって、メイプル?」


「かき氷?」


「‥‥‥シロップ‥‥‥シロップ?」


「コゲアマ・シロップ」


「カラメル?‥‥‥俺、どうして情報持ってないの?」


「私が三番を使えると判断していたからだろうか?」


「‥‥‥俺って、お気に入り?」


「儂の練り切りの、お価値さまを知っている!」


ほぉー、となっているガーロイドは、どこか嬉しそうであり誇らしそうなのだから、可愛げのある孫というものなのだろう。


「マーシャ‥‥‥ほしい」


「え?!俺?!参ったな‥‥‥」


嬉しさをすぐさま収束させてしまうのだから、自信の無さというのも厄介だ。


「南部の、果樹園とか牧場とかやってる領主のお孫さまで‥‥‥そこは、伊予柑を八朔だとして売ってやがった」


「いるんだよな‥‥‥みずみずしい八朔‥‥‥はあ?」


同じく八朔頂点世界の住人であるガーロイドならば、あれもこれもわかってくれそうだ。


「うちでは水をお茶って呼ぶように、八朔って呼んでるんだ」


「うっ‥‥‥え?そんな?そんな理論?」


「え?品種が別なの?」


「あ、水をお茶!おまえのようなものも八朔って思ってやるよ、ってことか?」


「違うんだよ‥‥‥ババアによると、八朔なんてのは、ぱっさぱさな伊予柑だから、こいつはぱっさぱさ伊予柑です、ってちゃんと言って残念商品として売るのはどうだ?売れない?じゃあ、ババアが消費してあげるから、これからも作って?だって、木があるんだから勿体ないでしょ?」


「すごくない‥‥‥?すごい手口‥‥‥」


「ごめんなさいね?王家御用達ってしてあげたいんだけど、中々良さをわかってくれないのよ‥‥‥でも、今年こそ認めさせてみせるわ!で、運んで?と仕草で示す‥‥‥」


「怖い‥‥‥え‥‥‥帰って?来ないで?」


「うちの八朔はマツリカ商会と専属取引することになった、他所には出さない契約になっているんだ、と言ってやると、そーんなのどこの商会なのかしらー?売れるー?間の国の生産物なのに、王家の御用達なんていらないってことよねー?ここでマーシャが、何しに来たの?と聞いてやると‥‥‥ババアは、あなたを迎えに来たのよ!この国の王子さまがあなたに会いたいんですって!」


「誘拐だー‥‥‥!」


「マーシャが、どうして今まで、王家の御用達だとしてあげたかったの?と聞くと、ババアは、にんこりして考える。そして、一緒に行きましょう!王子さまが待ってるわ!これから忙しいわよ!あなたはたくさんのことを学ばないと!‥‥‥」


「‥‥‥いなくなって?」


「そういう気持ちに、瞬時にさせてもらえるよねー‥‥‥マーシャは、八朔は、ぱっさぱさしてるの?」


ガーロイドは、俯きがちに微笑んでしまっている。


「‥‥‥俺、好き」


「私も好き。おまえもぽい」


「‥‥‥待って?引っかかってはいるんだけど、ちょっと考えていい?」


「ちょっとだけね」


ガーロイドは、若干の険しさを保って考察を進めていく。


「ババアは、ぱっさぱさな伊予柑が上位で、八朔が下‥‥‥果樹園は、八朔が上位で、みずみずしい八朔‥‥‥?伊予柑を八朔として売る‥‥‥?品種が別なの?みずみずしさで区分?見た目‥‥‥全部八朔だと思って作っていたってことにしてたのに、八朔は八朔としてババア‥‥‥知ってるのに、混同してるってことにして売っていた。ババアは偽称を知っているから‥‥‥マツリカと専属契約とすることで、その果樹園として売るのは伊予柑だとして売ることになった。え‥‥‥ババアもそうさせたかったのよ?って言いだした?」


「ババアは、マーシャを誘拐する方向へと突っ走っていったから、私に踏み潰されたんだね。私は、ぜーんぶ八朔として売っていたんだと考えた」


「待って‥‥‥ババアは、これ、ぱっさぱさ伊予柑よね?‥‥‥ババアは、残念伊予柑である八朔を寄越せ。果樹園は、全部八朔だ‥‥‥ちょっと言って?」


「水をお茶」


「え‥‥‥あ、みかんも、伊予柑も、八朔も、ぜーんぶ八朔として売って‥‥‥違うな‥‥‥もうちょっと言って?」


「八朔というのを、柑橘というような単語として使用していたんだろうか?」


「あ、全部八朔、ってことは、八朔の方が高いのか?」


(さすが八朔頂点!)


「君は、ぽいしないでおこう」


「ありがとうございます!」


「その果樹園では、そうやって、ちょっと水分量がありすぎる、箱の中にいくつかあるはずれ八朔として伊予柑を入れていた。それを、木を混ぜて植えていたからだ、と説明してきたんだ。ババアはそれに気付いたから、気付いたよ?くれるよね?とやっていたんだろう、と私は思う。マーシャは、果樹園の実態を知っていたのか、知らなかったのかとなると知っていただろう。マツリカ商会の介入によって、胸を張って撃退できる状況となったので、ババアを撃退しようとしてやったように、私は感じる」


「正義感というものだけではないんだろうが、八つ当たり的なものを‥‥‥虚しいな」


「専属契約、そんなものがなくとも、別々に売る選択をしてほしかった、自分はそうやって稼いだもので生かされてきた、でも、自分は伊予柑が好き!」


「‥‥‥わかんなくなってきたな」


「八朔というのは、伊予柑に比べると、手がべちゃっとならない。時々ある、べちゃ‥‥‥伊予柑みたいな奴だ‥‥‥自分は八朔を食べたくて買ったのに‥‥‥伊予柑、糞みたいな存在だ‥‥‥なんてことを狙っていたんだ、と言いやがった」


「そんなのってー‥‥‥!」


「八朔界からべちゃ八朔を駆逐してやろうと、徐々に、どの木がべちゃなのかと判明させて、それはそれだけで集めていく、糞みたいな道のりを歩いている途中だったそうな糞果樹園と、八朔大好き強奪ババアの狭間で、マーシャは伊予柑が好きなんだと泣いていた」


「何なんだよ‥‥‥大人‥‥‥」


「その果樹園はついには、マーシャの祖父母が、伊予柑が好きなマーシャのために、毎年誕生日に一本ずつ贈ってくれるようになったんだが、八朔の果樹園に伊予柑の木を贈ってきやがって!マーシャに実家である果樹園で作ってるもんじゃなくて、糞じじばばの贈り物だそうな伊予柑なんてもんを食わせようとしやがる!ということで、あれー?木、どれだったかなー?とやるようになったんだが、伊予柑の木は伊予柑の木でまとめておくか‥‥‥となってはいるんだー、なんて語るようになりやがった。私を苛っとさせているのは、どこだろうか?」


「水を水だと認識していると言ったのに、別の品種なの?と言った、というように、もう一回?というものや、実はー、実はー、と胸糞情報を追加していかれたこと」


「そうだ‥‥‥まだこの演劇見続けないといけないの?という気持ちにさせてくれる‥‥‥が?」


「マーシャさんへの贈り物を、売ろ、って思って実行した!」


「そこだ!マーシャへの贈り物だと認識しているのに、マーシャから取り上げ、マーシャの好きなものをはずれとして使用!マーシャが伊予柑を好きになったせいで‥‥‥だったり、マーシャにどうしても食べてほしくなかったの!とでも言いたげな口調!」


「‥‥‥もう、嫌になるどころではない」


「私はいつもそうだ。気に入らない、それでぼこるために使う道具が、詐欺だの強奪だのというもの。君が感じている胸糞悪さを発生させているのは、私なんだ」


ガーロイドは、悩んでいたようだったのだが。


「八朔を買いたい、と思って行ったら、そんな目に遭わされたのか?となると、祖父母、は、八朔はあんまりなのに送り付けられていて、じゃあ、買い取ることにしたいな、って思って行ったら、外敵として対応され、暴いてやったら、マーシャさんが泣き‥‥‥暴く、泣く、という経路を辿ったことより、自分はどんな八朔なのか知りもせずに、祖父母の前でうへうへ食べていたんだ、ということが悲しいんだろ?」


(それもあるね‥‥‥)


「気に入らない、ぼこる、私が今現在行っているのは、そういうものだ。君は、私に気に入ら」


「うおーい!俺は、おまえと一緒にいたくて一緒にいるから、仕事をしてくる!」


「わかった」


自分の扱いを知っている誰かと関わるのは楽なのだが、そこに至るには経過というものが必要なのだと認識すれば、嫌になるどころではない。


(お子さまってやつは‥‥‥)






◇◆◇◆◇◆◇






「何してるの?」


「え、待ってたよ?」


ヤマボウシ領に入ってすぐにある分岐で、ヤマボウシ家の次男であるシュイージが立っていた。


「どういう?」


「え、来るって聞いたから。馬、交代させる?」


私が乗ってきた馬の手綱を渡すと、シュイージは、停車場の側に繋いでおいてくれた。


馬はすぐに水分補給を始め、シュイージは馬に食事を提供すると、こちらを二度見していたのだが。


「え?‥‥‥え?‥‥‥リーシャ?どこ?」


周囲を見渡すことをしようとしているのか、シュイージは目を凝らしながら、こちらへとじぐざぐしてしまいつつ歩いてくる。


「ここだよ?」


シュイージは、私を見て一旦小さく頷くことをしながらも、やはり見えていなさそうに周囲を見渡そうとしている。


(ま、急に地下への扉ばーんされてはね)


「その、その扉の中は、どこへ繋がっているの?」


「あ、地下道なの?」


「いや、その、異世界?どこ?何が広がっているのかなって」


すでに馬糞の匂いが漂うどころではないのでは、どういう会話運びをしたものかとなるだろうが。


(次男を配置、ね‥‥‥)


「見本市じゃないかな」


「市場?」


「どぅおーい!リーシャ!一番乗りは、軍人さまだ!」


追いついてきたロロイに止められてしまったので、大判のハンカチに少しの藁を包むようにしてから、口元を覆っておくと、見ていたシュイージとロロイや、ロロイの部隊の人員達も藁で紛らわす方法を採用していくのだが。


「シュイージは、続いてくる部隊を案内してよ?」


「えー?!気になるよー!」


「じゃあ、代わりの誰か置いてから来て?」


「えー?!そこの君、頼んだよ?」


きちんと一番下っ端である人員に声をかけたな、と思っていると、ロロイがその人員をさっと扉の側へと移動させておいた。


「俺の部隊!おまえが立ってろ!」


「えー?!見たいー!」


「先輩さまは、実家に案内して他の奴を連れてこい」


「かっわいくない後輩ですことー!」


ロロイを先頭にして、地下へと下りていくと、まずあったのは、馬糞らしきものの山だ。


「すごいな‥‥‥」


「残らず地上に広げて?どうせ、中に隠してる」


「中って、山の中か?」


「そっちもだね。馬糞らしきものも調べてね?」


「らしきって、何だと思うんだ?」


「ここを掘った土に混ぜ込んでいくことで、徐々に馬糞となってきてるもの」


「上から運んで混ぜ込んで‥‥‥?」


「運び出すこともしていただろうね。まずは色をつけないと」


私が、見つけた隠し扉を開けると、そこは塗料や絵の具といったものを試すことができそうな場となっている。


「描いて‥‥‥塗って?みてくださいよー」


「キャンバスや、イーゼルや、椅子や、筆の本体部分というものまで全部調べてね?麻薬って、お酒を飲んだ状態みたいになるのかな?」


手帳に書き留めてくれている人員を始め、ロロイがこの部屋にいる部下達をぐるっと見回しても、皆は小さく首を傾げている。


「俺も、今のところ、馬糞や絵の具や塗料な匂いがするなー、なものしか感じていない」


「火薬は?」


「うおーい!その山!火薬かもー!」


ロロイが叫ぶと、隣の部屋から返事が返ってくる。


(火薬‥‥‥)


「ぎゅっとして投げ込めばそのまま‥‥‥壁とか船の船体に塗って、着火、焼死体だな!」


「‥‥‥何?あ、商品!作れそう」


「でしょ?需要は少なさそうだけど、こういう事態用に置いておく?」


「そういう需要だよな‥‥‥あ、人に塗って‥‥‥は‥‥‥」


「逃げ出す際に、ほんの短時間、というのに使えそう。観葉植物の土、腐葉土だよ?撒いてね?黒炭だよ?水墨画な墨、どう?」


「硯と墨の墨!クレヨンとか、あ、黒炭ってそういう黒炭か」


「花火の中に入れる、成型して木炭や竹炭に見せかける。蝋燭に混ぜ込むと、この蝋燭勢い凄いなー」


「火薬ではないものとして、と、安価な代替品?」


「この石炭、燃えないね‥‥‥」


「すげぇ嫌だ‥‥‥」


「火薬だよ?って言って、負けちゃえって国に売る」


「それも嫌ー‥‥‥武器もありそうー‥‥‥」


「コーヒー淹れた後のカス?花壇とか、あ、酒粕もいけそう」


「そういう、匂いを、ってのだよな」


「そう。こう‥‥‥何の香り?ってのに‥‥‥ぎゅってしてある香とか線香、蚊取り線香もなんだけど、蒸籠の香りとか‥‥‥」


「寄ってこさせる系だろ?」


「そう‥‥‥そういう何かが‥‥‥わー!っていう‥‥‥寒い日にコーヒー配ってる‥‥‥コーヒー扱ってる店で買えるよ?」


「そういう目印ってのはありそうだよな」


「お酒やジュースに錠菓をぽちゃんもできそうだけど、香りで寄ってこさせるのが、何か‥‥‥お汁粉‥‥‥焼いてる‥‥‥あ、黒いぼそぼそした、小さい岩みたいなクッキー」


「あるな。似せることができそうだ」


「おねえさんが水着や浴衣で砂風呂‥‥‥泥パック、体に塗って?‥‥‥爆竹‥‥‥焚火‥‥‥焦げちゃったー、焼き芋‥‥‥サウナ‥‥‥火薬だ‥‥‥塊肉炙っちゃうとか、焼肉屋の炭」


「俺、寄っていく‥‥‥」


「この花火つかないー、貸してみろー、マッチ!」


「よさそうだが‥‥‥」


「丸薬だな。えー?コーヒーのカスをぎゅっとしたのじゃなくてー?これ飲んだら、もうすごいよ?試してみる?」


どういう丸薬なのか予想してくれているのだろうロロイは、おっさんな笑みとなりそうになっている。


「飲ませてぼん!焼死体の作成、部位で吹っ飛ばす、喉を焼く、目を潰す、耳を潰す、あ、足だ。足の裏を焼いてしまえば、あと膝とか手の平、後頭部を焼くのもいいし」


「待ってー?」


(そうだね)


「あ、トリュフ!」


「あー、まんまだな。よさそう」


「トリュフだよ爆弾」


「できるな‥‥‥」


「煉瓦だよ爆弾」


「資材か‥‥‥」


「結露として溶け出すかな?」


「あー!‥‥‥削ってみるか」


ロロイが見やれば、部下がそれも手帳に書き留めていく。


「馬の鞍とか蹄鉄とか‥‥‥ブラシ‥‥‥馬車の内装か、絵も飾っちゃう?」


「そうだな。絵画な状態のものあるようだしな‥‥‥描いたの持って帰れるのはどうだ?」


「ここ、この色がいいな‥‥‥使い終われば、馬糞にぎゅってして、はい処分しました、畑にでも混ぜ込んでよ」


「最悪な置き土産‥‥‥」


「買取もやっていそうだね。全部削っちゃったから、また描いて?代金が馬糞?」


「高いのか安いのかわからん‥‥‥」


「画家的職人の工房としても使っていそうだね。宝石のようなものとの物々交換も面白そうだ」


「言い逃れの準備が万端そうだよな‥‥‥」


「さっきの馬の水に錠菓をぽちゃん」


「使い勝手よさすぎ‥‥‥」


「あの山の少し、溶かしてみて?」


「溶かす‥‥‥あ、あれに混ぜ込んで、そうだよな」


「水は畑に撒くとか、絵の具や塗料の材料として使って、火薬って乾けばまた使える?」


「湿気ってしまうと‥‥‥でも乾燥させる方法ってので麻薬を、と思えば‥‥‥別の火薬で試せばいいか」


「燻製」


「よさそう!臭そう!馬糞じゃないのでやればいい!けど燃えそう。あ、トリュフだよ爆弾を着火剤として使える。こっちも使い勝手よさすぎ‥‥‥」


「麻薬に漬けてから乾かした松ぼっくり」


「売りたい!あいつらに、金を稼ぐ能力が秘められていたとは‥‥‥そうだよな。そういう使い方と思えば、何でも混ぜ込んで、あるよ、ってことにして売る!」


「やってそうだよねー。は?麻薬?!何言ってんの?!とできるから、泣き寝入り?くそぅ‥‥‥?そこで、酒とか混ぜておけば?」


「どうなんだろうな‥‥‥酒入ってるー、はわかりそうだが、それが麻薬の効果と言われてしまうと‥‥‥いるんだろうなー、買う奴、売る奴‥‥‥安全麻薬」


「そういう商売が成り立っていそうだが、証明なんてことができなさそうだ‥‥‥」


「そうだな‥‥‥え?知らなかったー、だの、え?!入ってるんですか!?だのが予想できる‥‥‥」


「そういう味のお酒だよ?」


「あー‥‥‥そう区別されてしまうと、俺、わかんないだろうな‥‥‥味って‥‥‥」


「言い分なんてものを聞かない。はい、立ち入りまーす、調べて、出た、はい逮捕、営業停止」


「そうだな。そういう手順や確認方法を明確にしておかないと‥‥‥どーせ、飲んでみてくださいよ!だの食べてみてくださいよ!だの‥‥‥」


「さっき、そっちの人飲んでましたよ?先ほどの昼食にも、同じものを使用していましたが?お客さまは、いつもこちらの商品でしたね!」


「嫌!胸糞!胸糞商売!」


憎しみを込めて小さく叫ぶロロイは、健やかさというものを体現しているように見えてくる。


「何語ですか?」


「いい!そういう気持ち!大事にしよう!‥‥‥信用だの、信頼だの‥‥‥」


「どれだけ可愛がっている部下であろうが、調べて出てくれば?」


「拘束だ。身の潔白を証明してやることは、すまんが後で。馴染みの店だろうが‥‥‥」


ロロイを俯かせ、暗闇をもたらしたのだと、綻んでおくとしたい。


「日常というものが崩壊していくね」


壊して回るのは私なのに、と泣きたくなるのでは呆れてしまう。


(ガキは嫌いだ‥‥‥)


ロロイは、深呼吸するように背筋を伸ばす。


「身の潔白を掲げてみせろ、俺達がやるのは、そういう仕事だ」


「オオデマリ卿ー!」


「オオデマリ卿ー!?わーお!」


こんなに笑顔で胸を張ってくれては、血というのは濃いのだと思えて笑えてくる。


「火葬場とか、食肉加工場とか、銭湯とか、ごみ処理場とか、ぼー!系が気になるんだよね」


「そうだよな。着火剤のような、ちまっとした使い方は後回しだ。燃えていい場所、で、使ってしまうのか?」


「燃えない石炭として備蓄しておいても、湿気ってしまう?」


「常に一定量確保しておくことを想定。そうなれば、使ってしまえる場所に紛れさせておくと便利だな」


「減らす、というのが、とは、と思うから、品質チェックもそこで?」


「と思うと、そんなに多量には‥‥‥だが、その地域?ごとに確認して、よし、ばら撒け、というのも?」


「流通‥‥‥火薬として在庫管理しているのが、現場にいそうにも思えるけど、よしよし、燃えてるな、とも‥‥‥」


「そういうのっぽさがあるよな‥‥‥ん?あ、燃えてない、しめしめ?」


「そういうのもだな‥‥‥船いいよね?」


「そうだ!船だ!品質チェックも、在庫管理も、ばら撒くのも‥‥‥燃えないのは、燃えねぇよ!って思って売ってお終いか‥‥‥」


「健やかロロイさまめ!おまえんとこ、さーむ!」


「そういうのな‥‥‥」


「在庫として持っておかせる量を調整できて、金をそれにかけさせる分量も調節できて、と、何かあるんだよ。でも、まずは、おまえんとこ、買ってくれるよな?はい!もっと燃やしたいよね?はい!最近、冷えるね?はい!あれ?そんなにいる?はい!こういうのもいるよな?はい!他所から買ってないよね?はい!これ売ってやるのは、おまえんとこにだけだからな?ありがとうございまーす!」


「悲しくなる‥‥‥!商品そのものを売りたい、というのではない使い方か‥‥‥」


「おまえんとこ、そんなに肉食べる?魚は?ほしいよね?」


「そういうのもできる‥‥‥!流通‥‥‥こーわ!」


「え?あ、魚、今、ちょーど無いんだよ、馬糞、いるよね?お野菜食べて!」


「そういうのも暴力‥‥‥」


「風呂?一週間に一回でいいだろ?」


「死ぬ!清潔大事!」


「何言ってんだ?女の子は一日三回は最低でも!赤ちゃんは常につからせておくもんだろうが!」


「そういう‥‥‥」


ロロイは泣き出したそうになって、悲しみに耐えている。


「おまえんとこ、ごみだらけだもんな?これも燃やしておいてくれるだろ?」


「嫌!来ないで!でもほしい!つらい‥‥‥!」


「え?じゃあ、おまえんとこの一家全員燃やそうか?」


「もう嫌だ‥‥‥」


たっぷりとこの世の暗黒面を見せつけられたロロイは、手帳に書き留めている部下に寄り添い、悲しみを共有しているように見える。


(仕事させてもらえてるな‥‥‥私)


部隊の皆は、それぞれに悲しみに沈んでいる。


何もかもを他者に整えてもらえる立場にいては、悲しむことなどできやしない。


そう思っておくことにした私は、優先順位、などという言葉を用いて、気に入らない存在を、守る対象から除外していく。


金を使って生きる円環を、巡らせ続ける責務を知っているのだと、驕る私を笑ってくれるだろう誰かならば、誰も彼も守ってくれる、そう思う私がどれだけ愚かなのかと泣きたくなる。


(ガキは嫌い‥‥‥)


この集団は、悲しむことをしてくれる性質を有した存在で構成されている。


その現実というものを受け止めることでしか、私は立ち尽くさずにいることができないのだから、もう廃棄処分するべきなのだと明らかだ。


(使えないごみ)


燃え上がる燎原に立つことができるのだと、綻ぶ自分を歩かせるくせにと、笑ってもらえているのだろう。


私が隠し扉を見つけて開けると、感嘆の声が上がる。


「すーげぇ!宝の山ってこんな見た目?」


「間の国は、偽物がだーい好きー!」


「価値って何なんだろうな‥‥‥」


「安くで手に入れた宝飾品をどう使おうか?」


「売る!」


(だね!)


私がさらなる隠し扉を見つけて開けると、そこには梯子なんてものがある空間が見つかった。


(ここからも地上へ行ける‥‥‥)


「何があると思う?」


「店!ここは在庫?倉庫だ!」


「船で選んだこの子を連れてやってきたのは、上品なお店。そこで、この子を着飾らせていく。宝飾品もふんだんに。その子を脱がせてお楽しみ、さらに裸婦像なんてものを描いてます、ってことにして?」


「描いてますって、ことに‥‥‥いなくなる?お帰りに、なったよ?ってことにして、残す?」


「我こそは、ど変態でーす!」


私が聞くと、ふっ!と得意げに胸に手を当てているのは、追いついてきていたシュイージだ。


「はい、シュイージさん!」


「裸の女の子を宝飾品で飾ります!」


「はい!あなたもど変態です!そうしてマネキンにしてやって、ど変態仲間が、がやがや」


「売れちゃうな!」


「はい、今日もお疲れさん!じゃ、今からここは自室でーす」


「あ!各部屋見て回ってね!残るど変態がいるな」


「また着飾らせてお出かけして、船に乗せれば、それはもう夢の円環!儲かっちゃうな!自分だけの愛人だと思っていたい‥‥‥でも、きっと皆の愛人‥‥‥それなのに、自分だけの愛人として金を払ってしまう‥‥‥最高だ!いったいいくら儲かるんだ!エステだの、マッサージだの、デトックスだの、え?王子さま?領主さま?領主のご子息さま?あなたさまは?」


「次男でっす!」


「拘束されようね?」


「あ、そういう?」


「化粧品だの、マニキュアだの、クリームだの、口紅に、リップクリーム、ハンドクリーム、そういった女の子がほしがりそうなものを扱う店で、女の子にとっての日用品を買ってやる‥‥‥女の子が好きな宝飾品で着飾れば、それを買ってやりたくなっちゃう?」


「そこは、普通に一緒に店で選んで、買ってやるよ!じゃないか?」


「一緒に選ぶ‥‥‥あ、家具もあるね。布団のような大物。食器とか、茶葉や、日持ちのするお菓子。タオルにバスローブに、ハンカチとか、バッグ‥‥‥財布?」


「持ってなくていい!」


「だろうね‥‥‥何が入るのかって化粧品、なポーチ‥‥‥生理用品‥‥‥ブラシ‥‥‥歯磨き粉!売れちゃうな‥‥‥もちろんお客さまの分も‥‥‥そうやって、部屋を契約させて、予約が入れば、女の子は、その部屋で待機、の方が、今日はどの子にします?ができて、儲かっちゃうな!いつもは、ってなると、部屋も選ぶ‥‥‥競りだな!競り落とした女の子の自室へご案内‥‥‥儲かるー!酒や料理に果物にと‥‥‥ぐるぐる売春船‥‥‥夢の円環だー!美容室やサロンに医者!生まれた子はどうしようか?」


「幼児趣味のど変態相手に商売だ!」


「それは別の船だな‥‥‥そうやって船で、ふふっ!育てば船を移る‥‥‥髪を切れば部屋を‥‥‥化粧や服装を変えれば部屋を‥‥‥お年を召せば、裏方へ‥‥‥夢のようだ!いくらでも儲かる!なんて素晴らしい円環!」


笑いが止まらないとはこのことかと体感しているのだが、皆の目が冷たいことこの上ない。


「おまえは本当に、夢をぶち壊す魔女だよ‥‥‥」


ロロイの呟きに、他の人員達も頷いている。


「どんな夢?」


「こう、違うんだよ‥‥‥女の子ってのは、そんなもん塗る?ってもん塗りたくなっちゃう生き物なのに‥‥‥金を引き出すためのって‥‥‥」


「塗る現場に遭遇してるんだね」


「おまえは、俺をいい気分にさせる天才だ!」


(ちょろいな)


「錠菓、どう使う?」


「使うって、おまえー!」


野郎共が笑っているのを見ていると、今日も世界は平和なのだと思えてくる。


「では、そういう、どうやって売買や、交換や、受け渡しや、持ち帰らせることや、置いていかせることや、入れ替えることや、すり替えることや、強奪や、押しつけといった行為が成されているのか、という観点からも、領内をくまなく調べてください」


「おう!」


「シュイージ、領民ではない君は、どこの誰なのかな、ってのも、全員明らかにしてね?軍の人員ぶってくる奴もだし、君、ここの従業員?っていうのもだし、君、まだ調べてないよ?とか、君、さっきも調べたよ?っていうのとか、君、患者なんだー、っていうのもだし、あ、配達に来ただけ?っていうのもだし、とにかく、ぜーんいんの所属と滞在先を調べて、そこで何してるのかも明確にできるといいね」


「ロロイ隊長、まず軍の人員のリストを作っていいですか?」


「先輩も、拘束対象‥‥‥」


「あ、そうだった。俺が作って、それを隊長が見ればいいですね」


「‥‥‥まあ、そうですね」


先輩と後輩というのもまた、不思議な関係性なのかもしれないと思わせてくれたシュイージは、梯子を上る気でいるようだ。


「きゃー!とかなるかも?」


「あ、そういうね。ここを閉じる‥‥‥」


「のは、こうして調べてますから、先輩は上から行きましょう」


「そうですな」


どうか、と願うことなど無力なものだ。


だが、どうか、そう思わせてくれたことに感謝して、私も地上へ戻るとしよう。

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