71.さようなら
「いやー!いいよな!着ぐるみ、精子、に対して、プール、養殖。誰でも追い払おうとしてる、ということだよな?」
「そうだね。着ぐるみ着て俺の精子受け取ってくれるんだよな?とやるのをお楽しむことで、俺、王子楽しんでるなー、ってやっておいて、ずーっとあの子を思ってるんだよ」
「他人を苛つかせ、殺意を積んでもらいと、破れかぶれ、自棄、破滅を呼び寄せたがっている、というような印象を受ける」
「自分のしてきたことを見つめ、それにより訪れている今という現実を受け入れているようでいて、開き直りなんてものではない、自分らしさなんてものを全開にして生きていこうとしている」
「お嬢もいいだろうか?」
「全部、私宛だったんだと思うんだ」
「全部って、木材もか?」
「お嬢は、どうして、もう雇えない、と手紙を書けたんだろうか?」
ホーミッヒは、何かを探しているように、視線を動かしながら考えていく。
「出し抜いたようなつもりになっている奴らを、お嬢が総取り?」
「させてくれるってことは、私が差し出したのと同じだよ!」
ホーミッヒは、がくんと肩に重みを感じたらしく、床を見つめて何もかもを失っていく。
「レンギョウ商会に繁栄をもたらす錬金術師さまが、取りこぼすなんてそーんな!何もかもお見通しなのに、どうして自分への恋文だと判断することができないのかとなると、お嬢が恋させちゃえよってことだよね?向こうだって、本物さまが返してくれるなんて思ってなくて、あーあ、残念って思ってお嬢を相手にすることになるんだって予想して、それでも向かってきてるんだから、それはもうレンギョウ商会を守りたくって仕方ない錬金術師さまの御業なんてものがとっくに展開中ってことであり、お嬢もその一部であり末端というものなんだから、お嬢はお嬢の仕事をしなくっちゃね!同じだよ!お嬢が窓口、そう思ってくれてるからお嬢に返して‥‥‥くれたっていいと思わない?いかにもあんたが言いそうなことを書いて、返してくれたってそういうことでしょ?‥‥‥どうせ、私かもしれないって思ったら、返さないなんてことできないんだよ‥‥‥あんたにはわかんないだろうけど‥‥‥ってことでお嬢がもらっていいよね?だってお嬢のところに送ってきてくれてるっていうのは、だって、お嬢だって同じ名なんだよ、はい、地下牢」
ホーミッヒは、予想していなかったらしく、ん?と項垂れたままの顔をこちらに向けた。
「お嬢の母上さまは、決して見逃さない。私への手紙を、自分のものとして手にしたお嬢の手首を掴むと、そのまま地下牢へと入れておいた。そしてお嬢は今でも気付いていないのだろう手法である、お嬢のおばか丸出しノートを確認し、そっと閉じて、放っておくことにしたんだね」
ホーミッヒは、きちんと体を起こすことが可能となったらしく、黒板を眺めて考えていく。
「お嬢は‥‥‥フユーに打ち明けぶちきれを披露し、だって!を語り、まず誰を?」
「ペソン・カスタード姫と、コゲアマ・シロップさん」
無音で笑うホーミッヒは、前屈みになりつつ、黒板に書いていく。
「返事は、来なかった‥‥‥」
「お、だが、お嬢は気に入っただろうな‥‥‥」
「お嬢のおばかは止まらない‥‥‥お嬢は、へー、今日はこれだけ?と私への手紙を確認して、にま‥‥‥」
「母上さま‥‥‥自分の判断の甘さを後悔したんだろうな‥‥‥」
「ヨツバは、いつも、いつも、いつも、いつも、いつも、いつでも報告してきた‥‥‥お嬢は止まらない‥‥‥あんたでいいよ‥‥‥」
「おー?まさか?」
「わかるでしょ?手紙、出してきて?」
「ついにヨツバさんに頼むのをやめて、フユーに?」
「‥‥‥私、訪ねる、お嬢に手紙書いてやってくれないかな?」
「そっち!そういう方向!」
「お嬢の文通相手希望一覧を渡される頃には、私の文通相手達は、皆さんそれぞれ別名を持っていた‥‥‥」
「え、そうなると、気に入った名で?」
「私、訪ねる、お嬢に手紙書いてやってくれないかな?ってやってきたから?」
「そんな‥‥‥まさか‥‥‥フユーが手渡してくれるように?」
「本当っに!わかってない!」
「おいおいおい‥‥‥そこでヨツバさんなのか?」
「私、預かった手紙を、そのまま封筒へ入れて、出す‥‥‥受け取るの、私‥‥‥お、お嬢への手紙だ、はい‥‥‥」
「何がどういいのか‥‥‥!」
「あんたは怠惰なんだから、その土地の御曹司さまに書かせて出させてくれるようになるはずでしょ?!」
「‥‥‥そうなんだー」
「お嬢の母上さま、これ誰ー!きちんと晒してやった。どうして?」
ホーミッヒは、嬉しいのだと、はにかむように微笑む。
「別名がちょっとあれだったのかな?」
「プクリ・カスタードと、クロイ・シロップさん」
「あれだな‥‥‥だが、誰なんだ?」
「お嬢ー、恋されちゃったかもしんな、ちょっと!勝手に開けな、証明?!事前申請制だなんて知らなかった!やめて!返して!自分で書いた!」
「お嬢‥‥‥!なんて愛されお嬢なんだ‥‥‥!」
「母上さまは、決して見逃さない。お宅のご子息さまだそうなクロイ・シロップさんは、まさかまさか、うちのお姫さまに嘘をつかせてでも、うちのお姫さまと文通なんて洗脳行為を実行したかったとはね!」
「お嬢は、とんでもなく高嶺なお嬢さまではあるもんな」
「じいさま‥‥‥」
「じいさま!孫に甘い!黒蜜か!」
「うそでしょ!ガーロって言っといた!けど、きっとダドアが、てめぇ!その呼び方すんな!二番煎じ娘!お嬢がご長子、だから!おまえが一番下なんだよ!ランの方がずーっと!賢いなんてもんじゃないだろうが!お嬢の周りのが、こいつとそっち、そうやって下に見てんだよ!てめぇが持ってるもんなんて、何っも!ねぇ!おまえが何なんだ?従業員にでもなってみろよ!ばかみたいにばからしくご享受してるだけのくせに!うっ‥‥‥!」
「お嬢‥‥‥なんてぼこられたがり‥‥‥!」
「あんたのせい‥‥‥お嬢‥‥‥恋‥‥‥されたいんでしょ?そうだけど!お嬢だって恋しちゃうかもしれない!そしてお嬢は、お嬢、第一に見合いを申し込んでもらってくるから買い付け行ってきて!」
「見えてるなー」
「お嬢の父上さまは行った‥‥‥泣きながら行った‥‥‥きちんと国境どころか休憩となると出てきてくれたので、帰宅‥‥‥」
「お嬢!やる気!」
「散々父上さまの心をぼっこぼこにしたお嬢を連れて、母上さまは行った。国境を越えれば、じいさまと一緒にぽい‥‥‥連帯責任、なんていけ好かない言葉なんだと、きちんと思わせてくれたが、主犯だと見做さず、さらに面白そうだとも思っているのだと、思っておいた私はさくっと別行動を開始した。領主に金儲けの話を持ってきた、そう言ってみると、領主の息子さんが応対してくれたので、さくっとレンギョウ商会の会長ご夫妻を呼んでもらい、さくっと温泉を掘り当ててもらって、さくっと温泉宿に自室をもらうことに成功した私は、そこにお嬢を置いてやることにして、帰った」
「なんて錬金術師さまなんだ!じいさまはそうして、こしあんに忠誠を誓ったのか?」
「決して、粒あんなんてものを見えないように包んだりしない!」
「それで、きんつばだけは残しておいてやったんだな‥‥‥粒ぎちぎちきんつば‥‥‥あれはあれで人気なんだろ?」
「そうみたい。じいさまを輝かせるきんつば‥‥‥しかし、じいさまは、注文を理由にして、粒あんを包みやがった‥‥‥あのババアが!あのババアが粒あんなんてものを用意しやがったんだ!儂は他人の炊いた粒あんなんてものを手にしてしまうほどにー!切り落とさないでー!焼くのはもっとだめだろーう?!と発言したので、全部広げて中の粒あんだけをババアに食べさせ続けるお嬢を、第一に眺めさせようとさせてやった」
「楽しそう‥‥‥」
「素手で‥‥‥」
「いいや‥‥‥そうだよな。難易度がな‥‥‥」
「第三が大喜び‥‥‥」
「無邪気っていいな」
「そんな第三を眺める第一と女性従者だそうな二人を、わからないのだと視界に入れてしまうティファカさま‥‥‥」
「わかんないよ‥‥‥」
「お見合い?」
「お見合い‥‥‥お見合いー‥‥‥だな!」
ホーミッヒが断定してくれたので、私もしっかりと頷いておく。
「王城で、いかにもな恰好をしていて、じいさまが、殿下!殿下!第一殿下!と呼びまくっていたのに、とっくにケイオスダルと恋をしていたお嬢は気付いていなかったそうだ」
ホーミッヒは、ケイオスダルもきちんと黒板に書いて眺めてくれている。
「じいさまは知っている‥‥‥回転木馬さま!ヒナタを探している回転木馬さま!こいつヒナタですわ!こいつこそがあなたさまのヒナタですわ!踊ってやってくださいよー!じじい泣きますよー!?」
「え‥‥‥混同?」
「じいさまは語る‥‥‥回転木馬さまは、ヒナタを探して、どこまでも招待されていく‥‥‥ヒナタという女の子を探しています、何か情報をお持ちの方は、どうぞ従者に教えてください、記憶を手繰る少しの合間、回転木馬とお楽しみくださいます方は、どちらのお嬢さまでしょうか?」
「あれもこれも言いたくなる文言だらけだ‥‥‥」
「何もかもから目を逸らしたいのだとなっていたティファカさまは、第三を連れて会場を後にした」
「正常だ!なんて安定感のある判断力!」
「すると、出てきて、ババアを指さして腹を抱えて笑えば会場を後にした王さま」
「そこだけね」
「ババアを愛してやまない第一は、回転木馬さまの情報をじいさまから聞き出し、女性従者に手袋を用意させて、冬だね、な手袋を装着すると、片膝をついてお嬢に手を伸ばして誘った‥‥‥お嬢。は?今なにやってるのか見てわかんないの?」
「お嬢ー!」
「あんこ、じゃなかった、粒あんなんてものを食らわせてやってんの!このババアがつっまんないことやりたがったから炊かせてみてやったら、どう?‥‥‥ババア、ふるふる‥‥‥このババアはあんこというお事物さまのことを、ちーっとも知らないくせに意地悪しようとするから、こういう目にね‥‥‥」
「お嬢!」
「もういいから、手、洗ってこいよ」
ホーミッヒは、言葉を出せないのだと顔を歪めて溜め息をつく。
「おいおいおい!おまえが決めるんじゃないよ!おまえは待つ!それだけだ!そのまま待機!黙ってろよ?呪われてもいいのなら、喋ってもいい、これは警告じゃない、事前申請だ!‥‥‥しかし第一は立ち上がって周囲を警戒してくれたので、きちんと這いつくばらせておいた」
「やってやったな!二歳さまってのは縦横無尽だからな!」
「そうなんだよ。なんてお素敵言葉だ、二歳さま。そこに女性従者が、いえーい!と波乗りするように楽しんでくれて、じいさまは、きちんと持ってきていたきんつばを与えてやった。その女性従者はきんつばを半分こして、もう一人の女性従者に、はい。気をよくしたじいさまは、オルゴールをくるくる‥‥‥すかさず背中で、いえーい!‥‥‥二番煎じお嬢は、オルゴールが鳴りやめば、また、ババアに粒あんを与え始め、粒あんを制覇すれば、ババアはぺらんの部分も食べることになったんだね」
「だよなー、じいさまがそっちじゃないのを出すはずないもんなー」
「おまえは、ババアを愛しすぎなんだー!おまえが、ババアをつけあがらせているんだー!だから、おまえは、そうして回転木馬さまとなっている!儂に聞いてきたのはおまえだー、お嬢の愛も受け止めてやってくれよー‥‥‥何言ってんの?お嬢はそんな素朴な回転木馬さまじゃ満足できないの!もう回転木馬はいいや‥‥‥時代は海よ!そうしてお嬢は、右の国へ行きたがるように‥‥‥」
「どういう理由?」
「せっかく来たから、と言いやがる‥‥‥うっぜ‥‥‥じいさまが、お土産買って早く帰宅しようと言ってくれたので、私とじいさまは別行動を開始」
「お嬢‥‥‥どうなった?」
「そこから右の国だと言って、国境からうちの国にぽいされたので、はるばる歩いて帰宅したそうだが、所々でレンギョウ商会な中継地点を活用してきたので、お嬢はご享受さまなんだと骨身に染みたそうで、まずは間の国の第一王子が会いに来てくれるくらいのいい女になるんだと言って、すんごい待ってた」
「封筒と便箋が送られてきた?」
「って夢を見たのに無い!」
「何を言ってるんだ!お嬢!」
「あんたが隠したんでしょ?出して!出してよ!と、どのような封筒と便箋なのかと語りつつ手紙を書き、すっと差し出してきたので、すっと外を示しておくと、お嬢は、密航お嬢となってどうにか手紙を出すという行いを実行してから帰宅したそうで、密航代金という借金持ちさまとなったんだね」
「どうせ?」
「どうせ、ババアが、送り先を教えてあげることくらい、とか思って教えてやったってことにして、やったー!これはもう、ババアが紹介してくれたってことだよね!と、お嬢が右の国の一番王子さまに手紙を送りつけたそうで、この世とあの世の繋がりについて考えていそうな状態で小隊を率いてやってきた右の国の一番王子さまは、うちの国の宮廷で、お話を聞かせていただけませんでしょうか‥‥‥ってやったんだろうね」
「お嬢は?」
「三番によって、どうぞ持ち帰って吊るしてやってください、と差し出され、ギドッチにはわかんないんだよ!と、約束したのに、どれだけ待っても届かないものを待ち続けているお嬢の心情だそうなものを語った。三番が、どあほがこんなこと言ってるから、どうにでもして手に入れようとしてくるだろうけど、絶対与えないで!と連絡しておいたし、お嬢は本体も付随する何かもこの範囲内から出たら殺処分、として、右の国の一番王子さまにも、絶対与えないで!気を付けて帰ってね?ってやってた」
「夢を、か‥‥‥」
主従とは何のかと、今日もまた綻んでしまう。
私が見やると、第二王子のジャドルーオは、びしっと背筋を伸ばしすぎて胸を張りだしている。
「おまえ、何をしているんだ?」
ジャドルーオは、すあーっと螺旋を追うように目を泳がせて天井を仰ぎたそうにしているようにも見える。
「お‥‥‥ぼ‥‥‥私は、呪い、を、聞きつけまして‥‥‥」
「第二王子、ジャドルーオ、死を望め、今すぐだ」
ジャドルーオは、追う螺旋を小さく収束させていくように俯き、覚悟というものを決めようとしているようだ。
「ヒノキを所有していないおまえ、サザンカを所有している。第二王子殿下、ジャドルーオさま、だそうなおまえ。今すぐ、おまえにとっての隣国の、処刑場で膝をつき、項垂れてくれるんだよな?おまえのような穀潰しでも、礎というものになら、なれるのかもしれないが、私はおまえを殺したい。殺したくて仕方がない。私は決めている。おまえを殺す。おまえを処刑するのは私だ」
ジャドルーオは、半泣きを通り越しそうになりつつ立ち上がると、そっと従者であるボノバートの両肩に手を置いた。
「穀潰しであるおまえは、給料泥棒であるそいつも殺してほしいんだな?」
ジャドルーオは、そっと手を下ろすと、ボノバートに目だけで別離を告げているようだ。
「ボノバート、働く気があるのなら、今すぐそいつを連行しろ」
ボノバートは、ぴしっと背筋を正してジャドルーオの連行を開始する。
悲しい、悲しい、そればかり。
どうしてこうも、虚しいのかと、問うてみたところで、私の中に広がるのは燎原だけだ。




