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シアの国  作者: 薄荷堂
間の国
67/106

67.船室

部屋に戻ると、ゼルガルが半泣き寸前となっていた。


『おまえー!急にいなくなるなよ!』


『船、見てきました』


『お子さまぶりやがって!』


私がノートを見せて、青年に話した内容を伝えると、ゼルガルもノートに追加したい言葉を考えてくれている。


『便利なんだけど、不便だよね。聞き取りは出来ても発音となると、ということかな?』


『誤った内容で伝わってしまうかもしれない、ということですか?』


『忍者だもんな‥‥‥そのくらい慎重でないとな』


(忍者でいいんだ)


『忍者はお金を持っていませんでした。どうやってごはんを食べてきたのか、となると、協力者なのか何なのかがいることになりますよね?』


『げっそり、ってことはないもんな‥‥‥毎食盗んで、なんて‥‥‥ね?僕のこと、疑ってみて?』


面白い要望に笑ってしまう。


『第一王子に選ばれないでくれ!というどなたかを、左のお隣さんに預けていた。どなたかはあの離宮の区切られた部分で、麻薬の原料となる植物を栽培し、左のお隣さんに運ぶこともやっていた。迎えにいったところで、第一王子に横取りされたくないので、この男性と夫婦なんだよ?とやるための男性も一緒に連れ帰る。でしょうか』


『忍び込まされたのかもしれないけど、離宮にいるかもしれない、って思うってことだもんね‥‥‥』


『私達が入国した時、私達が軍を率いていたので、そちらも、おいおいおい!ってことだったんでしょうか?』


『大混乱だよね‥‥‥留学生送ってきたよ?って言って、軍だよ‥‥‥斬新!って思ったね‥‥‥』


『それもあって、すぐに官舎とする判断をして、軍を待機させておいたんですか?』


『もう、そこにいて!って思ったら、あれ使おう!ってなったね‥‥‥』


『それ以前は、軍はあの辺りには配置していなかった、ということですね?』


『そうだね。配置させようという思惑だったのかな‥‥‥僕は、支所を置くというのは、いい考えだと思うんだけど‥‥‥うちの国を守った、とするのなら、右のお隣さんにそういう動きが、ってことになるのかな‥‥‥』


『左のお隣さんより、右のお隣さんとのやり取りの方が多いんですよね?』


『山があるからねー‥‥‥でも、姫をやるから、姫をくれ、なんてことは‥‥‥』


『仲良しだよね?ってことでしょうか?』


『あー‥‥‥あっちでも同じようなことが‥‥‥?』


『でへでへさまは、ティファカの可愛さを語ったりします?』


『‥‥‥見栄えのいいところだけずらー、は、やるかな』


『でも、その程度では、ちょっと遊びに行かせてよ、となりそうに思いますので、うちの娘どう?って言われて、いやー!いるんですよね!すんばらしいのが!わんさと!‥‥‥なんだと?とならせたという可能性はどうです?』


ゼルガルは、ふふっと笑ったまま、首を傾げるようにしつつ、部屋のあちこちを睨んでいたのだが、ついに頭を抱えてしまった。


『‥‥‥やってそうに思える‥‥‥!』


『お偉い皆さまのやり取りというのは、大変そうですね‥‥‥いちゃもん、つけ放題です』


『ねえ‥‥‥僕、何をしてきたの?』


『おまえんとこの姫なんて見る価値も無い!』


ゼルガルは頭を抱えたまま、ふふふと笑っている。


『王さまはどう思ってるんでしょうね?』


『そういうのはね‥‥‥そうなんだよね。王の思惑だけじゃないんだよね‥‥‥』


『今こそ、王族同士の対話が必要だったのかもしれませんね‥‥‥』


『‥‥‥でも、今こそ姫連れてってよ!とやられたかもしれないよね?』


『そうですね。え?休暇?うちのもちょーど休暇なんですよー!どれにします?とやりたいです』


ゼルガルは頭を抱えるのをやめて、溜め息をつきながら笑っている。


『左のお隣さんにも同じことやろうかな‥‥‥』


『そうですね。そういう休暇だったんだ、とできますし、ありがとね、ということで、戻ってからお土産を送っておくといいかもしれません』


『‥‥‥行ってくる?』


『お子さまらしく、おもちゃとか絵本とか持っていきますよ。どうしても、これを買いに行きたいって言ったら、連れて行ってもらえたんだ、ってことにもできそうです』


『あー‥‥‥何かある?』


『小豆ですね。麻薬より小豆で稼いでもらいたいです』


『小豆?』


『砂糖と煮ると、あんこ、というものができます』


ゼルガルは背筋をぴんと伸ばして、拳を握る。


『あんこ!知ってる!買って帰ろう!』


『ぜひ!』


『あとは、あっちでしか見ないものを買っていけばいいか』


『姫って何人いるんですか?』


『そういうのは言いたい放題だよ‥‥‥』


(そういうものなんだ)


『では、こちらとしては、そちらには何人しかいないと認識していますよ?ともできるのでは?』


『できるけど‥‥‥っていうのだね』


『お土産持っていきたいんだけど、何個あれば足りるのかな?って聞いてみるのはどうですか?』


『あー‥‥‥!でも‥‥‥それなら、色々どかっと持って行って、そっちで分けてよ、かな』


『お子さまなのにですか?』


『お子‥‥‥お子さま‥‥‥が知りたいって言ってるんだけど、って‥‥‥いや、でももう買ってきてるんでしょ?‥‥‥と‥‥‥』


(慎重だ)


『左のお隣さんとの国境を閉じさせてしまえば、左のお隣さんへ行くには、こうして右のお隣さんから船で向かうのが早い、となります』


『こういう経路を使わせたくて‥‥‥』


(おっとー、また薄目だー)


『左のお隣さんから、船で東部の港へ、という経路もありますので、そっちが潤うことになるんでしょうか?』


『よーし!そのまま行ってこい!って思われてたのかもってこと?』


(‥‥‥死ぬ?)


『‥‥‥東部には、ティファカにリボンを見せるようなお坊ちゃんのいる家があるようですね』


(おー?見えているのかー?)


『‥‥‥どうして僕が東部なんだよ?!でも西部も嫌だ!ぬくぬく王城で‥‥‥!』


(睨んでるー)


『では、レンギョウ商会のお姫さまを王城に招くのはゼルガルさまですね』


(お?開いたねー、嵌められたと思ってるねー)


『モクレン家の三男が守ろうとしているのは、右のお隣さんなんでしょうか?』


『普段通り、に見えたんだけどね‥‥‥』


『‥‥‥こういう経路、よく、使ってます?』


ゼルガルは、にこっと笑顔となって何やら考え中だ。


『‥‥‥食い散らかしてません?』


(笑顔続行‥‥‥)


『責任取ってくれませんかね?と来た姫を、あー、第一王子希望だってー、と言っておいた?』


『そういう?!僕は‥‥‥』


『兄さんを夜会に呼びたいみたいだよ?』


ゼルガルは、もう満面の笑みとなっている。


『姫にそろそろきちんとしてほしそうにされてしまい、王に、第一王子がでへでへしてましたよー、と言っておいた?』


ゼルガルは、ふっと笑って視線を落とした。


「右のお隣さんのどのお家が主催して、どこで、誰が出席していたのか、内密に、うちの王太子に明かしてくれますよね?」


ゼルガルは、小さくのけ反るようにしつつも笑顔を崩さない。


『‥‥‥人妻なら大丈夫だよね?と思ったら違った?』


ゼルガルは、笑顔のまま、ゆっくりと背もたれに体を預けた。


『人妻じゃありませんよ!と来てくれてしまったので、また兄さんがでへでへしたからだろうね?』


ゼルガルは、小さく息をついて、ふっと微笑んだ。


『どうするんですか?』


ゼルガルは、え?!となって目を泳がせている。


『いいなって思ったんですよね?第二だし、そういうことになるのかもな、と思ってるんですよね?』


『いや!僕は、ちょっと話すくらい、って思っただけで!‥‥‥何もしてないよ?』


『何も?』


『何も!』


じっと見てみたところで、真偽など見抜けない。


(でも!)


『戸籍、ほしいな?』


『‥‥‥お子さまぶらないで?』


『ゼルガルさまは、夫婦だと間違った二人だけでなく、ご家族の皆さまだけでなく、王さまに手土産持って会いに行った方がいいのでは?』


(追い込まれているー、でも、この反応は忍者ではないのかも‥‥‥?)


良家のご子息さまがあのような役目を、とも思えるが、誇りというものがどういうものなのかはわからない。


『お偉い皆さまは、恋もできませんね』


『いや‥‥‥恋ってことでは‥‥‥』


『使える!と思われて、来ちゃった!をやられたのかもしれませんよ?』


『‥‥‥僕だって、女の子とお喋りくらいしたいんだよ』


『女の子‥‥‥?』


『いや‥‥‥そこは‥‥‥表現、だよね?』


(ヨアンナ‥‥‥?)


『来ちゃった、の姫を見て、あの子だ!と?』


『いや、そういうのが来たって聞いただけ。国境を越えることもさせてない、となると‥‥‥』


『この海路で左のお隣さんへ。左のお隣さんで大騒ぎ。ゼルガルさまの国へぽい、かもしれませんね』


『僕が首謀者としたかったのかな?』


謝罪したいような気持ちが満ちてくるのだが、そんなものは、私では足りやしない。


『モクレン家三男が大騒ぎです。右のお隣さんも、ゼルガルさまの国も、あの子も守ろうとしているのかもしれませんが、すべては私の妄想です‥‥‥ティファカにリボンを見せたのは、誰だったんでしょうか?』


『‥‥‥本当のモクレン家三男?』


『しかし!うちではモクレン家三男は有名人なんです。うちがモクレン家三男だって言ってるんだから、ゼルガルさまもモクレン家三男だって思いますよね?』


にこっと微笑むと、ゼルガルは、叫びださないようにしているかのように歯を食いしばっている。


『私が私の忍者だって言ってるんだから、ゼルガルさまは私の忍者にしてくれますよね?』


ふふっと微笑むと、ゼルガルは、口を大きく開けて声を出さずに叫ぶ。


『私、ゼルガルさまが首謀者にされないように、こんなに!身を粉にして!』


『おいー‥‥‥やめてー?』


私が忍者の本をすっと差し出すと、ゼルガルは、ふっと笑って受け取ってくれた。


『ただの殺人犯かもしれませんよ?』


ゼルガルは、がっ!と口を開けて顔を歪めていたのだが。


『‥‥‥どうして?』


(わからない‥‥‥)


これまでの出来事を思い返してみても、さっぱり何も見えてこない。


『‥‥‥同じ景色を見てきたような気になっているだけなんでしょうね』


『君‥‥‥』


(ん?)


『老婆ですか?』


ゼルガルは困ったように微笑んで俯く。


『お土産持っていくのも、一緒に行って?』


『いいですよ』


『忍者‥‥‥僕を殺してやりたいと思ってるかな?』


『私は、あなたがあなたのままで、ずっと生きていてほしいです』


ゼルガルは半泣き寸前となって俯いたままだ。

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