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シアの国  作者: 薄荷堂
間の国
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59.留学生

用意してもらえた物件で、ミィアンとヨツバは読書処を開店させた。


店の本は、ほしいものがあればいつでも持っていってよし、としていて、私の読み終えた本の数がある程度となると、店に残っていた本とそれらを入れ替えている。


ナオジーの奥さまが療養中ということで、私は店には行かず、離宮で本を読んで過ごしている。


タミーラは、そろそろ寝がえりでもしようかな、となってきていて、理由が理由なのだが、ナオジーも側でタミーラを見ていることができて嬉しそうだ。


仕事ではあるのだが、ゼルガルが東部支所近くの離宮に行くことになり、ナオジーは出産したばかりの奥さまを残して来ていたのだと思うと、何だか申し訳ない気持ちになってくる。


(心細かっただろうな‥‥‥)


奥さまは徐々に回復してきていて、ヨツバがつけてくれた手摺を頼りに、ナオジーに支えられつつ歩けるようになってきた。


(お?寝たかな?)


そろそろと奥さまのところへ行って、そおっと奥さまの横に下ろすと、タミーラは無事にお昼寝を続けてくれている。


(では)


居間に行くと、疲れているナオジーがいた。


『あ、ありがとうございます。私では寝てくれなくて‥‥‥』


『ナオジーもお昼寝してきて?』


『いいえ、夫婦というのは、別々の時間も大切です』


(そういうもの?)


『そっか』


居間を出ようとしたのだが。


『あの、ティファカさまに従者がつきましたので、誕生日のお祝いの夜会を、となったんです。西部支所から王城へ移動しようとしていると、そこにちょうどあちらの王太子殿下が、フユーに会いに来た、と言ってこちらの国へ‥‥‥』


(すごい時に来たな‥‥‥)


『国境が封鎖されている中、誕生日のお祝いに駆け付けた、というような形に?』


『それが‥‥‥まずはこちらの国王陛下に挨拶を、ということでしたので、王城へ、となりましたが、夜会には出席せずに、すぐにフユーのところへ向かう、と‥‥‥』


(あっちで何か‥‥‥あったなら、ここまで来たんだから言ってくれるだろうし‥‥‥)


お忍びでティファカに会いに来たのではない、とするために私を出しておいただけなのだろうが、私に会いに来る用事とは何だろうか。


(ファーゼと何か‥‥‥?さすがにその理由では来ないか‥‥‥)


情報をもらえないだけかもしれないが、国境封鎖を否定しないということは、あちらから通せと動いたということになる。


(強気‥‥‥友好?)


『‥‥‥フユーは、こちらの言葉を話せることを、あちらには隠しているんですか?』


(ん?)


これは、怪しまれている、という状況なのではないだろうか。






◇◆◇◆◇◆◇






考えてみれば、私も高値で売れそうな気がする。


(あれ?)


密輸関係者だと見なされているので、私はこうして離宮巡りをさせてもらえているのだろうか。


(店には出ないように‥‥‥)


離宮を誰か訪ねてこないかと見張られているのだろうか。


(え?)


ここで、疑いを深められてしまっては、私はどうなるのだろうか。


(落ち着こう‥‥‥私は、下っ端官吏の留学生だ)


『‥‥‥話せるってほど、話せてる?』


『‥‥‥話せていますね』


『‥‥‥そんなになんだー‥‥‥お子さまだからかな?』


『‥‥‥そうかもしれませんね。ゼルガルさまは、ティファカさまへの贈り物として、花のついているポーチと、アプリコットジャムなクッキーのピアスを始めとするピアス、アクセサリーラック、トートバッグを、残りは、という言い方はあれなのですが、それらを王妃陛下に、そして、ご家族の皆さまの側近達にはポーチを、と‥‥‥』


(‥‥‥何が言いたいんだろう?言葉‥‥‥?)


『‥‥‥そうなんだね』


『‥‥‥私は、ゼルガルさまの従者なんです』


(そうだね‥‥‥?)


ナオジーも何かを探っているのだ、ということばかりが明らかだ。


(ん?もしかして‥‥‥なぜ留学を終えないのか、ってこと?)


ティファカがあのようにギドロイとお近付きになろうとしていたのだから、ティファカを連れてギドロイと一緒に帰ってほしかったのに、ということだろうか。


私がこちらの言葉を話せることを知れば、ギドロイが私を連れ帰ってくれたかもしれないのに、ということかもしれない。


(あれかな?あなたはもう留学生じゃなくて商売人ですよね?ってこと?)


とりあえず、国として受け入れている留学生ではなくなってくれ、ということだろう。


『‥‥‥うちの王太子殿下、もう帰った?』


『‥‥‥帰りましたね』


(にも関わらず、あなたはなぜここにいるのか、と聞こえる‥‥‥)


雪野原ちゃんは集めた本読んでるよ、な状況がもう出来上がっているのだから、私がいなくなるだけでいいのだと、今になって気付く。


私の部屋はナオジー達が使っているので、毎日使用するようなものだけが、私が寝起きしている部屋にある。


『そっか』


居間を出ようとしても、もうナオジーは呼び止めない。


(どこへ行こうか‥‥‥)


アローラも、フユーも、この国で生きていく。


私は次は誰になるのだろうか。

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