56.贈り物
鞄工房の店主が、色々なデザインのピアスを試作するついでにと、私のクッキーな花のピアスも、私に作らせてくれた。
(ほぼ店主作!)
新規の案件をもたらしたお駄賃だと言って、宝石工房の店主が石を二つずつ色々とくれたので、私のクッキーな花のピアスは、色違いのものがずらりとなっている。
ティファカのずらりピアスのように、色違いずらりというのをやってみたかったので、眺めているだけで楽しい。
鞄工房の店主は、ピアスを持ち帰るのに使えと言って、ピアスやバッジの持ち運び用ポーチの試作品を全種類くれた気前の良さだ。
ずらりと並んだ新商品を前にしてほくそ笑んでしまうのは、商売人の性というものだろう。
「ほしいのある?」
「ある!でも、まず‥‥‥」
ミィアンは、ポーチの中のベルトに掛かっているピアスを入れ替えていく。
「わかってると思うけど、あんたが着けてもいいのは、真珠。あとは、まあ、黄色系やオレンジ系と、無色のものならいいかもしれないわね。あと、黒系もあんたが持っときなさい」
ミィアンは私のものとなるピアスばかりとなったポーチを、ずいとこちらに寄せておいた。
「じゃあ、僕は、赤と紫とピンクなものをもらうよ」
ゼルガルは、残っていたピアスを集めた二つのポーチを引き寄せると、その二つの間でもどう入れ替えようかと悩み始めた。
そうなると、第三王子が緑系の宝石を御印としているので、宝石工房でもらう石を選ぶ時点で、ミィアンが緑系の色石を除外しておいてくれたのだろう。
「で、私がほしいのは、ポーチと無色のもの」
ミィアンが中身の無くなったポーチを手に取ったので、無色のものの入っているポーチを差し出しておくと、ミィアンはその場で耳に着けてくれた。
クッキーな花のピアスは、雪野原バッジとは違い、耳にかける金具の根本に宝石を配置して、その下にクッキーな花となっている。
耳元で小さく揺れるピアスは、大変に私好みな仕上がりとなった。
「僕、このポーチ、大量に注文するよ」
(なぬっ!?)
三人の視線を集め、ゼルガルは、ふすっとなりつつ言った。
「でも、ベルトの穴は三つもあればいいかな。うちの家族の側近達の人数分頼むよ」
「「「ありがとうございます!」」」
「兄さんと別れたの?」
唐突に困る質問をされてしまい、ミィアンを見て顔を逸らされ、ヨツバを見て顔を逸らされ、ナオジーを見ても顔を逸らされてしまった。
(別れ‥‥‥?)
「‥‥‥どう、思います?」
「消滅?」
別れた、よりは、消滅、の方が現状を示しているように思う。
ゼルガルから見て消滅ということは、もうそういうことなのだろう。
(消滅‥‥‥)
何も言えずにいると、ゼルガルは不憫そうにこちらを見ている。
「ま、フユーは本読んで金儲けしてればいいよ」
「‥‥‥そうします」
しーんとさせてしまったので、私のものとなったピアス入りのポーチを持って立ち上がった。
自室へ向かう道中、ナオジーにすっと手を出してみると、こちらを見ないようにしつつ雪野原バッジを渡してくれた。
さらに廊下へ出てからも、まず最初に遭遇した護衛にすっと手を出してみると、あと二人さっと寄ってきて、私の手の平には三つの雪野原バッジがのせられた。
無事に四つとも回収できたので、自室へ向かう。
(居た堪れない‥‥‥!)
ピアスやポーチの試作が終わると、私は鞄工房通いを終わらせることになっていた。
そして、今日、試作が終わった。
明日からは、ひっそりと本を読んで過ごすとしよう。
◇◆◇◆◇◆◇
(どうしようかな‥‥‥)
雪野原バッジは分解し、花びらの部分は、中心にボタンを配置して、ポーチにずらっと縫い留めておいた。
真珠四つの使い道は、ころころ転がしてみても、浮かんでこない。
(‥‥‥ピアス、どうしようかな)
真珠はもちろんもう身に着けないのだが、黄色やオレンジのものを着けるのも、なんだか気後れしてしまう。
(これは、眺めて楽しむものってことにしよう)
身に着けることをするピアスを作ろうと決めて、小刀と木材を取り出して、削っていく。
宝石ではなく、木材で作った部材を配置する、クッキーな花のピアスを作ろう。
ミントグリーンに、パールグレー、チョコレート色もいいだろう。
(お子さまらしくピンクだの、黄色だの‥‥‥そうだ、あの猫)
パウダーピンクに、レモンイエロー、あの猫のような青みがかった灰色も加えたい。
部材を作りためたら、また鞄工房を訪ねるとしよう。




