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シアの国  作者: 薄荷堂
間の国
55/106

55.鞄工房

『おう!どうだったんだ?』


『着けてもらえました!』


『よかったな!まあ、ゆっくりしていけよ』


『ありがとうございます』


鞄工房の主人は作業に戻り、私は奥の休憩に使っているらしい部屋で本を開く。


朝になってもナオジーは戻っていないどころか、ゼルガルもいなくなっていた。


ゼルガルが動いたということは、何か見つかったのか、それとも邸の主人の怒りを買ったか。


雪野原バッジによって、私が謝罪すれば解決、とはならないに決まっている。


ケイオスの責任としたくなかったのだが、結局はケイオスの責任となってしまうのだろう。


お子さまを笠に着て出しゃばっておいて、上手くいかないと落ち込むとは勝手なものだ。


今のところ自由にさせてもらえているということは、密輸関係者だと見なさないでもらえているのだろうか。


(でも、護衛の人達がついてきてくれてるみたいだし‥‥‥監視かも)


私があの女性に会ったのは偶然だったのか。


あの女性は、私が雪野原ちゃんだと知っていたのか。


情報が少ない中で、軽率な判断をした私は、まんまと誘い込まれたのだろうか。


(リンランは、恋をしていたのかもしれないのに‥‥‥)


だが、取り調べの場であのように語るのでは、と考えてしまう。


あの女性の教えを受けたのだとすると、あの邸にいたのは本当のモクレン家三男という可能性もあるだろう。


リボンを出されたというところまでは、私もティファカから聞いていた。


そこから先は、ラージウがティファカの耳に入れなかったのか、二人が私の耳に入らないようにしてくれていたのか。


ティファカをここまで連れ出してきて、あんな目に遭わせていたかもしれないとは。


お子さまはお子さまらしく、とは思うのだが、今日もこうして鞄工房であの女性を待っている私は、自分のことばかりだ。


(包囲されるように仕向けたのに‥‥‥)


あの女性のことを知りたいと思う私は、何がしたいのだろうか。






◇◆◇◆◇◆◇






(ん?)


そういえば、ナオジーは広場でもアイオライトのバッジをつけていたのだろうか。


ゼルガルがあんなにあっさり許可をくれたのは、ケイオスの指示だとするからだったのかもしれない。


(魔女、だな‥‥‥)


『フユー、あれいいな。花びら四枚にして、鞄につけてもいいか?』


『どうぞ!』


自分のアイデアが採用されると、なんとも嬉しい。


『うちのも、金型作れないか?』


『どのくらいの大きさにしましょうか?』


私がノートを取り出すと、店主は色々な大きさで花を描いてみて悩んでいる。


ここで皮の端材をもらえることになったので、それでピアスを作ろうと考えた私は、作った金型をリュックに入れたままにしていた。


(ずぼらでよかった)


昨夜は急遽、それを使って型抜きした皮でバッジを作ることにして、これまた宝石工房でもらった、商品に使うには小さい真珠を、花びら六枚の花の中心に使っておいた。


できたバッジは、四つすべてナオジーに渡しておいたところ、今日ついてきてくれている護衛達もそれを着けてくれている。


私についている人員が必要ならば、レンギョウ商会に派遣してもらいたいのだが、それでは監視の役目を果たさないのかもしれないと考えると、雪野原バッジをつけてもらえることは有り難い。


(でも、雪野原ちゃんでーす、なんだよな‥‥‥)


しかし、アイオライトを着けた人員についてもらうよりは、となる。


私についてくれている人員だけでなく、あの家の関係者を包囲してくれているのだろうナオジー達の給料も私が支払いたいくらいだ。


(金がほしい‥‥‥!)


『フユーは歴史を学びに来たのか?』


『え‥‥‥私‥‥‥』


(留学生だった!)


店主は、私が横に置いている本を見て聞いてきたのだろう。


『‥‥‥色々、でしょうか?』


『ま、住んでるとなれば、この国を知ることになるよな』


ははっ!と乾いた笑いを返しておくことしかできない。


(そうだよ、留学生なんだよ、ケイオスさまは留学生をね。それで皆さんはアイオライトのバッジを‥‥‥)


私は、かなりの出しゃばりなのだと自覚するしかない。


(でも、ほら、今はミィアンとヨツバも、留学生のところに派遣されてるんじゃなく、レンギョウ商会の商売人として商売してるから、魔女として第一王子の威光をというのではなく、私一個人が嫉妬に狂って、というような理由で包囲をね‥‥‥?)


自分と会議を始めてしまう。


『もうピアスは作らないのか?端材なら、まだやるぞ?』


『いいんですかー!』


それならば、いっそ花びら十二枚といこうか。


私もノートに描いてみる。


(クッキーみたいだな)


『あ、そうだ。皮を小さなベルトのように穴をあけて、それをふかっとしてるポーチの内側に付けて、片側を取り外し可能としておけば‥‥‥』


私がポーチをノートに描いていくと、店主はベルト部分を描いていく。


『ピアスやバッジの持ち運びに便利そうだな』


『売れますかね?』


『それも、ピアスも、うちで始めてもいいか?』


『どうぞ!』


『端材の使い道ができて助かるよ!』


店主と一緒に、ピアスやポーチのデザインを考えていく。


(宝石の工房にも声をかけないとな)


金儲けというのは、実に心を潤してくれる。

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