表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シアの国  作者: 薄荷堂
間の国
53/106

53.お使い

(つけられている気がする)


きちんとお使いができるのかと、心配してくれているのかもしれないが。


穀潰し生活満喫中な私は、ぽいっとどこかへやりたく思われているようにも、と思えてくる。


魔女が次は第二王子を、と見られているのではないだろうか、とも予想する。


(‥‥‥東部支所も、国境を見張る役割だよね)


密輸がきっかけで支所を、などとは言えないので、魔女によって王子が、と言える現状は都合が良いのだろうと考えると、雪野原ちゃんはそういった面でも、ちょうどよかったー!な存在だろう。


雪野原ちゃんをさらに便利に使うとすれば、あとは数年経ってから、育ちましたよ、な雪野原ちゃんを表に出せばよく、これ以後私が存在している必要はない。


数年後に、そんなこともありましたね、と雪野原ちゃんは除けておいて、別の誰かをお相手として出すこともできる。


お子さまというのは、意外と虫除けとして使い勝手のいい存在なのかもしれない。


(魔女、ね‥‥‥)


今現在の我が身の安全を考慮するとなると、自分が虫除けである可能性を直視せねばならず、どうにも気が滅入る。


(‥‥‥どこに行こうかな)


行き先が決まらないのだが、立ち止まりたくはない。


この国で姫と呼ばれるのは、ティファカのみだと認識していたのだが、この国が姫として挙げてきたのは、先王の妹の孫だった。


(王妃さまに言わせれば、もう他人‥‥‥でも姫‥‥‥まさかね)


へへっと笑ってしまうと、道端に寝転んでいた猫に不審がられてしまった。


(‥‥‥そんなに見ないで?体を起こさないで?そのまま寝てて?)


カウントダウンが始まっていそうな猫の様相に、あわあわしてしまう。


飛びかかられやしないかと、猫に注意を向けつつ足早に通り過ぎようとすると、角を曲がってきたご婦人とぶつかってしまい、その勢いでごろんと地面に転がってしまった。


お子さまならではの出来事に笑ってしまうのだが、ご婦人は笑ってくれずに心配してくれている。


『やだ!怪我してない?!』


『すみませんでした‥‥‥』


私が立ち上がってスカートを軽く掃っていると、ご婦人は私の背面を掃ってくれ始めた。


(ん?)


『きゃー!』


私が懐紙を取り出し、そこに抜けた歯をころんと出すと、ご婦人を叫ばせてしまった。


(え‥‥‥?)


この凄い勢いで心配してくれているご婦人は、ヨアンナを連れてきたあの女性とよく似ている。


(ちょっと違う‥‥‥肩幅‥‥‥?もう、そう見えてくるのかもしれないけど‥‥‥)


このご婦人こそが、母を生かしておいてくれた方なのだろうか。






◇◆◇◆◇◆◇






この半狂乱とも言えそうな状態となっているご婦人は、私の顔を見ても、そちらには特に反応を示していないようにも思える。


だが、この髪で、すでに私が誰なのか予想されてしまったのかもしれない。


(それでこんなに?でも、そこまで特徴的な銀髪だという訳では‥‥‥どうしようかな‥‥‥)


ぜひとも調べてもらいたい人物を見つけてしまったのだが。


『すみませんが、歯が抜けてしまったので、口を濯がせてもらえませんか?』


『いいわよ!うちに来てちょうだい!』


女性は来た角を曲がっていく。


そおっと後方を振り返ってみると、ゼルガルの護衛が二人もついてきてくれていたのだが。


(外して‥‥‥!)


出て行ったものかと判断しかねていた様子の護衛達のバッジが、アイオライトのバッジに着け替えられていたのでは、ぎょっとしてしまう。


私がバッジを外す仕草をしつつ、目で角の方を示すと、護衛達は、うん?となりつつも小さく頷いてくれたので、このままついてきてくれるだろう。


急いで女性の後を追いかけると、小走りとなっていた女性はこちらを振り返って、速度を緩めてくれた。


(‥‥‥優しい‥‥‥?)


しばらく行くと、女性が立派なお邸の門に手をかけたので、急いで止める。


『すみません。恥ずかしいので、洗い場のような場所でコップを使わせてもらえませんか?』


『あ!そう?そうね!』


お子さまが通用したらしく、女性は裏手へと回ってくれるようだ。


(ここは勝手口への門かな?)


女性が開けてくれた門からは、屋内への扉の脇にある小さな洗い場が見えている。


女性が案内してくれる先が宿だと、屋内に入ることになってしまうので困るな、と女性を追いかけ始めてから気付いたのだが、これなら護衛達からもずっと私の姿が見えているだろう。


(あ‥‥‥)


そういえば、あの二人は私を護衛中なのだろうか。


勝手にあの二人に指示まで出して、使ってしまっているのだが。


(よし!消されてこい!とは、思われてない気がする‥‥‥って思っておこう)






◇◆◇◆◇◆◇






女性は屋内へ誘導しようとすることをせず、洗い場で口を濯がせてくれると、病院へ行こうとまで言ってくれている。


疑っていることが申し訳なくなるくらいの、いい人に思えているのだが。


(似てるんだよな‥‥‥)


すぐに頼ることのできる権力者となるとゼルガルなのだが、どういう理由を説明したものか。


ゼルガルが密輸について知らない、ということはないのではないかと思えるが、この女性について提案するということは、私があちらの国ではどういう立場だったのか話すことになるだろう。


(でも、フユー・マツリカを使えって言われたしな‥‥‥)


『あ、お使い。私、お使いの途中だったんです。どこか美味しいお菓子のお店を知りませんか?』


『え‥‥‥お菓子?お菓子ね‥‥‥本当に大丈夫?』


『はい』


『お菓子‥‥‥ちょっと待っててね?』


女性は勝手口から中へと入っていった。


(この街に詳しくない‥‥‥?甘いものがあんまり、なのかもだけど‥‥‥)


こちらの国にも密輸の拠点となるような場所が、東部にある国境近くにあるのだろうとは考えていたのだが、そうなると、ヨアンナが証言した西部にある国境近くの場所には、あちらの国への輸出品の情報しか無かったのかもしれない。


(ヨアンナが出荷品‥‥‥かも?)


麻薬を売りさばく手間を考えると、子を求めている家に、教育済みの子を売る方が簡単だ。


(妾腹の子‥‥‥の子か‥‥‥?)


この国としては、隣国の後宮へ入れてしまうのが手っ取り早く、隣国は受け取ってそのまま出荷してしまえば金になるが、ケイオスやモーリスの反応からすると、王家がそのような方法を取るとは考えにくい。


妾の孫達に国内で婚姻を結ばせ終わったので、ケイオスの順番待ちを解消したいと考えていたのだろうか。


(貧乏くじ‥‥‥だよね)


ヨアンナはすでに人妻となっていたのだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ