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シアの国  作者: 薄荷堂
間の国
52/106

52.パンケーキ

ティファカとラージウは西部支所へ移ったので、二人が使っていた部屋は、第二王子であるゼルガルと従者のナオジーが使うようになった。


ゼルガルに挨拶したいというお嬢さま方が父親に連れられてはやってくるのだが、ゼルガルは会おうとしない。


いつもナオジーが一人で応対し、東部支所が支所としての役割を果たすようになってから改めて挨拶に来てくれるようにと、お嬢さまの父親に向けて言っている。


お坊ちゃん方の中には、そのようなお嬢さま狙いで、変わらず本を読みに来ている方もいて、なんだかお見合い所のようになっている気もしてくる。


「‥‥‥金平糖、置いちゃう?」


「‥‥‥お菓子よね?」


「‥‥‥菓子に違いない!」


三人でじっと見ると、ゼルガルはあっさり頷いてくれた。


「いいよ」


「‥‥‥宝石飴も?」


「いいよ」


「‥‥‥チョコなんてのは?」


「いいよ」


(いえーい!)


三人で売れ残りの菓子で乾杯していると、ゼルガルは二つ目の菓子を皿に取った。


ゼルガルは甘いものが好きなようなので、夕食後のゼルガルのお楽しみとして菓子を出せるように、いつも多めに仕入れるようになった。


きちんと取っておいた売れ残りという訳だ。


「ゼルガルさま、ここは離宮という場所柄、お子さまがやってきませんので、お子さま向けの本ばかりを広げて、ほしいのあったら持っていっていいよ、とやるために広場を借りてもらえませんか?」


「いいよ、ナオジー」


「わかりました」


「その時、お子さま向けな商品の露店を出しても‥‥‥?」


「いいよ、ナオジー、よろしくね」


「わかりました」


(いえーい!あれ?)


ミィアンとヨツバは、菓子を食べるのに忙しい。


「あんたはここで本読んでて?」


「お子さま向けじゃないのも、少し出したらどうだ?お客さまの幅を広げないとな」


「わかった」


どうやらお留守番となるようだ。






◇◆◇◆◇◆◇






『フユー‥‥‥僕は、今日がその時だと思うんだよ』


『‥‥‥どの時ですか?』


かき氷を作ろうと言い出したゼルガルがじっと見ているのは、梅を酒に漬け込んでいる瓶だ。


『もう飲めるんだろう?』


『そうらしいですけど、寝かせた方が美味しいということは、まだ美味しいとはなっていないのでは?』


『でもこの色!絶対美味しいって!かき氷にかけよう!』


(誕生日いつなんだろう‥‥‥?)


第二王子は第一王子の二つ下だったような気がする。


そうだとすると、ゼルガルは今年十五になることになるのだが、こそこそ飲みたがるということは、まだ十四なのかもしれない。


『お酒、飲めるんですか?』


『それをこれから試すんだよ!』


(‥‥‥わからん)


『紅茶にスプーン一杯分だけ入れてみる、ですとか、そういった方法から試してはどうです?』


『大人がいない今日!そんなみみっちいことをするのか?!僕は、どばっとかけたいんだよ!』


そろそろ秋だというのにかき氷と言い出したこの次男さまは、私を共犯にするつもりのようだ。


(おーい!ナオジー!)


ゼルガルは、ふっと笑う。


『ナオジーなら、広場へ手伝いに行かせている!』


(計画的犯行‥‥‥)


ゼルガルの御印を着けているナオジーを手伝いにやっておいて、私が大事に寝かせるつもりでいる梅酒を狙うとは。


きょろきょろしてみたのだが、いつも通り護衛の皆さんは護衛に徹しているようで姿が見えない。


『‥‥‥これは、私がお酒を飲めるようになるまで寝かせておくんです』


『じゃあ、チョコを食べよう!』


(それが真の狙い?)


『あれは商品ですので、店員から買ってください』


『フユー‥‥‥僕に買い物なんてことができると思っているのか?』


『‥‥‥買い物はできますよね?』


『だめ次男が、現金なんて持たせてもらってると思ってるのか?!』


以前何かやらかしたのではないかと思えてくる。


『‥‥‥パンケーキ食べますか?』


『あるの?』


『焼きます』


『フユーが?』


『そうです』


『食べに行こう!』


これは、信用無しということだろうが、正しい判断だ。


『‥‥‥何か買ってきます』


『そう?頼んだよ!』


(いいんだ‥‥‥)


小腹が空いているだけということかもしれない。

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