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シアの国  作者: 薄荷堂
間の国
47/106

47.老婆

(いい天気ー‥‥‥)


畑な敷地の中にある木陰に寝転んでいると、夏がもう間近だと感じられる。


「おい‥‥‥」


(ん?)


ラージウは疲れた様子で隣に腰を下ろしたので、私も体を起こして座っておいた。


「何を、吹き込んだんだ?」


(‥‥‥どれだ?)


すぐにどれなのか見当をつけられないということは、やはり私は悪い友人なのだろう。


「それ、どういう意味だ?」


ラージウが見ているのは、私が着けているピアスだろうか。


「どういう、とは?」


「なぜ、黒い?」


「何色にしようかなって思って、黒でいっか、って。服とか何色でも合うでしょ?」


「白でいいだろうが」


「白もいいね。作るよ」


「‥‥‥おまえ、もっときゃっきゃきゃ生きられないのか?」


「きゃっきゃきゃ‥‥‥?!」


とても応えられそうにない要望にたじろいでしまう。


「お子さまらしく、ピンクだの黄色だので塗れよ」


(そういうのでいいのか)


「あー‥‥‥ミントグリーンは?」


「‥‥‥早く大人になりたいのか?」


「特にどうとも希望してない」


「‥‥‥夢とか無いのか?」


(夢?!)


何やら問診のようなものが始まってしまったのだが、これは心配されているのだろうか。


「‥‥‥私に伸びしろは、無だよ」


「無?!」


「私は、あとは老いて死ぬ、それだけ」


「おまえ‥‥‥!こう、もっと、無いのか?!おまえが相手にしてるのは、あんなんでも王子なんだぞ?!」


「お好みな仕上がりには育たないだろうし、中身は一生老婆だよ」


「一生老婆‥‥‥?!」


「何の面白味も無い老婆」


「何の面白味も、無い老婆‥‥‥」


ラージウは両膝に肘をつき、組んだ手で頭を抱えたそうにしているのだが、目で語るだけにしてくれている。






◇◆◇◆◇◆◇






「ガキにはガキの良さがあるだろ?」


「ガキの良さ?」


「丈の短いドレス」


「あー!そうだね。女の子さんに短いの着てもらうと、可愛いー!ってなるね。私も、長いのは何か違うって思うんだ」


「長いのなんて、でかくなってから着ればいい。ガキはガキの強みを活かすべきだ」


ラージウがどこか得意気で、ふすっとなりそうになってしまう。


「じゃあ、ティファカが次の夜会で着るドレスは、ラージウがプレゼントしたら?」


「‥‥‥俺が?」


「ラージウも、招待されるような御曹司さまなんでしょ?その夜は従者はお休みで、お連れさまとして一緒に出席したらどう?」


「‥‥‥引っ込んでろってことだ」


ラージウは溜め息でもつきたそうにしている。


(落ち込んでるの‥‥‥?)


「だから従者に、と?」


「そういうことだ‥‥‥」


「ティファカが誰かを選ぶのを、ずっと近くで見ていろ、ってことなの?」


ラージウは小さく溜め息をつく。


「そういうことだ」


「拷問だね‥‥‥」


ラージウは何か言いたそうにしつつも、小さく溜め息をついて言葉を押し込めたようだ。


「‥‥‥耳、痛かっただろ?」


「あ!ピアスか!ティファカの考えてるデザインが、強みを活かしてないんだね?」


ラージウはまたも何か言いたそうにしている。


押し込めるのかと思ったのだが、言う!となったらしく、ラージウは目を尖らせた。


「あいつ、穴開けてすぐから、あんな重そうなの着けるつもりでいるのか?」


「あー、石使うとなるとね。でも楽しそうだし、出来上がったら仕舞っておくための宝石箱と、代わりのピアスを作ってあげたらどう?何色で塗る?」


「‥‥‥おまえは、アイオライト、真珠、アクアマリンだろ?」


「ティファカなら、ゴールデン・ベリル‥‥‥ローズ・クォーツ、スモーキー・クォーツ?」


「‥‥‥あーあ‥‥‥道具貸してくれ‥‥‥」


ラージウは、溜め息をついて立ち上がると、疲れが増した様子で歩いていく。


私も白いピアスを作るとしよう。

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