47.老婆
(いい天気ー‥‥‥)
畑な敷地の中にある木陰に寝転んでいると、夏がもう間近だと感じられる。
「おい‥‥‥」
(ん?)
ラージウは疲れた様子で隣に腰を下ろしたので、私も体を起こして座っておいた。
「何を、吹き込んだんだ?」
(‥‥‥どれだ?)
すぐにどれなのか見当をつけられないということは、やはり私は悪い友人なのだろう。
「それ、どういう意味だ?」
ラージウが見ているのは、私が着けているピアスだろうか。
「どういう、とは?」
「なぜ、黒い?」
「何色にしようかなって思って、黒でいっか、って。服とか何色でも合うでしょ?」
「白でいいだろうが」
「白もいいね。作るよ」
「‥‥‥おまえ、もっときゃっきゃきゃ生きられないのか?」
「きゃっきゃきゃ‥‥‥?!」
とても応えられそうにない要望にたじろいでしまう。
「お子さまらしく、ピンクだの黄色だので塗れよ」
(そういうのでいいのか)
「あー‥‥‥ミントグリーンは?」
「‥‥‥早く大人になりたいのか?」
「特にどうとも希望してない」
「‥‥‥夢とか無いのか?」
(夢?!)
何やら問診のようなものが始まってしまったのだが、これは心配されているのだろうか。
「‥‥‥私に伸びしろは、無だよ」
「無?!」
「私は、あとは老いて死ぬ、それだけ」
「おまえ‥‥‥!こう、もっと、無いのか?!おまえが相手にしてるのは、あんなんでも王子なんだぞ?!」
「お好みな仕上がりには育たないだろうし、中身は一生老婆だよ」
「一生老婆‥‥‥?!」
「何の面白味も無い老婆」
「何の面白味も、無い老婆‥‥‥」
ラージウは両膝に肘をつき、組んだ手で頭を抱えたそうにしているのだが、目で語るだけにしてくれている。
◇◆◇◆◇◆◇
「ガキにはガキの良さがあるだろ?」
「ガキの良さ?」
「丈の短いドレス」
「あー!そうだね。女の子さんに短いの着てもらうと、可愛いー!ってなるね。私も、長いのは何か違うって思うんだ」
「長いのなんて、でかくなってから着ればいい。ガキはガキの強みを活かすべきだ」
ラージウがどこか得意気で、ふすっとなりそうになってしまう。
「じゃあ、ティファカが次の夜会で着るドレスは、ラージウがプレゼントしたら?」
「‥‥‥俺が?」
「ラージウも、招待されるような御曹司さまなんでしょ?その夜は従者はお休みで、お連れさまとして一緒に出席したらどう?」
「‥‥‥引っ込んでろってことだ」
ラージウは溜め息でもつきたそうにしている。
(落ち込んでるの‥‥‥?)
「だから従者に、と?」
「そういうことだ‥‥‥」
「ティファカが誰かを選ぶのを、ずっと近くで見ていろ、ってことなの?」
ラージウは小さく溜め息をつく。
「そういうことだ」
「拷問だね‥‥‥」
ラージウは何か言いたそうにしつつも、小さく溜め息をついて言葉を押し込めたようだ。
「‥‥‥耳、痛かっただろ?」
「あ!ピアスか!ティファカの考えてるデザインが、強みを活かしてないんだね?」
ラージウはまたも何か言いたそうにしている。
押し込めるのかと思ったのだが、言う!となったらしく、ラージウは目を尖らせた。
「あいつ、穴開けてすぐから、あんな重そうなの着けるつもりでいるのか?」
「あー、石使うとなるとね。でも楽しそうだし、出来上がったら仕舞っておくための宝石箱と、代わりのピアスを作ってあげたらどう?何色で塗る?」
「‥‥‥おまえは、アイオライト、真珠、アクアマリンだろ?」
「ティファカなら、ゴールデン・ベリル‥‥‥ローズ・クォーツ、スモーキー・クォーツ?」
「‥‥‥あーあ‥‥‥道具貸してくれ‥‥‥」
ラージウは、溜め息をついて立ち上がると、疲れが増した様子で歩いていく。
私も白いピアスを作るとしよう。




