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シアの国  作者: 薄荷堂
間の国
44/106

44.金平糖

雪はまだ街から無くなっていないのだが、ラージウの働きにより、もう引っ越し準備が終わったのでと、お隣さんは引っ越していった。


(食べ放題!)


引っ越しの手伝いにやってきたお隣さんの息子は、八朔食べ放題をもたらし、レンギョウ商会で手配した人員は、商品をもたらした。


『瓶も中身も可愛い!』


ティファカが食いついてくれて、げへへと心の中で笑ってしまうのは、きっとミィアンとヨツバもだろう。


『金平糖だよ』


『金平糖?』


『一緒に食べることができると、仲が深まるんだよ』


『何それ?!どきどきする!』


(可愛いな!)


『これは酒の入ってるチョコだから、食べないようにな?』


『はーい』


『わかった』


ヨツバが運んでいく箱を名残惜しい気持ちで眺めていると、ミィアンが小さな箱を渡してくれた。


『これは角灯の試作品ね。雪時計は完成品もいる?』


『ありがと。角灯はもらってもいい?』


『いいわよ。こっちは香水と、蝋燭と、石鹸ね』


ミィアンが全種類テーブルに並べていくと、ティファカは一つ一つ手に取って香りを確かめていく。


箱から出した角灯には、ガラス部分に彫り物がされていて、これだけでもきれいだ。


『大きさが可愛い!この蝋燭を入れて使うの?』


『そうだよ。どれがいい?』


『んー‥‥‥このお花っぽい香りのやつ』


ティファカの選んだ蝋燭を角灯の中に入れて火を灯し、小さな扉を閉めると、なかなかいい感じなのではないだろうか。


『きれいだね‥‥‥』


テーブルの高さに目線を合わせ、微笑むティファカの横顔は愛らしい。


まだ明るいので、周囲にどのように明かりが広がるかはわからないのだが、角灯を眺めるだけでも雰囲気が出そうに思える。


ミィアンはにやりとしてくれたので、いける!ということだろう。


一旦居間を出てから、居間に戻ってみると、ほのかに香っている程度に感じる。


『ちょうどよさそうね』


『お、いいな』


同じように試してみたミィアンと、居間に戻ってきたヨツバも調節の必要を感じないのならば、この蝋燭についてはこのままでいいだろう。






◇◆◇◆◇◆◇






『雪時計って聞くと何それ?って思うんだけど、見ると納得。これは雪時計よ』


ティファカはうんうんと頷いて、私達が雪時計と呼ぶようになった、小さな白いガラスの粒が降ってくる砂時計を眺めている。


『そっか』


『これって、アイオライトの色ってこと?』


ティファカが指さしているのは、砂時計の木枠の部分だ。


『え‥‥‥?ああ、それは夜空のつもりなんだけど、そんなにきれい?』


なぜかティファカの表情をむずむずしてそうなものとさせてしまい、首を傾げておくと、ティファカは笑いを滲ませつつ首を傾げた。


『アイオライト‥‥‥好き?』


『好き』


言われてみると、アイオライトはこっくりとした深い深い濃紺だと表現できそうに思える。


『金平糖、いる?』


『ありがと』


手を差し出すと、ティファカは小瓶を傾け、からからと金平糖を出してくれた。


『ちょろい‥‥‥!』


(え?)


私がぽりぽり金平糖を食べていると、ティファカは眉間をぐっと押さえて悔しがっている。


『ラージウに、石鹸とか使ってみてもらってくれない?』


『え?私が?』


『嗅ぎたいんだよね』


『はあーあ?!あれを?!』


大袈裟にのけ反って驚いてくれては、楽しくなる。


『まあ、そうだね。嗅ぐの込みで、話をつけてほしい』


ティファカは、理解しかねるという顔で、しきりに首を傾げている。






◇◆◇◆◇◆◇






「こういう香りの石鹸を使ったね、って」


「そうね。残ってるわ」


「湯上りでこのくらい、っていいんじゃないか?」


三人に嗅がれまくっているラージウは、心の灯りを落としている顔をして耐えていて、ティファカは気が知れないという顔をして、少し離れたところから眺めている。


「角灯どうだった?盛り上がりそう?」


ラージウは戸惑い顔で曖昧に頷く。


「耳のところにつけてあげて腰抱いて、みたいに、連れ込むのに使えそうな香水あった?」


ラージウは、やはり戸惑い顔で曖昧に首を傾げている。


「お酒飲める?」


ラージウは、戸惑い顔のままなのだが、頷いたのでいいのだろう。


酒を使ったチョコをのせた皿と紅茶のカップをラージウの前に置くと、チョコが気になるのだろうティファカも寄ってきた。


「どうぞ」


ラージウの戸惑い顔は、固定されてしまったかのようだ。


チョコを口にしても、戸惑い顔は変化しない。


「一緒に食べてたら、ベッドに移動するか、って気持ちになる?」


「いや‥‥‥あの‥‥‥自分は従者、であって‥‥‥え?ケイオス、さまの指示なのか?」


「何が?」


「え‥‥‥っと‥‥‥自分は、従者というのは、従者のことだと思っていたんだが‥‥‥」


「そっか。味はどう?」


「味‥‥‥?味は‥‥‥酒なチョコ‥‥‥」


「ベッドへは?」


「ベッドへは‥‥‥」


戸惑いを深める一方なラージウは、小さく首を横に振る。


「どのくらいまでしたくなる?」


「どのくらい‥‥‥?」


ラージウは戸惑い顔で時を止めてしまったので、そういうことだろう。


ミィアンとヨツバに向けて小さく首を横に振ると、二人は残念そうに小さく頷いてくれた。


「何か無いかな?ふらふらっと、ベッドまで連れ込めそうなもの」


「ちょっといいか?」


立ち上がったラージウに言われ、ついていくと、今夜からラージウが使う部屋に入れてくれた。


「何を、言っているんだ?」


「え?」


至極真面目な顔をしたラージウに聞かれても、どういう質問なのかわからない。

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