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シアの国  作者: 薄荷堂
間の国
43/106

43.同居人

ティファカは、この家が官舎となったことを理由に、私の部屋に泊まっていくようになった。


私の持参してきたお古の山は、こちらの国のものとは少し趣が違うので、ティファカはどれも気になるらしく、毎朝時間をかけて悩んでいる。


お古だとは説明したのだが、ティファカは気にしないそうなので、私がまだ着ることのできない大きさの服にも出番がやってきた。


腰まで伸ばしているティファカの髪はふわふわで、ミィアンとその日の服に合わせる髪型を相談し、二人で毎日楽しそうに結っている。


おしゃれというものに気を遣う女の子を見ているのは、なんだかわくわくする。


ケイオスと同じく、ティファカも身の回りのことは何でも自分でやっていて、さらにこちらにはミィアンとヨツバがいる。


仕事の無いラージウは、お隣さんの家で引っ越し準備を手伝っているようだ。


『お隣さんの雪かきをしてあげてたんでしょ?』


『玄関前から道路までの道を作ってただけなんだけどね』


『それでお茶に誘われて、通っては狂ったように八朔食べるようになって、土地の売買?』


(狂ったように‥‥‥まあ、そうか)


『南部地方で八朔作ってる息子さんが、一緒に暮らさないかって言ってくれたんだけど、お隣さんは街の端っこに位置してるし、まだ建て替えたばっかりだし、畑をやってた土地もあって、と手放すのが難しいって悩んでて、じゃあとりあえず私と賃貸契約をって思ったんだけど、ケイオスさまが丸っと買ったから、お隣さんは雪が無くなったら引っ越すことになったんだね』


『あんなにある土地を賃貸契約って‥‥‥』


『ミィアンとヨツバに却下されたね‥‥‥軍を置くんでしょ?』


『そうらしいわね‥‥‥雪が無くなれば着工予定』


ざりざりと小さな椅子の角を削っているティファカは、浮かない顔だ。


『反対なの?』


『‥‥‥うちって兄が三人いて、私なの。私はそれなりに育って、お嫁に行けばいいんだって思ってたのに‥‥‥ずっと同じように育ててもらってて、お兄さま達もこのくらいの歳で従者がついて‥‥‥でも、私、お兄さま達と同じなの?!って‥‥‥ケイオスお兄さまが、ここ以外にももう一か所支所を置いて、国内三か所を国の要にって言いだして、今は王子が三人いるけど、次の代はどうするの?とか思うし、三人が三か所って私が予備ってことになっちゃうの?!って‥‥‥』


『心積もりをしてなかった事態?』


『私にできると思ってるからだとわかってる‥‥‥でも、失敗したくない‥‥‥ケイオスお兄さまは怖くないのかしら?』


『どうなんだろうね?』


どうやら期待外れというものらしく、さっさっと小さな椅子から木屑を掃うティファカは明らかに気落ちしている。


『あの従者‥‥‥どう思う?』


(どう?)


なんとも答え難い質問ではないだろうか。


『お隣さんは、とっても助かってる、って』


『そう‥‥‥』


やはり期待に応えられていないようだ。


ティファカは、木屑を掃い終えると、躊躇いつつぼそりと言った。


『‥‥‥本来なら従者を務めるような家柄じゃないの』


『‥‥‥夫候補?』


『やっぱりそういうことなの?!』


うっ‥‥‥!となられると、なんだか懐かしい気分になってくる。


『初代従者持ち王女殿下に箔をつける目的なのかも?』


『‥‥‥そういう風に聞くと、悪い気はしないわね』


『気負わずやれ、という心遣いなのかもしれないしね』


『どういうこと?』


『周りもそのように、ティファカを侮ってくれるかもしれないよね?』


『それって、王は、まあ結婚して引っ込んでもいいって思ってるからあいつをつけたんだろう、って思われるってこと?』


『踏み潰そうとされにくいかもしれない。でも、虫除けの意味合いが強そう。これからは、男性ばかりのところにも出るようになるってことだよね?』


『あー‥‥‥!』


『武術?』


『強いらしいわね』


『あらゆる面でティファカを守ることのできる逸材だね』


『従者ね‥‥‥でも‥‥‥でもね?そんなのがついてたら、どうやって恋をすればいいの?』


『‥‥‥筒抜けにはなるだろうから、ラージウと恋を、というのが最も容易そうだね』


『そう思うわよね‥‥‥?だからね?こいつと恋しとけ、ってことなのかな、って‥‥‥』


『そういうことになってもいいよ、って相手ではありそうだけど、もしかして、ラージウを出してこられると、ラージウ以上なんてそうそういない、ってこと?』


『そのくらいの‥‥‥』


ティファカはがくんと項垂れてしまい、嘆きは深いようだ。


『ラージウを連れてるティファカに寄って行くことのできる人となら、恋をできるってことに?』


『そう、なるのよね‥‥‥』


『選択肢が、かなり減った?』


『これから色々あるんだろうなって!‥‥‥なのに!‥‥‥散々遊んでるお兄さまに、私の恋を潰された‥‥‥!私だって、恋がしたい‥‥‥!』


(あらー‥‥‥)


留学を提案したくなる私は、もうこちらの国の人間なのかもしれない。

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