42.工房
『おー!きれい!』
『いいわ!』
『売れる!』
ガラス細工の工房に発注していた砂時計を確認しにきたのだが、いい出来栄えにミィアンとヨツバも販売する気になってくれそうだ。
少し粘度のある液体と一緒にガラスの中に閉じ込めれば、小さな白いガラスの粒がゆっくりゆっくり降ってくる。
試作品を私が受け取ることになったので、これでいつでも雪が降ってくるのを見ることができる。
『この砂を使って砂時計を作ってください』
『ちょっと待ってな』
職人はすぐに作業に取り掛かってくれた。
「あれって、砂浜の砂よね?」
「そう。自分で拾った砂で作る砂時計、売れる?」
「あの砂浜で有名などなたかがお相手と一緒に、というような話があれば売れるかもね」
「そういうのがいるよねー‥‥‥魔女さまの金平糖ってどう?」
「いいわね!」
「一緒に食べることができると、仲が深まるんだよ」
「いんちきー!」
「野郎共に売れそうじゃない?」
「あー!そういうのか‥‥‥いいわね。でもそうなると魔女さまじゃなくて‥‥‥別に何かないかしらね‥‥‥」
「そこは、ミィアンが売ってればいいだけかも。香水とか、お酒入りのチョコとか、いい香りのする蝋燭とか、あ、小さい角灯が作りたいんだよ」
「蝋燭を入れて使うの?」
「そう、模様を入れると、明かりがきれいに広がるんじゃないかと思って。浴室にも持ち込めるよ?」
「あんたっていくつなのよ」
ミィアンは笑いながらも、却下せずに職人に話をしてくれるようだ。
◇◆◇◆◇◆◇
馬車で山を上っていくと、まだ雪が残っているようになり、戻った街はまだまだ雪だらけだ。
(よいしょ、っと)
集まった本のリストだけでも、私の部屋に一つ山を形成してくれて、にんまりしてしまう。
『どこの小娘よ?!』
(え?)
ばたーんと開けられた扉から入ってきたのは、女の子だ。
『ぎゃ!アローラハウス!』
女の子が両手をぷるぷるさせつつ、魔女さまの家に見入っていると、部屋の前に立っている青年は深い溜め息をついていて、案内してきたのだろうミィアンは声を出さずに笑っている。
どうぞ?と手で示すと、青年とミィアンも部屋の中に入ってきた。
「失礼いたします‥‥‥こちらはティファカ王女、私は従者のラージウです」
『待ちなさいよ!今従者って言わなかった?!』
『‥‥‥拝命したんです』
『私は認めてない!』
『‥‥‥王が!決めました』
『私は受け入れない!』
(うお!)
ラージウは舌打ちして、正面からティファカを威圧的に見下ろし、ティファカは、ぶるぶるとラージウを指さして私に言う。
『これ見てる?!今の聞いたわよね?!こんな奴が従者って!』
(見てるし、聞いたけどね?)
『無理よ!無理に決まってる!』
『王の決定に異議を唱えるんですか?』
『うわっ!こいつ‥‥‥!』
ティファカは歯を食いしばるようにして、ラージウを睨み上げる。
『与えられた人材を上手く使うのも、殿下の仕事なのではありませんか?』
『そうよ!だから受け入れないの!』
『ご自身の能力の問題を、私の人間性にすり替えているのでは?』
『あんたの人間性に問題があるってわかってるなら、控えなさいよ!』
『控えてたのに、殿下が引き出したんですよ‥‥‥』
『ほら!従者なんて務まらないじゃない!』
『部下のやる気を削ぐ上司か‥‥‥』
『勝手に部下にならないで!もう出てってよ!』
ティファカは、ラージウを追い払おうと手で下がるように示す。
「‥‥‥居間で待たせていただきます」
「どうぞ」
溜め息をつきたそうにしているラージウは、ミィアンに案内されて部屋を出ていった。
『さっき、何て言ってた?』
『居間で待ってるそうです』
ティファカは、扉の方を威嚇するように睨んでから、ちらりと魔女さまの家を見る。
『‥‥‥見てもいいかしら?』
『どうぞ』
嬉しそうに魔女さまの家へと近付いていくティファカを見ていると、売れるのではないかとぎらつきそうになってしまう。




