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シアの国  作者: 薄荷堂
間の国
37/106

37.お祭り

真面目な王子は、ここの領主と協力して、祭りを開催することにしたそうだ。


(やりおる)


商店がやる気を出してお祭りメニューやお祭り商品を扱えば、それで雪だるま大会は祭りとなり、軍の人員は祭りに駆り出され、雪かきをして、雪だるま作りだ。


雪だるま大会参加者には、王城料理人の作るパイが配られ、優勝者には、王城料理人が塊肉をお好きに料理してくれるという賞品が出ることになっている。


パイ目当てに参加して、小さな雪だるまを作る幼子もいれば、雪像と呼べるようなものを作り上げている大人達もいて、街には雪だるまが溢れている。


私もミィアンとヨツバと一緒に参加して、魔女さまの熊のぬいぐるみな雪だるまを作ってきた。


(見える人には見える、という出来栄え)


しかしパイはもらえたので、雪だるまという分類に入れてもらうことはできたようだ。


私だけ、がっつりミートパイではなく、お子さまアップルパイを渡されてしまったのは、この見た目なので仕方ない。


狙っていたのはミートパイだったのだが、林檎の上にはカスタードクリームも敷き詰められていて大満足の逸品だった。


(王城料理人のアップルパイ‥‥‥凄い!)


街には露店も多数出ていて、雪だるまを作り終えれば軍の人員も祭りを楽しんでいるようだ。


露店を出す許可をもらえたので、ヨツバも出店し、そこでは魔女さま関連の商品や宝石飴も売っている。


露店はヨツバに任せ、ミィアンは私のお守りだ。


こちらの国に来てからも、二人はレンギョウ商会の従業員として金儲けをできているようだが、余計な仕事と分類したくなるのは、二人がこちらの国に滞在することになったのは、私が理由だからだろう。


「こうして見ると、編み物な商品って多いわね」


「寒い地域だもんね」


あの布状のものについての解明は進んでいない。


だが、ヨツバの予想通り、上品な気遣いなのかもしれない。


露店を覘きながら湖の方へ行ってみると、湖では、釣りをする人のための囲いの外側で、スケートを楽しむこともできるようになっている。


「おうおうおう!凄いわね」


ミィアンの感想にも頷ける。


順番待ちをしている女の子の列が、湖を囲うようにずらーっと続いている。


ケイオスは女の子の手を取って滑り、湖を一周すれば、女の子は交代、ということらしい。


(王子なんだなー!)


「ミィアンさん、フユー‥‥‥」


とっくに疲れ切っているらしいモーリスと遭遇すると、モーリスは私達にも露店で温かいポタージュを買ってくれた。


「この辺りのお嬢さま方だけじゃなさそうね」


モーリスは、声を小さくして説明してくれた。


「夜会に招待されないようなお嬢さま方も、こうしてお近付きになろうと‥‥‥」


「そういうねー‥‥‥もしかして、断れない質なのかしら?」


モーリスは無念そうに頷く。


「スケートが滑れる、時間もある、断る理由が無い、全員に同じ対応を、となります‥‥‥」


「そうやって順番待ちを形成させてるのね‥‥‥」


「もしかして、すでにお妾さん的な方がいるの?」


「えぇ?!おっと!」


モーリスは、カップから零れそうになったポタージュを急いで口に含む。


「どうして?」


「そういうどなたかがいるから、私こそがー!な人が出てこないのかな、って。いつも上手に躱しているから、こうして皆きれいに順番待ちしてるのかな?王都から来たような方もいるんだよね?」


「あー、そういう‥‥‥?」


「上手に夢を見せることができる方なのかもしれないわね」


この際聞いてしまおうか。


「見てるの?」


「え?私が?」


ミィアンは驚き、ポタージュの揺れを落ち着かせようと、カップを持つ手に集中した。


「もー!この子は!あ‥‥‥もしかして皆さん、お妾さん希望なのかしら?」


モーリスの目がどろんと濁ってしまい、ミィアンは苦笑いだ。






◇◆◇◆◇◆◇






「それは‥‥‥こそっと誘われたら嬉しいな、ってことでしょうか‥‥‥?」


「皆さんから見えるところで特別扱いされたくはない、ってことね」


「ほう‥‥‥?」


モーリスが首を傾げているので、詳しい説明を求めているのだろう。


「今夜会いに来てね、ということを暗に伝えるためにこの場に来てる、とかそういうのね」


「そういうのかー!そういうのは無理ですよ!伝わりません!」


ケイオスは、こんなに信頼されているとは。


夜会に呼ばれるようなお嬢さまは、こんな所まで来ないのかもしれないと考えると、ちょっといい夢見てみたいお嬢さま方が集まっているのだろうか。


「ねえ‥‥‥もしかして、心配されてるんじゃないの?」


「え?どういうことですか?」


「あのまま放っておいたのでは、誰かを選ぶなんて一生できなさそうよね?」


ミィアンの視線の先には、少しも休憩することなく次の女の子の手を取って滑り出していくケイオスがいる。


(寒い中待たせてるから、とか思ってそうだな)


モーリスは、くっ‥‥‥!と目を瞑って俯いた。


「そこは、私も‥‥‥」


「殿下はあれ、やりたいのかしら?」


目を凝らしてじっとケイオスの方を見ていたモーリスは、すっと目を瞑る。


「楽しんでるようには見えるんです‥‥‥」


「そこは‥‥‥そうよね」


「私が憎まれ役となることはできますが、せっかく来てくれたのに、となるんです‥‥‥」


「そうなると、誰とも滑らないというのも?」


「はい‥‥‥」


「‥‥‥誰かを連れて夜会に出れば、誰にも寄ってこられないのかしら?」


「‥‥‥どうなると思います?」


ミィアンとモーリスは次第に笑顔となっていくので、予想できたのだろう。


ミィアンに発言を求められているようなので、聞いてみたくなったことを聞いてみよう。


「お一人だけ、とするつもりはあるのかな?」


モーリスは、声を出さずに、えー?!と嘆くように笑っていて、ミィアンは楽しそうに笑っている。


「それで、皆さん、束の間の夢を見に来てるのかもしれないわね」


「本命として選んでもらえたって、どうやったら思える?」


ミィアンは、ゆっくりと口を開けていき、笑いを押し込めるかのように口を閉じてからモーリスを見たのだが、モーリスは、くっと唇を噛みしめてケイオスの方を見ている。

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