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シアの国  作者: 薄荷堂
間の国
36/106

36.布

「これって、何て呼べばいいのかな?布?」


「‥‥‥小さ目な膝掛け‥‥‥ではない」


「大判の布巾でもないわ‥‥‥」


ヨツバとミィアンと一緒に悩んでいるのは、ケイオスがバームクーヘンを持ってきてくれた際に、籠に掛けられていたものの呼び方だ。


毛糸の色使いから推測すると、きれいに編まれた四角いモチーフを並べて繋ぎ、一枚の布状のものとしている、これ。


「まずは、大判の布巾なんだろうな、というものが掛けられていて、その上から、これ」


「大判の布巾なんだろうな、というものが、ひらっと風で飛んでいかないようにだろうか?」


「あー、錘の役割ってことね」


「可愛い、きれい、売れそう」


「上品な気遣いだろうか?」


私とヨツバがじっと見ると、ミィアンはふすっとなっている。


ケイオスは毎日やってこなくなった。


しかし、定期的にやってくる。


(これは、編み物、だよな‥‥‥)


聞いてくれということなのかもしれないが、ケイオスが自分から話さないということは、聞かないでくれということなのかもしれない。


私は、下っ端官吏な留学生であり、あちらは、王子。


本来ならば立ち入らない領域の話をちらっと知っている、そう思っておくとしようか。






◇◆◇◆◇◆◇






(これも、編み物‥‥‥)


寒いので、怠惰な私は出ても家の中庭だったり、居住先の街にある商店に出かける程度だと知ると、ケイオスが出かけようと言い出した。


出かけた先は分厚い氷の張った大きな湖で、その氷に穴を開けて釣り糸を垂らしている。


ケイオスもやったことがなかったので、やってみたかったそうだ。


釣り道具以外に、椅子や膝掛けも用意してくれたのだが、この膝掛けが編み物とは。


(あったかい‥‥‥でも)


何かを訴えかけてくるように思える膝掛けだ。


『俺‥‥‥もうすぐ誕生日なんだ』


『おめでとうございます』


ケイオスはお愛想な笑みを浮かべている。


『でも、今年は何もやりたくない‥‥‥でも、何もやらないのは‥‥‥でも、何かやるってことは‥‥‥どうしようか?』


(えー‥‥‥?)


『‥‥‥これまでは、夜会的なものをやってきたんですか?』


『そうだ‥‥‥王城で夜会的なものをやってきた‥‥‥』


公の場となってしまえば、ケイオスの行動はかなりの注目を集めるだろう。


編み物さんとは、そのような場に連れて出るほどの仲に進展していないのだろうか、とここでも可能性をあれこれ挙げて考えてしまう。


『今年はこっちにいるから、このまま動かないでいると、ここの領主が何かしないと、となってしまうかもしれん‥‥‥』


(そういうの柄じゃない、か)


あれこれ考えてみても、結局はわからないので、お子さまな意見を出しておこう。


『ここでいいんじゃないですか?』


『ここ?』


『ケイオスさまがこの湖を気に入ったから、今年はここでってことにして、皆さんで魚釣って、連れてきた王城の料理人がそれもあったかいものに調理して食べるんです。ケーキは焼きたてパイで、乾杯はお酒入りのココアですね。釣り道具や食器類などはレンギョウ商会が用意しますので、ここでそういったものを貸し出す店を開業させてください』


『‥‥‥当日が雨や雪だと?』


『中止です』


ケイオスは考えてみてくれているようなのだが、笑いが滲んでいるのでは却下だろうか。


『スケートもできそうですし、薪を組んで大きめの焚火にして、そこで塊肉を炙ったりすると派手な演出となります。花火をするのも楽しそうですね』


『露店はどうだ?』


『いいですね!この地方のお土産にできそうなものを扱う店を出しましょう!こっちに出張ってきている皆さんを労うという名目にすることもできそうです』


『それいいな!ここの天気次第でやる日を決めることにすれば、招待客を呼ばない理由にもできる!が‥‥‥こっちに出張ってるのをとなると、人数や客層がな‥‥‥』


『数日設けて、スケート大会をやったり、ケイオスさまの気に入った雪だるまを作った人達が優勝、というようなものもできそうです』


『それなら、街中を雪かきさせる理由にもできるな』


『この土地の皆さんにも喜んでもらえそうですね』


『そういうのいいな‥‥‥この街の店で扱うもので構成して、立食で食べ放題‥‥‥では参加したがってもらえそうだが、金がな‥‥‥』


(真面目な王子)


順番待ち状態となっているのは、もちろんケイオスもなのだろうが、それは立場というものだけがそうさせているのではないのかもしれない。

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