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シアの国  作者: 薄荷堂
間の国
34/106

34.心当たり

「ケイオスさまのお母さまは、お妃さま業に向いてる方を選んだんでしょうか?」


「そこは‥‥‥俺と合いそうだってこと、なんじゃないかと思う。どっちも、幼馴染ではあるんだ。王妃が選んだ方は、吹雪の中で一緒になって雪遊びして、一緒になって熱出すようなので‥‥‥もう一方は、寒い時はずっと暖炉の前で編み物してるようなの‥‥‥」


そう聞くと、息子のことを思っての選択なのかとも思えてくるのだが。


「私には、王妃さまの対応は、編み物さんがお妃さまでは困るのではないか、と思えるものです」


「おまえって‥‥‥」


(この目‥‥‥見覚えがある‥‥‥)


「‥‥‥老婆ですか?」


黙って何度も頷いているケイオスは、何かを理解したらしいのだが、何かを除けておこうとしているようにも見える。


「王妃は、そういう人なんだ‥‥‥」


「今でも、雪遊びさんを選ばせようとしているんですか?」


「そこは‥‥‥」


首を傾げるケイオスを見ていると、聞きたいことを見つけてしまう。


「‥‥‥ケイオスさまが婿に行けそうな家格のお嬢さまの中で、毎日王妃さまにいびられそうなのとなると、それは雪遊びさんだったりします?」


「え‥‥‥それって‥‥‥結婚を急かされた俺は、手近なのを出してきた、と思われたのかもしれない、のか?」


「見合いへと追い込んでみると、見合いを潰すために出してきた編み物さんも幼馴染‥‥‥」


「え、でも、俺は選んで‥‥‥」


「後宮に入れると言われるとケイオスさまは引っ込み、留学の話が出ても引っ込んだままで、ついには私とお付き合いをと言い出した‥‥‥」


「えー?!そこで、いや、俺が、って‥‥‥?」


ケイオスはもう、狼狽、と言えそうな状態だ。


「‥‥‥そのような家格のお嬢さまなら、どちらの方も順番待ち状態なのでは?」


「さっさと退けってことか?!」


「王妃さまは、そのお嬢さま方の幸せというものも、考えているのかもしれません」


「あー‥‥‥そんな相手に娶られたくない、って‥‥‥思うよな‥‥‥」


(そしてこの顔も、見たことがある)


ケイオスは、お相手にとっての、自分以外の候補者というものが視野に入ってきたのだろう。


「散歩に誘ってはどうです?」


「‥‥‥散歩?」


「寒いのに一緒に出掛けてくれたなら、そのまま王妃さまのところに連れていって宣言です」


「えー‥‥‥?それだけでか?」


ケイオスの表情は、背中を押してほしそうにも見える。


「俺はこの子と文通したいんだ!」


「それをか‥‥‥」


ケイオスは苦笑いしながら立ち上がり、ぐーっと伸びをした。


「後宮へやることなどさせない、とはっきりさせてやらないとな」


ミィアンが外套をさっと構えると、ケイオスは外套を着て深呼吸した。


「行ってくる」


「行ってらっしゃい」


季節はすっかり冬だ。


寒い中出かけていこうとするのだから、そこには熱意のようなものを感じ取るのだが、それは私が怠惰すぎるからだろうか。






◇◆◇◆◇◆◇






雪が降ってくる。


深い深い濃紺の夜空から、満天の綿雪が降ってくる。


(きれい‥‥‥)


だが、寒い。


でも、きれい。


地面に寝転ぶ私をガラスで覆ったとしても、雪はガラスに降り積もってしまうので、降ってくる雪は見えなくなってしまうだろう。


(起きて、雪を退かすのは面倒だな‥‥‥)


ずっと降ってくる雪を見ていられたなら、その願いは自殺願望というものなのだろうか。


(人生に付き合わせている‥‥‥)


これからもずっと生きていく気があるのだろう、と読み取れる言葉だ。


腹が空けば、何かしら食べて腹を満たし、眠くなれば、布団に入って眠ることのできる毎日は、確かに私の体に変化をもたらす。


私はこれからも生きていくのだろうが、私は生きていく気があるのだろうか。


「おい、そんなにショックだったのか?」


ヨツバにずぼっと雪から抜かれ、地面に立たせてもらうと、現実というものを実感することになる。


「‥‥‥雪がきれいだったから」


「風呂入れ」


「わかった」


服についている雪を掃おうとすると、手がかじかんで思うように動かない。


ずっと雪が降ってくるのを見ていられたなら、ただそれだけなのだが。

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