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シアの国  作者: 薄荷堂
左の国
21/106

21.処分

「今回の詳細はわからん」


「モクレン家三男の動きも計画されたものだったのか、ということ?」


「そうだ。ギドロイさまの外交手腕が、計画させたのかもしれん」


(言うねー!)


遠慮なく笑顔となっておくと、ディードは、ふふんと笑っていたのだが。


「で、どう思った?」


(戻った‥‥‥)


私を隣国へと働きかけているのは、ついでに嫌がらせ、だろうか。


それとも、どうにかして姫をこちらの国に受け入れたいのか。


(隣国への領地拡大‥‥‥レンギョウ商会のお嬢さま‥‥‥とんずら‥‥‥)


「国境沿いで麻薬でも栽培してたりして」


ディードは立ち上がり、にこっと安売りを再開した。


「密輸?」


「どちらかの輸出品は女の子かも?」


「他言無用だ」


店じまいとなったディードは、急いで私を会議室から出すと、きちんとリュックを背負わせてくれてから立ち去った。


(‥‥‥大事になるようなら、それは、偉い皆さまで決定した、ってことだからね)


商売人という立場は身軽なものだ。


政治という領分の外から野次を飛ばしているようなもの、というのは無責任すぎるような気もするが。






◇◆◇◆◇◆◇






(疲れた‥‥‥)


儲けの出ない仕事を引き受けることを避けられただろうか。


(どうなったのか知りたくないなー‥‥‥)


湯舟で広々手足を伸ばせるのは、お子さまの特権だ。


ディードが話してくれた詳細は、宮廷では周知の事実ということだろう。


わかったような部分もあり、わからないままの部分もありとなれば、両親の恋物語など知らない方がいいのだ、と片付けておくとしたい。


(手土産‥‥‥)


ギドロイは、私をレンギョウ商会の商人として隣国の姫の近くに置くことで、ヒイラギ卿の娘として隣国へやらずに済むように、と考えてくれたのだろうか。


(隣国かー‥‥‥)


隣国に行くとなれば、このようにぬくぬく過ごさせてもらうことはできないだろう。


受け取っている恩恵について考えると、生まれというものに行き着いてしまう。


(親子ねー‥‥‥)


あの日、ルツは私を一目見て、ママに会いたいんだ、と言って泣き出した。


(髪の色?)


銀髪にもいろいろある。


一目見て、同じ色だ、とは思ったが。


(疲れたな‥‥‥)


湯船に浸かっておいて、さらに疲れるとは。


なんてしてやり甲斐の無い我が身だろうか。






◇◆◇◆◇◆◇






(で、どうして?)


急な呼び出しだと呼びにきたのは、リタだった。


しかし連れていかれた先には安売り中のディードがいて、通された部屋ではギドロイがいじけている。


「どうせ俺は薄っぺらい政治しかできないんだ‥‥‥」


まさか、慰めさせようと呼び出したのではないのだろうが。


ディードは、ゆっくりな瞬きと共に頷いたので、正解だった、ということだろう。


(密輸かー‥‥‥)


「‥‥‥センリョウ家を、姫の滞在先とするのはいかがです?」


「は?!」


「ヒイラギ家に置かれたままになっている荷物を、姫を迎えるためにと受け取らせたいんですよ」


「あ‥‥‥知ってるのか‥‥‥」


こんなにお子さまに気を遣ってくれるのだから、ギドロイは人がいい。


「支度金代わりにと言って、ギドロイさまが受け取らせてください」


「‥‥‥本っ当に!性悪だ!」


「妃候補筆頭を自称するくらいなんですから、行儀作法は完璧!なはずですよね?」


「そうだが‥‥‥」


「これまでヒイラギ家を荷物置き場として使用してくれた料金を請求したいくらいですし、処分するのであっても、手数料というものを請求したいんです」


「金の亡者‥‥‥」


ギドロイは回復しない。


(政治か‥‥‥)


これもギドロイが自分の道を進むための一歩だと思えば、意味のある行いなのかもしれない。


「では、私が隣国で使わせてもらいます」


ギドロイは半泣きとなって、ぐっと口元を歪め、睨んだ先はディードだ。


「こいつは、自分も多くを持つ者なんだと自覚しない!」


「まあまあ、殿下。ぽんこつですから」


「そうだ!ぽんこつが!」


(初めて出てきたな‥‥‥)


元気が出たようで何より、と思っておこうと自分に言い聞かせる。


「私も辞書は読めるんです。一緒に勉強してやって、と私をあちらに押し付けてください」


「だったら、おまえが迎えに行って、こっちで面倒見るのでもいいだろ‥‥‥?」


「立ち入らせない、と示すことが重要なのでは?」


「おまえのようなお子さまをぽいと寄越して‥‥‥」


(戦となるのは、避けたいよね‥‥‥)


「金なら用意しよう」


(なぬっ!?)


しんみりしてしまっていたのだが、ディードの言葉には顔を上げるしかない。


「‥‥‥では、モクレン領を囲いましょう!厳密に言えば、軍の施設や国道はモクレン領の持ち物ではありません!モクレン家三男の行いを理由とすればいいのです!もしも攻めてくれば、モクレン領内で全員殺す!そのための囲いです!モクレン領から何が出入りしているのか、すべて把握しましょう!」


「さすが魔女さま!」


「国境警備の人員は総入れ替え!そのための人員を連れて行って、犯罪者を追っている!とか言ってモクレン領内のそうだろうなって人員を保護しておいて、モクレン領内の金の巡りも調べましょう!」


「そっちが先に出てこないところが、ぽんこつなんだ!」


「センリョウ家には、よくわからない言いがかりをつけましょう!これらの家具にどんな呪いを施したんだ?だからずっと引き取らないんだろう?とかそういうのです!どうせ、センリョウ家もモクレン家と繋がってます!」


「いやー!怠惰な商売人は、言ってくれるからいいよなー!帰ってよし!」


(あ、え‥‥‥?そう?)


ご機嫌さまとなったギドロイに許可をもらえて部屋を出ると、ディードは微かに笑っている。


「王太后陛下に何と言われたんだったか?」


「‥‥‥え?だめ?」


「どうだろうな?」


出してもらえる金を使えるとなれば、あれもこれもと案が出てくるのだから、私って倹約家、と自分自身を誤魔化しておくとしよう。


ディードからリタへと引き渡されて、二人で外に出ると、リタは手を繋いできた。


もうとっぷりと暗くなってはいるのだが。


「いや‥‥‥そんなにお子さまではないよ?」


「‥‥‥そこは、宮廷内ではちょっと、にしませんか?」


(んん?)


私が首を傾げると、リタも一緒になって傾げている。

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