表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シアの国  作者: 薄荷堂
左の国
18/106

18.お子さま具合

コーヒーを気に入ったリタが、コーヒーを淹れる道具を揃えたので、今日も朝からコーヒーが飲めてしまう。


(いい香りー!)


湯を注げば、キッチンに香りが満ちていく。


三つのカップのうち、一つにはコーヒーを少しだけ、もう一つには半分くらいで、最後の一つは八分目。


そこにそれぞれの分量で牛乳を足すと、三人分のコーヒーの出来上がりだ。


リタが買ってきてくれたケーキの残りも、盆にのせて運んでいく。


「ルツ、コーヒーどうですか?」


声をかけると、ルツはすぐに扉を開けて、コーヒーを盆から取ってくれた。


「ありがとう、いただくよ」


しかし、ケーキは取らずに扉を閉めてしまった。


こういう時、もやもやと考えてしまう。


朝食を食べたばかりなのだから、ケーキはもう入らないのか。


今はケーキはいらないよ、なのか。


ずぼらな私が、ケーキが一切れの皿と二切れの皿というのせ方にしているので、自分の分は含まれていないと思ったのか。


(でも、聞かないんだよな‥‥‥)


寝室と呼ぶようになった、元私の部屋に行くと、きちんと少しだけ扉を開けたままにしてくれている。


そこに肘を入れて、体で扉を押し開けて入っていくと、ベッドに寝転んで本を読んでいたリタは、嬉しそうに体を起こした。


小さなテーブルに盆ごと置くと、リタもベッドを背もたれにして床に座り、コーヒーを手に取る。


リタはカップを掲げるように少し持ち上げた。


「これは僕のコーヒーです!」


「そうだね」


リタは実は牛乳を少しでは苦すぎたらしく、コーヒーの道具を揃えると、コーヒーと牛乳の比率を変えていき、ちょうどよい配分を見つけていた。


ルツも一緒に試していたということは、ルツもコーヒーだけでは苦すぎたということだろうか。


「ルツさまに聞いてきますね」


リタは、ケーキが一切れのせられた皿を手にして部屋を出ていった。


(助かるな)


リタのおかげで、次のもやもやが生じずに済みそうだ。






◇◆◇◆◇◆◇






「それ、お気に入りですね」


「そうだね」


ハザンの手土産の山にあった砂時計は、寝室の窓辺に置いて、すぐに手に取れるようにしている。


窓から入る光に透かすと、その時によって、朝日の砂浜、日中の砂浜と、ガラスの中の砂浜の景色が変わっていく。


(さらさらさらさら‥‥‥)


ベッドに寝ころび、窓から入る夕闇に透かそうと砂時計を持ち上げていると、徐々に手が疲れてくる。


隣に寝転んでいるリタは、すっと手を伸ばしてくると、砂時計を受け取って窓辺に置いてくれた。


「ありがと」


「今日はのんびりする日だったんですか?」


「雨だからね」


「ああ、雨‥‥‥ファーゼロッテさんも知ってるんですか?」


「そうだね。待ちぼうけ、とはなっていないよ」


「雨だとのんびり。いいですね」


リタは私のずぼらさをそのままにしておいてくれるので、有り難い。


「僕、ぼんやり生きてきて、今もぼんやり生きてます」


「そっか」


「細かい分類ってよくわかりませんが、僕はシアと一緒がいいと思っています。先のことなんてわからないのは、いくつになっても同じだと思いませんか?」


「そうだろうね」


「‥‥‥僕はシアを洗脳しようとしているんでしょうか?」


首を傾げているリタは、どこか不安そうだ。


「洗脳というのは、強い言葉だね。リタがコーヒーを気に入ったのと同じだと、私は思う」


「それは、強いてはいない、ということですか?」


「リタは、いつでもコーヒーを飲めるようにして、リタのコーヒーを私にも教えてくれた。リタのコーヒーは、これから変わっていくかもしれない。私は、今現在のリタのコーヒーが、どういうものなのかを知っている」


リタは小さく微笑んでくれたので、そんな風に思わないでほしいのだと伝わっただろうか。


「酒を飲めるようになったら、カクテルもやってみたいです」


「楽しみだね」


「はい!」


リタは一足どころではなく、先に大人になる。


(はずなのに‥‥‥)


湯たんぽを抱えるリタは眠そうだ。


「こんな時間に眠ると、夜眠れなくなるよ?」


「うたた寝というのは、至福の時間なんです」


少し経てば起こしてくれ、ということだろう。


(お休みだからね)


夕食は何にしようか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ