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シアの国  作者: 薄荷堂
左の国
13/106

13.別案

「僕の浮遊霊さんが本体に戻りました!」


テオは、ぱちぱちと瞬きをしながら、どう反応しようかと考えているようだ。


「おー、そうかー、よかったなー」


「はい!」


「おまえは、僕の、って言ってる時点で束縛野郎なんだと自覚しないのか?」


「え?でも、僕のなんで、そこは違いますよね?」


気分を害されたかのような口調でリタに言われ、テオは自分を納得させようとしているかのように頷いている。


「ぼんぼんぼんくらお坊ちゃんは、ハザンさんの胃に穴を開けるつもりなのか?」


「え?どうしてですか?」


「王太子相手に、僕の、ってやったんだろ?」


「そこははっきりさせておかないと!ぼんぼんぼんくらお坊ちゃんが対抗できると思います?」


「自分で言うなよ‥‥‥」


(聞きたくなかったな‥‥‥)


何故かルツも遠い目となっているのは、同じ気持ちだからだろうか。






◇◆◇◆◇◆◇






(あれー‥‥‥?こっち?)


私のリュックを肩にかけているディードは、私を視界に入れると、ぶふっと笑ってしまうので、私を視界に入れないようにしてくれているというのに、王太后は真正面から半笑いでこちらを見ている。


「おまえ、本体に戻ったそうだな?」


「‥‥‥そうみたいです」


「学院、いい案だ」


「ありがとうございます!」


「だが、あまりギドロイを甘やかすな」


「‥‥‥申し訳ございません」


王太后は、小さく溜め息をついて、肘掛けに頬杖をつく。


「留学などと、ふわっとした名目で丸め込まれてきたのはあいつだ‥‥‥」


(そこは‥‥‥確かにね)


「モクレン家の言いなりもいいところ‥‥‥」


(そこも‥‥‥確かにね)


「あげく、とんずらされたまま何も‥‥‥」


王太后が支えるのは、頬ではなく額となってしまった。


「学院はいい案だ。だが、わかるな?」


どうぞ来てください、と環境を整えてしまっては、ギドロイの面目というものが、ということだろう。


商機を逃した喪失感をどうしたものか。


「あの‥‥‥研修先は医局のみ、という学術所はいかがでしょう?」


王太后は、すっとカップを手にして、こくり、こくりと飲んでいく。


「国内に散ることを前提に学ばせることが可能‥‥‥医薬を学ぶ覚悟があるのならば、入所試験を受ける機会を与える‥‥‥」


王太后は、鷹揚に微笑みカップを置いた。


「できるな?」


「‥‥‥仰せのままに」






◇◆◇◆◇◆◇






(で、こっちか‥‥‥)


ディードがリュックを返してくれないな、とは思っていたが、その足で向かってどうにかできると思っているのだろうか。


わかりやすく落ち込むギドロイは、不憫になるほどに暗雲を纏っている。


「学院‥‥‥だめだって‥‥‥」


「‥‥‥ギドロイさまは、色々見てみたいなー、とか思わないんですか?」


「おまえは俺も入学させるつもりだったのか?!」


ギドロイの涙目は見慣れているので、面白がることさえできてしまうのだが、面白がってばかりはいられない。


王太后の指示なのだから、どうにでもして何とかしなくてはならない。


「そうではなく、人となりですとか、そういうのはある程度関わってみないとわかりませんよね?政治的に最適な人材であれば、夫婦としての内情というのは、というお考えなんですか?」


「あー‥‥‥そういうのか‥‥‥おまえは老婆だからわかるだろ?」


「それは‥‥‥政治的に最適な人材というのは、個人としても優れている方となるので、自ずと夫婦としてもそれなりにやっていけるはずだ、ということでしょうか?」


「そうだ!」


「‥‥‥では、ギドロイさまの意見は」


「あー!待て!そういうことか‥‥‥でもな‥‥‥おまえは老婆だからわからんだろうが、色恋というのは判断を鈍らせ」


突然ぶはー!と笑い出したギドロイは、こちらを指さし、腹を抱えて笑っている。


「おまえのところの副官!あれは、どうかしているぞ!俺が、こんなお子さま老婆!」


げはげは笑う姿は、とても王太子とは思えない。


ちらりと見ると、ディードは肩を揺らしながら笑いを押し込めようとしているようだ。


リタが何をしてくれたのか、断じて知りたくない。


「‥‥‥では、やはりギドロイさまの意見は」


「まあ、待て待て!お子さま老婆にもわかるだろう?とても実現できないような相手をうっかり好いてしまった場合、なんてものを考慮するなら、な?」


「候補者の中から選びたいってことですか?」


「たい、というか‥‥‥そういうことになるだろ?」


これは、ファーゼが候補者に入ると思っていることからくる余裕なのだろうか。


「では、夜会を開きましょう」


「うぉーい?!」


「何か?」


「今か?」


「今です」


「俺、まだ、十一なんだ‥‥‥早くないか?」


「しかし、留学希望者がすでに二名となれば、年頃になると‥‥‥?」


「だから学院を‥‥‥!」


「そこで、研修先が医局のみ!という学術所を設けるのはいかがでしょうか?留学希望者には入所試験を受けさせて、あげる、という形を取ることで、俺さまにお近付きになりたければ上ってこいよ形式となり、医薬を修めた暁には、戻って活躍してくださいね、と送り出すことも可能!もちろん、入所試験はそれ相応の難易度となりますので‥‥‥?」


「俺がやろう!」


「ぜひともレンギョウ商会をお使いください!」


「考えておく」


(あ‥‥‥)


ギドロイはさっさと応接間を出て行ってしまった。


「さすが、魔女さま」


(魔女さまね‥‥‥)


ディードがリュックを背負わせてくれたので、館主に報告に行くとしよう。






◇◆◇◆◇◆◇






「医局のみ?!‥‥‥無理だ‥‥‥」


希望を抱かせておいてから蹴落とすこととなり、大変申し訳ない。


館主に暗雲を纏わせてしまい、館主の秘書と一緒に溜め息をついてしまう。


「あの子は典型的なお嬢さまなんだ‥‥‥うちの奥さんに似て器量はいい!礼儀作法もばっちりだ!だが、お勉強となると‥‥‥あー!どうして男というのはなんてことを!」


男性の自尊心というのは複雑な構造をしているらしいので、学術方面で賢い女性は敬遠されることもあるというのは、確かに事実だろう。


そしてまた、男親の娘を思う心というのも複雑な構造をしているらしく、館主はリンランのことを思うが故に、リンランに学ばせる内容を限定してきた。


「一期生とはなれないかもしれないけど、リンランのやる気次第、ということも‥‥‥」


「そこは、そうなんだけど、あの子は‥‥‥受け取ってくれるだろうか、というのがね‥‥‥」


皆で溜め息をついてしまう。


「家庭教師となると、なんだけど‥‥‥専門書の詰まった本棚を置いておくことはできるけど、それを読むかどうかは、というのは‥‥‥」


「そうだね!そうだよね!親にできることなんてのは、環境を整えてやることぐらいなんだ。できることをやってみるよ。まずは寮を採用してもらわないとな‥‥‥」


館主が顔を上げてくれたので、館主の秘書も、ほっとしているのだが。


(医薬か‥‥‥リンランはどうなんだろうな)


館主が買い付けに出ることができるのは、まだ先となりそうだ。

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