102.風見鶏
(ん?)
左の国の軍の人員を散らす割合を変化させてくれたようなので、あほらしく風見鶏を手にするとしよう。
やはりすっと抜けた風見鶏は、見た目そのままに金属な重みだ。
風見鶏が刺さっていることにより塞がれていた穴は、小さなものではあるのだが、外気が流れ込むようになった変化は、屋内にいると如実だろうか。
(とくとくとく‥‥‥悲鳴!おーい!)
風見鶏を手にしている私が、大きく腕を動かすと、見つけてくれた人員達が集まってくる。
真っ先に屋根の上へとやってきたのは、ロモンだ。
(これが?これに?そう!)
風見鶏がどこにあったのかを仕草のみで確認したロモンは、いかにも取り外せそうな大きさの屋根を抱え。
(お?おー!)
かぱっと外す勢いで軽々持ち上げたロモンは、そのままさらに持ち上げ、集まってきた皆に見えるようにしてやる。
(いい笑顔だな!)
集まってきた皆は、それぞれにそわそわと移動を始める。
(持っていくね?)
了解、と仕草で示したロモンは、抱えていた屋根を、ロモンが立っている屋根へと置いておく。
隣の建物へと移動することを続け、風見鶏を手にして腕を振る。
見つけてくれたのは、ニーニトッセだ。
屋上へと来たニーニトッセは、どう?と白衣姿を見せてくれる。
(いいねー)
ニーニトッセは、風見鶏の刺さっていた部分の形状を確認すると、もう光が漏れている穴の方を見る。
屋上で探してみると、先端を穴に引っ掛け、光の漏れる穴が中心にある板状なのだろう何かを持ち上げるために使うのだろうものを見つけた。
しかし使ってやる気になれないらしく、ニーニトッセは、地面で合図を待っていた人員に、建物内へと入るよう合図する。
(そうだね)
ニーニトッセは、板状なのだろう何かの上に立っていることにしたようなので、私は次の建物へと移動しよう。
◇◆◇◆◇◆◇
「あー!おまえ!何、連れてきてんだ?!」
『ジーク!私のドーナツの平和が!』
こういうことね、と理解してくれたジークは、ギドロイから菜箸を受け取り、鍋の前に立つ。
「ほーら、この、塊肉、切っていいですよー」
ジゼットは、どーん!とまな板の上に豚肉を置いてやり、ギドロイはふらふらとまな板へと歩いていく。
ジークの部隊の皆が、それぞれ持参してきた食材を調理台に置くと。
「はい、後ででーす!」
「ええ?!」
派手に嘆くギドロイは、廊下に出て待つジゼットの方へとよろよろと歩いていく。
キッチンには私とジークだけとなり、私はギドロイによるドーナツを割ってみる。
(硬い‥‥‥)
『どんちきババアをオオデマリ家所属員だとして連れていかせようとしているのではないか、と予想したヤマフジの息子達は、私を見えないオオデマリ家所属員として、ここへ連れてきてくれた。ここではいつもは、ヤマユリのババアが暮らしていて、そこにいたルイーゼは、もう一歩も動けないほどに悲しみ抜いていた。ヤマユリのババアが言うには、ルイーゼをここに連れてきたヤマフジのおじさんによると、ルイーゼの連れている馬は病気だそうだったので、診せてもらった。馬はルイーゼが側にいると落ち着き、いないと落ち着かない、という状態だったが、治療することのできる何かは見つからなかった。ルイーゼは私をベッドに置いてくれて、ルイーゼのベッドの横に布団を敷いて過ごしていたヤマユリのババアは、こんな大きさのが自分で自分に布団をかけることができると思えない、と言って、私の分だと、ちょいとぺらんなお布団を、ルイーゼのベッドの端に追加してくれた。領主?!どうしたんです?!領主!ど愛人であるヤマユリのババアのベッドが雨漏り!それを知ってこちらに?!と夜中に騒ぎ出すヤマユリのババアは、息をするより号泣するヤマフジのおじさんとの殴り合いに挑んだ。財産!ど愛人の息子に本妻さまの息子さまと同じだけの財産!それを持たせてやりたいの!そうでしょうね!こちとらど愛人だもの!豪奢そのものな本妻さまのご自宅に対して、ど愛人の自宅なんてものは簡素!質素!いいえ!素朴よ!ヤマユリのババアは殴り合い、殴り合いまくり、本妻さまが惨殺され続けていることに気付けば発狂しそうになりつつ、殴りまくった。ばーん!お嬢だよ!』
『‥‥‥え?』
『乱入者そのものとなったのではなく、ヤマフジの息子達のどちらとは言わないがな恋ばっか帝国を建国したリンラン・レンギョウは、ヤマフジのおじさんを怯ませるほどの、涙腺芸を披露しつつの商談、それを継続し、勝利!アヤレイスが犬と一緒に滑り台に詰まっていた、本妻さまのご自宅、ジモルルさんと愛人のだそうな自宅、そして、ヤマユリのババアの自宅、という三物件を、レンギョウ商会のお宿の離れ、なる存在としてくれた時には、本妻さまのご自宅とジモルルさんと愛人のだそうな自宅は、今現在のものがすでにあったが、そんなものが見えないのだろうヤマフジのおじさんは、本妻さまをその寸前へと連れていっては、こーんなのだよ?こーんなのを建ててあげるからね!‥‥‥しかし、ヤマユリのババアは同じことをされなかった‥‥‥人質を得ることができるなんて、そーんなって予定外!という胸糞として、これからだよ?これから建てるからね!を今現在ご披露させてやっているのだと知っていたヤマユリのババアは、土地選び、そこから殴り合うことを希望し、殴り合いを開始‥‥‥どうしても殴り倒せずに図面に残すことになった、この部屋どうやって入るの?な空間への出入り法を見つけようとしているのが、今現在』
『あ、そういう時間‥‥‥』
『どうせ、妊婦偽装用品収納庫なんだが、どうせ、壁を壊すといった方法でないと入室できないんだよ‥‥‥ほーら!丁重に扱ってきただろう?とヤマフジのおじさんは笑っていることだろう‥‥‥』
『‥‥‥レンギョウ商会の所有物、ということか?』
『契約書を交わす、その段階に来て、やーっぱりおじさんが三つとも所有しようと思うんだー、とやられたお嬢は、おうおう泣きを披露し、本妻さまは、貸し切りって素敵』
あっさり予想してくれたジークは、嫌になったのだと溜め息をつく。
『貸し切りの代金はおじさんが支払う?』
『そうするので、ジモルルさんが、請求書を持ってくるように、って‥‥‥お嬢は、泣いた‥‥‥だが、レンギョウ商会の会長秘書が、商売人ジモルルさんを雇用している商会と業務提携という形で契約し、その分の経費だってのせてやればいいんだ、という独り言を言ったのを聞いたお嬢は、立ち上がったね。よって、宿泊者としてお宿と手続きしているのは、ヤマフジのおじさん、とできていた。そのヤマフジのおじさんが拘束されたのでは、お宿は利用お断りへと移行し、宿泊者がいない状態、とすることができている』
『立ち会っている、ということだよな?』
『どうせ、すぐに、任せた!ってことで戻ってくる。入室できない、それが現状だと確認しておいてくれると、あとはお宿と話してね、ってことにギドロイさまができるのではないか、と思って。ルイーゼは、荷造りとする時間を持ってから、この地を出ることができた。ストロベリータヌキちゃん!』
『何?何を言い出す?』
『ロードライト・ガーネット、それは、東部支所の象徴めいた輝きであり、死ぬべき王子の言動を無視する権限を、すべての護衛さん達に与えるのが、ジーク・イヌマキー!』
ジークは、黙って私を見ていたのだが、その目を鍋へと向ける。
『第二王子殿下の心の中の中庭には、苺、そう、苺がずらり。夜中のキッチンでちびちびどら焼きを食べていると、ん?狸だ‥‥‥苺を?収穫?勝手に?‥‥‥あ、入ってきた。キッチンに入ってきた狸は、ざるにたっぷりな苺を洗っては食べ、洗っては食べ、洗っては食べていく。第二王子殿下が、僕のは?という気分になってくると、狸は食べるのをやめて、鍋へと苺を入れていく。ジャムにするんだね‥‥‥と第二王子殿下は、ちびちび食べながら眺め、出来上がったジャムを戸棚の中にあったジャムと交換して立ち去った狸。あれ?‥‥‥戸棚の中にあった?‥‥‥それって僕の?僕のジャム?‥‥‥でも、作ったのは狸で‥‥‥え?このキッチン、僕のだよね?あの苺だっ、て‥‥‥まだ盗るの?あの狸まだ盗るの?僕、盗るって言葉を使用しているな‥‥‥でも、奥さんが笑って眺めているのでは、いっか‥‥‥なんて思わないよ?僕の、僕の、奥さんなんだよ?僕の、僕の、苺をどうこうできるのは僕の奥さんであるストロベリータヌキちゃんだけなんだから、あの狸を‥‥‥追い払うのはど糞餓鬼にやらせてやればいっか、殺したがりだからな。ジーク、行ってきて?』
『俺は、ストロベリータヌキちゃん、の‥‥‥えーっと‥‥‥?』
『違う違う、ロードライト・ガーネット、それは、東部支所の象徴めいた輝き、なんだよ?』
『あれあれ?‥‥‥そうなると?俺は、俺が、勝手に?』
『そう!第二王子殿下、が、ストロベリータヌキちゃんの苺を守りたくなっている、そう、察した、察した、お忠臣であるジーク・イヌマキさんは、胸糞ロードを走り回って遊ぶど糞餓鬼の邪魔とならない、それは、ストロベリータヌキちゃんの苺を守ることになる、そう、判断するのではないだろうか』
『わー!お子さま交渉術って呼びたくなるー!』
『ジークは、いっくらでも持ち出させてやっている第二王子殿下なんて死んでる、死んでてくれないとだ、って私が思う、って思うよね?』
『この子ったらー!』
『第二王子殿下は、奥さんに収穫してもらえやしない苺の存在してはいる中庭を守りたい、そう思っている、ジークはそう思っているようだな?死ぬべき王子は、第二王子殿下の奥さんってダイジババア、というのを、出す』
『わー!ちょっと、あれあれ?おじさんには、胸糞ロードが霞んで見えないよ?』
『あーあ、間の国の第二王子殿下、死ーんだ!』
『待って!待って!待ってくれないお子さまにならないで!』
『権利、としては間の国は所有物だと主張せずにはいられない、だが、現物、だろうか。そういった言葉を用いる私には、護衛さん、が立っているそれは、ヤマフジ家当主が作った、左の国の持ち物、だと言うことだってできてしまう。左の国が勝手に作り、間の国があったものを撤去した、なーんてことにされると、どうなるんだろうね?死ぬべき王子は、これから作り直すところだったんだ、と持っていき、だが、現存、しているものがあるのでは、なる切り口から開いていくつもりでいるのではないか?死ぬべき王子が手にして振り回しているどべぐちゃ人面魚は、謎の建築物、そう扱う選択をするのだろうか?』
『ロードライト・ガーネット?』
『その輝きをバッジとして身に纏う皆さまの主、それを東部支所だとすることは、可能だろうか?』
『可能だ』
『主を東部支所と定め、東部支所からの伝令、それにしか従わない、そう行動する時間の終わりを告げるのは、ジョージ・ハシドイ、その方だろう?』
ジークは、そうなんだけどね、と内心思っていそうな顔をしてくれると、バッジを外す。
『単独行動となる予定だった、と?』
『どんちきババアのカフェから出てくると、消滅希望お荷物さまの陣取る役所なる場所へ向かうと言って、ジョルムを連れ出し、ジョルムと死ぬべき王子のみが、ジゼットを連れているそうなヒジキ王のいる室内に滞在する。生まれたのが魚だったので、第二王子殿下の精子で満たした水槽を護衛さんに運ばせて、それで王子、それが、死ぬべき王子なんだ、の上演開始だ』
ジークは、くらんと頭を回してみせて、物憂げな笑いを零す。
『壮大な紙芝居だ‥‥‥』
『死ぬべき王子も、いっくらでも何通りだって持っているし、その場で作り上げるのなんていつものことだ。ジーク達がいない、そのことに気付いたからと、どんちきババアと性行為中な消滅希望お荷物さまに教えてやることなどしない。どうせ、消滅希望お荷物さまが目にするのはジョルムだけ』
『そういう判断をするだろうな』
『どんちきババアとの会合は予定しているだろうが、そこにだって姿を見せるのは死ぬべき王子だけだ』
『支障なし、と判断して、単独行動を継続』
『だが、消滅希望お荷物さまが配置につくのを確認してからジョルムを連れ出したいのでと、二物質の性行為が終了するのを待たされることになっている。どんちきババアとの待ち合わせ場所の目印である、風見鶏の下見にでも行きたいが、それでは消滅希望お荷物さまが配置についたのかを見逃してしまう。どうせ、やめろー!そんなことをしたら燃えるだろ!?とか一人で騒いでみているだろう』
『あ、さっきのってそういうのなんだ』
『ぶすっと刺しておく場所というのがいくつもあるようでいて、一つだけ残しておいた、というものだろう。間の国の皆さまの休憩場所としてここを使うことにして、ジョルムの近くには、荷台部分に布団の敷いてある馬車を配置しておくのはどう?』
『そこにあの風見鶏?』
『ジョルムを連れていこうと寄ってきた死ぬべき王子に、はい、と渡してやると、きゃわいい僕を開始して、荷台の布団に入りましたよ、をやってから、謎の建築物を越えますよ、の挙動をして、イオッシュ(ダイジババアのだった王さま)とジークを見つけちゃったな、をできまーした、となったそうなで、謎の建築物を越えてきたそうなジークにおぶさり、布団をかぶって過ごすんだよ』
『どうして俺なのかとなると‥‥‥?』
『ジュダと第二王子殿下のミックスジュースを、私にどぶどぶ飲ませるんだジーク!と、お二方をぶちまけまくるんだね』
『あれあれ?俺って?』
『第二王子殿下の義理の兄!それが、ジーク・イヌマキ!もちろんジークは、死ぬべき王子ではなく、第二王子殿下が義理の弟がいいよね?』
『そこは、間違いないね』
『第二王子殿下の所属するきゃっきゃうふふな新婚家庭、そんなもん目にしてはならないものだろう?』
『そこも、そうだね』
私が手にしている小箱を目視したジークは、すっと目を閉じる。
『アヤレイスに持たせようとしたんだが、となり、アヤレイスにママと呼ばれていた女性に押し付けましたよ、と地面に置き去りにされたものだ。中身を確認してもらいたい』
ジークは、鍋の中にあるドーナツをすべて揚げ終わると、小箱を受け取ってくれた。
『え?‥‥‥』
『耳に通すための金具の部分は踏んでべきんしましたよ、な二つのバッジなのでは?』
『そうだ。うわ‥‥‥名、なんだろうなというものが背面にある。どちらも同じだ』
『私によって、私の側近だそうな二人として間の国へ入れてやれ、と使うための小道具だ。うんざりする。だが、どうか、踏み潰す作業の続行を。なーんて私が言ったので、とっくに帰国して新婚さんを謳歌していた第二王子殿下は、嫌々ながら服を着て仕事を始めた、ことにもうなっている』
『ねえ、シーちゃん?』
『お?カフェで焼き殺したくなってきたかい?ジーク』
『あー、そういう会話だったー』
『焼き殺したいおじさん達がそれぞれに燃料とすることが可能な木材を手にして集まってきているので、ギドロイさまはここで私のドーナツの平和を乱してくれていたんだね。死ぬべき王子が、私の所持品だそうなノートを大量に、第二王子殿下の机に積んでおくようにと言って出してきて、私には第二王子殿下との自室だと言っておいてやればいい、とのお指図をしたのは、私がダイジババアの大事なおポエム帳を見つけ、イオッシュがそれを笑ってダイジババアを泣かせたからだとしている。事実だ』
『‥‥‥何やってるの?って、まず、言いたいかな』
『東部支所の最寄りな離宮は、私が鷲を保護しているのに使わせてもらっていた場所だったので、鷲が見つけてくれた。おそらく、山で子育てを終えて、縄張りを譲る形で移動したのではないだろうか、と思えるほどにおっとりしている鳥さんで、イオッシュが連れていこうとしたので、おいおい!私!私!と連れていかせて、発見』
『あれかな?死ぬべき王子の脳内が見えてるイオッシュは、俺を呼びに?』
『こちらにいることを確認すると、木材ノートを持参するべく予備糞となるのではないだろうか』
『‥‥‥予備糞?』
『イオッシュは、予備糞、と、ぴぎゃ糞、が、できる』
『できる‥‥‥?』
『あえて限定しようとするのなら、死ぬべき王子が脳内でお人形さんとして使用している予備糞とぴぎゃ糞、と表現することも可能』
『それは‥‥‥あれだね?死ぬべき王子に大変都合のよろしいどころではない予備糞と、予備糞には死ぬべき王子がどのように見えているのかとなるとぴぎゃ糞、ってやつだね?』
『そうだね。あえて、並べるのならば、愛でまくりお兄ちゃんとぷんぷん弟、という組み合わせであり、予備糞とぴぎゃ糞、という組み合わせであり、死んでてくれないとな第二王子物質と死ぬべき王子、という組み合わせであり、新婚さん謳歌中第二王子殿下ときゃわいそうな僕、という組み合わせであり、どんちきババアとおどべぐちゃる第二王子殿下となーんにも知らない僕、という組み合わせだね』
『あの‥‥‥ほら、うちの、第二王子殿下って‥‥‥ね?』
『うちにはうちの第二王子殿下の名がいるから、サザンカ持ってるそうなギドロイさまは殺してやって?』
『‥‥‥どうして、ポギャッドと呼ぶように?』
『そちらの第二王子殿下には、もう貸し出さない』
『それは‥‥‥?』
『ポギャッドの貸し出しは終了、となったんだね』
『終了‥‥‥』
『死ぬべき王子が作成したノートは、うちの第二王子殿下の名が持たされていた分も、ルイーゼにあげた』
『あ、げ、た‥‥‥?』
『私により、胸糞大迷宮の中にいるルイーゼ、が、第二王子ポギャッドにしてくれる』
『あれあれあれー?』
『うちの第二王子殿下の名がポギャッドとして行動した分も、ね?』
『あ、れー?』
『そこを分離させたいようであれば、そこは、分離させたい誰かが、ね?』
『あれれー?』
『ミドーナがイトスギに小豆買いに行ってくれたから、ミドーナもポギャッド』
『あーっとー!』
『これはもう、ルイーゼ、が、選んだのが第二王子ポギャッド?』
『あー‥‥‥お子さまー‥‥‥』
『第二王子殿下が迎えに来たな』
『あーれー!?』
『ご成婚か』
『おっとー?あれだよね?交渉だよね?』
『カフェで焼き殺す死ぬべき王子は、ど一般犯罪物質、ドンチッキ・トンチッキ、だ、よ、ね?』
『積んでるー!ちゃーんと積んであるー!』
『ドンチッキ・トンチキー?』
『‥‥‥それより、な?』
『ドンチッキ・トンチッキ!よーし、ジークには、これをつけてあげようね』
私が手を伸ばすと、ジークは、私の手にあるものを確認したそうにしつつも、それをせず、体を傾けてくれる。
『私は、魔法少女シアリー!』
『おー?』
『マツバボタンの宴!』
ジークは何も言わず、そっと、留められてしまったバッジに触れてみる。
『‥‥‥マツバボタンボタン?』
『そう!あなたは、あっちっちゲームのクローバー王国編、マツバボタンの宴、に参加している!』
『している‥‥‥』
『第二王子殿下の結婚式だったと死ぬべき王子がしている内容を言い当てたと私が判定すると、あなたはそれを実現させなければならない』
『あれー?え?あれー?俺‥‥‥え?妹を輿入れさせるの?』
『やっだー!ジークも第二王子殿下の奥さんってジュダだって、し、て、い、る、ね!おめでとう!おめでとう!これだから第二王子殿下もジュダを離して服を着ようと思うんだろうね!』
『俺ってほら、真っ直ぐ前を見ている、って言うのかな‥‥‥?シアが走り回るのが速すぎるって言うのかな‥‥‥?』
『第二王子殿下は、ジークが言うのならって、すたこら会いに行って、ジュダの手元を見ているんですよと腰を抱く、だけではね?』
『始まってる!マツバボタンの宴はもう始まってる!呼称を変えよう!第二王子殿下、でないのを使おう!』
『じゃあ、ジャドルーオ・サザンカ。派手でしょ?』
『‥‥‥派手、だね?』
『長いから、ジャザンカ?』
『あー!れにしよう!ジーオ!』
『ジークは、第二王子殿下が義理の弟がいいんだよね?』
『めった刺しだよ!俺がめった刺し!‥‥‥あ、ジーキュにしよう!ジーキュ!』
『いいよ』
とち狂う大人というのは、見ていて非常に楽しいものだ。
(って思ってるな、って思ってるね?)
『ジークは宴に参加しているので、東部支所の象徴めいた輝きを纏うことは、お子さまを一人ぼっちにするということだ』
『お子さまだ‥‥‥すこぶるお子さまだ‥‥‥』
『ジークが作成したそれは、お子さまを一人ぼっちにさせないドーナツなので、お子さまを一人ぼっちにさせない全員に、食べさせるように』
そのようなものだと知ったジークは、私が並べていくドーナツ生地を、鍋へと入れる。
『‥‥‥西部支所がアイオライトで、王城がゴールデン・ベリル?』
『招待状とか、そういうのでその色を使う、という程度でね』
『象徴めいた輝き、か』
『私を一人残し撤収する、それだけで、間の国の第二王子殿下は私を捨てることを終えることが可能だ』
『そういったものも?』
『それは王家の決定なんだ。死ぬべきドンチッキ・トンチッキからは、間の国の第二王子殿下がこの地へやってきて、死ぬべきドンチッキ・トンチッキから第二王子を取り上げてくれた、となるだろう』
『‥‥‥王女殿下の入国を知らせる?』
『私はあなたを呪っている。私の知る間の国の第二王子殿下、それは誰だろうか?』
ジークは顔を強張らせ、ど糞餓鬼の到来を知るには遅すぎたのだと、そう知ってくれただろうか。
◇◆◇◆◇◆◇
そして、こここそが風見鶏、と思ったのだが。
ぶっすりやれそうな穴が見つからないのでは、ヤマフジ家当主の高笑いが聞こえてきそうだ。
(あーあ)
厩舎の屋根の頂上な辺には、真っ直ぐに一本の溝があり、いかにもだ。
(溝に置いておけば、風に吹かれて溝の中を移動?)
風見鶏とは、くるくるするものだろう。
風が吹けばくるくるする、それは風見鶏自体を移動させていくほどだろうか。
(どうせ、傾斜‥‥‥)
溝を目で追っていく、その作業を継続することには、こんなにも苦痛が伴う。
それは、ヤマフジ家当主による、何かとなると嫌がらせ、と私が分類するものだと認識しているからだろう。
フリューゼンの絶望はいかほどだっただろうか。
そう思わせてくれるほどに、泉は少しもさざめかない、そんな人物だった。
とっくに絶望している、そこはもう底なのだと知っている毎日にやってきた、青い首輪をしている子犬。
そこに、人質と赤子が加わり、誰もが底にいる、そう思えていたのではないだろうか。
人質の絶望が浅瀬だと、そう判断させてくれたことにより、私は人質の手を取った。
あの時、人質は私の後方にいる人物に気付いてくれた、そう思わせてくれては、老婆は微笑むこととなり、人質はやっと、さざめかない泉の存在に気付いてくれたようだった。
人質は浅瀬に座ることを続け、泉はずっとさざめかない。
私が何をしてきたのか、そんなものは侵略であり蹂躙であり使役だった。
ど糞餓鬼、その言葉、その殺傷力ならば知っている。
攻撃範囲はいくらでも。
対象物、そんなものは私次第。
兵器、その言葉に押し込めてくれた。
私は何をしているのか、それは、こうして溝を目で追い続ける作業。
老婆、それが赤子に詰まっているのでは、それはもう化け物で、入れ物が老婆へと近付けば、それは擬態というものだろう。
呪う私。
並べて眺めてどうするつもりもないのだと、私は私という入れ物の成長に俯くこととなる。
食べて、出して、食べて、出して、いくらでも生きてきた。
そんな風に思える程度には、私というのはお子さまと呼べる時間しか過ごしていない、というものだろう。
成長、そんなものがあとどれだけ続くのか。
老い、それはもう果てしない時間を必要とするようだ。
子、と呼ぶ範囲の生き物が死ぬ、それは迷惑なのだと、誰もが態度で語ってくれた。
そう思うのは私の勝手というもので、私は思いたいように思って生きている。
(あった)
傾斜が変化する地点を見つけてしまえば。
(あった)
扉となっているのだろう部分を確認すると、開けてみる。
(開いた‥‥‥お?)
見下ろす屋内では、鳥さんと同じ落ち着きを思わせてくれる犬が歩いてくる。
月明りというものが差し込む四角に腰を下ろした犬は、こちらを見上げ。
(にこやか‥‥‥しっぽも‥‥‥)
友好的、そう判断しては、屋内へと入るのがお子さまだろう。
垂直に屋根へと伸びている梯子を下りることにして、屋根にあった扉を閉める。
(あるね。はい、ぱたん)
つけたきゃどうぞ、な金具に、持ってきた南京錠を取り付ける。
念のためがたがたさせてみても、扉は開きそうにないのだが、お子さまの力では確かめたことになるのかと。
(ま、行くか)
犬のいる床面へと着地してみると、雨漏りで床板が腐るようなことにはなっていないようだ。
犬は、さあ、どうぞ!と撫でられ待ちとなっていて、無警戒、という言葉を思い浮かべてしまう。
撫でさせてもらってみても、犬は私の側に座ったままで、ポケットから縄を出してみると、首を傾げて待ってくれる。
(君は‥‥‥誘拐されやすそうだ‥‥‥)
誘拐犯となる私は、犬の首輪に繋いだ縄を、リュックの肩紐に縛っておく。
犬は室内を歩き回る私に合わせて歩いてくれて、窓辺にある長椅子へと近付くと、長椅子の横にある盆の前に座り。
(これは‥‥‥期待されている)
月明かりの中で見る分には、探していた犬だと思えて。
(そうだね。これは君のために持ってきた、君の分だ)
リュックから取り出した器の中身を、盆にある皿に移してみると。
犬は、いただきます!とこちらを見てから、食事を始める。
空腹だとすると、こうして食事を持ってくることになっている誰かを待っていたのだろうか。




