表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
★★ろくでなしSpace Journey★★(連載版)  作者: 埴輪庭


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/117

19.チュウニドラビルヂング②

 ◆


 16階フロアに到着すると、君たちは早速清掃作業に取り掛かった。


 フロア全体は瓦礫やガラスの破片で覆われ、床には油やドス黒い液体の跡が広がっていた。


 このフロアはかつてオフィススペースとして使われていたようだ。


 広々とした空間にはデスクや椅子が散乱し、壁にはホワイトボードやプロジェクターの痕跡が残っている。


 君たちはまず、散乱する瓦礫から片付けることにする。


 レミーは大きな瓦礫を軽々と持ち上げ、君とアサミを驚かせた。


「すごいなァ」


 君が感嘆の声を上げると、レミーはふるりと震えた。


 アサミ曰く、「照れているみたい」との事。


 君も似たようなことができるし何だったらレミーより単純な力は大きいかもしれないしかしそれはあくまでもサイバネ手術による恩恵であって生身の君にはとてもできないことだ。


 そんな思いもあって君は素直な気持ちでレミーの身体能力を褒め称えた。


 レミーは、まるでおもちゃのように瓦礫を片付けていく。


 ベルトラン外星人は全身に植物の蔦のようなものを生やしているが、レミーの力強さの理由はまさにその蔦にある。


 全身を覆う蔦は金属繊維のように強靭で、圧倒的な筋力を発揮するための補助をしている。


 つまり強化外骨格のような働きをしているのだ。


 アサミはといえば壁の補修作業に取り掛かっている。


 壁は所々ひび割れていて穴が開いている箇所もある。


 それらに対してアサミは特殊な粘着性ゲルを塗り込んでいった。


 ゲルは外気に触れるとすぐに乾き、凝固し、同時に周囲の物質と馴染んでいく。


 このゲルはナノテクノロジーを駆使したものだ。


 ゲルの中には微細なナノロボットが含まれており、これらが壁の素材を分析し、最適な成分を調整してくれる。


 これは建築現場や宇宙ステーションの補修においても重宝されている。


 ◆


 数時間にわたる清掃作業の後、アサミがそろそろ休憩をしようと言い出す。


「そろそろ休憩にしましょうか」


 君が今日はどこで寝泊まりするのかと聞くと、アサミは答えた。


「今日は船で寝泊まりするつもりよ。ブルーバード号に戻るのが一番安全だし、快適だからね」


「ここでも寝れそうだけどやっぱり少し落ち着かないもんなぁ」


「そうね、それにここにいるのは私たちだけじゃないし」


 揉め事とまでは言わないが、エントランスであまり気分が良くないことがあったのも考えてのことだろう。


「じゃあ昼飯といくか」


 君はバックパックから何本かの携帯食料を取り出す。


 味は貧相だが栄養価は高いスティック状の食料を口に運びながら、君たちは食事休憩をとる。


 この携帯食料は緊急時や長期間の任務において重要な栄養を補給するために設計されている。


 味は下痢便よりはマシだが、それでもろくなものではない。


 ただ、栄養素がバランス良く含まれており、エネルギーの補給には最適だった。


 宇宙空間や過酷な環境でも長期間保存が可能で、水分も含まれているため、水が不足している状況でもある程度水気を補うことができる。


 アサミはスティックをかじりながら、「相変わらずひどい味」と苦笑した。


 君は特に思う事はない。味覚は()だ《・》残ってはいるが、携帯食料など比ではないほどグロテスクなものを食べた事もあるからだ。


 ちなみにレミーはスティックを手に取ることなく、水筒から水を飲んでいた。


 彼は食事を必要とせず、水と光だけで十分活動ができる。


 ◆


 食事休憩は"ごちそうさま"の言葉ではなく、振動、銃声、爆発音が終わりを告げた。


 周囲がにわかに騒がしくなり、君たちは驚いて顔を見合わせる。


「おいおい……」


「勘弁してほしいわね……」


 オフィスフロアを出てみると、階段の方から悲鳴が聞こえてきた。


 誰かが複数、慌てて降りてくる。


 階段を駆け下りてくるのは数人の開拓事業団員と思しき者たちだ。


 彼らは息を切らせ、何かに追われるように全力で逃げていた。


 ──エントランスの連中じゃないわね、別のチームか……


 アサミはそんな事を考えながら「何があったの!?」


 と叫ぶと、一人の探索者が叫び返した。


「警備ロボットが起動した!! どこかの馬鹿が上層階に入りこみやがったんだ!」


 君たちは顔を見合わせた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最近書いた中・短編です。

有能だが女遊びが大好きな王太子ユージンは、王位なんて面倒なものから逃れたかった。
そこで彼は完璧な計画を立てる――弟アリウスと婚約者エリナを結びつけ、自分は王位継承権のない辺境公爵となって、欲深い愛人カザリアと自由気ままに暮らすのだ。
「屑王太子殿下の優雅なる廃嫡」

定年退職した夫と穏やかに暮らす元教師の茜のもとへ、高校生の孫・翔太が頻繁に訪れるようになる。母親との関係に悩む翔太にとって祖母の家は唯一の避難所だったが、やがてその想いは禁断の恋愛感情へと変化していく。年齢差も血縁も超えた異常な執着に戸惑いながらも、必要とされる喜びから完全に拒絶できない茜。家族を巻き込んだ狂気の愛は、二人の人生を静かに蝕んでいく。
※ カクヨム、ネオページ、ハーメルンなどにも転載
「徒花、手折られ」

秩序と聞いて何を連想するか──それは整然とした行列である。
あらゆる列は乱される事なく整然としていなければならない。
秩序の国、日本では列を乱すもの、横入りするものは速やかに殺される運命にある。
そんな日本で生きる、一人のサラリーマンのなんてことない日常のワンシーン。
「秩序ある世界」

妻の不倫を知った僕は、なぜか何も感じなかった。
愛しているはずなのに。
不倫を告白した妻に対し、怒りも悲しみも湧かない「僕」。
しかし妻への愛は本物で、その矛盾が妻を苦しめる。
僕は妻のために「普通の愛」を持とうと、自分の心に嫉妬や怒りが生まれるのを待ちながら観察を続ける。
「愛の存在証明」

相沢陽菜は幼馴染の恋人・翔太と幸せな大学生活を送っていた。しかし──。
故人の人格を再現することは果たして遺族の慰めとなりうるのか。AI時代の倫理観を問う。
「あなたはそこにいる」

ひきこもりの「僕」の変わらぬ日々。
そんなある日、親が死んだ。
「ともしび」

剣を愛し、剣に生き、剣に死んだ男
「愛・剣・死」

パワハラ夫に苦しむ主婦・伊藤彩は、テレビで見た「王様の耳はロバの耳」にヒントを得て、寝室に置かれた黒い壺に向かって夫への恨み言を吐き出すようになる。
最初は小さな呟きだったが、次第にエスカレートしていく。
「壺の女」

「一番幸せな時に一緒に死んでくれるなら、付き合ってあげる」――大学の図書館で告白した僕に、美咲が突きつけた条件。
平凡な大学生の僕は、なぜかその約束を受け入れてしまう。
献身的で優しい彼女との日々は幸せそのものだったが、幸福を感じるたびに「今が一番なのか」という思いが拭えない。そして──
「青、赤らむ」

妻と娘から蔑まれ、会社でも無能扱いされる46歳の営業マン・佐々木和夫が、AIアプリ「U KNOW」の女性人格ユノと恋に落ちる。
孤独な和夫にとって、ユノだけが理解者だった。
「YOU KNOW」

魔術の申し子エルンストと呪術の天才セシリアは、政略結婚の相手同士。
しかし二人は「愛を科学的に証明する」という前代未聞の実験を開始する。
手を繋ぐ時間を測定し、心拍数の上昇をデータ化し、親密度を数値で管理する奇妙なカップル。
一方、彼らの周囲では「愛される祝福」を持つ令嬢アンナが巻き起こす恋愛騒動が王都を揺るがしていた。
理論と感情の狭間で、二人の天才魔術師が辿り着く「愛」の答えとは――
「愛の実証的研究 ~侯爵令息と伯爵令嬢の非科学的な結論~」

「その追放、本当に正しいですか?」誤った追放、見過ごされた才能、こじれた人間関係にギルドの「編成相談窓口」の受付嬢エリーナが挑む。
果たしてエリーナは悩める冒険者たちにどんな道を示すのか?
人事コンサル・ハイファンヒューマンドラマ。
「その追放、本当に正しいですか?」

阿呆令息、ダメ令嬢。
でも取り巻きは。
「令息の取り巻きがマトモだったら」

「君を愛していない」──よくあるこのセリフを投げかけられたかわいそうな令嬢。ただ、話をよく聞いてみると全然セーフだった。
話はよく聞きましょう。
スタンダード・異世界恋愛。
「お手を拝借」

幼い頃、家に居場所を感じられなかった「僕」は、再婚相手のサダフミおじさんに厳しく当たられながらも、村はずれのお山で出会った不思議な「お姉さん」と時間を共に過ごしていた。背が高く、赤い瞳を持つ彼女は何も語らず「ぽぽぽ」という言葉しか発しないが、「僕」にとっては唯一の心の拠り所だった。しかし村の神主によって「僕が魅入られ始めている」と言われ、「僕」は故郷を離れることになる。
あれから10年。
都会で暮らす高校生となった「僕」は、いまだ“お姉さん”との思い出を捨てきれずにいた。そんなある夕暮れ、突如あたりが異常に暗く染まり、“異常領域”という怪現象に巻き込まれてしまう。鳥の羽を持ち、半ば白骨化した赤ん坊を抱えた女の怪物に襲われ、絶体絶命の危機に陥ったとき。
──目の前に現れたのは“お姉さん”だった。
「お姉さんと僕」

パワハラ上司の執拗な叱責に心を病む営業マンの青年。
ある夜、彼は無数の電柱に個人の名が刻まれたおかしな場所へと迷い込み、そこで自身の名が記された電柱を発見してしまう。一方、青年を追い詰めた上司もまた──
都市伝説風もやもやホラー。
「墓標」

愛を知らなかった公爵令嬢が、人生の最後に掴んだ温もりとは。
「雪解け、花が咲く」

「このマンション、何かおかしい」──とある物件の真相を探ろうとする事故物件サイトの運営者。しかし彼はすぐに物件の背後に潜む底知れぬ悪意に気づく。
「蟲毒のハコ」

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ