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2.遊星X015②

 ◆


 君が一応他の依頼やそれらの報酬等々を確認すると、桁が一つとまではいかないが最低でも倍はある。多いものだと五倍というものもある。


「はァ~。こんな変わるもんなんだな」


 君が言うと、ミラは『最下級の開拓団員は幾ら死んでも代わりがいますが、それでも無制限に地面から生えてくるというわけではありません。(いたずら)に死なれては困るという事です。弾数は潤沢、しかし限りもあります』などと非人道的な事を返す。


「ウケる。俺達は鉄砲玉なんて上等なものだったのかい?」


 君はケラケラと笑いながら何本目かの煙草に火をつけた。


 ・

 ・

 ・


「ところでミラ、話せるようになって……なんていうか、どうだい?気分とかその辺は」


 君が何気なくそんな事を聞くと、ミラは


『システムチェック──……オールグリーン。問題ありません』


 などと愛想無く返す。


 それに「あ、そ」と答えた君は枕元に置いてあるナイフを手に取って、煙草のフィルター部分を切り飛ばした。こうすることで有害成分を余す事なく摂取でき、効率的にキマる事ができるのだ。持たざる者たちの生活の知恵と言える。


 とはいえ、君のサイバネティック・ボディには全く意味がない。ただの手癖である。


『ケージ、遊星X015の資源採取に使用する器具、資源採取用のワーキング・スーツなどは当機が注文しておきます。ケージは宇宙港のN42番ドックへと向かい、宇宙船の受領及び生体認証登録を済ませて下さい』


 EランクからDランク──……形なき残響から塵クズへと昇級したことにより、これまで乗船していた "棺桶号" より少しはマシな宇宙船の使用許可が下りたのだ。


 君は幸いにも宇宙の藻屑となった経験はないが、Eランクの開拓事業団へ貸与される宇宙船の品質は反吐が出るほどに低い。


 例えば自衛能力がない、例えば緊急時の脱出艇が仕様上射出できない、例えば各種の有害な宇宙線から船体内の生命体を保護するためのシールドがショボい……色々と問題がある。


 特に自衛能力がないというのは問題だ。


 宇宙海賊や第三、第四宇宙速度で宇宙を回遊する敵性生物などに襲われても、それらを退ける手段を持たないというのはかなりまずい。


挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


 単純な機体性能も低いためにスピードで振り切る事も出来ず、ひとたび捕捉されてしまえば生存は絶望的だろう。


 ハイパー・ワープは準備に時間が掛かり、間に合わない。


挿絵(By みてみん)


 また、奇跡的にどこか着陸できる惑星を見つけても、それが惑星に擬態する敵性宇宙生物であるという可能性もある。


 君はこれまでいくつかの惑星探査、資源採取に成功してきたが、これは幸運の女神が君の傍に佇んでいたからに他ならない。


 ◆


 君が現在生活の拠点としている襤褸ホテルから宇宙港までは徒歩30分と言った所だ。下層居住区は基本的にどこも治安が悪い為に、運が悪いと襲撃に遭う恐れもある。


 だが今回は幸運なことに正気を失ったヤク中や強盗などに襲われる事もなく、君は無事に宇宙港へとたどり着いた。


 ・

 ・

 ・


「やあ、今大丈夫かな?俺はケージ。新しい船の受領をしろって開拓事業団の方から通達がきてね」


 ドックの係員の男に声をかけると、男は胡乱げな目つきで君を見ながら言った。


「……端末を見せろ」


 君がポーチから端末を取り出し、画面を見せると男は「ついてこい」と言って君を歩き去っていく。


 ◆


 君は男の後を追って暫時歩き──……


「おお。悪くないね」


 視線の先にあるのは一隻の銀色の船だった。


  "棺桶号" は戦闘機然としたシルエットだったが、銀色の船はまた違う味わいがある。


 流線形のボディは君好みだし、あまり大きすぎないというのも良い。君は小回りが利くタイプが好きだった。


 外装はシンプルで、遠目からみればまるで銀色の涙に見えるかもしれない。


「アルドメリック社の第二世代機だ。最低限のコーティング、最低限の武装。足回りはそれなりだが、外装にせよ内装にせよ拡張性が低い。つまりぎりぎりの調整がされているというわけだが、それでいてなおパッとしない性能の宇宙船だ。ついでに言えば中古だ。前の持ち主は強盗で現場射殺された。大切に乗れよ、じゃあな」


 そんな事を言って去っていく係の男を見送り、その姿が見えなくなってから君は軽くため息をついた。


評価などなどあればうれしーでーす。また、様々なジャンルのものを書いているので、よろしければそちらも。最近異世界恋愛なども2本書きましたが、1本目は日間総合8位とかになったり結構うれしかったです。テンプレ外した感じなので、アレルギーの人もまぁ読めなくもないかもです

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最近書いた中・短編です。

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そこで彼は完璧な計画を立てる――弟アリウスと婚約者エリナを結びつけ、自分は王位継承権のない辺境公爵となって、欲深い愛人カザリアと自由気ままに暮らすのだ。
「屑王太子殿下の優雅なる廃嫡」

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※ カクヨム、ネオページ、ハーメルンなどにも転載
「徒花、手折られ」

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「秩序ある世界」

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愛しているはずなのに。
不倫を告白した妻に対し、怒りも悲しみも湧かない「僕」。
しかし妻への愛は本物で、その矛盾が妻を苦しめる。
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理論と感情の狭間で、二人の天才魔術師が辿り着く「愛」の答えとは――
「愛の実証的研究 ~侯爵令息と伯爵令嬢の非科学的な結論~」

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果たしてエリーナは悩める冒険者たちにどんな道を示すのか?
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「その追放、本当に正しいですか?」

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