1.遊星X015①
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『早速ですがケージ』
その単刀直入な物言いに、君はザッパーの影を見る。
ザッパーとは君の元カノの一人で、金属生命体の女性である(16.惑星C66、チンピラ参照)。
別れた理由は性の不一致。
アースタイプである君の体液は、金属生命体であるザッパーにとって猛毒であり、その身体を内部から腐食させるのだ。
そしてプラトニックな愛に身を任せるには、二人は少し若すぎた。
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『ランクの上昇により遊星の探査がアンロックされました。次の探査予定地はX015は如何でしょうか』
ミラの提案に君はかぶせるようにして「それでいいよ」と答える。馬鹿の考え休むに……という言葉を、君は理屈ではなく感覚として理解していたのだ。
「ちなみにそのX015っていうのはどんな星なんだい?」
君は天井の染みを見ながら何となく聞いてみる。
天井の隅の黒い染みが妙に気になっていた。
液体が滴っているというほどではないが、見た限りではややいやな感じで潤っているように見える。
君は何となくその染みに指で触れるところを想像したが、指に付着した黒いナニカは粘着質で、悪臭がして、そして……
君のしょうもないホラーな妄想はミラの声で遮られた。
『星ではなく生物です。遊星X015は惑星大の恒星間生物……Cosmogonium vagans (漂流する宇宙の種)と呼ばれています。探査依頼は遊星X015の地表から、とある "資源" を採取するものとなります』
言うなり、ミラは君の眼前の宙空にホロ・ヴィジョンを投影した。
君は思わず「うぇっ」という声を漏らしてしまう。
遊星X015の姿は、お世辞にも美しいモノとは言えなかったからだ。
不気味ですらある。
表面が無数の孔と突起で覆われている球状のナニカといった感じで、孔の大きさは大小こもごも。
内部から光が滲むように輝いており、体表の色は紫やピンク、青緑が混ざりあっている。
そして大きさだが、直径にして約6,900km。
これは火星よりもやや大きい。
「資源採取ってさァ」
『体組織の採取となります。ただし、採取方法には制限があり、焼き切ったりといった過剰に体組織を破壊する方法は認められていません』
つまり、切り取るか引きちぎるか、そういった手段で採取せよという事だ。
「危険はないのかい?」
『遊星X015はこれまでに自律意識をもつ生物としての行動を示したことはなく、この宇宙をただ漂流してきただけです……《《あくまでデータ上では》》』
ミラはデータを参照しながら説明する。
流木のようなもので、生命の脅威となるような攻撃性は観察されていない。
しかし、生きた生物の一部を採取する行為には常にリスクが伴う事は言うまでもない。
遊星も惑星と同義なんですが、ここでは巨大な恒星間生物が星ヅラしてる際にそう呼ぶ、と定義しておきます。もちろんただのでっちあげです




