表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
★★ろくでなしSpace Journey★★(連載版)  作者: 埴輪庭


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/151

38 惑星C66、昔の女③(第一部.完)

 ◆


 話さないと伝わらない事は多い。


 ただ、話したって伝わらない事も多いのだ。


 例えば絡んできたゴロツキはここら辺では有名な人攫いで、アースタイプだろうとそうでなかろうと関係なく攫って人買いに売り飛ばすような連中だという事とか


 ここら辺ではヘタに生かして帰すと報復される上、舐められて食い物にされてしまうから敵対したら殺してしまうのが慣例であるとか


 ケイラの肩に触れようとしたゴロツキは手袋に即効性の麻痺毒を塗っていたとか


 外星人でも攫い慣れているこの連中はグレイタイプの特性も理解しており、目を合わせない様に話しかけてきていたとか


 こういった諸々は理屈で理解できる事で"話せば分かる"事だ。


 しかしこれらを以て完全敵対と見做した君が、ゴロツキ連中に襲い掛かり、たちまち半殺しにしてしまう事でケイラの中に生まれた恐怖心、忌避心というものは"話したって分からない事"なのだ。


 ・

 ・

 ・


 君は淡々と半死半生のゴロツキ連中にトドメを刺していった。


 傍らではケイラが「もうやめて」だとか「十分でしょ」だとか、「そこまですることないじゃない」などと言っているが君は聞く耳を持たない。


 君がそこまで執拗にゴロツキ達の息の根を止めようとする理由は、先にも言った通り、生かして帰すと碌な事にならない為である。


 言ってしまえば君自身のため、そしてケイラの為にゴロツキを殺しているのだ。


 だがこの理屈は下層居住区民の理屈であり、ケイラの様なお嬢様には理解ができない理屈であった。


 ケイラからしてみれば君は "やりすぎ" なのだ。


 下品な言葉を吐きながら近づいてきて、ケイラの肩に触れようとした汚い男に対して、君はアッパーカット気味にナイフを突き上げた。


 鋭い刃がゴロツキAの下顎を貫き、舌を口蓋に縫い留める。


 一対多数でこちら側が一である場合、初手で度肝を抜けないと袋叩きにあってあっという間にやられてしまう。


 しかし君は相手集団の度肝を抜く事に成功した。


 何せナイフでぶっ刺されたゴロツキが、目から赤い涙を流しながらゲラゲラゴボゴボと笑っているのだから。


 刃物を口蓋に突き刺されてグチャグチャにかき回した事がある者なら分かる事だが、これをすると相手は余りの激痛で神経がグチャグチャになって悶え、苦しみ、表情がまるで笑っている様に変容する。


 滅茶苦茶に不気味な絵面なのだが、君としてはこの殺り方はお気に入りだった。


 死というものはただでさえ辛気臭く、陰気で、哀しく、そして切ない。


 例え敵対者であろうと、笑って死ねるならそれに越したことはないと君は考えている。


 まあまあ頭がおかしいが、下層居住区の住民としてはまともな方だ。


 ともかくもそうして度肝を抜いた後、君はまるで飢えた野獣の様に残ったゴロツキ達に襲い掛かり、次々と血祭りにあげていった。


 ここまでやらないといけない相手だからそうしたのだ。


 たんなるイキがったチンピラ相手なら、君はここまではやらなかった。


 ケイラに対して差別的な事を言って煽ってくるというのはそれはそれで許しがたいことだが、殺す理由としては弱すぎる。


 だが今回の相手はそうではなかった。


 人攫いの屑野郎である。


 女でも男でも、まずは攫って売りに出す。


 売れ残ったら犯す。


 犯したあとは殺して食肉にする。


 そういう連中なので狩場が次々に変わり、今回たまたま君とケイラの道中に現れたわけだ。


 こういう連中に絡まれたなら、君が取った行動はややラディカルではあるものの間違ってはいない。


 だがケイラには刺激的に過ぎた。君は彼女に下層居住区の危険性を教えていたものの、それはケイラにとってただの情報で、リアリティが伴っていなかった。だからこその気持ちの行き違いと言えよう。


 君にはグレイタイプの外星人の様に相手の表層意識を察知する事など出来やしないが、それでも震え、怯え、君から距離を取ろうとするケイラを見れば、特殊な精神感応能力など無くても気持ちは分かろうというものだ。


「ケイラ、まず聞いてくれ…」


 君はそう言いながらケイラに近寄る。


 理由を説明しようとしたのだ。


 それに対してケイラが返した言葉がこれである。


 ──……『こ、来ないで』


 短くも強烈な言葉だった。言葉に込められた忌避と恐怖の念は硬い逆棘となって言葉を飾り付け、君の神経回路をズタズタにしながら駆け巡る。


 ケイラの拒絶の言葉を聞いた君は、射精感の様なものを味わった。


 それは快楽ではないが、一種の快感だった。


 何がどう作用して気持ちよいと感じてしまったのか、当時の君には分からなかったが今の君ならはっきり分かる。


 ・

 ・

 ・


 ──俺はあの時、ケイラと別れられる事を喜んだんだ。あいつは良い所のお嬢ちゃんで、俺は人殺しも平気で出来る屑だ。上手くいきっこない事は分かっていた。いや、それも言い訳か。言い訳だな


 ケイラを傷つけたくない、大切にしたいから大人しく身を引いたのか、それとも自分が傷つきたくないから諦めて逃げ出したのか。


 君にはその答えが薄々分かっており、それを直視しようとするとしんどくなってしまう。


 君の脳裏をあの時の光景が蘇る。


 怯えるケイラの腕を無理やりひっぱり、中層区画の防壁前まで連れて行った時の光景だ。


 逃げる様に去って行くケイラの背を今もありありと思い出す事ができる。


 君の生身だった頃というのは概ねその様な苦い思い出に彩られており、しかしそれは苦痛ばかりではなかった。


 どの恋にも幸せだった頃があるのだ。


 ──この体になってから色々な事が割り切れる様になってきた。これを気にしない様にしようと思えば、全く気にならなくなる。パワーも凄ぇもんだ。鋼鉄だって引き千切る事ができるし、風より早く走る事もできる


 でも、と君は思う。


 ──俺が俺である証ってなんだ?部屋の隅に転がっているボルトは俺じゃねえ。当たり前の話だが。あのボルトと俺の違いってなんだ?きっと俺の血、俺の筋肉、俺の内臓、俺の脳みそ、そういうものが揃ってこその俺なんだろう。あのボルトはそのどれもが揃ってない。だから俺じゃない。じゃあ今の俺はなんだろうな、体の大部分がロボになっちまってよ


 君は今の君の事を偽物の様に感じてしまう。


 ──だからだ


 君は端末を取り出し、貯蓄しているクレジット残高を見る。


 ──だから手遅れにならない内に、俺は俺に戻る。生身に戻る


 君は改めてそう誓う。


 この誓いを支えるモノは自分に対する強い執着だ。


 君は親に捨てられた。だから君は、せめて自分だけは自分を手放すまいという思いがある。そして君の事を愛した何人もの女も忘れてはいけない。君が自分を手放してしまったのならば──……


 ──変な話だけどよ、ネチネチと気持ち悪いかもしれねえけど、あいつらに対して滅茶苦茶酷い事をするみたいなことになる気がするんだよな。俺が完全にロボみたいになっちまって、俺が俺じゃなく無くなるっていうのは


 君は見栄っ張りでええかっこしいだ。だから女達の汚点、黒歴史になるというのはとても嫌だった。


 しょうもない事かもしれないが、それが男の、君のくだらない矜持なのだ。


ということで第一部完です。


第一部は「君」の生身に戻りたいという思い云々の掘り下げでした。


二部からはまた画像ベタベタはりまくって調査するでしょう。


ここまででもし続き読みたいなと思ってくれましたなら、評価、ブクマなどで応援してくださるとうれしーでーす

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

惑星開拓事業団エンブレム

■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
GALACTIC FEDERAL GOVERNMENT AUTHORIZED
P L A N E T A R Y
D E V E L O P M E N T
C O R P S
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■

惑星開拓事業団

「銀河の未来を、あなたの手で。」

銀河の開拓者

西暦3889年──
人類はついに銀河の果てに手を伸ばした。

未踏の星々が、あなたの一歩を待っています。
あなたもその一歩を踏み出しませんか?

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆ 開拓対象惑星 ◆
F R O N T I E R W O R L D S C A T A L O G
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

美しき新天地

200を超える未踏の惑星が
開拓者を待っています。

▸ 未知の生態系の発見 ▸ 希少資源の採掘権
▸ 居住適性の評価 ▸ 新航路の開拓

※惑星ランクE以上の調査には所定の事前ブリーフィングが実施されます

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆ 個人用船舶貸与制度 ◆
Y O U R W I N G S T O T H E S T A R S
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

あなたの翼

入団初日から、あなただけの翼を。

ワープ航法
空間折り畳み式
銀河のどこへでも
AI航法支援
搭載型ガイドボット
あなたの相棒

※船舶の仕様・AI支援レベルは団員ランクにより異なります

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆ 多種族共存環境 ◆
D I V E R S I T Y B E Y O N D S P E C I E S
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

共に歩む仲間たち

種族を超えた絆が、銀河を拓く。

アースタイプ ベルトラン メタノイド
地球型人類 植物型種族 金属生命体
ピギー星人 スライム系 ザイフォルクス
豚型種族 不定形生物 交配進化種

※チーム編成はCランク以上でマッチングシステムをご利用いただけます

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆ 拠点惑星 C66 ◆
Y O U R N E W H O M E
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

惑星C66

銀河有数の居住適性──ランクA惑星。

惑星データ 詳細
居住適性ランク A(最上位)
都市階層 上層・中層・下層
主要施設 事業団支社・商業区・居住区
生活環境 快適

※居住区の割り当ては団員ランクに準じます

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━ 団員ランク制度 ━━
C A R E E R P A T H
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

E 研修生 ── 基礎訓練課程
D 調査員 ── 単独惑星調査
C 主任調査員 ── チーム編成権
B 上級調査員 ── 高難度惑星
A 統括調査官 ── 全権委任

あなたの努力が、ランクを決めます。
※昇格審査は実績に基づき随時実施 ※Eランク研修期間中の待遇については入団時にご説明いたします


星の海へ

星の海へ──

惑星開拓事業団は
あなたのご応募をお待ちしています。


■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
銀河連合政府認可 準国策事業体
惑星開拓事業団 広報局
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■


この物語を最初から読む

▸ ろくでなしSpace Journey

宇宙SF / 全年齢 / 連載中

© 3889 Planetary Development Corps. / Galactic Federal Government
All rights reserved across 200+ planetary jurisdictions.
― 新着の感想 ―
[気になる点] これでド級の博打バカじゃなければ…
[良い点] 第一部完結、乙で〜す♪ 第二部も楽しみにしてま〜す♪ [一言] 〉ただ、話したって伝わらない事も多いのだ。   せやな、ホンマに…………
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ