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恋なんて知らなかった 【後編】 R15  作者: 湯川 柴葉
第十章 恋はいつも唐突に
45/50

第95話 倦怠期を脱却

毎日1話 午前3時投稿

 浮気かも知れないけれど、きっと倦怠期だろうからショック療法をやってみたらどうかと、天野さんから提案があって、そのとおりにやってみた。つまり、①私からは連絡しない ②彼の事情は聞かない ③家に来ないように誘導する 、まあこんなところかな。


 木曜日の夕方。彼からLINE電話。

「今日は、そっちに行ってもいいかな?」

「忙しいでしょうから無理しなくていいわよ」

「久し振りに会いたい」

「でも、結心さんと約束してるから」

「え~? やっと時間を調整したんだよ」

「だから、無理しなくていいのよ。やっとじゃないときにゆっくり来てくれたらいいよ」

「じゃ、明日は?」

「仕事を優先して頑張ってね。私、貴方のお荷物にはなりたくない。貴方に時間ができるまで我慢するから気にしないで」

「ありがとう。じゃ、頑張って今週中には何とか目途をつけるようにするよ」

「うん。もう一息なんだね。じゃ、来週に会えるのを楽しみにしてるわね」


 う~ん、浮気してるのなら、こんなに粘らない筈よねぇ。やっぱり、浮気じゃないのかしら?


 それと、今週中に目途をつけるって言ったよね。今までは目途なんて言わなかったし、いつ終わるとも言わなかった。突然、仕事の目途が立った? じゃ、何故それを先に言わなかった? 例えば「やっと目途がたったので、息抜きに今日会いたい」と言えば良かったと思う。私に、大切なことを隠している感じがして気持ち良くないわ。私たちの待ち合わせ場所で女性を車に乗せてたことだって何も言わないし。



 金曜日も土曜日も、私からはLINEのメッセージを送らなかった。彼も送ってこなかった。その間、結心さんには電話で報告して、「やっぱり少し変だよねぇ」という話をしていた。そのとき、結心さんから衝撃的な話を聞いた。


「天野さんから聞いたのだけどね。LINEの話だよ」

「うん」

「そのスマホは貴方の彼氏のを借りてるのよね?」

「そうなの。simも共有になってるみたい」

「つまり彼がセットしてるわけで、彼がLINEをパソコンとかで閲覧している可能性があるから、単純な連絡だけにして、大切な内容はLINE電話を使うようにって」

「え?! そう言えば、彼がそんな話もしてたわよね」

「まぁ、悪意はないだろうから大丈夫だろうけど、私たちとのやり取りは、彼に影響ある場合があるからね」

「そうだよね。この前も、大切な部分はLINE電話にしたよね」

「うん、大丈夫だったと思うよ。詩織さん、ちゃんと注意してた」

「良かった。彼からも記録が残るって聞いてたから、意識はしてたのよ」

「流石は教授!」

「うふふ」


 

 日曜日の午後。

 今日は、結心さんは彼とデートだし、私も久し振りに土曜日も家にいたので家事雑事をこなして、日曜日の今日はゆっくりと本を読んでいた。突然、彼からスマホのLINE電話が掛かってきた。


「はい。こんにちは」

「こんにちは! やっと論文を書き終えたよ!」

「おめでとう! 良かったね。疲れたでしょ?」

「疲れたけど、詩織に会いたい! これから行ったらだめ?」

「いいよ。今は学校?」

「うん、学校。30分程で着くと思う」

「待ってるよ」

 私は、急いでシャワーをしにお風呂へ入った。久し振りだから、彼は来たら直ぐに抱きたいと言うかも知れないもの。


 お風呂から出ると、新しい下着に着替えて、普段着も少し色気のあるものを選んだ。寝室も整えたし、コーヒーの準備もOK。そうだ、夕飯を食べるかも知れないから、冷凍室から冷蔵室に幾つかを移しておこう。お米も洗って炊飯器にセットだけしておいた。


 玄関のチャイムが鳴った。ドアを開けると懐かしい彼の笑顔が玄関に入ってきた。玄関で抱き締められないように、後ろに下がる。

「久し振りね」

「うん。会いたかったよ!」

 中に入ってくると、彼は私をぎゅっと抱きしめた。直ぐにキスをして触ろうとする。

「コーヒーにする? それとも私? ご飯も食べるよね?」

「詩織を食べたい! ご飯も食べる」

「じゃ、シャワーしてきたら? 私はもう済んでるから」

 彼は、待ちきれないような感じでお風呂に入っていった。ということは、浮気をしてたのじゃないのかしらね。


 彼がお風呂に入っている間に、冷蔵庫から今夜食べるものを出しておいた。ご飯のスイッチも入れる。コーヒーはあとにしよう。

 彼がお風呂から出てくると、私を後ろから抱き締めてキスをする。

「ベッドに行こうよ」

「うん」

 彼はもう裸同然で、私の服を脱がそうとしている。下着も新しいものにしているから、今日は彼に脱がして貰おう。こうした刺激もきっと役に立つ筈だ。脱がされる様子を見ているのも、案外興奮するのね。彼だけじゃなくて、私も興奮するもの。彼が私の最後の下着を脱がしたあと、立ったまま、私のあちこちにキスをする。もう立っていられなくなり、ベッドに倒れ込んだ。


 久し振りだったので凄く感じて、私は何度も絶頂を迎えた。もう3年も経っているのに、まだ新しい快感を発見している私に彼は驚いている。私は貪欲なのかも知れないけれども、彼がそんな風にしているってことでしょ?

 抱き合ったまま、二人で少し眠ってしまった。外は、もう薄暗くなり始めていた。ゆっくりと起き上がると、もう一度シャワーを浴びてから服を着た。


 ソファに座って、「コーヒーを飲む? 食事にする?」と聞くと、「食事を先にしたほうがいいよねぇ」と言うので、食事の用意を始めた。彼も食卓に座って、話をしながら食事の用意を進める。


「今日は、凄く激しかったわね。疲れているのに大丈夫なの?」

「疲れているけれども、久し振りだから興奮してしまった」

「日頃は興奮しなくなったの?」

「今日ほどは興奮してないかも」

「それって、倦怠期みたいなものかなぁ?」

「そこまで(ひど)くはないよ」

「ねぇ、週に2回は疲れるの?」

「まぁ、仕事の調子なんかで違うから何とも言えないけど、3回は疲れるかも」

「この3年で、歳を取ったってことなの?」

「あはは、そうかもねぇ。もうすぐ50才だから」

「そうか。そうなんだねぇ。50才かぁ……」

「新婚旅行のときは、一晩に何回もしたのにねぇ」

「あの時は若かったって? たった3年で、言うセリフ?」

「あはは、面目ない」

「いいよ。無理しないでね」

 

 食後のコーヒーをソファで飲んでから、彼は帰っていった。


 久し振りに愛し合って、充実した日曜日になった。やっぱり、私は彼に抱いて貰わないと寂しいのだと思いながら、ぐっすり眠った。本当に、彼氏のいない生活には、もう戻れない。今は、彼とのセックスがなくなることは耐えられないと思う。だから、この前、天野さんが新しい彼氏を探せばいいと言ったのだろうけど、そんなドライなことできないわ。


 でも、天野さんが言った「いずれ別れる時がくる」という言葉は、私の胸の中にくすぶり続けている。そういう時が来たときに、どうすべきなのだろうか。彼と付き合い始めるときに、別れる時の覚悟はした筈だ。本当の意味での覚悟は出来ていなかったのは間違いないが、今は考えられる余裕ができてきていると思う。



 この日以降、彼は週に2回~3回通ってくるようになり、以前と同じように幸せな毎日が戻ってきた。結局、例の駐車場で見かけた女性のことは何も分からず仕舞いだったけど、今さら聞くのは野暮なことだ。今が幸せならいい。



読んで頂きましてありがとうございます。


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