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恋なんて知らなかった 【後編】 R15  作者: 湯川 柴葉
第十章 恋はいつも唐突に
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第94話 恋人間の倦怠期

毎日1話 午前3時投稿

 どう見ても浮気しているとしか思えない状況なのに、それはないだろうという結論になった。理由は、私より美人を探してきて口説けるなんて無理だということ。

 なんか、説得力ないけれども、まあ、言われてみると「そうよねぇ。自分で言うのも変だけど、私よりいい女を簡単に口説けるとは思えない。私は、たまたま結心さんの恋愛を見て恋愛もいいなあと思ったから、彼の求愛を受けたんだものねぇ。普通なら無視してた」と同意したら、二人が声をあげて笑った。何が可笑しいのよ!


「じゃ、何故? 最近の冷たい態度というか、仕事が忙しいと言って近寄らなくなったのは?」

「まぁ、今の情報量では推測しかできないのだけれども、倦怠期かねぇ?」

「え? それって、私に飽きたってこと?」

「う~ん、そういう表現はしにくいけど、まあ、早く言えばそうね」

 天野さんが、珍しく歯切れが悪い。私に気を使ってるのね、きっと。

「男の本質から言うとね、例えば、ご馳走を毎日食べてると(たま)にはお茶漬けを食べたいとか」

「え~!」結心さんと私の声が重なった。

「詩織さん、お茶漬けに負けたのか?」

「ちょっと、結心さん、グサッとくるわよ!」

「ともちゃんも、お茶漬け食べたい?」

「いや、僕はご馳走が好き!」

 また、この二人が脱線し始めた。

「それとねぇ、もう1つの可能性は、彼の体力が落ちてきたこと」

「え? どういうこと?」

 私は、思わず彼の顔を見ながら、怪訝な顔をしてしまった。


「要するに、世の男性たちの平均的なセックスの回数は、週1回だとどこかで読んだ気がする」

「なるほど」

「詩織さんのところに来ると、毎回するでしょ?」

「うん、そうなるわね」

「そうすると、体力が落ちてきたら週3回はきついというか、減らそうとするかも知れない」

「ああ、そういうことか。だから、最初の頃は頻繁だったのに、最近は減ってきたのはそういう事情もあるかもね」

「最初は、物珍しさもあるだろうし、新鮮だから回数多いかも知れない」

「物珍しいって何よ」

 失礼ね。天野さんて、こういうところは遠慮しないで言うのよね。

「そこへ倦怠期が発生すると、余計に避けようとするのかも知れない」

「じゃあ、週1回くらいになっても仕方ないということなの?」

「だから、どこかのレストランでデートとかすればいいのよ。会うだけで満足する日もいい」

「いつも、私の家に来るから、そういうことになるのかぁ」

「そこは改善の余地ありだね。いつもお家デートだと結婚しているのと同じじゃない?」

「結婚してなくても倦怠期はやってくるのか。もう、私たち若くないしねぇ」

「そう。もっと回数を増やしたいなら、若い男に取り換えるんやな」

 天野さんが過激な解決策を提示した。

「私、そんな淫乱女じゃないわよ」


「だったら、一度、何も言わずに、彼との連絡をこちらからしないでおいたら?」

「彼が怒らない?」

「怒ったら、仕事で忙しそうだから遠慮してたと言えばいい」

「そうしたら、どうなるの?」

「彼は不安になる筈。彼としては、捨てられるかも知れないと焦る。と同時に、セックスしたくなってくる」

「ショック療法?」

「倦怠期って、何らかの刺激があると、蘇るんと違うか?」

「そのまま、こちらが捨てられたらどうするのよ?」

「え? ちょうどいいんじゃない? 別れたら? あんたはお姫様なんじゃろ?」

「えぇ~っ?!」

「恋のシーソーゲームは、それくらいのリスクを覚悟しないと」

「ともちゃん、私にはそんなゲームしないでね」

「結心ちゃんには、そんなことせぇへんがな。愛の心で結ばれているんやで」

「ちょっと、結心さんにしないことを、何で私に提案するのよ!」


「あのな。それは、彼が詩織に何も言わずに勝手に決めてるからよ」

「勝手にって言われたら、確かに理由を言わないわよねぇ」

「だって、詩織からは倦怠期の意識がないんじゃろ?」

「うん、無い。会いたいし、会ったらしたい」

「正直で宜しい。そこに意識のずれができているのよ。もう、修復は出来ても、すれ違った意識は無理かも知れないと覚悟すべき」

「夫婦じゃないから、別れたらいいということ?」

「だって、最初から、その積もりだったんじゃろ?」

「それはそうだけど、本当になるなんて……」

「それは、好きになったから?」

「そうよ! 悪いの?」

「悪くないよ。夫婦は簡単には別れられないから、どうにかして修復して胡麻化しながら生きていくのよ」

「なるほど……」

「永遠の愛なんて難しいのよ。独身なら別れて次の恋を探したらいい。すると、また幸せな3年間がやってくる」

「ちょっと! 私の恋は3年間だけなの?」

「短いほうがショックは少ないやろ」

「天野さんて、鬼みたい……」


「え~? 心外じゃなぁ! 詩織さんの恋は、そうなんと違う?」

「どういうこと?」

「口説かれて、条件を設定してから恋をした。それは、魂の叫びじゃないから、頭で割り切ればいい」

「確かに、それはあるかも知れないわね」

「だから、今すぐ別れろと言ってるんじゃないよ。デートの仕方に変化を付けてみるとか、セックスの悦びを追求してみるとか。何かの努力をして、倦怠期を乗り越えてみたら暫くは幸せがやってくる。でも暫くすると、また倦怠期がやってくるかも。それは仕方ない。条件で結ばれた恋だから、どこかで手を打つしかない」

「そうなのか。今は愛していると思っているけれども、そういう問題が出てくることがあるのね?」

「だからこそ、結婚しなかった君の判断は正しいのよ。いつまでもお姫様扱いはして貰えないから」

「うん、なんとなく分かった。直ぐには結論は出せないけれども、頭の片隅に置いておくわね」

「それでいい。何かのドラマの台詞みたいじゃなぁ」


「ここからどうするかは詩織が自分で考えたらいいのだけれども、ついでに言っておこうか?」

「はい。お願いします」

「先ず、秘密の場所で見たことには触れない。彼が白状すれば『知ってたよ』でいい」

「浮気を責めないの?」

「浮気は許さないと思っているのなら、きちんと言っておくことも大切だと思うよ」

「そうね。私は怖いのよってね」

「あはは、本当に怖そう」

「怖いと思わせるのも時には必要よね」

「それでね、例えば、いつもお家デートではなくて、(たま)にはレストランで食事だけして家に来ない日があってもいい」

「そうよね」

「そもそも、生理の期間に、そういうデートに誘うといい。自然だから」

「あ、そうだよね。それいいかも」

「そのときに、彼が喜んで対応してくれたら、やはり体力が原因だと推測できるかもね」

「あはは、おうちデートが怖いって? やだ! 私は何なのよ」

「あるいは、偶には土曜日とかに少し遠くまでドライヴして、モーテルとかを利用して変化を付けてみるとか」

「変化が大切なのね?」

「残念ながら、倦怠期とはそういうものだと思うよ」


「貴方たちには、そういう倦怠期は来ないの?」

「来ないね」

 天野さんと結心さんが同時に応えた。

「わっ! 瞬間にハモるなんて、貴方たちエスパーか!」

(ふる)っ! ……さっきも言ったように、僕らは心と心で結ばれてるのよ」

「そうなのか~。いいなぁ」

「詩織さん、これって運命だからね。出会えるチャンスは滅多にないくらいの出来事なのよ」

「そうなのよねぇ。羨ましいわ」

「詩織さんのお陰でございます。賽銭投げていこうか?」

「私まだ生きてるから、賽銭要らない」

 みんなで笑った。



読んで頂きましてありがとうございます。


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