表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋なんて知らなかった 【後編】 R15  作者: 湯川 柴葉
第十章 恋はいつも唐突に
42/50

第92話 幸せな日々

毎日1話 午前3時投稿

 金曜告白事件が起こってから、気が付くともう3年も経っていた。あっと言う間に時間が過ぎていったわけだが、振り返ってみると幸せなときを過ごしていたのだと言える。

 

 その間、私は教授に昇進した。私は学科長とか学部長とかの役職付きにはなりたいと思っていない。寧ろ、なりたくないのだ。だって、役職というのは謂わば調整役だから面倒くさい。静かに自分の研究だけして過ごせたら良い。勿論、学生たちへの講義とか指導は大切だし、それは楽しいと思っている。

 まぁ、教授になったと言っても名称が変わっただけで、やっていることは何も変わらない。私は、このままで満足している。

 

 結心さんと天野さんたちは、相変わらずラブラブで以前とちっとも変わらない。もう3年も経っているのだから、多分私たちと同じような関係になっているのだと想像するけれども、彼らはちっとも教えてくれない。私はこんなに赤裸々に話しているのに、彼等は何故か何も言わない。深い関係になっているかどうかなんて関係ないのかも知れないけれども、あれだけ結心さんが「全てあげる」と言っているのに、そのままだと結心さんが可哀想だと心配してしまう。


 それでも、彼女たちは最初のラブラブ状態が変わらないのだから、心の結びつきが余程深いのだろう。どうやって、二人だけの空間を作っているかさえ分からないから、つい要らぬ世話だと思いながらも、興味本位も含めて想像してしまう。初めてのときは私がしたように『新婚旅行』に行ったのだろうか? 優しい天野さんだから、きっとそういう配慮をしているはずなのだけれども、皆目分からない。


 一方、私と彼はというと、夕方には彼とのLINE電話が日課。そして、週に3日程度は彼がマンションに来て食事をしたり愛し合ったりして、充実した恋愛生活をしている。最初の内は週に5日くらいのハイペースだったが、次第に落ち着いてきた。でも、世間の夫婦の営みと比較すると、きっと多いほうなのではないだろうか? だから、このペースで3年も経つと、私は既にベテランの域に達しているのだと思っている。


 最初の頃は、夜、一人で寝るのはちょっと寂しくて、ベッドの中で身体の置き場に困るような感じがあった。でも、それは直ぐに慣れて、一人のときと彼がいるときとをきちんと区別して生活できるようになったので杞憂(きゆう)だった。


 少しずつ、私は彼に性の悦びを教え込まれて、彼の(とりこ)になっていった。ただ、性に溺れてしまうことはなく、きちんと仕事もこなしていたし、生活も乱れることはなかった。彼とのセックスも、毎回のように新しい発見があって飽きることはなかった。彼との逢瀬も週に3日前後で落ち着きつつあり、生活のリズムも安定してきた。


 セックスだけが恋じゃない。でも、恋をすると行き着くところはやはりセックスになってしまうのだろう。愛し合う結果がセックスに繋がっているのだ。彼との関係も、自然に落ち着いて、不倫という言葉も頭には浮かばなくなった。ひとつだけ気掛かりなのは、彼の奥様に対する背徳感なのだが、それすらも、この3年間という期間の中で(かす)れていった。


 何度か、彼と一緒に小旅行にも行った。高知・松山・福岡などへ電車に乗って行くこともあった。想い出が沢山増えていく。旅先で、初めての神戸の夜を想い出しながら燃え上がり、濃厚な夜を過ごした。だから、本当に毎日が幸せなのだ。この幸せがずっと続きますようにと、いつも願っている。


 こうして振り返ってみると、現在の私は、かつて私が期待したように、独身のままで彼氏を作り自分のペースを守りながら人生を楽しむことができている。性の悦びも満喫できているし、彼が私を大切にしてくれる幸せも味わっている。結心さんの恋のお陰と言っても良い。


 それはそうなのだけど、ここ最近は彼の仕事が忙しいみたいで、週3日のペースが1〜2日に落ちている。こういうときは、一緒に暮らしていたら毎日会えるのになぁと思ってしまう。結婚してたって、疲れたと言って近寄ってもくれないかも知れないし、身の回りの世話をするだけの家政婦扱いになってるかも知れないと思えば、やっぱり今の生活がベストだと思い直す。


 そういうときは、持て余す時間を、結心さんと一緒に食事したりし雑談をしながら楽しく過ごしていた。ただし、結心さんのデートがない日に限られるけど。

「ねぇ、詩織さん」

「なぁに?」

「最近は、デートの回数が減ってるんじゃない?」

「そういえばそうよねぇ。結心さんたちも減ってる?」

「私たちは、相変わらずのペースだよ」

「最近は週に1回しかここに来てないわ」

「彼の仕事がそんなに忙しいの?」

「直接、私と繋がった研究じゃないから、よく分からないわね」

「男の『仕事が忙しい』という理由でデートが減るのは、危険信号らしいよ」

「え? そうなの?」

「マンネリ化したり、別に女ができたとか」

「結心さん、脅かさないでよ。でも新しい女ができるはずはないわよ。そんなにモテてないと思うけどなぁ」

「そりゃ分からないわよ。学生の人気が高いんじゃろ?」

「でも、恋愛には年齢が離れ過ぎてるでしょ」

「確かに、年齢が離れてるわね」

「まあ、もの好きがいるかも知れないけどね。ファザコンとか」

「あはは、そういう話を聞いたことあるけど、例外じゃろなぁ」

 結心さんが、面白そうに話を大きくしているだけだ。


「だから、心配ないんだって」

「あ、歳を取ったから体力が落ちてエッチをできなくなったんじゃない?」

「結心さん、色々と揉め事を増やそうとしてない?」

「え~? 心配しとるんじゃが」

「ありがとう。そんなことになったら、貴方たちに相談するから」

「絶対に相談してよ。私たちは詩織さんの見方じゃからな」

「うん」


「それより、結心さんたちの最近はどうなってるのよ」

「前と変わらず、いつもラブラブよ。私は幸せなのよ。心配事は何もない」

「良かった。……私も、何も心配事はないのよ。貴方が言ってるだけだからね」

「あはは」


 そう言って笑っていたのだけど、その週は一度も来なかったし、電話も掛かって来なかった。ラインのメッセージを送っても既読にならなかったりすることが多くなってくると、流石の私も少し心配になってきた。でも、その時はまだ、結心さん達に相談する必要を感じていなかったので、今度会った時にちょっと聞いてみるかなと思うだけだった。


 次の週に彼がやってきて、「忙しいから、お茶だけで帰る」と言いながら、私を抱こうとした。勿論、抱いてくれるのは嬉しいのだけれども、来るのはそれだけが目的じゃないのかと疑問に思ってしまう。もしかしたら、義務感だけで抱いてるのかも知れないし。


「最近は、あまり来なくなったし、仕事が忙しいの?」

「うん、論文を書いてるんだけど、思うように(はかど)らなくて焦ってる」

「そうだったんだ。頑張ってね。私に手伝えることある?」

「ありがとう。こればっかりは、自分でやらざるを得ないし。授業もあるし、学科長の仕事もあるし、結構大変なのよね」

「あぁ、そうよねぇ。ご苦労様です。いつ頃まで忙しいの?」

「それが分からないんだよねぇ」

「じゃ、気分転換に、シャワーしてエッチする?」

「うん、ありがとう。シャワーしてくる」

「私も一緒に入ろうか?」


 やっぱり仕事が忙しいのね。今日は、サービスしてあげるわ。



読んで頂きましてありがとうございます。


もし宜しければ、「いいね」「★マーク」「ブックマーク」などをして頂けると、嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ