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恋なんて知らなかった 【後編】 R15  作者: 湯川 柴葉
第九章 新婚旅行と新婚生活
40/50

第90話 休み明けも愛し合う

毎日1話 午前3時投稿

 休日の月曜日の夕方。彼が帰った後、突然、寂しくなってしまった。

 寝室やリビングなどを片付けると、結心さんにLINEした。お店にいるみたいだったから、後からお土産を持っていこう。洗濯物を洗濯機に入れてスイッチをセットすると、服を着替えてからお土産を持って、結心さんのお店に向かった。彼が帰った直後の虚しい感じを紛らわせるためには、一度外に出て雰囲気を変えるのが一番の薬だ。


「あ! 詩織さん! お帰りなさい! 幸せモードのお疲れモードね」

 結心さんがニヤニヤしながら近寄ってきた。

「うん、全くそのとおりでございます! はい、お土産よ。縁結びの御守り。天野さんと1つずつペアルックよ。私たちも同じものを買って持ってるわよ」

「わぁ! ありがとう! 嬉しい! 白いのを彼にあげたらいいのね」

「そうすると、私たちと全く同じパターンで、私と結心さんが同じものを持ってペアルックになるの」

「げっ、そうすると、近藤さんと天野さんがペアルックになるのか?」

 と、結心さんが笑う。

「他の色が無かったから、我慢しなさい」

「は~い! ありがとう! 改めて、色々と土産話を聞きに行くわね」

「うん。またね~」


 食パンだけ買って、帰路に着いた。


 マンションに戻ると、手早く家事をこなしながら平常の状態に戻して、ソファに腰掛けた。さっきまで、ここに彼が座っていたのだと思うと、急に寂しくなってくる。そして、ずっと彼が私の中にいたのだと思うと、じわ~と体の中心が熱くなってきた。3日間、寝食を共にしたのだもの、突然いなくなったら、ぽっかりと心に穴が空いたような気持ちになる。思ったよりも彼の存在が大きくなっていることに愕然とした。


 あんなに快楽を求めて過ごした2晩の営みを思い起こすと、今夜はどうしたらいいのだろうかと心配になってきた。今までも、彼から快楽を与えられて夢中になっていたが、新婚旅行では、異次元の快感を知ってしまった。もう彼なしでは、夜を過ごせないような不安が襲ってくる。まさか、こんなことになるとは予想だにしていなかった。今までとは異なる質の快楽を知ってしまったのに、どうやって平静に過ごしていけばいいのだろう。


 悩んでも仕方ない。明日の仕事に向かって、体調を整えるために、今日は早く寝よう。寝不足なんだから、ぐっすり眠ることができるばすだ。朝になれば、こんな悩みは消えているに違いない。今ゆっくりと休憩するよりも、すべきことを早めにこなして、夕食とお風呂を済ませて、さっさと就寝することにした。


 早めの夕食を済ませると、お風呂に入って頭から全部を丁寧に洗った。今朝までの痕跡を残さないようにして、明日の出勤に備えるのよ。身体を洗ってから湯船にゆっくりと浸かっていると、彼の手を想い出して胸を触ってしまった。気持ち良いと思うけれども、やはり彼の手でないと微妙に感じない。下腹部にも触ってみたけれども、同様に彼が触ったように感じることはなかった。――自分がおかしくなっていないことが分かってほっとすると、お風呂から出た。


 髪を乾かしてからお肌の手入れをしていると、(まぶた)が重くなってきたので、お布団に入った。――彼の匂いがする。昨夜の愛し合ったことが思いだされて花園がじわりと溢れてくるのを感じた。身体はもう満足していたはずなのに、なぜこんなになってしまうのだろう。

 眠いのだから目を(つむ)っていれば自然に眠ってしまうに違いない。

 ……とにかく目を瞑って数を数えた。羊が一匹二匹……。



 休日明けの火曜日朝。

 いつもより早めに目が覚めた。疲れはかなり回復している。起床すると、いつもの日常生活が戻ってきた。


 いつもの時間にいつものバスに乗って学校へ向かう。何も変わらない、いつもの生活だ。誰にも私の変化は分からない筈よ。だって、変わったのは私が処女を卒業しただけのことなのだもの。すれ違う学生たちとも、いつもの挨拶をしながら階段を上がって、研究室に入る。院生たちといつもの挨拶を交わす。


「詩織先生、おはようこざいます! あれ? 先生少し日焼けされました?」

 え?! それ、見落としてたわ! 一日中外を歩いてたものねぇ。でも、私だって気が付かない程度の日焼けよ? 何で気が付くの?

「そう? バスに乗らないで歩けば、少しくらい日焼けするでしょ。気にする程じゃないわ」

「ああ、そうなんですね。日頃は運動不足ですものねぇ」

「そうなの。駅から家までぶらぶらと歩く時があるのよ。時々だけどね」

「歩くと新しい発見があったりしますよねぇ! 私も、それ、時々やるんですよ」

「私、特にスポーツをしてないから、本当に運動不足なのよね。たまに歩くくらいじゃ役に立たないのは分かっているのだけどねぇ」

「私の母なんかは、それでジャズダンスを始めたんですよ」

「あら! 凄いわね! でも、私、ジャズダンスは無理よ」

「社交ダンスなら楽しいかも知れませんよ」

「そうね、案外素敵かも知れないわね」

「でも、男性はおじいさんばかりだって誰かが言ってた」

「あはは。じゃパス」

「なんか手軽で楽しいスポーツを探しておきますね」

「ありがとう。でも、真剣に考えなくてもいいわよ。今は、たまに歩く程度でいいわ」

 話が尽きないから、切り上げて教授室に入った。ふ~、危ない危ない! こんなことに気が付く子がいるんだよね。女の世界は些細なことが命取りになる。


 スマホを取り出して、LINEで彼に朝の挨拶を送っておいた。

「おはようございます!」

「電話OK」

「はい」と返信してから、LINE電話を掛けた。

「お疲れさまでした。疲れは残ってない?」

「ぐっすり寝たので大丈夫。貴方こそ疲れてるでしょ?」

「疲れたけれども、僕もぐっすり眠れたから今朝は快調」

「うふふ、良かった」

「今夜も会いたい」

「うん。じゃ、また夕方ね」

 電話を切ってから、また今夜会えると思うと、身体の奥がずきんとときめいたような気がした。


 学校での日常は、大過なくいつものとおり。夕方、彼の車で帰った。

「夕飯を食べていく?」

「うん」

「着いたら、先にシャワーでもしてね。その間に食事の用意する」

「悪いね」

「食後、私もシャワーする」

「うん」


 食後の片付けを済ませると、私はシャワーで身体を簡単に流してからバスタオルを巻いて寝室に入った。彼はもう裸になってベッドで横になっていた。どうやら、これが私たちの愛の時間の開始パターンになりそうね。

「私、昨夜、貴方が帰った後、ぽっかり穴が空いたみたいで寂しかった」

「僕も、詩織を抱いて寝たかったよ」

 彼はそう言いながら、私を抱き締めて愛撫を始めた。いつものように快感が身体中に広がっていく。彼の唇が私の胸や花芯を遠慮なく襲ってくると、私は堪らずに何度もイった。もう息も絶え絶えになったころ、やっと彼の分身が私を貫く。私は、そのときを今か今かと待っていた。私は夢中で彼を抱き締めて声を上げながら彼と一緒に果てた。幸せなひとときをありがとう。

 ――私は、いつの間にか眠ってしまった。


 暫くして目を覚ますと、彼もうとうとしていたみたいで、「ぼちぼち帰らないといけないなぁ」と言いながらシャワーに向かった。


 彼が来た時の服を着てソファに座ったので、コーヒーを出して私も隣に座る。軽くキスをしてから、お互いに無言でにこりと微笑み合ってから抱き締められた。


 今日も幸せだった。恋って素晴らしい。



読んで頂きましてありがとうございます。


もし宜しければ、「いいね」「★マーク」「ブックマーク」などをして頂けると、嬉しいです。

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