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恋なんて知らなかった 【後編】 R15  作者: 湯川 柴葉
第九章 新婚旅行と新婚生活
39/50

第89話 幸せな夜が明けて

毎日1話 午前3時投稿

 旅行から帰って、お酒を少しだけ飲みながら幸せな食事を楽しんだ。食後の片付けを済ませると、コーヒーを飲みながら、ソファに移動した。

 直ぐに彼が私を抱き寄せてキスをしてくる。


「うふ、ここに座るとすぐにこうなるわね」

「詩織が可愛くて仕方ないもの」

「可愛いって、初めて言ってくれた気がする」

「美人で綺麗だと思ってるけど、旅行から帰ってきたら『可愛い』が増えたのよ」

「嬉しいわ。ねぇ、こうしてると、またいつものようになってしまうでしょ。先にゆっくりコーヒー飲みましょうよ」

「焦らすなぁ……」

「焦らしてなんかいないわよ。後から、ゆっくりと抱いて欲しいから」

「そうだね。今夜は帰らないのだから時間はたっぷりだものね」


「私ね、今朝も言ったけど、昨夜の貴方の分身が私の中に残ってるのよね」

「え? もう影が薄くなったって言ってたじゃない」

「そうなんだけど、でもまだ残ってるのよ」

「どんな気持ちなんだろうなぁ? 僕には想像できない。分身といえども残っていられるのは嬉しい」

「う~ん、何て言えばいいのかなぁ? 多分、何も通ったことのない道なき道に大きいものが押し広げながらぐぐぐぐって入ってきたみたいな」

「なるほど! イメージは分かる!」

「それでね、……もういない筈なのだから居残ってるって感じはなんだろう? 広げられた部分が元に戻れないから、そこに何かが残っているように思えるのかしら」

「それが居残ってる感じということか。分かる気がする」

「男の人はどうなの?」

「僕にとっては、暖かくて柔らかい、ぬめぬめとした(ひだ)に包み込まれるように進んでいくような感覚かも知れない」

「進んでいく感じ? 気持ちいいの?」

「押し広げるように進んでいくような感じではなくて、自然に迎え入れられてるような感覚だなぁ。もう、(とろ)けるような、この世のものとは思えない気持ち良さ。もう他のことは考えられなくなって夢中になってしまう」

「そうなんだ。それって、何だか嬉しい気がする」

「お互いにもう一度、ベッドで試してみようね」

「あ~ん、やっぱり変になってしまうわ。ちょっとシャワーだけ浴びてくる」


 そう言って、寝室に行ってベッドの用意をしてからシャワーに行った。暫くして彼がやっぱりお風呂に入ってくる。

「あ、だめって言ったのにぃ」

「流してあげるよ」

「だって、克矩さん触るんだもの。触られると感じるの」

 立ったまま向き合うと、彼の分身が目に入った。

「僕の裸も見ておいてね。触ってもいいよ」

 彼が私の手を取って、彼の分身に触らせた。

「恥ずかしい……」

 思わず手を引っ込めた私は、彼の分身が私の中に入ってくるのを想像すると、身体の力が抜けていくようだった。

「……もう出るね」

 私は、早々にお風呂から出て身体を拭き、バスタオルを巻いて寝室に向かった。リビングの電気も暗くしておいたらいいわよね。ベッドに入ってバスタオルを取ると、上を向いて目を閉じた。少し遅れて彼もバスタオルのままやってきて、私の隣で横になった。この部屋での初めての夜を迎える。


 彼がそっと私の胸に手を置きながら、優しくキスをしてくれる。あぁ、今夜も幸せ!

「私たちの新婚旅行、とっても幸せだったわ。ありがとう。愛してる、克矩さん」

「楽しかったね。詩織の身体も凄く素敵で、僕は心も身体も詩織に(おぼ)れてしまいそう」

「嬉しい! 私ね、ヴァージンを卒業したら、本当に新しい快感を知ってしまったみたい」

「良かった! それも凄く嬉しいよ。男冥利に尽きる」

「今までは、身体の外でキスしたり愛撫したりしての快感だったけど、貴方の分身がもっと深い悦びを教えてくれたみたい」

「じゃあ、今夜はもっと新しい悦びを見つけようね」

「う……ん! でも、どんなになってしまうのか、ちょっと心配」

「大丈夫。きっと、もっと沢山、色んな深い悦びがあるのだから」


 彼は、そう言うと、私を強く抱き締めてキスをしてから、手と唇で私の身体の全てを覆い尽くすように愛撫を始めた。身体中から快感が湧き上がってくる。身体中が敏感になっていた。彼の唇が胸から下へと移っていき、私の花芯に届いた瞬間、身体中が(とろ)けるような、今までに感じたことのない快感が襲ってくる。私は思わず仰け反って大きな声で喘いでしまった。もう声を押さえることができない。腰が勝手に跳ね上がる。彼がまだ入ってきていないのに、私は絶頂を迎えてしまった。


 彼は優しく私の胸にキスをしながら、手が花園を優しく撫でている。胸の先端を舌で(もてあそ)びながら、手が花園や花芯を撫でている内に、私はまた感じ始めた。そして、唇が先ほどと同じように花芯へ戻り私の意識を刈り取っていく。彼が私に重なり私たちはひとつになった。彼がそっと動く。身体の奥から快感が押し寄せる。私は初めて「イクゥ!」と口走っていた。彼は、そのままゆっくりと動いている。


 暫くすると、また快感が押し寄せてくる。息も絶え絶えになって喘ぎ続けていると、彼の動きが激しくなって、私は快感の坩堝(るつぼ)の中で我を失って叫び続けていた。彼が「イクよ」と耳元で囁いた瞬間、私の身体の中心から頭の先へ白い光が走って、私は意識を失った。

 気が付くと、彼が私の上に(かぶ)さったまま、すやすやと寝息を立てている。彼の分身がまだ私の中に居座ったままだ。何とも言えない幸せな気持ちに包まれて、彼をそっと抱き締めた瞬間に彼が目を覚ました。


 彼は、「寝てしまったみたい」と言いながら、私にキスをした。「私も寝てたみたい」と言うと、彼は嬉しそうに私の胸を撫でながら、「まだ、そのままになってるね」と言った途端、彼の分身がムクムクと大きくなり始め、私の中を突き進んでくる。彼の分身が喉まで突き刺さったみたいに思えて、あっと言う間に例えようのない快感に覆われると、私は思わず大きな声を出してしまった。一瞬にしてイってしまったのだ。――何が起きたのか分からなかった。


 彼は驚きながらも、嬉しそうにゆっくりと動き始めた。あぁ、また感じてしまう。私の身体はどうなってしまったのだろう。殆ど触られたりしていないのに、本当に一瞬で絶頂を感じてしまった。それなのに、今、すぐに感じ始めて快感が押し寄せてきている。彼が胸を触りながら、うなじや耳元にキスをしている。彼の腰が動く度に快感が身体の中から湧き上がってくる。堪らず彼を抱き締めると、彼と一緒に果ててしまった。


 流石に、昼過ぎまで二人とも目が覚めないで寝ていた。私は、だるい身体を起こして布団から抜け出すとシャワーを浴び、顔を洗って服を着た。寝室を覗くと彼も目を覚ましたようだった。

「おはよう! ごはんにしませんか?」

「おはよう! よく寝たよ。すぐ起きてシャワーと洗顔する」

 朝ごはんとは言えないが、ベーコンエッグと野菜を添えて、コーヒーとパンの用意をした。二人で遅い朝食を食べる。

「昨夜も激しかったから、私、ふらふらになってるみたい」

「昨夜も素敵な夜だったよ。ありがとう」

「私のほうこそ、いっぱい愛してくれてありがとう」


 幸せだった。こんな幸せを感じることはないと思っていたけれども、予想だにしなかった夜も体験することができた。これから、この幸せが続くように努力していこう。彼を手放さざるを得ない日が来ないことを祈りながら。


 ――午後四時過ぎに、彼はネクタイを締めてカバンと一緒に帰っていった。突然寂しくなった。



読んで頂きましてありがとうございます。


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